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ナニーの身分違いの恋 [サラ M アンダーソン]

SHALOCKMEMO1469
ナニーの身分違いの恋 The Nanny Plan
( Billionaires and Babies 57 ) 2015」
サラ・M・アンダーソン 藤峰みちか





 原題は「ナニーの計画」
 ヒロイン:トリッシュ・ハンター(25歳)/大学院生,慈善団体代表/身長175センチ,長い黒髪,褐色の肌と高い頬骨,意志の強そうな容貌と引き締まった身体,深い茶色の目/
 ヒーロー:ネイト・ロングマイア(28歳)/ロングマイア財団代表/身長190センチ,茶色の目に金色の斑点,カンザスシティで育つ/
 前月は本当に読了冊数が少なくなってしまいました。いろいろ要因はありますが,別ジャンルに嵌まってしまったことが最大の要因でしょう。それと時間不足。どうも5月のように集中して読むことができなかったことが残念です。さて,今月最初の読了本は,7月5日刊の最新作品の一つです。作者サラ・M・アンダーソン邦訳作品は3冊目になりますが,やや年齢的に上のヒロインが登場し等身大の姿がいつも素敵な作品群で,本作もその期待を裏切らない良著でした。シリコンバレー出身の,ということはIT長者の一人ネイト・ロングマイアは「ボーイミリオネア」と呼ばれ,若くして事業を成功させ,すでに第一線からは退いたものの,蓄積した10億ドルの財源をもとに財団を興し,寄付を続けている独身男性です。過去に恋人が兄と浮気をしている場面に遭遇してしまい,以来女性との深い付き合いを一切封印してきました。ところが,その兄夫婦が事故で亡くなってしまい,母親も障害を持つ弟の世話で一粒種の孫を養育することができません。兄はネイトを後見人に指名しており,生後半年の女の子赤ちゃんを預かることになってしまいました。通いの家政婦も子供の世話についてはほとんど知識がなく,数日間睡眠が取れないほど困惑の日々を過ごしています。そこにやって来たのがヒロインのトリッシュ。ネイティヴアメリカンの居留地出身の大学院生のトリッシュですが,どんどん生まれる弟妹,そして次々に変わる母の夫に翻弄され,高校時代から休学を繰り返しながらもやっとのことで大学院2年目を迎えた今はすでに25歳になっています。そして居留地に住む貧困にあえぐ子供たちのための慈善団体を主宰し,学用品等の寄付をし続けてきました。今回多額の寄付をしてもらおうとネイトの講演会に出かけ,目立つ行動をとってネイトの注目を引くことに成功し,ネイトの屋敷での商談をしようと玄関に立ったところです。ところが玄関で彼女を出迎えたのは家政婦のロジータ。ナニーの面接にやって来た女性と勘違いし,さっさと赤ん坊のところに連れて行かれてしまいます。トリッシュにはなんと9人もの弟妹がおり,10代から養育をしない母に替わって一手にきょうだいの世話をしてきており,さらに社会福祉学の学位の持ち主でもあり,ネイトとロジータが赤ん坊のミルクに牛乳を入れていたことを知って,クスリと笑いながらも正しいミルクの作り方から初めてベテランのナニーとしての手腕を遺憾なく発揮するのです。すっかり驚愕しながら,トリッシュに引かれてしまったネイトは,1カ月間,赤ん坊の世話の仕方を教えながらナニーをしてくれと,高額な報酬とトリッシュの主宰する団体への25万ドルの寄付を約束するのでした。その金額に驚くと同時に,ネイトに頼ってしまっては自分の自立の計画ができなくなると警戒心を抱きます。そんなトリッシュの言葉に,普通の女性であれば与えられる金額で満足するところを,自分をしっかりもち妥協しない自立心に尊敬の念と魅力を感じるネイトでした。しかし二人は互いに異性との交際には身長にならざるを得ない過去の経験を持ち,近づく機会が何度も訪れますが,互いの気持ちを尊重し,決して一線を超えようとはしません。そこに読者は爽やかさと愛らしさを感じます。そして約束の1カ月後,二人はそれぞれの道を行くことにするのですが・・・。
 どんな条件を出してもネイトに頼ろうとしない潔いトリッシュの姿勢と,そんなトリッシュの言い分を尊重して決して意に沿わないことをしないネイト。こんな完璧なカップルの姿は,男女としてだけではなく互いの人間としての存在を尊重する素晴らしい姿といって良いでしょう。さて,二人の再会はトリッシュの大学院の卒業式となるのですが・・・。ハートフルな暖かさに包まれた爽やかなイチオシの作品です。


タグ:ディザイア
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