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情事の身代金 [アビー・グリーン]

SHALOCKMEMO1018
情事の身代金 The Legend of De Marco
 2012」
アビー・グリーン 高浜えり





原題を「デ・マルコの神話」とちょっと古めかしい感じにしていますが,「情事の身代金」という邦題はやや大げさな感じがします。ロッコ・デ・マルコと異母姉妹のセリーナ・デ・ピエロ,シエーナ・デ・ピエロの3人を巡る3部作の幕開けです。このシリーズはロッコの父親がしでかした過去の忌まわしい虐待とその心の傷を背負いながら,すさまじく,悲しいながらも悔しさをバネに努力して愛を獲得していく若者達の物語です。
娼婦を母に持ち,父親からは婚外子として認められず,その過去をバネにして32歳という若さで富豪となったロッコ。イタリアのスラム街で生き延びなければならなかった少年時代に,一度父を訪ねますが,その父につばを吐きかけられ,腹違いの姉妹たちがそれを見ていながらも父とともに去って行ったあの日の出来事を忘れずに,15年前にロンドンに渡り,事業を成功させます。上流階級の優雅でブロンドの美女オノーラ・ウィンスロップとの婚約,そして便宜的な結婚が,上流階級で自分が生き抜いていくための一つの手段と考えています。ある慈善パーティでふと,目にとまった赤毛の女性,なにか気になりますが身体に合わないドレスを着た普通の女性が何故か気になるロッコ。その女性グレイシー・オブライエン(24歳)こそ,ロッコの運命の人となるのでした。ロッコの会社で100万ポンド(約2億円)もの大金を会社から横領した疑いのあるスティーヴン・マレーが行方をくらまし,数日後,会社に女性が訪ねてきて,スティーブンはどこかと尋ねます。すっかりスティーブンの恋人で,様子を探りに来たと思ったロッコは,この女性を軟禁同様に社ビルの最上階のペントハウスに連れて行き,スティーブンから連絡があるまで監視するように手配するのでした。そこまでしたのは,グレイシーと名告るこの女性が,あのパーティの時に気になり,理由も告げずに立ち去ってしまった女性だったからです。それがスティーブンの関係者であるとすると,あの日も自分をロッコと知りながら近づいたに違いないと思ったからです。双子の弟スティーブンの行方と無事が心配なグレイシーは,仕方なく情報を得るためにロッコの命令同然の仕打ちを受け入れることにするのでした。この時からロッコとグレイシーの奇妙な同居生活が始まります。グレイシーとスティーブンもまた両親の不仲のせいで幼少時代から互いに助け合って生きてきたのです。気持ちの優しく頭のいいスティーブンを,グレイシーはいつも友達のいじめから守り,また里子に出された家で男性から乱暴されようとしたグレイシーをスティーブンが助けたりと,二人っきりの家族である二卵性の双子。大会社であるデ・マルコ・インターナショナルに勤め先を見つけたスティーブンが,憧れのロッコ・デ・マルコを裏切るようなまねをするはずがないと思っていたグレイシーは,ロッコの非常識な提案も受け入れざるを得なかったのでした。慎重165センチで赤毛でボーイッシュな髪,そしてそばかすがちらつくアイルランド系の父に似たグレイシーは取り立てて美人なわけでもありません。しかし,成功してから自分に逆らう人など,ましてそんな女性など一人もいなかったロッコにとって,いつも率直に物を尋ね,様々なことに興味を示すグレイシーはロッコにとって新たな魅力にあふれた女性でした。そして彼女を手元に置くことでいつかはスティーブンと連絡を取るはずだと踏んでいたのです。タイへの出張に同行させたグレイシーが,熱帯雨林のまとわりつくような湿気にもかかわらず風景を愛で,様々な建築物に感激する姿を見るのはロッコにとっては新鮮な驚きでした。そしてニューヨーク5番街のペントハウスでの生活も,「愚かな上流気取りの女たち」とは正反対のグレイシーの魅力にますますはまっていくロッコでした。問われるままにロッコの過去の生い立ちと心の傷に触れてしまったグレイシーもまたロッコを愛するようになります。しかし,スティーブンにメールを送ったグレイシーの行動を報告されたロッコは,疑いの気持ちを再燃させ,痛烈な言葉をグレイシーに浴びせるのでした。
いきいきとしたグレイシーの愛情深い性格と行動がロッコの気持ちを少しずつ溶かしていき,過去に立ち向かわせる勇気を与えていく様子が克明に描かれ,復讐譚から成長譚へと発展していくロマンス小説の王道を行く作品です。エピローグでは4年後の二人の様子が微笑ましく描かれます。


タグ:ロマンス
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