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王子様と家庭教師 [ニコル・バーナム]

SHALOCKMEMO698
王子様と家庭教師 The Prince's Tutor 2003」
ニコル・バーナム 卯月 薫





ニコル・バーナムのサンリミニ国シリーズ。本作のヒーローは王家の末弟ステファノ・ディタローラ。ヒロインは,教育コンサルタントのアマンダ・ハットン。時は,皇太子アンソニーとジェニファーの結婚式当日。カジノにいるステファノを探しにアマンダが活躍する場面から始まります。アマンダはジェニファーの友人として式に参列するためサンリミニを訪れていたのでした。式の後の舞踏会で何かにつけて自分を追いかけまわしているレディ・シバーニから逃れるために庭園に出たステファノがアマンダに近づき,薔薇園を散歩する場面(35p)が印象的です。少し長い引用になりますが,「それから三十分近く,ふたりは無言のまま歩いた。アマンダはときどき立ち止まって薔薇の香りをかぎ,その種類や名前を書いた札を読んだ。そしてステファノから少し距離を置き,手を後ろに組んだまた歩き出した。ずっとしゃべり続けるほかの女性たちとは違い,彼女はただ静かに歩くだけだった。ステファノの心は穏やかさに満たされた。」ステファノは,このアマンダの態度や立居ふるまいに,亡くなった母親の姿を重ねて,心を和ませます。実はこの母の死が,王子の深い心の傷として残っていたのでした。そのため,公式の場でのスピーチや王族としての責任ある仕事から逃れたいという気持ちが強かったのです。エドワード国王はそんな王子に成長してもらうために,アマンダを家庭教師としてステファノのチューターを任せようと考えたのでした。当時次の仕事が決まっていなかったアマンダは,経済的に自立するためにも,お金が必要でした。しかし,これまで貴族の子供たちの家庭教師しか経験のなかったアマンダは,大人の生徒,また王族であるステファノの家庭教師という仕事に躊躇します。しかし,国王が次々にこの仕事の成功報酬をつり上げだし,また,王子の心の中に母の死という出来事が大きな傷になっていることをみぬいたアマンダもついにはこの仕事を承諾せざるを得なくなります。大人の自分に家庭教師? これにはさすがにステファノも反発しますが,薔薇園でのアマンダに対して魅力も感じていたため,相談に応じながら,王子主催のダックレースを企画・運営し,大成功するのでした。その後,政治家たちを招いた晩餐会を取り仕切ることが急に決まり,大いに二の足を踏む王子でしたが,これもアマンダの励ましと準備を綿密に行ったため,大成功するのでした。そして,国王にその報告に赴こうとしたところで,王室の一大事が起こるのです。さらに,自らの母と姉が癌で亡くなった経験を持つアマンダは,自分にも病の遺伝子があることを恐れ,王子からの告白から逃れるため,サンリミニをあとにしようと密かに空港に向かうのでした。さあ二人のロマンスはどうなるのか。最後にとても洒落た展開があり,エピローグへと続きます。王子の情けなさにちょっとあきれてしまうところもありますが,とても読後感のさわやかな作品です。


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