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汚れなきギリシアの愛人 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1446
汚れなきギリシアの愛人 Bought for the Greek's Revenge 2016」
リン・グレアム 山本みと





 原題は「ギリシア人の復讐のために買われて」
 ヒロイン:プルネラ(エラ)・パーマー(23歳)/動物保護センター「アニマル・コンパニオンズ」職員,獣医志望/小柄,アクアマリンの瞳,睡蓮の花のような柔らかでつややかな唇,火花を放つような赤毛,茶と赤の間の金属色の髪,美しい顔立ち,磁器のような肌/
 ヒーロー:ニコロス・ドラコス(30代)/ホテル経営者/濃い色の肌,黒髪,溶けたカラメル色の瞳,アスリートのような引き締まった体,長い脚/
 エラの婚約者だったポールが亡くなったとき,その叔父サイラス・マクリスがエラの世話をしてくれた。事業に失敗し体調を崩した父を継母は捨てて行ってしまい,実母も他所で自分の生活を送っており,父の面倒を見るのはエラしかいません。そのためサイラスの手を借りてポールを見送ることになったのでした。その際ラスに恨みをもつホテル経営者のニコロス・ドラコスがエラの元を訪れ,父の経営する家具店の経営権を肩代わりしていると言います。そしてその代償として自分の愛人になるよう要求したのでした。身長が低く華奢で十代の少年のようにほっそりした妖精然とした自分が愛人というイメージからは正反対であると一応言い訳はしたものの,ニコロスの言うことを聞く以外今自分にできることはないことはわかっていました。エラは逆に「結婚して」と迫ります。「説明したでしょう。結婚指輪なしでは私を手に入れられないって。私だってあなたと結婚したいわけじゃないのよ。でも,それで家族が満足して心配がなくなるなら,私は家族のためにそうするわ。」と決意を告げるエラ。サイラスへの復讐を誓うニコロスは「なんとしても復讐を果たすべきだし果たすつもりだ。他の人間が巻き込まれようがかまわない。罪悪感を抱くことは許されない。エラは単なる駒なのだ。」そして,ロンドンのニコロスの家で同居することになるのですが・・・。純真な,婚約者がいても純潔なままだったエラはニコロスに惹かれていくことにショックを受けます。ニコロスもまたエラの純真さに感動を覚えます。ニコロスの動機を十分には知らないエラですが,サイラスとは会ってもいけないし,話してもいけないというニコロスの言葉を理解できないでいました。しかしニコロスが出張中やってきたサイラスに部屋で乱暴されそうになって初めてニコロスの言うことの意味を知るのでした。サイラスがポールとエラの面倒を見ることにしたのは,サイラス自身がエラに邪な思いを抱いていたからだったのです。そしてポール亡き後,いよいよこれまでの貸しを取り戻そうとエラに迫ったのでした。折良くニコロスが帰宅して助けてくれなければエラはサイラスによって汚されるところだったのです。自分がニコロスに惹かれていることを確信し,ニコロスがなぜサイラスへの復讐を誓ったかを聞かされ,そしてさらに婚約者だったポールの驚愕の事実をサイラスに聞かされたエラは,ニコロスもまた自分を求めていることを知り,「私も彼を受け入れよう」と,しかし「完璧さや永遠の愛を期待するつもりはない」と悲しい決意をするのでした。さて二人のすれ違った愛は実るのでしょうか。
 運命によって出会った二人が過去を乗り越えて愛を見出すまでを描いた,リン・グレアムらしいラブロマンスです。


タグ:ロマンス
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愛なきハネムーン [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1399
愛なきハネムーン The Heiress Bride
(華麗なる転身 3) 2002」
リン・グレアム 漆原 麗




HLE-5
08.11/¥1200/468p

R-1873
03.06/¥672/156p


 原題は「後継者の花嫁」
 ヒロイン:イオーネ・ガキス(本来の名前はシャノン)(23歳)/財閥の養女/翡翠色の瞳,プラチナブロンドの髪,白い肌,聖母を思わせる完璧な顔立ち,生きている人形のように素晴らしい髪,華奢だが美しい曲線を描く体,完璧な脚/
 ヒーロー:アレクシオ・クリストウラスキ(?歳)/実業家/高い鼻,光をたたえる瞳,セクシーな口もと/
 ギリシア,レクソス島。実在の島かと思っていましたが,Google Mapでは見つかりませんでした。ナクソス島はあってもレクソス島はなしか・・・。うーん,すっかり作者に騙されてしまいました。まぁだいたいギリシアの島々は数が多いですから,そんなこともあるでしょう。さて,その島の財閥に養女としてもらわれていったヒロインのイオーネ。華麗なる転身3部作の最終巻になる本作の前に,前作の最後でこのヒロインが顔を出し,ミスティと感動の再会を果たすのですが,別れ別れになってからどこでどうしていたのかという興味と,現在幸せに暮らしているのかというところに興味が沸いたのは私だけではないでしょう。養父であるガキス財閥の総帥ミノス・ガキスの娘として,手の上げ下ろし一つとっても養父のいうとおりしなければ殴られてしまうという家庭内暴力の犠牲者として22年間生きてきたイオーネにしてみれば,アレクシオとの結婚は,唯一養父の元を逃れられるチャンスだったのです。ミノスは最近心臓病を患い,しかし家庭ではそのことをおくびにも出さず,事業の後継者としてアレクシオを選び,イオーネと娶せようとしていたのです。イオーネの養母アマンダは結婚して一年足らずで長男コスマスを出産しましたがその後妊娠せず,イオーネを養女としたのでした。そのコスマスも飛行機事故の犠牲となって亡くなってしまい,いまやガキス帝国を引き継ぐのはイオーネしかいなかったのです。全くの箱入り娘として育ったイオーネですが,大事にされていたというよりも閉じ込められていたというのがふさわしいほど,イエスマンにならなければ体罰の対象になるという養父に対する恐怖しか感じていなかったのです。それはガキスの妹(イオーネの叔母)カリオペも同じでした。人は悪くないのに,口が軽いために何度となくイオーネを貶めてしまうカリオペの存在もストーリーの展開上必要なキャラクターです。親戚の中にはどうしても一人はこんな人がいるものですね。「イオーネは,愛というものに対し,年頃の女性とはかけ離れた思いを抱いていた。尊敬する美しい母は愛の犠牲者だった。母は夫からの暴力を運命と受け止め,愛をその口実に使っていた。」養母を慕い愛してはいたものの,自分は養母のような生き方はしたくないという強い思いがあったのです。婿候補となったアレクシオはなんといってもすべての女性が振り返るほどのハンサムな男性。ガキス財閥の後継者として会社の運営を引き継ぐ理由がなければ自分などは見向きもされないはず。この思いが,結婚後もずっと続きます。そのため夫を愛してしまった後も,きっと自分は捨てられる,裏切られるという思いを持ち続けていました。どんなに夫に求められても・・・。最終的に夫の愛を確信したのはイギリスに住む双子の姉ミスティを探し出した後でした。そこまでの顛末が本作のメインストーリーですが,アレクシオの側の気持ちの変化もとても興味深いものがあります。かつて裏切られた恋人のクリスタル・デンビーを思い続けているのだとイオーネは誤解しています。どんなにイオーネを大事にしてもこの誤解から抜け出せないことにアレクシオも時に立腹するのですが,事業のことを除いてはイオーネのことが始終頭から離れない状況を愛だと告白するのにすっかり手間取ってしまうのでした。そこにはかつてイオーネが想いを寄せ,ガキスによって引き離された男性ヤニスの存在がありました。イオーネの23歳の誕生日パーティの日も偶然ヤニスが帰郷し,自分の妻であるイオーネと親しげに話しているのにも強い嫉妬を覚えてしまうことに,それが妻への愛故であることに気づかないアレクシオの愛音痴ぶりに思わず読者はクスリとしてしまいます。
 さて,幼いころばらばらになってしまったフレディ,ミスティ,イオーネの三姉妹が一堂に会し,それぞれ愛する夫との幸せな生活と自分たちの愛する子供たちを交えて描かれるエピローグが読者をも幸せにしてくれる展開となります。ところが実父オリバー・サージェントにはもう一人隠し子がいた可能性が・・・,というミステリアスな結末で,これはまだ続編が期待されるのでしょうか・・・。


タグ:ロマンス
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危険すぎる契約 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1398
危険すぎる契約 The Disobeidient Mistress
(華麗なる転身 2) 2002」
リン・グレアム 茅野久枝




HQB-778
17.01/¥670/200p

R-1865
03.05/¥672/156p



 原題は「反抗的な愛人」
 ヒロイン:ミスティ・カールトン(22歳)/「カールトン・ケータリング」経営,政治家オリヴァー・サージェントと愛人の間の娘/長身,長い脚にほっそりとした体,銀色(グレー)の大きな瞳,豊かな赤毛,華奢な顎。長い茶色のまつげ/
 ヒーロー:レオーネ・アンドラッキ(30歳)/「ダンドラッキ・インダストリー」重役/身長180センチ超,浅黒く彫りの深い顔,黒い瞳,豊かな黒髪,高く張りだした頬骨,高い鼻,くっきりした眉,力強い顎,生粋のシチリア人,バティスタの兄/
 3部作前作の「アラビアの花嫁(SHALOCKMEMO1362)」を読了したのが10月23日でしたから,もうすっかりストーリーが抜け落ちてしまっていて,3部作だということも終盤まで気付きませんでした。まぁそれほど独立性の強い作品だということも言えますが・・・。今,前作のSHALOCKMEMO1362を読み返してみて,本作ヒロインのミスティの姉がフレディだったこと,そしてミスティの双子の妹が次作「愛なきハネムーン」のヒロインであること,さらにこの3人を産んだ後母親が亡くなり3人がそれぞればらばらとなって里子にだされ,苦労した幼少期を送りながらも,それぞれ社会的な成功を収めている男性たちと愛を育んでいくというシンデレラストーリーであることという共通点を確認したところです。そして3人とも美しさ,賢さ,気高さ,幼いときに得られなかった愛の深さを奇跡的に身に付けた愛らしい女性たちであることも,本シリーズの魅力になっていると思います。引き続き,「愛なき・・・」を読みたいという気持ちになっています。
 さて,本作ですが,概略からするとケータリング会社を興したヒロインのミスティですが,自らは経営者というよりも料理家。次第に事業を拡張しようとしたのですが,資金難に陥ってしまいます。そこに表れるのがヒーローの「アンドラッキ・インダストリー」のレオーネでした。そして脅迫とも言える便宜的結婚の申し出。自分を大切に育ててくれた養い親のバーディー・ピアースを悲しませたくないという強い思いからこの信じられない申し出にイエスを言わざるを得なくなるミスティでした。レオーネの妹バティスタは,親子ほども歳の離れた男性に惹かれ,遂には自動車事故で亡くなってしまったのです。その時同乗しており妹の命を奪った男性こそミスティの父親,高名な政治家オリヴァー・サージェントだったのです。しかしミスティは自分の父親が誰であるかは知りません。復讐に燃えるレオーネはミスティを復讐の手段として利用しようとしたのでした。婚約者らしく見せるために公共の場所では仲良く見せることを命じられたミスティ。しかしレオーネの手に触れられたりするだけで自分の体は自分の思いを裏切ってしまうのでした。そしてマスコミによって知らされたオリヴァーの娘ミスティという事実。ミスティたちの母が男性から捨てられたと思っていたため,実の父親を捜そうともしてこなかったミスティにとってはこれは衝撃的な事実でした。それよりも,レオーネがこのことを企んだことは隠しようもありません。それでも契約が残っているのでレオーネの元を逃げだすわけにはいかないのです。しかしレオーネは何かとミスティを気遣ってくれたり,逆に冷たくなったりとその本心がつかめないのですが,そんなレオーネを愛し始めたことにミスティは気付きます。そして子供ができない体だと医師に告げられていたのですが,その病はもうすでに回復していたのです。体の変化から医師の診断で大きな歓びを感じるミスティ。その事実をレオーネと共有できないことがなんとも皮肉なことでした。そして出会った瞬間からミスティを愛し始めていたレオーネの復讐心はすっかり無くなっていたのに,初めて女性と一生を共にしたいという思いに戸惑い自分がミスティから信頼されていないという思いからなかなか素直に愛しているを言いだせないレオーネ。ここからはすっかりロマンスっぽくなっていきます。
 シリーズ的には終盤レオーネとミスティの姉フレディと結婚したジャスパーが友人だったり,双子の妹の行方が分かったりとハッピーな展開が続き,次作への期待を高めています。


タグ:ロマンス
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シチリア大富豪の誤算 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1379
シチリア大富豪の誤算 The Sicilian's Stolen Son 2016」
リン・グレアム 藤村華奈美





 原題は「シチリア人の盗まれた息子」
 ヒロイン:ジェマイマ(ジェム)・バーバー(23歳)/幼児学校教師,双子の妹/姉ジュリー・マーシャルは病的なほど多情で冒険好き,金遣いが荒くギャンブル癖あり/薄青の目,金髪,豊かな胸と豊かな腰,輝かしく波打つ長い髪,ピンクの唇/
 ヒーロー:ルチアーノ・ヴィターレ(30歳代)/実業家,シチリアマフィアのボスの一人息子/193センチの背丈,プロのスポーツ選手並みの体と息を呑むばかりの容貌,ブロンズ色の肌,まっすぐな鼻,高い頬骨,濃い黄金色の瞳/
 顔も知らない父親と麻薬中毒の母親との間に産まれた双子。二人はそれぞれ別の家庭に養子に行き,全く性格の違った女性に育ってしまいます。10代後半に再会した二人ですが,イタリアの大富豪ルチアーノの代理母となったのは姉のジュリーでした。しかもジュリーは自分の犯罪歴を隠すため妹ジェマイマのパスポートを使い,身分を偽って代理母となったのです。それが混乱の元でした。ジュリーは産まれた息子ニッコロ(ニッキー)を育てる気持ちはさらさらなく,結局妹ジェマイマに子供を預けっぱなしにして自分は遊び歩いていたのです。実の母親が残した僅かな遺産も独り占めし,挙げ句の果てに事故で亡くなってしまいます。心優しいジェマイマの養父母はそんなニッキーをもジェマイマ同様に愛し,教師として働くジェマイマの協力者としてニッキーの養育にも当たっていました。そんな時,実の父親ルチアーノがニッキーを捜し当てたのです。パスポートの写真とは若干異なるジェマイマの容貌,ノーメイクの特に美人でも無いジェマイマの実物にもジュリーだと思い込んでいるルチアーノには双子の片割れだとは想いもしませんでした。そのため,弁護士の調査結果からジェマイマをジュリーだと思い込んで,その経歴から金目当てのこすっからい娘と軽蔑していたのです。ジェマイマの婚約者スティーブンは,婚約中でありながら美貌に優れたジュリーの誘惑に負け,ジェマイマを捨てたにもかかわらず,ジュリーが亡くなると復縁を狙ってきます。そんな男性の裏切りに耐えきれずにニッキーの養育のためには何でもしようと思っていました。しかしルチアーノがやって来て,自分がニッキーに対しては単なる叔母に過ぎずニッキーが連れ去られても自分には何の権利も無いことに気付き,とっさにルチアーノが自分をジュリーと勘違いしていることを利用してニッキーのナニーとして自分も連れ言って欲しいと頼み込みます。ジェマイマをすっかり母親だと思っているニッキーの姿を見て,ルチアーノも無理やりジェマイマとニッキーを引き離すことは得策ではないと思い,二人セットで,シチリア近郊の島の屋敷カステッロ・デル・ドローゴに連れて行くことにしたのでした。傲慢なルチアーノに対して初めは恐怖しか覚えなかったジェマイマでしたが,島での生活の中でかつてルチアーノが妻から裏切られ,一人娘とともに妻を失ったことを知り,代理出産という方法をとったルチアーノに心からの同情を寄せて行くのでした。そしてそれは心からの愛情に変わっていくのでした。
 弁護士の更なる調査の結果ジェマイマがジュリーとは別人であることが判明し,ルチアーノは激怒しますが,初めに思い込んでいたジュリーとは正反対で愛情に溢れ奢侈な生活をも望んでいないジェマイマの人柄を見抜いたルチアーノは,便宜的な結婚を提案します。そして心の中では次第にジェマイマに惹かれている自分に驚ろくとともに,かつて妻に裏切られて以来,もう女性を愛することはないという決心が次第に崩れていくのを止めることはできなくなっていくのでした。敵役として登場するのが,かつての妻の妹サンチアの存在です。なにかにつけて姉ジジとルチアーノの関係を利用して自分の書いたジジの伝記を世間に売り込み,あわよくばルチアーノを手に入れようと画策していたのです。ジュリーとジェマイマのように,ここにもまた姉妹を利用しようとする女性の存在,そんな二重のストーリーを作者は設定しています。名手リン・グレアムらしいストーリーテリングです。最後までそれほど劇的な事件があるわけではありませんが,ジェマイマとルチアーノの葛藤を中心に最後は5年後の家族の愛に溢れた生活を描き出し,心温まる物語に仕上がったイチオシ作品です。


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アラビアの花嫁 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1362
アラビアの花嫁 An Arabian Marriage
(華麗なる転身 1) 2002」
リン・グレアム 漆原 麗




HQB-758
16.10/¥670/208pp

R-1857
03.04/¥672/156p


 原題は「あるアラビアの結婚」
 ヒロイン:フレデリカ(フレディ)・サットン(24歳)/ナニー/豊かな金髪,青緑色の瞳,身長163センチのほっそりした体でクリーム色の魅惑的な胸と砂時計のような体型/
 ヒーロー:ジャスパー・アル・フセイン(30歳)/クアマール国皇太子/暗い金色の瞳,豊かで青みがかった黒い髪,見事な体格,ブロンズ色の肌,傲慢そうな鼻,罪作りなほど美しい口/
 アラブのキリスト教国クアマール王国。皇太子のアディルはどうしようもない放蕩者で,何度も結婚離婚を繰り返し更には婚外子まで・・・。一方その弟ジャスパーは自分には皇位継承は回ってこないものと思っていましたが真面目で堅物。ところがアディルが放蕩の末に急逝してしまい,ジャスパーは思いがけず皇位継承することになってしまいます。アディルの子供たちはみな女子でしたが,婚外子で男子がいることが判明します。ベネディクト,愛称ベンを産んだのは,アディルの不倫の相手エリカ・サットンという若い女性でした。国王が老年に差し掛かりいよいよジャスパーが皇位継承すれば皇太子としてそのアディルの婚外子ベンを探し出さなければなりません。国王ザフィル・アル・フセインはジャスパーにその役割を割り当てます。イギリスにいると思われるエリカとベンの行方が分かり,ジャスパーが自分で向かいます。さて,一方エリカは自分でベンを産んだものの,従姉妹のフレデリカ(フレディ)・サットンに子供を預けっぱなしで,スキー場の事故で命を落としてしまいます。ややこしいことにエリカ・サットンのセカンドネームはフレデリカ。姉妹の大伯母の名前を摂っていたのです。つまりジャスパーの得ていた情報には本来二人のフレデリカ・サットンがいたのが分からなかったため,ジャスパーはフレディをエリカと勘違いしてしまったという事情が絡んでくるのでした。放蕩者の兄にふさわしい身持ちの悪い女性とフレディを思い込んでいたジャスパーは,なにかと冷たい対応をとるのですが,どうも実際に会ってみるとフレディがちょっとしたことで顔を赤らめたりする仕草に純真さを感じ,なぜか惹かれるものを感じてしまいます。フレディもまた会ったとたん,ジャスパーのあまりにも男らしく頼りがいのある姿に強く自分が惹かれ,そして愛する甥のベンを取られてしまうのではという恐怖からなにかとジャスパーに反抗的な態度を取ってしまうのです。今後のことを話し合おうとしていた日の朝にベテランのナニーがフレディの元を訪れ一日慣れるためにベンを連れ出すことに同意しますが,夜にジャスパーがやってくるとすでにベンはクアマール国に向かう飛行機に乗っているというではありませんか。フレディ(エリカ)を説得してからベンを連れて行こうとしていたジャスパーですが,国王の命令で軍の人たちによってベンは連れ去られ,ジャスパーには軍を動かす権限がないためどうしようもなかったと申し訳ない様子で話すのでした。フレディはなんとしても不安でいるだろうベンに会わなければという思いで,突拍子もない提案を思いつくのです。自分が一人でクアマールにいっても宮殿に入れる保証はありません。なんとか宮殿に入り込んでベンに会うには,そうだ,独身だというジャスパーと結婚すれば良いのではないか。その提案を聞いたジャスパーは自分の権限の及ばないところで父国王が勝手にベンを連れて行ったことと,必死にベンのことを思いあり得ない提案をしてきたフレディがかわいそうになり,この申し出を受け入れるのでした。翌日機上の人となったジャスパーとフレディ。機内で眠ってしまったフレディに触れずにいられなくなるほど,魅力的な寝顔でした。そんな自分の衝動に戸惑うジャスパー。かつて手ひどく女性に裏切られた経験を持つジャスパー,フレディもまたかつて婚約を考えていた男性から手ひどく裏切られた経験を持ち,以来男性と深い関係を持つ機会がないまま過ごしてきていました。フレディはいつもエリカの美貌と自分が比較され,ちょっとふっくらして平凡な顔立ちだと父からも言われ続けてきたため,女性としての自信をすっかり持てずにいたのですが,君は綺麗だとジャスパーに言われ,すっかり当惑してしまっているのでした。本当にジャスパーはそう思っているのだろうか?ところが,宮殿についてみるとジャスパーの寝室のベッドに全裸の超美人の女性が「おかえりなさい」とジャスパーを待っているではありませんか。その女性サビラは,かつてアディルの妻だった女性。しかも若かったジャスパーはサビラに惹かれる気持ちをもっていたものの,サビラはさっさとアディルと結婚してしまい,それも愛によるものではなくサビラの皇太子妃への野心のためだったことを知り,女性不信が強まったという過去があったのです。すぐにサビラを追い出したジャスパーにフレディは今のは誰だったのかと尋ねますが,ジャスパーは言葉を濁します。その後,やっとベンと再会し,安心したフレディ。しかし今度はフレディが自分がエリカでないことをいつ打ち明けたら良いかということで悩み始めます。きっとこのことを知ったら,ジャスパーは腹を立てて自分を追い出してしまうだろうと考えるとなかなか素直に言い出せません。たまたま1週間ジャスパーはアメリカに出張に出かけてしまい,フレディはゆっくり考える時間ができました。ジャスパーは花を贈ってきたり帰国の時には大量のお土産を買ってくるなど,契約的な結婚であるはずなのにどういう訳だろうかと不審に思うフレディ。やがて二人の関係も互いに惹かれ合う気持ちを押し隠すことなく深まっていきますが,互いに本当の気持ちを打ち明けることは出来ずにいました。やっと父国王との出会いがあったのは,偶然でした。なかなか呼ばれないと考えていたある日フレディが庭に出てみると一人の老人が息を切らして苦しそうにしています。スタッフに水を持ってくるように指示して老人をベンチに座らせ,医師を呼ぶように言いつけたところにジャスパーが帰ってきててきぱきと指示を出したのでした。その老人こそ国王本人だったのです。この時のフレディの対応をいたく気に入った国王はさっそく私室にフレディとジャスパーを呼び,そしてベンとの対面を果たすのでした。思いもかけずに自分の望んでいたように宮殿生活にも慣れジャスパーも何かと自分に優しく,しかも夜は自分を求めてくれ,本物の夫婦に陽に過ごすようになったフレディは幸せの絶頂にいました。ところが,やはりフレディがエリカではないと告白したとき,予想どおりにジャスパーは怒りを表し,すぐに出ていけと言われます。翌日またジャスパーの出張中にいなくなれと言われてしまうのですが・・・。そうは言っても,これまでフレディがベンを大切にしてきたことと,自分が予想以上にフレディに惹かれていたことに気付いたジャスパーが早めに宮殿に戻ってみると,フレディは外出中。探しに出てみると宮殿敷地にある自分の別邸でなんとサビラがフレディに嘘八百を並べ立ててイギリスに帰るように説得しているところに出くわすのでした。そのころ自分の体調の変化に気付き始めていたフレディは自信をもってジャスパーを愛していることを表明しているのです。ジャスパーはサビラの嘘を暴き,即刻国から出て行けと,そうしなければこの件を父に報告するぞと脅します。このことがきっかけでフレディとジャスパーのわだかまりは解けるのでした。
 スーパーモデル並みの従姉妹に体型の上での劣等感を持っていたフレディのシンデレラストーリーです。アラブのキリスト教国?ちょっと違和感がありましたが,あまりアラブ的なところもなく,まあ無難にストーリーが展開していきます。強いて言えば宮殿のスタッフがやたらと王族にへりくだるところがちょっと出てくるぐらいです。自己主張のしっかりできるフレディの愛情深く真面目で愛らしい点が光る作品です。エピローグはかなり幸せな展開になっていて,爽快な読後感を味わえます。


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領主を愛した代償 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1359
領主を愛した代償 Leonetti's Housekeeper Bride 2016」
リン・グレアム 山本翔子





 原題は「レオネッティの家政婦の花嫁」
 ヒロイン:ポピー・アーノルド(23歳)/家政婦の娘,バーテンダーのアルバイト/燃えるような赤い髪,きらきら光る緑色の目,ふっくらした唇,身長170センチ,引き締まったふくらはぎ,なめらかな膝,長くほっそりした腿,ホイップクリームのような白い肌,細い肩に掛かる赤銅色のシルクのような巻き毛/
 ヒーロー:ガエタノ・レオネッティ(29歳)/投資銀行CEO/たくましい体,ウエーブのかかった黒い豊かな髪,黒い眉,濃い金色の目,身長190センチ
 家政婦ものですが,正式な家政婦ではなく,父の死後アルコール依存症になってしまった母に替わって日中は家政婦の仕事をこなし,夜はバーテンダーのアルバイトをするという頑張り屋の女性ポピーがヒロインです。バーテンダーとして務められるぐらいですのでそれなりの美貌を持ち,しかもそれを全く鼻にかけず,母の世話や失職中の弟ダミアンの面倒も見るというスーパーレディ。働くことをいとわず,しかも物語中盤で出てきますが怪我をして路上にうずくまっている犬の面倒も見ようとする心の根の優しい女性です。しかし単に優しいだけでなくしっかりと自分の考えを持ち,安易に人の言うことに妥協しない「芯の強さ」を持っています。ここでちょっと「芯の強い」人をネットで検索してみたら,その特徴として6つのポイントが挙げられていました。(1)自分の生き方にポリシーを持っている。(2)どこか余裕がある。(3)言葉に一貫性がある。(4)一匹狼なることを恐れない。(5)潔さがある。(6)愚痴や泣き言を言わない。というものでした。これはすべてポピーに当てはまるような気がします。アーノルド家の雇い主であるガエタノ・レオネッティは,投資銀行の経営者。しかしその実権は祖父のロドルフォが握っており,老齢(74歳)になってきたためガエタノにCEOを譲ろうとします。しかしその条件は・・・。ロドルフォは21歳で漁師の娘と結婚し,妻が亡くなるまで仲むつまじく生きてきました。二人の息子であるロッコは世に知られたプレイボーイで息子のガエタノが生まれてからも放蕩の限りを尽くし妻では亡い女性のベッドでなくなってしまいます。ガエタノの母もまたガエタノを引き取ろうとせず,彼は祖父母に育てられたのでした。自分に両親の血が流れていることで自分は人を愛せないのだと思い込んでいます。29歳になった現在,ガエタノが身を落ち着けて仕事だけでなく幸せになって欲しいというのがロドルフォの願いでした。これまでが得たのがつきあってきた女性はいわゆる表面だけ美人の中身のない女性ばかり。ロドルフォの条件は「生活の些細なことに喜びを見出す普通の娘」との結婚でした。「結婚して身を固めろ,家庭を大事にする女性に子を産ませて父親になれ,そうすれば世界はガエタノの思うがままになる」というのが祖父の言葉でした。ガエタノが領地の屋敷「ウッドフィールド・ホール」に突然戻ってきたのは先日行われたパーティでガエタノが帰った後客たちが少々羽目を外しすぎて,その記事が写真入りで新聞に載った事件が起こったからでした。「情報源は家政婦だったのか?」「記事の中に名前が出ている。あまり賢い女じゃないな。」という弁護士の言葉に愕然としたガエタノが屋敷に着いてみるとそこにいたのは家政婦の娘ポピーでした。ガエタノはポピーを責めまくります。そしてその説明を聞こうともしませんでした。アルコール依存症のポピーの母ジャスミンは酒を買うお金を得るためならば何でもするような状態だったのです。記事のネタを売ったのは母,そして母に頼まれて写真を撮ったのは弟でした。ガエタノはポピーに敷地内にある庭師の家(ポピーの父は庭師でした)から即刻出ていくように言ったのです。16歳の頃からポピーはガエタノと親しい間柄になることを夢見ていましたが,「僕は使用人には関心がないんだ」というガエタノの言葉に傷ついていました。当時のポピーはガエタノの言葉によると「ちびでデブの赤毛で全然僕の好みじゃない」というような体型でした。それを言われてからはポピーはガエタノを避けるようにできるだけ屋敷から離れていたのです。それが今ではすっきりと身長も伸び,さらに誰にも負けないぐらいの綺麗な長い脚をしてガエタノの前に現れたのです。「まん丸だった顔は贅肉が取れて魅惑的なハート型になり,頬骨と細い鼻が強調されている。ふっくらした唇はピンク色でどんな男も惹かれそうだ。」と感じたガエタノ。「出ていけ」と罵られたポピーですがそんなことではポピーは負けません。「私の目的がなんなのか話すチャンスさえくれなかったくせに。あなたってほんとうにへりくつをこねるのが好きね!」と言い返されたガエタノは,年下の女性からそんな非難を浴びせられたことに愕然とします。ガエタノは「それなりの退職金を・・・」と譲歩すると「あなたの汚れたお金を恵んでもらう気はないわ」と言下に否定され,さらに驚くのでした。自分のお金に興味を持たない女性は初めてでした。「母と弟は私の家族よ。父が亡くなって母と弟は悲しみや辛さをなかなか乗り越えられない。だからって二人への愛情が薄れると思う?それどころかもっと愛しくなる。」と反論するポピーに,ガエタノはある企みを考え出したのでした。「不釣り合いな婚約者をでっち上げることで今の苦境から逃れられるとしたら・・・」と,ポピーを婚約者に仕立て,祖父の元へ連れて行き,祖父の怒りがポピーに向けられたら結婚という呪縛から逃れられるのではないか,とガエタノは考えたのでした。翌朝,ガエタノは無理やりポピーをヘリコプターに乗せ,祖父の元へ連れて行きます。祖父の家の近所の別荘を持つガエタノ。朝食を食べながらガエタノはポピーに便宜的婚約についての提案をします。母の治療費と弟の就職先を餌にちらつかせながらポピーを説得するガエタノ。「祖父はいつも僕に庶民の娘を選べと言うが,僕が知っている中でその条件に当てはまるのは君だけなんだ。」と。「迷う余地はなかった。母を立ち直らせるためなら,どんなことでもやってみる価値はある。」とポピーは承諾します。
 ところが,ガエタノの思惑とは全く違う方向に物事は進んでいきます。祖父ロレンツォはすっかりポピーが気に入ってしまいます。ガエタノの予想に反して祖父とポピーはすっかり馴染んでしまったのです。しかも祖母のものだったという指輪すらポピーに与えてしまうのでした。「もう君はうちの嫁も同然だから」といいながら・・・。そして祖父の75歳の誕生日パーティに二人で出席することになります。ポピーは祖父の誕生日祝いにかつてガエタノの祖母セラフィーナから教えてもらったケーキを作り,ロレンツォにプレゼントするのでした。どんな高価なものでもない,何気ないポピーの気遣いにロレンツォは大喜びします。「ポピーは美しいだけでなく,優しく,思慮深い,しかも料理までできる。」と手放しでポピーを褒めるロレンツォ。ガエタノは「自分で自分のかけた罠にはまった」とガエタノは感絵混んでしまうのでした。ガエタノの家に住みながらも,ポピーは夜にウエイトレスとして働くと言ってガエタノを立腹させますが,ロレンツォは自立しようとするポピーに賛成します。このことにもガエタノは驚くのですが,婚約が破棄されてしまえば自分が自立することは大事なことだと言われ,偽の婚約だという建前からガエタノは承諾せざるを得なくなるのでした。ロレンツォの言いつけで1カ月半ほどで結婚式を挙げざるを得なくなります。ガエタノのフラットにかつての恋人セリーナが現れ,ポピーにあなたはいずれガエタノに捨てられると言い放っていきます。
 100人を越える招待客をまねいての結婚式がレオネッティ家の教会で開かれます。ところが初夜を終えたのちにポピーは突然倒れてしまいます。結婚式の準備とウエイトレスのアルバイト両方を兼ねていたポピーは疲労と栄養失調に襲われていたのでした。そして病院で薬を飲んだことにより,ピルが効かなくなってしまったのです。数週間してから妊娠に気付いたポピー。それを話したときのガエタノの冷たい言葉と驚きの表情。自分の愛がガエタノに通じなかったことにポピーは愕然とします。「僕は感情というものにうまく対処できない。怒りや情熱や野心は得意分野だが,深く柔らかな感情についてはだめなんだ。」とガエタノは結局自分がポピーにふさわしい夫にはなりきれないと認めるのですが・・・。
 いわゆるシンデレラ・ストーリーではありますが,なんといってもポピーという自立心に溢れ,明るくたくましく生きるヒロインの姿が読者を惹きつけその行動が感動を呼ぶイチオシの作品です。


タグ:ロマンス
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ひと夏のシンデレラ [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1313
ひと夏のシンデレラ The Frenchman's Love-Child
(異国の王子さま 1 ) 2003」
リン・グレアム 藤村華奈美




HQB-746
16.08/¥670/208p

R-1979
04.07/¥672/156p


 原題は「フランス人の愛息子」
 ヒロイン:タビサ(タビー)・バーンサイド(21歳)/細密画家/キャラメルブロンドの髪,緑色の瞳,古風な砂時計の形にも似た体つき,えくぼ,鼻は大きめ,口も少々大きい,背が低く優雅とは言えない/
 ヒーロー:クリスチャン・ラロッシュ(29歳)/航空会社社長/黒髪,ブロンズ色の顔,黒い瞳/
 すでにハーレクイン・プレゼンツで再販されてい「異国の王子さま」シリーズの第1巻です。第2巻の「ナポリから来た恋人」ではピッパが,第3巻「誰も知らない結婚(SHALOCKMEMO83)」でヒラリーがヒロインを務めますが,本作のヒロインタビーの友人としても登場します。本作をきっかけにシリーズ全体を読み直してみたい気持ちもありますが・・・。さて,「異国の」の第1巻はフランス人王子さまクリスチャンです。王子さまといっても本物の王族ではなく物語の王子さまという意味で,いわゆる大富豪のことです。ヒロインがもともと裕福な家の出自ですからシンデレラストーリーというわけでもありませんが,結婚するなら自分だけを愛してくれる王子様・・・という女の子らしい夢をさしているシリーズ名です。さて,いくつかの一族が交流していた昔,タビーの父が妻を亡くした悲しみで泥酔した状態で車を飛ばし,タビーの友人の親たちの乗った車に衝突してしまい自身を含め,何人かが命を失ったあの事故。以来,当時高校生だったタビーは家を失い,名誉も失い,友人も失ってしまったタビーですが,今回クリスチャンの住むフランスのラロッシュ家の大伯母ソランジュが亡くなり,タビーに遺産としてラロッシュ家の領地デュベルネの隅にあるコテージを残してくれたのです。領地を大切にし,こだわりを持つフランス人からしてみれば,かつての事故の敵バーンサイド家娘が自分たちの領地の片隅にでも財産をもつことは,忌まわしい出来事を思い出させるだけでなく名誉にもかかわることだったのです。なんとかこのコテージをタビーから買い取るために使わされたのがクリスチャンでした。「私の夫を殺した男の娘にご褒美を与えるなんて!」「夫の死から四年近く経った今も,マティルド・ラロッシュはパリのアパートメントで喪に服している」というクリスチャンの母の思いを復讐という形でクリスチャンはタビーに迫ろうとしていたのでした。4年前,クリスチャンに憧れ,年齢を偽って身を投げ出したタビーが,たまたま知り合ったバイク乗りの男性にさよならのキスをされているところをクリスチャンに見られてしまい,去られてしまった当時の事情をタビーは知らず,クリスチャンに捨てられ,父の事故の責任を問う裁判でも無視されたことから,妊娠,出産という事情を打ち明けられないまま叔母のアリソン・デイビスに引き取られ,息子ジェイクの子育てをしながら美大に通い,画家としてのキャリアをスタートさせたばかりのところでした。当時クリスチャンの大伯母ソランジュ・ルーセルは「あなたとクリスチャンの間に家族が立ちふさがってしまったのね。あってはならないことなのに」とラロッシュ家で唯一タビーに同情を寄せてくれていたのですが,それが今回の遺産という形になったようです。しかしそれは表面的なことで,ソランジュ大伯母にはさらに深い深慮遠謀があったことに二人が気付くのは物語の終盤になります。叔母のアリソンと恋人が話をしているのを偶然聞いてしまったタビーは自分とジェイクが叔母の元に留まるのを恋人が邪魔に思っていることを知ったタビーはこの遺産を受け取る決心をし,住むための準備をするために単身フランスに渡るのでした。そこにクリスチャンがやって来ます。憎い敵の娘と思いながら,再びタビーに会ってその魅力に抗えなくなってしまうクリスチャン。自分を憎んでいることを知りながらクリスチャンに触れられると逆らえなくなってしまうタビー。二人の間の引力は4年経った今でも強烈に存在していたのです。そしてジェイクの存在をクリスチャンに知られることに・・・。一目見て我が子だと確信したクリスチャンは知らせてくれなかったタビーを強烈に責めまくります。しかし審理裁判の時自分の話を聞いてくれるように頼んだのにもかかわらず自分を無視したのは誰だと反論するタビー。そしてあっという間にジェイクの歓心を買ってしまったクリスチャンにも腹を立てつつ,その魅力に我を忘れてしまうタビーの悲しい運命に読者の関心は引きつけられます。果たして4年前の真実はどのように明かされるのでしょうか。
 裕福な銀行家の娘ベロニクとクリスチャンは幼なじみであり,事業に成功したクリスチャンは仕事上の付き合いに便利だとベロニクとの結婚を考え,婚約していましたが,タビーとの再会を機にこの婚約を解消します。表面的にはこの婚約解消を承諾したベロニクですが,クリスチャンを諦める気は元々なかったのです。ラロッシュ家の敵の娘であるタビーにいずれクリスチャンは飽きるだろうと,4年前から実はなにかと裏でタビーにクリスチャンとの別れを画策していたのです。このベロニクの腹黒さに気付いていたソランジュ大伯母でした。そして婚約していたことをタビーに知らせていなかったクリスチャンは,ベロニクがこのことをタビーに告げて腹いせをしたことにも気付いていなかったのです。しかし逆にこのベロニクの画策が真実をクリスチャンに気付かせるきっかけになるとは,さすがの腹黒女も自分で首を絞める結果になってしまうのです。読者にしてみればこのことがカタルシスの解消に大いに役立ちます。まさに策士策におぼれるという次第。終盤に互いの誤解が解け,ソランジュの計画は大成功に終わります。天性の楽天的で繊細なタビーの性格が,本作の魅力を最も盛り上げてくれる秀作です。


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情熱の罠 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1293
情熱の罠 Prisoner of Passion 1996」
リン・グレアム 有光美穂子




HQSP-117
16.07/¥540/216p

R-1341
97.09/¥672/156p


 原題は「情熱の虜」
 ヒロイン:ベラ・ジェニングス(21歳)/画家/金褐色の髪,長い脚,高いIQだが文字に弱い/
 ヒーロー:リコ・ダ・シルヴァ(32歳)/銀行家/身長190センチ,広い肩,細い腰,引き締まった脚,金色の光彩を放つ黒い目/
 紙本では何度もHQB版を見ていましたが,いまいち表紙が気に入らずに読まずにいましたが,HQSPがKINDLEで出たのを見て購入しました。HQSP版はなんといっても価格が良いですね。それに表紙もちょっと良くなっています。さて,一言で言ってこんなに面白い作品だったのかと脱帽です。とにかく登場人物たちがとても生き生きと描かれており,それぞれがとても個性豊かな,1冊にこんなにも面白い人物をこんなにたくさん登場させてもったいないと思えるほどです。ヒロインのベラ,ヒーローのリコは言うに及ばず,ベラと一緒に住む画家の老人ヘクター,執事のハヴァシャム,ベラの友人リズ,絵に詳しい警視,などなど。そしてベラのボーイフレンドのグリフだけが没個性の真面目弁護士で,逆に周囲とのあまりの違いに,凡庸であるだけに個性が光ってくるという不思議な効果をもたらしています。出来事としては,最初にベラが21歳の誕生日の深夜リコの高級車に車をぶつけてしまうところ,そしてリコとベラが誘拐犯に誘拐され,コンテナに閉じ込められてしまうこと,さらにヘクターの入院,そしてベラの妊娠と次から次に出来事が起こり,読者を飽きさせません。その時その時にベラの取る行動や言葉にリコはきりきり舞いさせられますが,それが逆にベラへの愛を深めていくところがなんとも心地よいのです。そして互いに相手の本当の気持ちに気付かないまま物語終盤まで引っ張るところが作者のしたたかさとベテランの味を感じさせます。既読30冊を数えるグレアム作品ですが,本作はその中でもピカイチ間違いなしの作品です。


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貞淑な愛人 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1255
貞淑な愛人 The Greek Commands His Mistress
(噂のギリシア大富豪 2) 2015」
リン・グレアム 茅野久枝





 原題は「ギリシア人は彼の愛人に命じる」
 ヒロイン:デライラ(ライラ)・ムーア(23歳)/父の経営する会社の会社員/小柄160センチ程度,古紙に届くほど長いつややかな黒い巻き毛,シミ一つないクリーム色の肌,青い目,小ぶりの胸,形の良い膝と踵/
 ヒーロー:バスティエン・ジコス(?歳)/投資家/長身190センチ弱,高くせり出した頬骨,傲慢なほど高い鼻,がっしりとした顎のライン,スーパーモデル並みの体型/
 前作「授かりし受難(SHALOCKMEMO1239)のヒーロー,レオ・ジコスの腹違いの弟バスティエン・ジコスと,デライラ(ライラ)・ムーアのロマンスです。腹違いとはいえ,レオとバスティエンの風貌はかなり似ているように思います,彫りの深い端整な顔立ち,そして父親の不倫により女性を信じていないのも共通しています。バスティエンの方がいわゆる愛人の子ですのでその思いは強いようです。一方ライラの方も,父ロバートが不倫を繰り返しそのことに頭を痛めていた家族でしたが,現在の継母ヴィッキーと結婚したことをきっかけにすっかり仕事と家庭に集中する良き父親になっており,ライラも愛に基づいた結婚をしたいと思っていました。さて,二人は二年前に出会います。バスティエンに惹かれ,ライラは数日付き合いますが,父の会社を買い取ろうとしていたバスティエンを拒絶し,二人の関係は深まらずに終わってしまいます。しかしその時の強烈な印象をたがいに忘れようと必死になった2年間でもありました。「ムーア・コンポーネンツ」が大きな投資計画の契約に失敗し,資金繰りに困っているという情報を得たバスティエンは,この機会を逃すまいと「ムーア・コンポーネンツ」を買い取ります。そして会社に現れたバスティエンはライラを呼びつけ,3つの選択肢を与えるのでした。第1の選択肢を選べば会社はばらばらにされて売却され,バスティエンの一人勝ちになります。2番目の選択肢でも自分が損をするだけで,バスティエンだけがおいしい思いをします。結局3番目の選択肢,つまり自分がバスティエンの愛人になる代わりに父は会社の経営を引き続き行い,会社に資金を投入して事業を安定させる,という選択肢しか残されなかったのです。会社を利用して2年前自分が拒絶した腹いせをしようとするバスティエンの悪巧みに怒り心頭のライラ。考える時間は翌朝10時まで・・・。調べてみると合っていたなかった2年間もバスティエンは数々のブロンドのモデルたちと浮き名を流しており,なぜ自分のような小柄で貧弱な体型の女性にバスティエンがこだわるのか理解できないライラです。しかし,ライラは父や親友にバスティエンの個人秘書として働くことになったと言い訳をして,結局第3の選択肢にOKを出さざるを得ないのでした。普通自分に声を掛けられればどんな女性も喜んで自分に従い,また金銭的な要求をしてくるはずだと思っているバスティエンにとって,ライラは常に予想を外れた返答と態度をしてくる謎の女性でもありました。そのことに新鮮さを覚えて離れがたい思いをするのかと思っているバスティエンですが,次第に聞きにくいこともズバリ聞いてきたり,自分の心の中に踏み込んでこようとする,そしてそれを断っても予想外のことを言ってくるライラの行動に次第に飲み込まれていき,それを不快に思わない自分を発見するバスティエンでした。ライラもまたいつも自分の要求に従わせようとするバスティエンの傲慢さにある意味惹かれていってしまう自分に戸惑いを覚えつつ,結局は自分が愛人の立場であることを時々思い起こさせるバスティエンに愛憎両方の気持ちをもっていることで自分を納得させるのでした。1週間の休暇を取り,バスティエンの買い取ったフランスのサント・モニク城で過ごす二人。愛人としての務めを果たしても別々の部屋で休む奇妙な生活が始まって数日,夜中にうなされる声で目覚めたライラはバスティエンが夢でうなされていることに気付き揺り起こしに行きます。そして驚くべきことに目を覚ましたバスティエンから聞いた幼少の頃の話に同情を禁じ得ず,遂に身を捧げるのでした。妊娠の可能性に気付いたバスティエンは今度は結婚すると言い出すのです。かつて愛した女性が自分の子供を中絶したことを忘れられないバスティエンはライラに子供を産んでもらいたいと結婚を言いだしたのでした。この,かつて愛した女性の話は前作でもレオとバスティエンが仲違いするきっかけになったエピソードとして登場しています。あれよあれよと言うままに出張で城を留守にするバスティエンの言うがままに結婚式になってしまったライラ。どちらの両親も親族も出席しない本当に形だけの結婚式でしたが,帰宅後ライラはバスティエンの妻になったことを実感するのでした。そして数日後,バスティエンの父アナトーレ・ジコスが倒れて病院に運ばれたという知らせが入ります。二人で向かった病院でライラは奇妙なジコス一家の対応に驚きます。愛人の子と面と向かって非難する継母のクレタ,それを止めようともしない義兄のレオス。しかしレオスの妻グレイス(前作のヒロイン)とはすぐに仲良くなりました。そこにあのバスティエンのかつての恋人マリナ・クーロスが表れ,あたかも親族のように振る舞っているのにライラは立腹します。過去にマリナが兄弟の仲を引き裂いたことを指摘したライラ,そしてちょうどそこに来合わせたバスティエンはライラを責めるのでした。ライラは愛人から妻になり,なんとかバスティエンを守ろうとしたのでした。この気持ちがバスティエンに伝わるでしょうか・・・。連作のエピローグということで,二組の夫婦とそれぞれの家族が登場しての大団円となりますが,大御所リン・グレアムの作品にふさわしい充実のロマンス作品です。


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授かりし受難 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1239
授かりし受難 The Greek Demands His Heir
(噂のギリシア大富豪 1) 2015」
リン・グレアム 槇 由子





 原題は「ギリシア人は彼の相続人を要求する」
 舞台:トルコのマルマリス・リゾート
 ヒロイン:グレイス・ドノヴァン(24歳)/医学部学生/燃えるような赤毛,小柄で豊満,豊穣の女神を思わせる豊かな胸に細くくびれた女性らしいウエスト,肌にはそばかす,淡いグリーンの目,作り物でない自然な美しさ/ウェールズ出身
 ヒーロー:レオス(レオ)・ジコス(30歳)/実業家/彫りの深い端正な顔,東洋的な黒髪と黄金色の肌,長身,古典的なカーブを描く力強い鼻,表情豊かな大きな口,黄褐色に近い金色の目/
 父に捨てられ,母を亡くしたグレイスは伯父伯母に引き取られますが,そこには同年代の従姉妹ジェナがいます。引き取られはしたものの,我が儘放題に育ち美しい容貌のジェナは容赦なくグレイスを罵倒し,こき使います。伯母もそれを支持するので,肩身が狭い思いをずっと続けてきました。伯父は多少同情的ではありますが,基本的にグレイスに味方することはありません。それでも里子に出されるよりは血のつながりのある家に住まわせてもらった恩義を感じ,懸命に勉強して医学部の最終学年を迎えるところまで来ていました。努力の成果があり学年トップの成績を収めており,卒業すれば家から離れられます。そんな時,ジェナにトルコ旅行に一緒に行って欲しいと言われます。旅費は伯母が出すとは言っていますが,アルバイトをして学費を貯めようとしていたのに1週間もロンドンを離れることは,大きな痛手です。しかしこれまでの経験からすると,ジェナや伯母に逆らうと家においてもらえなくなる可能性もあり,あと1年で医学部を卒業できるのにその望みを無にすることなどできません。しぶしぶ承知したグレイスですが,この旅行が彼女の運命を大きく変えることになるとは思ってもみませんでした。旅行の初日からジェナは男性と知り合い,マルマリス・リゾートのコンドミニアムの1つしかない寝室をその男性との付き合いで占領してしまいます。仕方なく1日目の夜は共用部分のロビーで過ごしたグレイス,しかし翌日も同様の状況が続きます。守衛からはロビーで夜を過ごすことは規則違反だと言われてしまいます。3日目にジェナに勧められるままに「クラブ・フィーバー」に踊りに行こうと誘われますが,そこで一瞬目にとまった男性,それがレオ・ジコスでした。レオもまたグレイスに目をとめ,二人は遠距離から見つめ合います。そして,VIP席に招かれたグレイス。そこで,レオがそのクラブのオーナーであると言われます。20代半ばまで男性との親密な付き合いをする間もなかったグレイスですが,レオからの誘いを断るよりも,さっさと自分の殻を破ってしまいたいと思う男性に初めて出会ったのでした。さっそく,誘いに乗ってレオの所有する「レディ・ヘレナ号」というクルーザーについて行ったグレイス。そして目眩く一夜を過ごしたのでした。どうせ一夜の仮の情事と割り切ったグレイスですが,その時の行為が,妊娠という結果を招きます。レオもまた父親の不倫と異母弟の存在に悩まされた過去を持ち,幼なじみであった女性と婚約し互いに束縛し合わない存在でいようと話し合っていたのです。そしてその女性には愛する男性がいて,しかも妻帯者だという告白を受け,二人の関係を考え直す時期にも来ていました。グレイスとの関係も一夜では済まなくなり,それでもグレイスはレオとの永続的な関係を望んでいないという言葉に驚きとグレイスの意志の強さ,そしてこれまで付き合った女性とは違う魅力に強く惹かれていくのでした。そしてグレイスの妊娠。自分の子どもを持てるということに父親と同じように子どもを捨てるなどと言う選択肢はレオにはありませんでした。しかしグレイスはレオのプロポーズを断るのです。
 結局,グレイスはレオとの関係を清算することが出来ずに,1年間の休学の後に大学に戻ることを条件にレオとの結婚に踏み切らざるを得なくなるのでした。ところが,ある日,グレイスの元にレオの元婚約者が訪ねてきます。そしてグレイスが妊娠していることも,お金を出すからレオと別れるようにという要求とともにレオとの関係を復活させたいと仄めかすのでした。もう一緒にはいられない,しかし泣き寝入りはゴメンだと,グレイスは荷物をまとめてレオの元を去ろうとするのですが,そこにレオが帰宅して言い合いになるのでした。されに,出血して急ぎ病院に行ったグレイスは流産したのだと早合点してしまいます。子どもの養育を理由に結婚したグレイスにしてみれば,子どもを失ってしまえば,レオとの結婚を続けていく理由がなくなります。手厳しい言葉でレオにその言葉をぶつけたグレイス。そしてその言葉に傷ついたレオも仕事にかこつけて1週間外国に出張に出てしまうのでした。ところが翌日に検査の結果が出て,流産はしていないことを知らされたグレイス。喜びのあまりレオに電話しますが,電話は通じなくなっていました。レオは腹立ち紛れに携帯のメモリーを投げ捨ててしまっていたのでした。グレイスはこの事態にどう対処するのでしょうか。「恩寵」という意味を持つグレイスという名前。レオにとって本当の意味で「グレイス」になるのでしょうか・・・。
 邦訳版の表紙には赤毛の女性が写っていますが,どうも文中のグレイスとはイメージがそぐわない感じがします。その点,MB版のカバーのイメージの女性はグレイスの若々しさと小柄で豊かな体型が良く表れており,しかも卵形の若々しい顔かたちが,レオのいう「女神のような」という形容にふさわしいように思います。このモデルさんはよく登場しますが,まさにグレイスのイメージそっくりの美少女といって良いモデルさんですね。


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