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あなたに愛の歌声を [ソフトバンク文庫]

SHALOCKMEMO545
あなたに愛の歌声を Pleasuring the Prince 2005」
パトリシア・グラッソ Patricia Grasso patriciagrasso.com 羽田依里子





 「どんなに仕事が忙しくとも,ちょっとの時間を見つけて読もうとする。しかも,細切れの時間でもストーリーにきちんと着いていける。さらには,登場人物がすっかり頭の中に入っている。」
 こんな三拍子そろった作品には,なかなか出会うことができません。パトリシア・グロッソのカザノフ・シリーズはまさしくこんなシリーズです。これまで読んだ作品の中では,リンダ・ハワードの作品群以外には出会ったことがない,といっていいぐらいです。
 さて,本作のヒーローは,カザノフ兄弟の末っ子,ステファン王子です。前作で,オペラ劇場の歌姫にステファンが惹かれる場面が登場し,しかもそのヒロインがファンシー・フランボウであることが,きちんと伏線が張られています。しかし,本作を読んで驚くのは,ファンシーは7人姉妹の長女であり,その7人には双子がふた組あり,さらにはそれぞれが謎の能力をもっているという設定です。長女のファンシーはもちろんオペラの主役を務めるほどの美声の持ち主,他にも,動物と話ができる,人の心が読めてしまう,などなど人知を超えた能力をもった娘たち,さらに末っ子のレイヴンに至ってはテレキネシスの使い手であるというすごい姉妹です。彼女たちの母親はフランスの貴族の出でしたが,イギリスの貴族の愛人とされてしまい,夫をしたいつつも捨てられて亡くなるという悲しい生涯でした。長女のファンシーはそのことをよく覚えており,絶対に父親を,さらには貴族全体を受け入れまいとする気持ちから,歌手としての自立の道を歩もうとしています。さらには,前作のジンジャーと同じように数字に強い妹,動物と話のできる妹などが力を合わせて競馬で増やした資金で事業に投資し,父親の事業を苦しめようとするなど,徹底した仕事ぶりを見せてくれ,憎しみによるドロドロしさではなく,さわやかさを感じさせます。
 本作のもう一つの筋は「薔薇連続殺人事件」です。死体の瞼と唇を縫い合わせて,全身を薔薇の花弁で覆う,という猟奇的な連続殺人事件が続いています。シリーズにずっと顔を出すアマデウス・ブラックが事件を負っていますが,犯人を最後に言い当てるのは意外な人物です。そして,7人姉妹の本当の父親は果たしてだれか。それが明かされたとき,シリーズの人間関係がますます複雑に絡み合っていきます。次回作のヒーローとヒロインもすでに本作に登場しており,とても楽しみです。今月には次回作も発売されるようです。




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