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無垢なカナリアと王子 [ミシェル・スマート]

SHALOCKMEMO1382
無垢なカナリアと王子 Talos Claims His Virgin
( Kalliakis Crowns 1 ) 2015」
ミシェル・スマート 朝戸まり





 原題は「タロス,無垢な乙女を求める」
 ヒロイン:アマリー・カートライト(25歳)/パリ管弦楽団バイオリニスト,バイオリニストとメゾソプラノ歌手の娘/身長173センチ,華奢な体型,豊かな茶色の髪,真っ直ぐに通った鼻,細い顔,アーモンド形の目,グリーンサファイア色の瞳/
 ヒーロー:タロス・カリアキス(33歳)/アゴン王国王子(三男)/漆黒の髪,角張った顎,眉を分断するように刻まれた傷跡/
 名門パリ管(パリ管弦楽団)の第2バイオリン奏者がヒロインということで,ヒロインに期待して読み始めました。祖父である国王が不治の病に冒されていることを知ったアゴン王国の三王子は,他界したバイオリン奏者兼作曲家だった祖母レア王妃のつくった最後の作品を演奏するバイオリニストを捜すため,第三王子タロスにそのミッションを託します。世界数カ所でオーディションを行ってみましたが,なかなか適任者が見つからず,もはや時間切れで,最後にパリの地に来ています。オーディション途中の休憩に通りかかった部屋でタイスの瞑想曲を演奏している女性,これこそ求めていた音だと直感するタロス。25年前に両親を事故で亡くしたとき,レア王妃がタロスのベッドのわきで演奏して慰めてくれた時と同じ曲と音だと直感したのです。そして演奏者がパリ管の第2バイオリン奏者であることが分かりますが,彼女はタロスの申し出を断るのでした。タロスは劇場テアトル・ドゥ・ラ・ムジークのオーナーから劇場そのものを買い取り,承諾してくれなければ劇場を取り壊し団員もすべて解雇するぞと脅迫します。今彼女に断られてしまえば,1カ月後に迫った国王即位50周年記念音楽祭の公演に間に合わないからでした。彼女,アマリー・カートライトはバイオリニストの父とメゾ歌手の母という音楽家の両親を持ち自らも天才少女としてもてはやされた才能溢れる子供でした。しかし12歳の時,あることがきっかけで突然演奏ができなくなり,以来舞台恐怖症になり,長期の医師のカウンセリングの結果,オーケストラでは目立たない第2バイオリンの席であればなんとか舞台に立つことができるようになっていたのです。人前でソロを務めることなどとうてい無理な話でした。タロスの強引な説得に,過去の秘密を明かしてなんとか断ろうとしたアマリーでしたが,タロスは逆に自分がその病気を治してみせると豪語し,遂に契約書にサインさせてしまうのでした。自分の両親がイギリス出身の父ジュリアン・カートライトとフランス人の母コレット・バルテズだということも調べ上げていたタロスはクレタ島の隣国アゴンの第三王子であり,これほど強引に自分を演奏会での演奏をさせたがるのは何か別の理由があるはずだと思い質問を向けてみますがありきたりの理由しか言ってくれません。とりあえず1カ月の契約期間を全うしなければ仲間の団員たちが路頭に迷ってしまうことになります。「いいわ,行くわよ。その代わりどんな結果になろうと私は知らないから」とアゴン王国に向かったアマリーとタロス。天国のごとく美しい島の宮殿の近くにあるジムでボクシングの基本練習やアスレチックをすることで,恐怖心に立ち向かう心構えをつくらせようとタロスはアマリーを連れて行きトレーニングを毎日させ,祖母のつくった最後の曲の楽譜を与えます。あくまでも1カ月だけの契約で音楽祭が終わればパリに戻れることが契約だったため,互いに惹かれる思いを感じながらも深い関係になることを避けるようにしていた二人でしたが,自分の不安な気持ちを取り除くためにさまざまな手立てを使って自分を支えようとしてくれるタロスの優しさと頼りがいのある人柄,そしてなんと言っても長身で逞しい男性的な肉体的魅力にも惹かれ,遂にアマリーは25年間守り続けてきた純潔をタロスに捧げることにします。その夜から数週間は二人はいわば蜜月の期間を過ごします。始終触れあっていないと二人とも満足できない関係になってしまうのでした。アマリーの音楽祭で弾く曲をタロスはなかなか聴かせてもらえませんでした。完全にできあがるまでは人には聴かせられないというアマリーの気持ちをタロスも理解し,尊重したからです。王宮で開かれたプレイベントの皇太子主宰パーティにアマリーはタロスの同伴者として連れて行かれ,タロスの兄王子たちに会うことになります。幼い頃に両親に連れられてセレブたちのパーティに何度も参加した経験のあるアマリーは緊張せずに人々との会話を楽しみます。やがて,アストライオス・カリアキス国王本人の接見の機会がやって来ます。アマリーは「あの曲は愛の協奏曲で陛下に捧げた曲です」と話すと「なぜそれがわかる?」「あの曲には愛があふれています。妃殿下は愛をこめてあの曲を作られた。母としてではなく一人の女性として」と答えるアマリーに国王は王妃の使っていたバイオリンを渡し,「私がいなくなってからもあの子を頼む」とタロスとの関係を知っているように囁くのでした。この祖父のためにタロスは強引に自分を連れてきたのだと言うことを納得したアマリーは,国王のためと言いながらもタロスのためにも演奏を成功させようと決意します。一方タロスの方は逆に自分が強引さがアマリーの舞台恐怖症をさらに煽ってしまったのではないと考え,契約を破棄することを告げる手紙をアマリーに届けさせるのでした。互いに互いのことを思うがゆえに生じたすれ違い。この当たりの葛藤が本作のクライマックスです。そして開かれた祝賀音楽祭。舞台の最後に予定されていたアマリーの演奏する協奏曲はキャンセルすることにしていたタロスですが,進行係が告げた名前は「アマリー・カートライト!」でした。さて,演奏はどうなるのでしょうか。そして二人の関係は?
 静かに盛り上がっていく作品で特にクライマックスまでに二人の気持ちの高まりとすれ違い,そして周囲の人たちのかかわりが見事にマッチして,過去を乗り越えて行く二人の若者の成長譚になっています。読後感の素晴らしいイチオシ作品です。


タグ:ロマンス
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