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純潔の未亡人 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1356
純潔の未亡人 Castelli's Virgin Widow 2016」
ケイトリン・クルーズ 小泉まや





 原題は「カステリ家の無垢な未亡人」
 ヒロイン:キャスリン(ケイト)・カステリ(旧姓マーチャント)(25歳)/未亡人,ジャンニ・カステリの六番目の妻,通称「聖女ケイト」/ダークブラウンの髪,緑色,翡翠色,グレーと変化する目,ふっくらした唇,印象的な前髪,イギリス人特有の白い肌/
 ヒーロー:ルカ・カステリ(?歳)/「カステリ・ワイン」CEO/長身,黒髪,鋼のような肌/
 「幻を愛した大富豪(SHALOCKMEMO1295)」の姉妹編です。前作はシリーズの1作でしたが,本作はシリーズ化はされていません。というわけで姉妹編としておきます。カステリ家の当主ジャンニ・カステリは恋多き男性でした。本妻を亡くした後,次々に結婚と離婚を繰り返し,死の間際になって最後の妻となったケイトに看取られて別世界へとたびだったのです。前作のヒロイン,リリーとヒーロー,ラファエルは異母兄妹でした。本作では,戸籍上は継母と息子という関係のケイトとルカが恋に落ちるのです。人によってはちょっと違和感を感じさせる複雑な関係の男女ですが,いわゆるタブー的な関係を扱うのではなく,ロマンス作品らしく純愛を題材としていますので,たまたまそういう関係にあったというふうに緩く考えたほうがいいと思います。あまりそちらを期待して読み始めると逆に違和感を感じるかも知れません。それでも一般的,社会的には許されない関係,という面がぬぐいきれず,前作でも本作でもその関係に主人公たちが悩む姿は描かれます。諸悪の根源はジャンニ・カステリ!というワケですが,亡くなってしまうことにより,その呪縛から少しは気が楽になって読み進められます。父ジャンニの逝去により兄ラファエルが会長を務めることになり,弟ルカはCOOからCEOへ,つまり実質的経営者に格上げになる予定でしたが,兄弟の継母となるケイトは自分たちより歳もずっと下で,しかも遺言では金銭的な援助か,会社の経営への参加かどちらを選ぶかはケイト次第という遺言を残したジャンニ。それで兄弟は悩むのです。結婚したばかりで経営の第1線から退くラファエルは弟ルカにこの交渉を任せると言いだしたのでした。常にマスコミに注目されているカステリ家としては,かつてのジャンニの妻たちの処遇,そして異母兄弟姉妹たちの処遇すべてを本家であるラファエルとルカに任されていくことになるのですが,最も難しいのがこの六番目で最後の妻となったケイトの処遇です。親子以上に歳の離れたしかも病気の夫に嫁いだケイトのことをマスコミは「聖女ケイト」ともてはやしています。あまりにひどい処遇をすれば,会社のイメージそのものが悪くなってしまう。まずはたっぷり金を掴ませてカステリ家から追い出したいというのがルカの本音でした。しかし,夫を見送った後,まだ25歳のケイトにしてみればこれからの人生の方が長いのですから,結婚前にやりたかった勉強を継続しながら,自立した生活をしていきたいという気持ちを持っていたのです。そのためカステリ社で働きたいというのがケイトの希望でした。これまでの妻と同じようにどうせ金目当てに父に近づいたのだろうと考えていたラファエルとルカにとって,ケイトの希望は意外性に富んだものでした。一生楽に生活できるだけの遺産を持ちながらなぜ苦労して仕事をしたいなどと言い出すのか?まぁ1週間もすれば仕事に飽きて結局は金を受け取るだろうと高をくくっていたルカたちですが,以外にケイトの仕事への懸命な取組ぶりにルカは驚きます。2年前,初めてケイトに紹介されたルカは父の妻候補でなければ自分が手に入れたいと思うほどの美貌でした。しかも淑女といっていいほど自分を表に出すことがなく嫋やかで,父への細やかな配慮に満ちている女性。それだけに自分の手に入れられなかったという思いをその後も抱き続け,どうしてもケイトの前では冷静になることができない自分にサラにいら立ちがつのるのです。会社の役員たちにもケイトへの態度を冷たくするよう会議で話すなど,なるべく早くケイトへの呪縛から逃れたいと思ってしまうルカでした。ここでMB版の表紙を見てみましょう。黒髪をクレオパトラ風に整え,大きな目と小ぶりながら鼻筋の通った高い鼻,そして真っ赤な口紅を塗ったセクシーな唇。どちらかと言えば派手すぎる化粧と感じられてしまい,どうも「聖女ケイト」というイメージではありませんが,優れた美貌の持ち主であり,作中のケイトの描かれ方と合致してはいるのですが・・・。一方邦訳版の表紙モデルさんの方が紫のドレスでちょっと高貴な感じ,そしてブラウンの髪をしっかり後ろにまとめ,嫋やかな感じがこの方がよく伝わってきます。ケイト自身,母から「あなたの美貌」が将来災いをもたらすので男性には気をつけろと言い聞かせられて育ったことから,25歳の現在まで男性との交際も決して深くならず,もちろん夫であったジャンニもすでに病身であったことからそういった関係にはならず無垢なままで過ごしてきたのでした。次々と男を誑かしてきただろうと想像していたケイトとルカが初めて関係を持ったとき,この事実を知り,ルカはケイトに対して思っていた前提がすべて崩れていくことに驚愕することになります。と同時に初めて会ったときからケイトに惹かれていたことを認めざるを得なくなるのです。
 さて,会社の中ではルカは敢えてケイトを自分のアシスタントの地位に就け,四六時中見張っていようと,そしてどこかでぼろを出したらたちまち会社から追い出してやろうと待ち構えていたのですが,ケイトはかなり我慢強く,会社のスタッフからの無視やいじめにも耐え,期待以上の働きをしていきます。カリフォルニアのナパバレーへの出張にも同行し,ケイトのおかげで商談もスムーズに進んだことで,ルカは次第にケイトへの思いを抑えることができなくなってしまうのでした。なぞ,父と結婚したのか,その問いを機会あるごとに何度も問いかけるルカですが,なかなかケイトは本音を言ってくれません。ケイトはケイトでシングルマザーとして,自分の養育のためにすべてを投げ打ってくれた母が現在関節リウマチにかかり療養所暮らしをしていることとの関係において,自分の存在意義を認めてもらいたい,成功して恩返しをしたいという気持ちをずっと持ち続けていたのでした。容貌ではなく知性と行動力で,つまり仕事で自分を認めてもらいたかったのです。その思いを知っていたジャンニは遺言で会社での仕事を選ぶ余地を残してくれていたのでした。そのことをケイトの仕事ぶりで目の当たりにしたルカはケイトへの欲望だけではなく尊敬できる女性として,つまりケイトの人格に深く打たれていきます。自立した,向上心のある女性を常にヒロインにしてきた作者らしいケイトの人物造型だと思います。そういう視点で本作を読んでいくとヒロインの成長譚だということがわかります。読後感の良い,オススメの作品です。


タグ:ロマンス
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