SSブログ

愛の棘 [ダニー・コリンズ]

SHALOCKMEMO1008
愛の棘 Proof of Their Sin
"One Night with Consequences 1") 2013」
ダニー・コリンズ 深山 咲





"One Night with Consequences"(結果を伴う一夜とでもなるでしょうか)シリーズの第1巻の翻訳です。このシリーズではすでにスザンナ・カーの「愛人島(SHALOCKMEMO788)」,キム・ローレンスの「億万長者の残酷な嘘(SHALOCKMEMO809)」と読了していますが,ヒロインたちの波瀾万丈な生き方が示される結構エグいシリーズとなっています。本作も,ヒロイン,ローレンの禁断の恋が鮮烈に描かれる作品となっています。そして期待の新人ダニー・コリンズの翻訳第2冊目になります。
ローレン・ブラッドリーは,夫を亡くし夫の両親とも余りうまくいっていません。そして最悪なことに夫以外の人の子供を妊娠しているのです。夫の親友パオロが子供の父親でした。パオロは悲嘆に暮れるローレンが夫をなくしたせいでそうなっているのだと思い込んでいます。そして,亡くなった後も夫を愛し続けているんだねと・・・。それはパオロのみならず周囲の人々共通の思いでした。しかし本当は,これからどうしていったらいいか,子供のことをパオロに打ち明けるべきか,そしてこれからのパオロとの関係を気に病んでいたのです。パオロはローレンに慰めの言葉だけではなく本気でこれから面倒を見ていこうとしています。そして夫亡き後自分が愛せるのはお腹の中の子供だけになってしまうという気持ちで,子供を産む決意をしていたのでした。ところが,実は,ローレンは夫を愛してはいなかったのです。また夫もうわべは別にして,ローレンを愛してはいなかったのです。夫には愛人が複数いました。そして夫は親友のパオロと競うためだけにローレンと結婚したのでした。パオロには婚約者のイザベラがいましたが,互いに愛し愛される関係ではなく,謂わば裕福な家庭同士の便宜的な関係でした。そしてパオロもまた,親友のライアン・ブラッドリーにローレンを奪われてしまったという苦い思い出と,今でも密かにローレンを思っているという罪の意識をもっていたのです。
これまで親に言われたとおり,結婚してからは夫の言うとおりに生きてきたローレンが初めて自分というものを出すことが出来た相手は,パオロだけでした。そしてパオロを愛していることに気づいています。二人が想い合いながら結婚に至らなかったのは,状況がなせることではありましたし,二人とも若い,初めての恋だったからでした。そしてパオロのプロポーズは子供が出来たからというだけのものだとローレンは思い込んでいます。昔からの互いの気持ちを打ち明けられないまま,二人は別れてしまいます。「彼女への愛には欲望と更に強い思いが染み込んでいたからだ。血のつながりよりも深い男女の絆。」家族の期待どおりにイザベラとの結婚を選ぶべきか,自分の気持ちに従いローレンとの生活に向かうべきか悩むパオロの独白です。いつもロマンス小説ではこの互いの気持ちのすれ違いが利用されています。そして最後には愛が勝つのですが,気持ちに折り合いを付けて勇気を出すことが難しいというのも人間らしいというか,それだけに愛は貴重で,可能性と魔力を秘めているのでしょう。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。