ビンテージ・ラブ [ルーシー・ゴードン]
SHALOCKMEMO652
「ビンテージ・ラブ For His Little Girl 2000」
ルーシー・ゴードン 竹内 喜
ロンドンの下宿宿の料理人を勤めるフィリッパ(ピパ)・デイヴィスは娘のジョシーとともにカリフォルニアを訪れるところから物語は始まります。すでにピパの心臓は危険な状態であり頻繁に頭痛を感じていたが,ジョシーの父親に自分が動けるうちに逢わせておきたいという強い気持ちから思い切って渡米したのでした。下宿で二人を囲む人々はピパと父親のいないジョシーにみんなで関わっており,二人が訪れる先が二人を捨てた身勝手な男性であると思い,出発に反対したのでした。
二人が訪ねたのはすでにカリフォルニアで数店のレストランを出店し,テレビの料理番組をも担当している人気シェフ,ルーク・ダントンでしたが,ルークがロンドン滞在時代,ピパとは互いに愛し合い,娘のジョシーが生まれたことも,娘の養育費も,毎年の誕生日やクリスマスの誕生日にもプレゼントやカードを贈っていたものの,一度もイギリスを訪れることがなかったのです。しかも,二人がルークの元を訪ねたときには,部屋には絶世の美女がいるという間の悪い状況でした。にもかかわらず,ルークはジョシーに深い愛情を示し,ジョシーもパパを誇りに思っていることを隠そうともしません,そんな二人の関係に自分の病気を隠してルークを訪ねたことに後ろめたい気持ちをもつピパは,ルークに本当のことを言えないうちに,何週間かルークの家に滞在してしまいます。10年以上たってピパとジョシーと3人での生活を始めたルークは改めて二人に深い愛情を感じていることに気付き,ピパに気持ちを伝えようとした矢先,ピパは倒れてしまいます。
自分を置いていってしまった父親のルークに文句ひとつ言わずに誇りとあふれんばかりの愛情を示すジョシーの健気さが感動的です。さらには軽口を言い合いながらもなかなか本当の気持ちを素直に表せないピパとルークのすれ違いにやきもきしながら,ちょっと長めの物語を楽しめる1冊です。原題のとおり,小さな女の子はジョシーを表しているのでしょうが,ピパもまたルークにとっては小さな女の子だったので,原題は二重の意味をもっているように思います。
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