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純潔の未亡人 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1356
純潔の未亡人 Castelli's Virgin Widow 2016」
ケイトリン・クルーズ 小泉まや





 原題は「カステリ家の無垢な未亡人」
 ヒロイン:キャスリン(ケイト)・カステリ(旧姓マーチャント)(25歳)/未亡人,ジャンニ・カステリの六番目の妻,通称「聖女ケイト」/ダークブラウンの髪,緑色,翡翠色,グレーと変化する目,ふっくらした唇,印象的な前髪,イギリス人特有の白い肌/
 ヒーロー:ルカ・カステリ(?歳)/「カステリ・ワイン」CEO/長身,黒髪,鋼のような肌/
 「幻を愛した大富豪(SHALOCKMEMO1295)」の姉妹編です。前作はシリーズの1作でしたが,本作はシリーズ化はされていません。というわけで姉妹編としておきます。カステリ家の当主ジャンニ・カステリは恋多き男性でした。本妻を亡くした後,次々に結婚と離婚を繰り返し,死の間際になって最後の妻となったケイトに看取られて別世界へとたびだったのです。前作のヒロイン,リリーとヒーロー,ラファエルは異母兄妹でした。本作では,戸籍上は継母と息子という関係のケイトとルカが恋に落ちるのです。人によってはちょっと違和感を感じさせる複雑な関係の男女ですが,いわゆるタブー的な関係を扱うのではなく,ロマンス作品らしく純愛を題材としていますので,たまたまそういう関係にあったというふうに緩く考えたほうがいいと思います。あまりそちらを期待して読み始めると逆に違和感を感じるかも知れません。それでも一般的,社会的には許されない関係,という面がぬぐいきれず,前作でも本作でもその関係に主人公たちが悩む姿は描かれます。諸悪の根源はジャンニ・カステリ!というワケですが,亡くなってしまうことにより,その呪縛から少しは気が楽になって読み進められます。父ジャンニの逝去により兄ラファエルが会長を務めることになり,弟ルカはCOOからCEOへ,つまり実質的経営者に格上げになる予定でしたが,兄弟の継母となるケイトは自分たちより歳もずっと下で,しかも遺言では金銭的な援助か,会社の経営への参加かどちらを選ぶかはケイト次第という遺言を残したジャンニ。それで兄弟は悩むのです。結婚したばかりで経営の第1線から退くラファエルは弟ルカにこの交渉を任せると言いだしたのでした。常にマスコミに注目されているカステリ家としては,かつてのジャンニの妻たちの処遇,そして異母兄弟姉妹たちの処遇すべてを本家であるラファエルとルカに任されていくことになるのですが,最も難しいのがこの六番目で最後の妻となったケイトの処遇です。親子以上に歳の離れたしかも病気の夫に嫁いだケイトのことをマスコミは「聖女ケイト」ともてはやしています。あまりにひどい処遇をすれば,会社のイメージそのものが悪くなってしまう。まずはたっぷり金を掴ませてカステリ家から追い出したいというのがルカの本音でした。しかし,夫を見送った後,まだ25歳のケイトにしてみればこれからの人生の方が長いのですから,結婚前にやりたかった勉強を継続しながら,自立した生活をしていきたいという気持ちを持っていたのです。そのためカステリ社で働きたいというのがケイトの希望でした。これまでの妻と同じようにどうせ金目当てに父に近づいたのだろうと考えていたラファエルとルカにとって,ケイトの希望は意外性に富んだものでした。一生楽に生活できるだけの遺産を持ちながらなぜ苦労して仕事をしたいなどと言い出すのか?まぁ1週間もすれば仕事に飽きて結局は金を受け取るだろうと高をくくっていたルカたちですが,以外にケイトの仕事への懸命な取組ぶりにルカは驚きます。2年前,初めてケイトに紹介されたルカは父の妻候補でなければ自分が手に入れたいと思うほどの美貌でした。しかも淑女といっていいほど自分を表に出すことがなく嫋やかで,父への細やかな配慮に満ちている女性。それだけに自分の手に入れられなかったという思いをその後も抱き続け,どうしてもケイトの前では冷静になることができない自分にサラにいら立ちがつのるのです。会社の役員たちにもケイトへの態度を冷たくするよう会議で話すなど,なるべく早くケイトへの呪縛から逃れたいと思ってしまうルカでした。ここでMB版の表紙を見てみましょう。黒髪をクレオパトラ風に整え,大きな目と小ぶりながら鼻筋の通った高い鼻,そして真っ赤な口紅を塗ったセクシーな唇。どちらかと言えば派手すぎる化粧と感じられてしまい,どうも「聖女ケイト」というイメージではありませんが,優れた美貌の持ち主であり,作中のケイトの描かれ方と合致してはいるのですが・・・。一方邦訳版の表紙モデルさんの方が紫のドレスでちょっと高貴な感じ,そしてブラウンの髪をしっかり後ろにまとめ,嫋やかな感じがこの方がよく伝わってきます。ケイト自身,母から「あなたの美貌」が将来災いをもたらすので男性には気をつけろと言い聞かせられて育ったことから,25歳の現在まで男性との交際も決して深くならず,もちろん夫であったジャンニもすでに病身であったことからそういった関係にはならず無垢なままで過ごしてきたのでした。次々と男を誑かしてきただろうと想像していたケイトとルカが初めて関係を持ったとき,この事実を知り,ルカはケイトに対して思っていた前提がすべて崩れていくことに驚愕することになります。と同時に初めて会ったときからケイトに惹かれていたことを認めざるを得なくなるのです。
 さて,会社の中ではルカは敢えてケイトを自分のアシスタントの地位に就け,四六時中見張っていようと,そしてどこかでぼろを出したらたちまち会社から追い出してやろうと待ち構えていたのですが,ケイトはかなり我慢強く,会社のスタッフからの無視やいじめにも耐え,期待以上の働きをしていきます。カリフォルニアのナパバレーへの出張にも同行し,ケイトのおかげで商談もスムーズに進んだことで,ルカは次第にケイトへの思いを抑えることができなくなってしまうのでした。なぞ,父と結婚したのか,その問いを機会あるごとに何度も問いかけるルカですが,なかなかケイトは本音を言ってくれません。ケイトはケイトでシングルマザーとして,自分の養育のためにすべてを投げ打ってくれた母が現在関節リウマチにかかり療養所暮らしをしていることとの関係において,自分の存在意義を認めてもらいたい,成功して恩返しをしたいという気持ちをずっと持ち続けていたのでした。容貌ではなく知性と行動力で,つまり仕事で自分を認めてもらいたかったのです。その思いを知っていたジャンニは遺言で会社での仕事を選ぶ余地を残してくれていたのでした。そのことをケイトの仕事ぶりで目の当たりにしたルカはケイトへの欲望だけではなく尊敬できる女性として,つまりケイトの人格に深く打たれていきます。自立した,向上心のある女性を常にヒロインにしてきた作者らしいケイトの人物造型だと思います。そういう視点で本作を読んでいくとヒロインの成長譚だということがわかります。読後感の良い,オススメの作品です。


タグ:ロマンス
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脅されたプリンセス [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1296
脅されたプリンセス The Reluctant Queen
(サマー・シズラー 2012 真夏の恋の物語) 2011」
ケイトリン・クルーズ 霜月 桂





 原題は「いやいやながらの女王」
 ヒロイン:レイラ・キャノン(28歳)/アラクル国王女/女王/黒い巻き毛,豊かなバスト,長い脚としなやかなヒップ,ピンクのペディキュア,グレーとシルバーブルーの瞳/
 ヒーロー:アーデル・クァデリ(?歳)/アラクル国親衛隊員/国王/戦士のようにがっしりとした長身の体,漆黒の髪,深いグレーの目,固く結ばれた唇,筋肉質のたくましい胸,力強い脚/
 デンバーに住んでいたレイラをスーパーマーケットの駐車場で待ち伏せしていたのは,国王の親衛隊員でレイラの許婿アーデルだった。父国王の訃報とともに,アラクルへの帰還,そしてアーデルとの結婚の約束を実行させるためだった。ユーラシア大陸の旧ソビエト領の山々に囲まれた小さな国アラクル,父王が亡くなったことにより,一人娘のレイラが女王位を継ぐことになるのでした。16歳で専制君主だった父の元を母とともに逃れ,アメリカ国内を転々としながらデンバーに落ち着いて成長してきたレイラもすでに出奔から12年たち,少女から28歳の美しい女性へと変身を遂げていました。普段はグレーですが時にシルバーブルーに色の変わる瞳をもつ長身の美女,まさに女王にふさわしい体躯と美貌をもつレイラ。ここでアーデルから逃れても,母が出国の際に持ち出した90万ドルと宝石類の返還を求められ,レイラが戻らなければ内乱が起こり多くの国民が犠牲になるかもしれないと言われては断る選択肢はありませんでした。しかし首都近郊の空港に着いてみると,国民からの大歓迎,そして父の葬儀の主催と次々に女王への階段を上らざるを得なくなっていくレイラ。そして週末に控えたレイラとアーデルの伝統的結婚式。父と同じように自分を支配しようとするのか,本当に自分と結婚したいのかというアーデルへの思いの狭間で揺れ動くレイラに,かつて母が言っていた言葉が次々に蘇ります。ついに結婚式当日,司祭の「あなたの自由意志できましたか」という問いに「はい。私は自分の意志できました。」と答えるレイラ。結婚によって国王となったアーデルには,なにかレイラに言っていないことがありそうです。
 順調に女王と国王として過ごし,やがて夏が去り季節が秋に入った頃,レイラは自信の妊娠に気付きます。と同時に,アーデルが欲しいのは,アザト国王の娘とアラクルの王位であり,相手が自分である必要は無かったということに気づきます。「彼にとって私は駒に過ぎない。戦略の一つ」我が子を再び自分の両親のように憎しみ合う両親の元で過ごさせてはならないと,国を出ようとするのでした。しかしジェットは予定されていたアメリカには到着せず,北欧の小国のホテルに泊まることになり,スイートで待っていたのはアーデルでした。さあ,アーデルはなんと言ってレイラの不信感を振り払い,本当の愛を告げるのでしょうか。
 まさにおとぎ話の世界。わくわくしながら読み進められる小篇です。


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幻を愛した大富豪 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1295
幻を愛した大富豪 Unwrapping the Castelli Secret
( Secret Heirs of Billionaires 1 ) 2015」
ケイトリン・クルーズ 麦田あかり





 原題は「明かされたカステリの秘密」
 ヒロイン:リリー・ホロウェイ(アリソン・ハーバート)(24歳)/ペットホテルの従業員/大きめで官能的な唇,彫刻のような頬骨,完璧なハート型の顔,ストロベリーブロンドの髪,青い瞳,体の右側にユリのタトゥー/
 ヒーロー:ラファエル・カステリ(歳)/ワイン製造業CEO,義兄/身長180センチ以上,金色の瞳/
 不思議な作品です。ヒロイン,リリーとヒーロー,ラファエルは両親の再婚によって義理の兄妹になりましたが,母親似の美貌にあふれた16歳のリリーにラファエルは惹かれてしまいます。そして秘密の恋人同士になりますが,恋人同士になったにもかかわらず,ラファエルは別の女性との交際を辞めようとはしませんでした。リリーが部屋で別の女性とベッドを共にしているラファエルに気付き,ショックのあまり義父の保有するスポーツカーで出かけ,事故を起こしてしまいます。奇跡的にリリーの怪我はかすり傷程度でしたが車は大破し,誰しもがリリーは亡くなったものと思い込みます。遺体がないにもかかわらず・・・。ときどき幽霊のように夢に現れるリリーを5年間探し続けるラファエルが,商用で訪れたヴァージニア州シャーロッツヴィルでリリーを見かけ,追いつきます。ところがリリーはアリソン・ハーバートと名告り,ラファエルを知らないといいだしたのです。記憶喪失ものか?と思いきや,リリーはある理由でラファエル,そして弟のルカとの出会いを避けるために嘘をついていたのです。その理由とは,事故の後気付いたラファエルとの間の子供を身ごもったこと。自分勝手に生きる母や何度も離婚結婚を繰り返す義父を見て育ち,義兄のラファエルにも裏切られたリリーは,結婚という制度や男女の愛には期待を抱かないように決意していたのでした。その為,運良く自分に仕事と住む家を提供し,働く間一人息子アルロの面倒も見てくれる恩人のペットホテルの経営者ペッパーの好意に甘えながらこの地で住んでいたのでした。そしてカステリ一族特にラファエルにはアルロの存在に気付かれたくなかったのですが・・・。翌日ペットホテルにラファエルが予告なしにやって来て玄関に出てきたアルロを見て,一目で自分の子供だと気付きます。最悪の事態となりました。しかもあの裏切りのことを忘れたかのようにリリーを探し続けていたと言うのです。その言葉を信じられないリリーはどんな証拠を示されても自分はアリソンだと記憶喪失を装い続けるのです。DNA鑑定の結果が出てからでさえ,自分がリリーだとは認めようとしません。そしてカステリ家のあるイタリアにアルロとともに連れて行かれます。アルロの存在が公になるとカステリ一族や家業のワイン製造にも打撃を与える大きなスキャンダルになります。初めはリリーが家の外に出ることを極端に嫌っていたラファエルですが,次第にリリーの魅力が5年前よりさらに増していることを認めざるを得なくなったラファエル。クリスマスパーティに一緒に行くことをなんとか認めさせるのですが,リリーはヴェネツィア独特の仮面を付けることを条件にやっとパーティへの参加を承諾するのでした。そしてダンスの途中で暗がりに連れて行かれて,体を奪われた時,思わず「5年前とちっとも変わらない」と口走ってしまったリリー。今までの記憶喪失が嘘だとばれてしまった一瞬でした。そして,リリーが出奔した理由を話さざるを得なくなり,その事実にショックを受けるラファエル。子供をおいて出ていくのか,結婚するのかと迫るラファエルに,リリーの怒りも頂点に達するか?と思いきや,自己反省してしまうリリー。当時は若かったのだと・・・。
 ちょっと昔と今のストーリーが,登場人物たちの記憶なのか今の状況なのかがわかりずらく,混乱することがたびたびでした。その辺りがスッキリすると良い作品だと思えるのですが,分かりづらい作品という印象が捨てきれませんでした。ラファエルがアルロに自分が父親だと告げたときのアルロの返事が傑作です。ラ「僕がパパなんだよ」ア「ずっと?」ラ「ずっとだよ」ア「すごいね」この部分が,アルロの気持ちを十分すぎるほど伝えてきます。そして二人の結婚とアルロの存在を知った父ジャンニの言葉も振るっています。「さまざまな形はあるが,愛は誰に対しても公平だ。流れに任せた方がどうにかなるものだ。」これが離婚結婚を繰り返すジャンニの生き方を象徴的に表している蓋し名言ですね。


タグ:ロマンス
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砂の炎 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1259
砂の炎 Traded to the Desert Sheikh
( Scandalous Sheikh Brides 2 ) 2015」
ケイトリン・クルーズ 山本礼緒





 原題は「砂漠のシークとの取り引き」
 ヒロイン:アマヤ・アル・バクリ(23歳)/バクリ国王女/完璧な卵形の顔,みずみずしい唇,豊かな黒髪,濃いチョコレート色の瞳/
 ヒーロー:カヴィアン・イブン・ゼイド・アル・タラース(?歳)/ダール・タラース国シーク/ブルーグレーの目,豊かな黒髪,整った鼻筋と顎骨,彫刻のような顔立ち/
 「砂の檻(SHALOCKMEMO1240)」の姉妹編。前作ヒーロー,リハドの妹アマヤがヒロインです。「アマヤはこれまでずっと誰かの言いなりになって生きてきたようなもので,だからこそ,この場所に行き着くはめになったのだ。アマヤは昔から,騒動を引き起こすくらいなら,自分の意志を曲げた方が楽だと思っていた。」という生き方をしてきたアマヤですが婚約パーティの直後出奔し,半年間婚約者から逃げ続けていたのでした。「あなたは人形じゃないのよ。父の葬儀が終わって間もないころ,母のエリザヴェータがアマヤに言った。」「そんなふうに誰かの言いなりになってばかりでどうするの?そのうち壊れてしまうわよ。」と母に言われたアマヤですが,言いなりになる方がはるかに簡単だったからです。そして「意志を曲げ続けて,もうこれ以上は曲げられないところまで来た時,逃げだした」のです。カナダでシーク・カヴィアンに見つけられ,ダール・タラースに連れ戻されたアマヤ。カヴィアと結婚するということは,ダール・タラースという砂漠の国で王妃となることを意味しています。幼少の頃,家族を先王によって皆殺しにされ,父の王位を奪われたカヴィアは,使用人だったひとりの女性に救われ,砂漠の村で成長し,遂に先王とその取り巻きを滅ぼし,王位に就いたところでした。凄惨な政治の世界に生きるカヴィア。そして軍事的にもアマヤの兄が国王を務めるバクリとの協力が大きな意味を占めるのです。政略結婚を承諾するか愛のある結婚相手が見つかるまで世界を放浪するか。両親の不和を知るアマヤにとっては結婚そのものが大きな問題だったのです。母は相変わらず多くの愛人を抱えていた夫を許せず,アマヤにもその考えを押しつけようとします。アマヤはカヴィルの抱える闇の部分を敢えて表に出させようとしたり,何かと自分に従わせようとするカヴィルに反抗的になったりするのですが,カヴィルにすべてを見透かされてしまいます。ところが二人の間には強力に引き合う力が存在しているようです。邦題の「砂の炎」は炎のように燃える二人の関係を示しているようです。これまでの生き方が父や兄,そして母からも支配されてきたアマヤは,なんとか自分の主体性を取り戻そうとするのですが・・・。
 初めは独断的なカヴィルが悪者に描かれているのですが,次第にアマヤの方がただの我が儘なお姫様に描かれていくところが本作の面白さです。そして結婚式の前夜,事前にダール・タラースにやってきていた母はアマヤをそそのかして国からの脱出を計画しているのでした。二度も同じ手は喰わないとカヴィルは,行きたいならヘリも用意するから堂々と行きなさいとアマヤに告げるのでした。さて二人の関係は・・・。最後は連作の締めくくりにふさわしい大団円になり,読者の大満足を得るのに成功しています。オススメの作品です。


タグ:ロマンス
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砂の檻 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1240
砂の檻 Protecting the Desert Heir 2015」
ケイトリン・クルーズ 水木はな





 原題は「砂漠の相続人を守って」
 ヒロイン:スターリング・マクレー(27歳)/元モデルで妊娠中/
 ヒーロー:リハド・アル・バクリ(?歳)/バクリ王国国王/
 作者得意のシークものです。ヒロイン,スターリングの美貌,男を惑わせるスタイルの良さなどが嫌というほど文中に表れているのですが,翻訳版もMB版もこの雰囲気を伝えるモデルさんを使っていません。まぁ強いていえばですが,MB版はそのアンニュイな雰囲気がちょっと感じられる表情は見えますが,あの意志の強さが十分には伝わってきていないのが残念です。5月5日刊のロマンス4作品の中では,やはり「授かりし受難」のヒロイン,グレイス・ドノヴァンのモデルさんがベストイメージでしょうか。
 さて,最近刊のケイトリン・クルーズ作品はほとんど読んでいるのですが,なぜかオススメやイチオシマークを付けられる作品と出会っていませんでした。しかし,本作は少なくともオススメは付けられる内容の深さが感じられました。強大な国に隣接するペルシャ湾岸の砂漠の国バクリ。現実にはサウジアラビア近隣の小国の一つと考えれば良いのでしょうが,ベドウィンが住み,かなり伝統的な考え方が色濃く残っている国柄です。父親が数年前に逝去して国王となった兄弟の長男リハドは弟オマールや異母妹アマヤが昔から何かとお騒がせな行動を取り,その尻ぬぐいをしてきました。ハリドはかつて結婚していましたが,妻をガンで亡くし,現在は独身のままでいます。今回弟オマールが自動車レースに出てクラッシュし,命を落としてしまうという不幸に見舞われますが,弟は国を離れてからのここ10年間,モデルの女性と同棲し,しかも彼女はオマールの子を宿していることがわかったのです。アメリカのオマールのフラットにこのスキャンダルを納めるためリハドは自ら出かけたのでした。初めはリハドを自分を迎えに来た運転手だと勘違いして横柄な言葉遣いをして自分のいうとおりにしようとしたスターリングですが,車が止まってみると私設空港。そして運転手は自分がハリド国王だと名乗ったのでした。そこからはスターリンのいうことなど誰も聞かずに,バクリ国に向かわざるを得なくなったスターリング。王子の子である彼女のお腹の中の子は,バクリ国の王族であり,継承順位第2位の位置にあることになります。しかしその子にはある秘密がありました。実はスターリングは処女懐胎だったのです。つまり同性愛者のオマールはその秘密を隠すため,精子提供者となりスターリングは妊娠したのでした。そのことをハリドが知るのは物語も後半に入った第7章です。スキャンダルにまみれた王国にはもう一つ,ハリドの異母妹アマヤが隣国ダール・タラースの王子カヴィアンとの婚約を拒否し,逃亡生活を送っていることでした。こちらは物語の進行上は小さな扱いになっていますが,本作の姉妹編が書かれれば,おそらくヒロインとなるでしょう。さて,ハリドはスターリングの子が王位継承権を持つことを盾に取り,スターリングとの結婚を強行します。断固これを拒否しようとするスターリング。しかしスターリングにも両親を失い里親の元で育ちますが,外に見えないところで養父から暴力を振るわれ続けていたという過去がありました。そのため男性から触れられそうになると思わず手を挙げて防御の姿勢を取る習慣が身についてしまっていました。自分には触れなかったオマールとの交際が長年続いたのもこれが原因でした。そして王宮についてハリドが結婚を強要しようとスターリングに思わず近づいたときこの防御の姿勢が出てしまい,ハリドはスターリングに大きな心の傷があることに敏感に気付いたのでした。しかしハリドはスターリングを殴ることをせず,あくまで尊大に自分に命じただけだったため,スターリングはハリドに対する緊張を少し解くことになって行きます。常に長男として国への義務を優先して生きてきたハリド。マスコミからたたかれ,自分がいかにも砂漠の国の王子を誑かしてきた妖婦のように喧伝されてきたスターリングを,ハリドもまた報道どおりの女性だと思い込んでいたのですが,この心の傷に気付いたとき,スターリングの美貌はその本姓とは別物であることに気づくのでした。美貌の陰に自分の悲惨な少女時代を隠してきた,しかも国王の権威などを恐れない意志の強い女性,そんなスターリングの新たな面を知ることになったハリドは,スターリングに対する認識を新たにするのでした。そして強く惹かれていることを知るのでした。スターリングもまた,言動とは異なったハリドの真のやさしさと,常に国に対する義務を背負って生きなければならないハリドの生き方に同情を覚え,と同時に愛しい人としてのハリドに深い尊敬の念を抱くのでした。スターリングは急に破水し,愛らしい娘レイラを出産します。出産後1カ月ほどして,ハリドとスターリングは砂漠のオアシスでのハネムーンに出かけます。しかし,王宮に戻って政治的なパーティに出席したとき,参加者から,さらにはマスコミの記者から悪意に満ちた中傷の言葉を向けられ,このままでは愛するハリドとレイラに今後も多大な迷惑をかけてしまうと王宮を離れる決心をするのです。しかし国境に向かったスターリングを追いかけたハリドはそんなことは気にしない,ただ君が一生を共にしてくれればいい,と愛の言葉を叫ぶのでした。エピローグは10年後,すでに二人の間にはレイラの他に3人の子どもが出来ています。10年経っても二人が互いを求める気持ちには変化がなく,返って強まる一方です。このエピローグの長さも本作の特徴かもしれません。長大なシリーズもののエピローグのような大団円に,読後の満足感もひとしおです。


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不実なギリシア海運王 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1127
不実なギリシア海運王 Greek's Last Redemption
ホテル・チャッツフィールド 13) 2015」
ケイトリン・クルーズ 藤村華奈美





 このシリーズ第2シーズンはホテル・チャッツフィールドとハリントンホテルの確執からスタートして,世界各地の2大ホテルを舞台にするという共通点はありますが,登場人物たちは必ずしもチャッツフィールドやハリントンと関係のない人たちも多く登場してきます。本作では,ホリーとテオのツォウカトス夫妻の離婚騒動でスペイン,バルセロナのチャッツフィールド,ハリントンが舞台になります。ギリシア人のテオは父から事業を引き継ぎ,船舶会社「ツォウカトス・シッピング」を経営する億万長者ですが四年前に出会ってすぐに意気投合し結婚,しかし半年後にはホリーがテオの元を去り別居状態が続いてきました。テキサス出身のホリーとギリシア人のテオの情熱に満ちた半年間の結婚生活も互いの憎しみのうちに別れを告げ,ホリーはテオの預金から好きなだけカードでお金を引き出し,慈善事業につぎ込んでいます。そのホリーがテオにテレビ電話でテキサスから連絡を取ってきました。四年経ってギリシアの法律ではもう離婚が認められる時期だと・・・。テオはホリーを自由にさせたくなくて,自分の元を去った妻を罰するつもりで離婚はしないと言い張っています。なぜ不倫して自分の元を去り,好き勝手しているのか,どうしても妻の行動を理解できないでいるのです。3日後にバルセロナで会って話をしようということを提案し,テオは電話を切りますが,そこは二人が1カ月間の新婚旅行をした場所だったのです。テオに割り当てられたのはまさにチャッツフィールド・バルセロナの新婚用のスイートルーム。そしてホリーはハリントン・バルセロナに宿泊しているのです。ギリシアのサントリーニ島で出会い,夢のような日々を過ごした二人が角突き合わせて互いの胸の内,本音を探り合うためにこの場所にやってきたのです。結婚生活がうまくいかなかった両親を持つことでは二人は共通していました。そして両親の行動しかしらない二人が結婚生活をうまく生かせる方法を知らないことでも共通していたのです。実はホリーが不倫をしていたというのはホリーが考え出した嘘でした。しかし当時テオはその嘘をしっかり信じてしまい去って行くホリーを追いかけもせず,逆に他の女性との情事を数多くこなしていたのです。そのことを責められたテオはホリーに逆襲します。結局二人はまた理解できないまま,ホリーはテオの元を去ろうとします。しかしタクシーをUターンさせ,ホリーは今回は再びテオの元を訪ねるのでした。
 「僕らは出会ってすぐに結婚した。あまりにも早すぎたんだ。僕らは大人になりきれていなかった。どの夫婦も育っていくものだよ,ホリー。そうでないとやっていけない。」というテオの言葉が,長い年月をかけて始めて夫婦が理解し合えることを物語る大人のロマンス作品です。


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伯爵の愛人契約 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1110
伯爵の愛人契約 At the Count's Bidding 2015」
ケイトリン・クルーズ 松尾当子





「罪色のウエディングドレス(SHALOCKMEMO988)」と同じく男女のちょっと異常な愛憎劇が展開される作品です。ヒロイン側にややM傾向が垣間見えるだけでなくヒーローは敢然にSですね。斜麓駆にはどうも苦手な傾向の作品です。ケイトリン・クルーズはイチオシのストーリー展開があったり,本作のような作品もあり極端な作風なので当たり外れの振幅が大きく,どうにも理解しがたい作家です。心理戦が好きな方にはたまらなくいい作品とも言えるかもしれませんが,一般的なロマンス小説ファンにはやや重い作品です。このぐらいにしておきましょう。


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売り渡されたプリンセス [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1085
売り渡されたプリンセス Pure Princess, Bartered Bride 2009」
ケイトリン・クルーズ 平江まゆみ





ベドルジハ・スメタナというチェコ(当時ボヘミア)の作曲家の作品に歌劇「売られた花嫁」というのがありますが,本作の原題[Bartered Bride]はまさに,そんな意味を含んでいます。祖国のために親に言われるがままに結婚式当日まで新郎に会ったこともない花嫁,ガブリエルがまさにそれです。ミラヴァキアという地中海の小国の王太女,つまり女性王位継承者であり,国の財政的援助を期待してフランス人実業家リュック・ガルニエとの結婚式でそれらしく対応しなければならなかったガブリエルですが,どうにも我慢ができなくなって披露宴の途中で会場を抜け出し,パリ,ロンドンを経てロサンゼルスの親友の元に身を寄せます。すっかり新婦に裏切られたと思った新郎のリュックは1週間後,やっと見つけたガブリエルの元に駆けつけるのですが・・・。そこから二人のロマンスが本格的にスタートします。プリンセスらしい落ち着きと清純さと対人関係のうまさを身に付けたガブリエルですが,それをリュックは演技していると感じています。なんとかガブリエルの本音を引き出したいとあの手この手を尽くすリュック。会って間もない夫との関係をどのように築いていったら良いか分からないガブリエル。初めは夫を恐れ,しかしその後妻としての務めを果たそうとしますが,同時にこれまで自分が父親の現国王の言いなりになってきたことを不満に思い,なんとか自立心を持ち続けたいと願う新婦ガブリエル。二人の虚々実々の心理戦が展開されていきます。仕事中心の生活を送ってきたリュックもまた,計画どおりいかないガブリエルの行動に虚を突かれつつも,次第に自分の気持ちがこれまでの生活とは違った面を持ってきていることに当惑することも多く出てくるのでした。そんな二人の心が近づいたと思われたとき,互いの心に相手に対する疑念が芽生えます。その原因を作ったのはパパラッチのシルヴィオ・ドメニコでした。かつて過激な取材の結果リュックに殴られたことに恨みを持ち執拗にリュックを追いかけ続けてきたシルヴィオは,ロンドン滞在中のガブリエルに近づいて夫の元愛人との過激なテープの存在を匂わせ1万ポンドの要求という脅迫に至ります。もはや夫を信じていたガブリエルですが,パパラッチ嫌いの夫がまた傷つくのを恐れ,この要求に従うことにします。そしてシルヴィオは現金受渡の場所にリュックを呼びつけ,ワザと現場を見せるという卑劣な手段でリュックの心に疑念を抱かせるのでした。すっかり騙されたリュックはガブリエルを非難し離婚を言い渡すのですが・・・。
美貌と頭の回転の良さと純真な心を持つガブリエルにすっかり読者は魅了されるでしょう。本作は[Bride on Approval]のミニシリーズの幕開けを告げる1作です。


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期待はずれの花嫁 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1042
期待はずれの花嫁 His for Revenge
( Vows of Convenience 2 ) 2014」
ケイトリン・クルーズ 松本果蓮





「罪色のウエディングドレス(SHALOCKMEMO988)」の続編です。猛暑の中読んだ前作に続き,本作も集中豪雨で甚大な被害を受けつつあった日に読みました。なにかシリーズとの関連があるのかも・・・。それでも,本作のヒロイン,ザラ・エリオットは感情移入しやすい人物造形でした。幼いころから姉と比較され「子豚ちゃん(パッド)」とからかわれていたザラ。父親も彼女を利用するだけ利用してその能力を決して認めようとはしませんでした。そんなザラが政略結婚であるチェイス・ウィテカーとの結婚式当日姿をくらまし,代役としてウエディングドレスに無理やり身を押し込んで神父の前に立ったのがザラでした。当日すでに酔っていたチェイスとともにチェイスの屋敷にやってきたザラ。名ばかりの結婚というだけではなく偽りの花嫁という二重の意味での政略結婚でしたが,二人は初めはなにかと嫌みを言い合います。しかしチェイスは浴槽から立ち上がったザラを見たとき,ザラの姉のアリエラではなくザラと結婚できたことの偶然を喜ぶのでした。そして男性的魅力にあふれたチェイスと結婚できたことをザラもまた幸せに感じるのでした。大学院で研究を続けているザラの頭の良さと優しい人間らしさは,表面的には美貌にあふれたアリエラにはない魅力にあふれていることをチェイスは見て取ったのです。しかしチェイスにはある計画がありました。それは経営こんなに陥ったウィテカー工業株式会社をザラの父親のエイモスの手から取り戻し,経営を軌道に乗せるためにこの政略結婚を利用するというものでした。それをザラに告げるわけには行きません。自分がひどい男だと繰り返し言い続けているチェイスにはもう一つ秘密がありました。前作でも出てきた母や妹と一緒のときに南アフリカで襲われた経験から,自分が何もできなかったという罪悪感を20年間も抱き続けてきたことにより人を愛する感情を押し殺していたのでした。自分が,ザラと話しているうちに次第に人間らしい感情を取り戻しつつあることに気付いたチェイスでしたが年末に迫ったエイモスとの対決は,たとえそれがザラを更に傷つけることになっても止められませんでした。やがて二人は愛し合うようになり,クリスマスまでの数週間で片時も離れることができないほどにまで深い関係になっていました。そしてニューヨークでのエリオット家とウィテカー家の対決。何も知らされなかったザラですが,何となくこれがチェイスとの別れに繋がるような予感はしていました。取締役会議に臨んだザラはチェイスの求めに応じて偽りの結婚について話し,父親と姉から非難されながらも,部屋を飛びだし,身を隠してしまいます。チェイスが取った行動は・・・。
本作が前作のように暗い雰囲気にならないのは,ザラのウィットに富んだ話術やゴシック小説を好み厭世的にならざるを得ない自分を責め続けている姿が読者の心を打つからでしょう。そしてチェイスの罪悪感を救った思いやりのある態度にも。前作のヒロインでチェイスの妹マディーも夫のニコデムスとともに登場し,1年後のクリスマスパーティで亡き父バートからの二人に宛てた手紙が究極の解決編になります。


タグ:ロマンス
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罪色のウエディングドレス [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO988
罪色のウエディングドレス His for a Price 2014」
ケイトリン・クルーズ 小泉まや





ギリシア人富豪と会社経営者令嬢の異常な夫婦関係を描いたシュールな作品でした。余りにしつこい神経戦を展開する二人に,ちょっと嫌気がさして途中で投げだそうと思ったことも何度かあり,後味の悪い作品になっています。でもそれは作品のせいばかりではなく,ここ数日続いている猛暑とも深い関係があると思います。真夏日,猛暑日が続き,夜も熱帯夜になっているため,なかなか熟睡できなかったからだと思います。この天気はおそらく複数の台風によるフェーン現象によるものだろうと思います。まだ7月初旬なのにこの暑さは余り経験がありませんでした。
自分たちを捨てて別な家族の下に行ってしまった父と,そんな夫をずっと待ち続けていた母の死が自分のせいだと思っていたニコデムス。母や兄とともに運転手付の車で帰宅途中でふざけて運転手をたたいたために事故にいたり母を失ってしまったマディー。そしてマディーが18歳の時にパーティーで出会って互いを想い続けてきた10年間。そんな二人がマディーの父の死により会社が傾いたとき,ニコデムスはマディーとの結婚を条件に会社の合併をマディーの兄に申し出たのです。御転婆で反抗的なマディーとニコデムスのギリシアの孤島での二人っきりのハネムーが始まります。虚々実々の駆け引きでどちらが勝ったのかわからないほど互いを傷つけ合う二人ですが,このやりとりが延々と続きます。互いの心の傷を隠したまま。ニコデムスはやがて心の傷をマディーに告白するのですが,マディーの方はそれが出来ないため,一人島に残されてしまいます。やがてニューヨークの会社にマディーは乗り込むのですが・・・。エピローグ的に3年後の姿が描かれますが,二人の舌戦をとおして,全てを告白することで自分を許すことが出来るようになるという,心の闇との戦いを描いた深い作品です。


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