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不機嫌な後見人 [アン・ハンプソン]

SHALOCKMEMO1088
不機嫌な後見人 The Plantation Boss 1972」
アン・ハンプソン 柿沼摩耶





原題はずばり「農園主」。1972年の作品。両親の死によって離ればなれに引き取られた3姉妹,ケリー,アヴリル,ミシェル。ケリーは23歳で,伯母からの遺産を元に,姉妹たちとの再開を計画します。弁護士に調査を依頼し,末の妹は幸い近くで引き取られていることが分かり,ミシェルを訪ねると,養父母の実子たちの面倒を見る使用人扱いをされていました。あまりにみじめなその生活を見るにつけ,裕福な家庭に引き取られた次妹のアヴリルがカリブ海のバルバドス島のサトウキビ農園主で養父の兄ウェイン・ハーヴェイを後見人として幸せな生活を送っていることを知るや遺産の残りの全額をつぎ込んでバルバドス島にアヴリルを訪ねていくのでした。しかし,遺産を狙う詐欺師扱いされ,屋敷を追い出されてしまいます。帰りの旅費すらないケリーは,アヴリルを探し出してくれた探偵のミックの世話で島のホテルのフロント係として就職し,お金をミシェルの養母に送ることにします。やがて,ケリーは島特有の病気にかかり,ウェインの屋敷に留まることになりますが,ウェインには秘書のロウィナという恋人がいることを知ります。プライベートビーチで過ごした二人だけの時間で,ケリーはウェインの瞳の中に自分への愛情が宿っていることに気付き,自分もウェインを愛していることを確信するのでした。ところが,アヴリルもロウィナも出かけている日,ウェインがケリーを誘惑しようとし,結婚までは待って欲しいと言うケリーの言葉に,ウェインは「結婚?」と疑問の声を出します。「そんなことを考えていたのか?」とウェイン。ウェインは世間では独身主義者として有名だったのです。初めから自分の身体だけを求めていたのかと愕然としたケリーは近くにあった2万ポンドもする宋代の鉢をウェインに投げつけ,すぐにイギリスに帰ると宣言するのでした。養父にイギリスへの帰還費用を頼む電報を打ち,イギリスに戻れたのは3日後でした。その間,かつてのルームメイトが新婚旅行でバルバドス等にやってきて,全てを涙ながらに打ち明けたケリー。やがてイギリスでミシェルの家を訪ねるとミシェルの養父が入院しており,余命僅かだという情報が本当だったことが分かりますが,ミシェルはそれを知らされていなかったのです。弟妹たちの世話で学校を休まざるを得なかったミシェルと数時間話したケリーはなんとかしてミシェルの窮状を救いたいと思い,怒りにまかせてバルバドス島を出てきたことを少し後悔し始めるのでした。70年代に生きるケリーのこの恋愛観が現代とかなり乖離していること,それが作風と相俟って,エキゾチズムを感じさせます。1週間後にケリーの就職先が見つかり,勤務先に弁護士から電話があったとき,就職したばかりなのに上司が状況を理解して早退させてくれるなど,まだ倫理観がしっかりしていた時代の感覚が懐かしく思われるのも,本作ならではでしょう。やがて弁護士事務所でウェインと再開したケリーがハッピーエンドに終わるところはお約束どおりですが,3姉妹がその後どんなふうに感激の再会をし,幸せを勝ち取っていったのかは示されないままなのがちょっと残念です。220ページものだったら,きっとエピローグで語られていたでしょうね。


タグ:ロマンス
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