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大富豪と望まれぬ娘 [アリスン・ロバーツ]

SHALOCKMEMO1322
大富豪と望まれぬ娘 The Wedding Planner and the CEO 2015」
アリスン・ロバーツ 藤倉詩音





 原題は「ウエディングプランナーとCEO」
 ヒロイン:ペネロープ・コリンズ(30歳)/イベント企画/ケータリング会社経営,ケータリング業者/金髪,茶色の瞳,健康的に日焼けした肌,身長160センチ/
 ヒーロー:ラルフ(レイフ)・エドワーズ(36歳)/国際的巨大企業「オールライト・オン・ザ・ナイト」のCEO,花火師/長身,長めの黒髪,焦げ茶の中に金色の斑点のある瞳/
 ロンドンとサウサンプトンの間にあるニューフォレスト郊外の小さな町の18世紀の領主館,ロクスベリーホール。その豪奢な建物を所有することになったのは,国際的巨大企業「オールライト・オン・ザ・ナイト」のCEO,レイフでした。世界的有名人クラリッサ・ビンガムとサッカーのスター選手ブレーク・サマーズの結婚式を企画しているペネロープ・コリンズとジャックはこのホールを借りて式を挙げる許可を得ていたのですが,そこにレイフの会社に花火を依頼するためにペネロープがやって来たのです。冒頭レイフは色あせたジーンズとカウボーイブーツという出で立ちでペネロープの前に現れます。今や世界中の重要イベントで花火を成功させているレイフの会社に飛び入りでこんな依頼をすることは無理を承知でした。もう数ヶ月も先の予定まで一杯になっているからです。しかし超有名人の名前を出すことで,社長の気を引けるかもしれないとそれぐらいしか説得材料はなかったのですが・・・。詳しい説明を聞いて諦めかけ,別れの挨拶の握手をしたとたん,レイフは気まぐれを興し,若かりし頃すべて花火ショーを自分でやっていた頃を思い出し,ロクスベリーホールや自分が所属していたバンドがかかわっていることに興味を覚え,自分で引き受けることにしたのでした。彼女の魅力に惹かれたこともさることながらかつて会社を大きくするためにしゃにむに働いていた頃と今のペネロープの状態とを重ね合わせてしまったからでした。翌日から打ち合わせを兼ねてロクスベリーホールに赴いたレイフ。そこで花火ショーのバックグラウンドミュージックを打ち合わせするうちに,ペネロープが庭園の迷路で誰にも気付かれないように踊りながら曲を聴いているのを見かけます。この踊りが妙にレイフの心に響いたのでした。残されたipodの曲を聴いたレイフは,この曲しかないとイメージが豊かになるのを感じます。ケータリングだけでなく,いろんな才能をもつペネロープにすっかり興味を持ったレイフは,ペネロープを伴って立入禁止になっている3階の窓から花火の打ち上げ場所になる湖を見渡します。そのロマンチックな光景にペネロープはイベントの成功を確信するのでした。そして結婚式は大成功に終わるのですが・・・。
 ペネロープは一体どんな人なのか?レイフは自身が親に捨てられて養護施設で育ち,荒れた青春時代を過ごし,その後企業を立ち上げて成功させてきたたたき上げの人物。しかしペネロープにも秘密がありそうです。実はロクスベリー音楽祭が30年前に始まったとき,あるスキャンダラスな出来事がありました。ペネロープの実母シャーロットはコリンズ家の一人娘でしたが,地元にやって来た流れ者のミュージシャンと愛し合い,その悪い仲間たちに出入りするようになり,最後は妊娠してしまいます。シャーロットの両親はこれを許さず,シャーロットとミュージシャンの関係を打ち切らせます。産まれたての赤ん坊が音楽祭の後片付けの途中で茂みから発見され,「ベビ-X」として話題になったのでした。シャーロットは薬物依存で死亡。しかし警察関係者だったシャーロットの父がその事実を表沙汰にせず,二つの出来事の関連を断ち切ったのでした。その後その赤ん坊がどこに行ったのか,誰の子供なのかは分からずじまいでしたが,当時の人々には残る出来事でした。その赤ん坊こそペネロープであり,最近になって若い雑誌記者がこの事件の真相を探り始めたのです。レイフとペネロープは互いの過去を素直に打ち明けられる関係になっていたので,偶然自分を取材に来た雑誌記者がこの事件も担当していると聞いて,なんとか表に出すのを止めようとしますが,もうすでに調べがかなりのところまで特定されていることが分かっただけでした。幼い頃から「よほど気をつけないと,あなたのお母さんのようになってしまうわよ」と祖母から言われ続けてきたペネロープは男性を信用しないという気持ちを持ち続けてきたのです。しかし養護施設で育ったレイフは信用できると考えていたペネロープは,30年前の事件が今更マスコミに取り上げられたのはレイフが情報を漏らしたせいだと思わざるを得ませんでした。取材を申し込まれた祖父はショックで倒れてしまいます。「ペニーはあまりに繊細で傷つきやすい。っそして結婚はすべてを完璧にする神聖な約束だと信じているところが実に恐ろしい」と思っているレイフ。偶然ペネロープの実の父親を音楽祭で発見してしまったレイフ。二人の関係はもつれていきます。
 過去の出来事や親たちの過ちのせいで傷つきながらも自分の才覚や努力で成功を勝ち取ってきたレイフとペネロープ。二人の気持ちが一つになって欲しいと読者に願わせるロマンス小説の王道を行く作品です。ヒーロー,ヒロインの両方に運命の負荷を負わせて,しかも暗くならずに成功している作品は珍しいのですが,本作ではペネロープの運命に負けない強い精神力と気取らない性格が作品全体の雰囲気を明るくしています。イチオシの作品。


タグ:イマージュ
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