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チャペルから消えた花嫁 [キャリン・モンク]

SHALOCKMEMO518
チャペルから消えた花嫁 The Wedding Escape 2008」
キャリン・モンク 戸坂藤子





 「悲しみに聖女の祈りを The Prisoner 2001」に続く,キャリン・モンクの「孤児」シリーズ第2弾です。
前作では,シリーズ開幕編にふさわしく,子爵の娘ジュヌヴィエーヴとレドモンド侯爵ヘイドン・ケント,それに一風変わったジュヌヴィエーヴの家族の物語が描かれていました。本作では,ジュヌヴィエーヴとヘイドンが出合うきっかけとなった,16歳の少年ジャックがヒーローとなっています。
前作から22年後,つまり,ジャックはすでに38歳。海運業を興し,数隻の船を持って,海外との貿易で名を成しすまでになっていますが,ここのところ自分の所有する船が不審な火災が起こったり,船員たちが事故にあったりという事件が続き,会社の経営が危うくなっています。しかしその原因は不明で,何者かがそれらを画策しているのではと探偵を雇ったりして調べていますが原因はわかりません。さて,ジャックが知り合いの結婚式に出席するためロンドンに来ているとき,チャペルの上の方から,花嫁が気を伝って降りてくるのに出くわします。そして自分を逃がしてほしいと頼まれます。一家の執事兼御者も勤めるオリヴァーとともにジャックはこの娘を馬車に乗せ,ロンドンから逃れたのでした。この花嫁はアメリアといい,裕福なアメリカ人の娘で,今まさに公爵との結婚が嫌で,結婚式の直前で周囲の隙を見て逃亡を図ったのでした。事情を知ったジャックはなんとかアメリアに結婚式に戻るように説得しようとしますが,貴族との意に沿わない結婚や,アメリカ風な率直なものいいに魅せられ,手を貸すことにします。結婚式の直前に花嫁がいなくなったというセンセーションな出来事に,社交界も新聞界も大騒ぎをしていきます。アメリアには結婚前に心に決めた相手がいたので,一旦逃れたジャックのもとからさらに逃げ出し,相手の男性パーシーを訪ねるのですが,パーシーも彼女を愛していたのではなく,アメリアの財産を当てにしていたことを知り,両親の元に戻っていくのでした。ジャックは,アメリアに惹かれているのですが,かつてストリート・チルドレンであった自分の出自や,会社の経営が危なくなっていることから,裕福に育ったアメリアの相手にふさわしくないと思い,アメリアから離れようとします。二人の関係はどうなるのでしょうか。
ジャックにはもうひとつ,自分の出自に関する秘密がありました。しかし,その出自にこだわらず,自分の足で未来を切り開こうとしていきます。このあたりに,貴族社会から,ブルジョアの社会に変貌していくイギリスの歴史が見え隠れしていくのも,作者キャリン・モンクの独壇場です。
大団円では,前作でジャックが引き取られたケント家の兄弟を始め,一同が,前作と同じように見事なチームワークを組んで,ジャックとアメリアの関係をさらに推し進めようとがんばります。この痛快なドタバタ場面は前作同様,信頼に裏打ちされた暖かな家族の紐帯が感じられ,このシリーズの魅力になっています。
本作は,前作から22年後が描かれていますが,原作のシリーズでは,間にもう1作が出版されており,ジャックの妹分シャーロットがヒロインを務めています。この作品の翻訳も楽しみです。


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