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ギリシア式愛の闘争 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO870
ギリシア式愛の闘争 Christakis's Rebellious Wife
(大富豪の飽くなき愛 2) 2014」
リン・グレアム 春野きよこ





「大富豪の飽くなき愛」シリーズの第2作目です。なんとも不品行このうえない富豪,ガエターノ・ラヴェッリが残した,3人の妻と一人の愛人。その間に8人の子供たち。本作のヒーローはその2番目の男子でヘレナ・クリスタキスの息子ニコロス・クリスタキス,愛称ニックです。母とガエターノの間に生まれたニックですが,母ヘレナは自分と同じ時期にクリストの母とも付き合っていたガエターノを憎み,妊娠したため,ニックが生まれてからは息子を愛することなく,しかも虐待を繰り返していたのでした。ガエターノとヘレナの結婚はイギリスでは法的に認められなかったため,ヘレナの財産はガエターノに渡ることがなく,ニックは祖父の事業を受け継いで成長して富豪となっていたのでした。クリストとニックがあるレストランで昼食を取っていたとき,そこのウエイトレスをしていたベッツィを見かけ,ニックは一目ぼれをします。レストランの支配人はニックがレストランの向かいのビルのオーナーであり大富豪であることから,君のような一介のウエイトレスが相手にされるはずがないとベッツィに注意をするほど,二人の共通点はなかったのです。しかしニックは日頃付き合っている美女たちとは全く異なるベッツィの美しさ,愛らしさに魅力を感じ,周囲に隠すことなくベッツィに誘いの言葉を掛けるのでした。ニックの異母兄クリストとベッツィの関係をクリストの妻ベルは一時疑ったことがあるほど,ベッツィの魅力は女性から見ても明らかだったのです。しかし,ベッツィには失読症という病気があり,文字を十分に読むことが出来ませんでした。しかし頭が悪いわけではなく,商売の才能や店の経営の才能は他をぬきんでており,結婚後始めたショップも次第に大きくしてきたのです。幼少の傷を未だに抱え,感情を表に出さないようにしているニック。失読症を恥じ自分には魅力がないと思っているベッツィ。二人の間には惹かれ合うもの,体の相性の良さはあっても,少しずつすれ違いが生じていきます。そして,ベッツィが子供が欲しいと言いだしたときに二人の意見は真っ向から対立し,ついには離婚調停が始まってしまったのです。ベルと仲の良いベッツィはベルやクリストにニックとのことを相談し,ベルは完全にベッツィの味方になっていました。互いに傷つけ合う言葉を言い合う二人ですが,体の相性はとてもよく,求められればニックを拒むことの出来ないベッツィ,しかしニックには若いときに子供を作れなくする手術をしていたのです。そのため,ベッツィの要求には応えられない,しかしそのことを説明したくはない,という葛藤の中で離婚調停が進行していくのでした。家を追い出されてからニックは回復手術を受け,ベッツィのもとを訪れて結婚生活をやり直せないかと考えます。ベッツィもニックと離れて寂しい思いをしていたため,二人は燃え上がります。そしてあるはずのないベッツィの妊娠。しかも双子の胎児がいることがわかり,結婚生活を見直すことを決意した二人でした。しかし,一度失敗しかけていた結婚生活をやり直すには,子供が出来ることだけではなく二人の生活自体を見直す必要があるということを,ベッツィは繰り返しニックに説明するのですが,一度目の失敗は自分のせいではないと思っていたニックにとってベッツィの要求を理解することはなかなか大変です。しかし,可能な限り努力しようとするニックの姿にベッツィの気持ちは揺らぎます。憎んではいるけれど愛することはやめられない。愛憎は紙一重というベッツィの気持ちを,幼少の頃からの自分の気持ちを閉じ込めることを自分に課してきたニックにとっては,理解することは難しいことでした。しかし少しずつ近づいていく二人の気持ち。ベルの誕生パーティで,クリストと大げんかしたニックはついに,幼少の頃の自分の生い立ちや母から受けた虐待のことをベッツィに打ち明けるのでした。
ベッツィの気持ちを思いやれないニックの行動に読者はやきもきさせられますが,二人が試練を乗り越えて近づいて行く心の遍歴が手に取るように見え,心理ドラマを見ているようなストーリー性の強い作品になっています。


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