ラベンダーの残り香 [モーリーン・チャイルド]
SHALOCKMEMO993
「ラベンダーの残り香 Falling for King's Fortune
(キング家の花嫁 3) 2008」
モーリーン・チャイルド 八坂よしみ
原題は「キングの運に囚われて」とでも訳すのでしょうか。三部作の締めくくりは三男ジャクソンの「Falling Love」の物語です。今回の出会いの場所はホテルのバー。初めから捜していたのはヒロインのカシオペア(ケーシー)の方でした。
2009年3月から3ヶ月連続で刊行された三部作ですが,次の三部作は2010年7月から10月の連続三ヶ月です。第一シリーズのバークフィールドに続き,今度は舞台も少し変わっていくのでしょうね。第4作はキングビーチ社のジェシー・キングとベラ・クルーズのロマンスです。
さて,本作ですが,ヒーローとヒロインの出会い方に工夫を凝らしています。ケーシーが試験管ベビーで出産したミアの父親が病院側の手違いでジャクソン・キングであることがケーシーに分かってしまいます。そのことを告げる必要があると判断したケーシーはホテルのバーで偶然を装ってジャクソンを待ち構えています。ふと目が合ったケーシーに惹かれるように声を掛けたジャクソン。サファイアブルーの瞳,ふっくらした唇,長身とすらりとした脚に魅力を感じたジャクソン。いつもの一夜限りの女性と思って誘ってみると,意外とすんなりと燃え上がったしまった二人。そして翌朝ラベンダーの香りだけを残していなくなってしまったケーシーを,ジャクソンはアシスタントに命じて探し始めるのでした。一方婚約者候補のマリアン・コーニスとはいわゆる便宜的結婚を考えています。ジェット機会社を経営するジャクソンはコーニス家のもつ私設飛行場との提携が事業拡大に大きなメリットがあると思っていたからでした。娘を手元に置いて安全に育てたいと思うジャクソンはまさにキング家の男子らしく考え,行動する人だということをケーシーは分からなかったようです。しかし,言いなりにはならずにしっかりと自己主張するケーシーに読者としては魅力を感じます。そしてキング家の先輩嫁であるジーナやジュリーともうまくやっていけるケーシーは,牧場やワイナリーのPRやウェブの更新に力を発揮し、仕事も含めてキング家に入り込んでいくのです。さらに思いがけずもう一人の子供を授かるという幸運に恵まれたケーシー。それに対して愛を信じられずなかなか肝腎な一言を言えないジャクソンに苛つかせられながらも,物語に入り込んでしまうモーリーン・チャイルドのうまさにすっかりのせられてしまう1作でした。
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