SSブログ

シンデレラの純潔 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO768
シンデレラの純潔 The Dimitrakos Proposition 2013」
リン・グレアム 霜月 桂





 ハーレクイン・ロマンス3000号の記念号となった本書。作者リン・グレアムのメッセージ付きです。ストーリーテラーの名手リン・グレアム作と翻訳の名手,霜月桂さんの名コンビによる出版で,納得できる作品でした。
 「ギリシア大富豪からの突然の求婚。その企みを、彼女はまだ知らなかった。」と作品案内にあるように,親友の出産した産後間もない幼児を育てるために,後見人に指名されていたギリシア人富豪の会社に押しかけたタビー。育児のために事業も手放し,半地下の貸部屋を知人から借り受けて生活せざるを得なくなったタビーは,福祉局からの訪問に対応するため仕方なしにアケロン(アッシュ)・ディミトラコスの元を訪れたのでした。このときアッシュは父の遺言「1年以内に結婚しないと会社の持ち株の半分は後妻とその家族に渡す」ということへの対応を迫られ,不機嫌な状態でした。そこに,目立たない服装のみすぼらしい女性がしつこく「後見人」と騒いでいるのですから,余計に腹が立ったのです。二人の困難を解決する方法として弁護士が示したのが二人の偽装結婚でした。初めは互いにぶつかり合っていた二人ですが,互いが利用し合っているということで我慢をせざるを得なかった二人ですが,心の中では二人は互いに惹かれ合っていたのです。やせっぽちで女性的魅力に欠けていると思い込んでいたタビーは,愛する親友の娘アンバーと離れることができずにアッシュの男性としての魅力に惹かれながらも体目当てに近づこうとするアッシュを手厳しく拒絶するのです。これまで女性に拒絶されたことのないアッシュにはこれが逆に新鮮に映ります。二人の結婚式のためのウエディングドレスを送ろうとしても,それすら断ろうとするタビー。根気強く説得するアッシュ。そんなやりとりが読者をしっかり物語に引き込みます。特別許可証によって早々に結婚式を挙げる二人ですが,式に参列するためにやってきたアッシュの父の後妻一家の存在がタビーに不安を与えます。義理の妹に当たるカスマが,本来は自分とアッシュが結婚するはずだったと騒いだのです。父の遺言はアッシュとカスマの結婚を前提にしていたことが後に語られるのですが,このカスマの存在があとあとの事件の伏線となっています。新婚旅行をかねて出かけたギリシアの島の別荘。その鏡に書かれた脅迫文は,幸いタビーの眼に触れることはないのですが,タビーが階段を踏みはずそうとなったことをきっかけに,サルディニア島に移るのですが,そこでも鏡への悪戯書き。それをタビーは目にしてしまいます。そんなミステリーめいたプロットと,二人の関係が次第に,そして急激に偽装結婚から本当の結婚へと変化していく部分は見事に描かれています。互いの不幸だった幼少時代と親から見捨てられた身の上,それにもかかわらず明るく前向きに生きようとするタビーの姿についにアッシュは自分の心の奥の闇を乗り越え,タビーを本当の意味で愛するようになります。この部分は読者の感動を高めます。
終末ではハッピーエンドになる4年後の姿が描かれますが,愛情深いタビーが4年後にもアッシュにメロメロであることは簡単に予想がつき,安心できる結末です。ロマン小説らしい要素がたっぷりの本書。おすすめの1作です。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。