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秘密の小さな姫君 [ミシェル・コンダー]

SHALOCKMEMO1206
秘密の小さな姫君 Prince Nadir's Secret Heir
( One Night With Consequences 8 ) 2015」
ミシェル・コンダー 佐倉小春





 原題は「ナディール王子の秘密の相続人」
 ヒロイン:イモジェン・リード・ベンソン/オーストラリア人,ムーラン・ルージュのダンサーからカフェの店員/小麦色の髪と刈りたての夏の芝生と同じ色の瞳,長身/生後五ヶ月の娘ナディーナの母
 ヒーロー:ナディール・ザマン・アル=ダーカン/バカーンの皇太子/長めの黒髪,オリーブ色の肌,ブルーグレーの瞳
 パリ,ムーラン・ルージュ,一世を風靡するこのエンターテインメント施設でダンサーとして働くイモジェン。王家の異母兄弟ナディールとザキムはパリの思い出にとこの店にやってきますが,踊り手たちの一人イモジェンと目が合ったのはナディールの方でした。二人はたちまち恋に落ち,イモジェンは妊娠しますが,それをナディールに告げると冷たい言葉が返って来て,その後ナディールは出張と称してパリを離れてしまいます。イモジェンは7カ月後娘を出産しますが,5カ月の娘を抱え,親友カロの兄ミンのフラットに身を落ち着け,カフェの店員として働いていました。そこに,ナディールが現れます。君を捨てたのではなく,自分の元を去られてしまったというナディールに反発を覚えながらも,娘ナディーナと一緒に車に乗せられ,あれよあれよという間にナディールの国バカーンへとフライトすることになってしまいます。二人の言い争いもナディーナの目の前では子供の成長の妨げになると思い極力避けていますが,二人になるとすぐに言い合いになってしまうのでした。ナディールはバカーンの王位継承を断るつもりでやってきたのですが,異母弟のザキムが地方出張のまま連絡が取れなくなり,王宮での会議に参加しなければならなくなったナディール。そして周囲の人々はイモジェンとナディーナをナディールの妻と娘と認識しているようなのです。ナディールが幸福な幼少時代を送ってきたわけではないことや母と双子の妹を交通事故で亡くし,その原因が自分であると考えていることなどを知ったことや,娘の父としてのナディールが精一杯のことをしていることに心を打たれたイモジェンは,自分がもはやナディールを心から愛し,「この人のためなら何でも出来る。」と思うようになります。一方ナディールは自分がむりやりイモジェンを国に連れ帰ってしまったことに気付き,自分の父がかつて母にしたのと同じ行為だったと自分を責め,イモジェンを解放しようと決意するのでした。このすれ違いが二人の関係をどう変化させていくのでしょうか。
 1年2カ月もの間ひたすらイモジェンを探し続け,ナディーナを突きつけられた動揺,そして捨てられたと思っていたイモジェンに今でも惹かれ続けていることを認めたくないプライドとの間で苦しむナディールの苦悩が読者を惹きつけます。王位継承権ともからみ,またイモジェンにはミンという男友達がいるのではないかと勘違いしたりと,右往左往するのですが,ナディールの周囲の人たちは一目でナディールがイモジェンに惹かれていることを見抜くのですね。そして温かい目で3人の親子を見守っていくところが,とても温かくてほんのりする作品です。


タグ:ロマンス
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氷の皇帝に愛を捧げ [ミシェル・コンダー]

SHALOCKMEMO1162
氷の皇帝に愛を捧げ Russian's Ruthless Demand
ホテル・チャッツフィールド 14) 2015」
ミシェル・コンダー 山本翔子





 原題は「ロシア人の無慈悲な要求」。チャッツフィールド・シリーズ第2シーズンの6作目です。ハリントン・ホテル・チェーンとチャッツフィールド・ホテル・チェーンの確執を描いたこのシーズンも大分煮詰まってきました。ハリントン家の美女3姉妹の末娘エレノアが本作のヒロインです。おそらく3姉妹の中でももっとも美貌に優れていると思われるエレノアは,姉たちからいわゆる味噌っ子にされています。自立した道を歩むため,大学で建築学を専攻し,副専攻でインテリア・デザンを修め,さらに動物愛護の精神にあふれています。シンガポールで氷の芸術となる建物を設計し,大成功を収めます。そこに登場してくるのが本作のヒーローでロシア人のルーカス・クズネツコフ。船舶をベースにした事業を精巧させ,今や大富豪となった彼も,もとはロシアのペテルスブルグのストリート・チルドレンだったという秘められた過去を持っていました。父は誰か分からず,母親にも捨てられ,孤児院を抜け出してから,偶然出逢った恩人に船乗りとして仕事をもらい,現在の地位まで上り詰めた三十代初めの男性です。ルーカスがロシアに氷のホテルを作る計画が,建築家の突然の辞任で計画が頓挫しかけたとき,エレノアがシンガポールで同じような建物の設計に携わったことを知り,ヘッドハンティングしたのでした。エレノアの条件は一つ。完成する氷のホテルにハリントンの名前を冠して欲しいというものでした。このホテルが話題になれば,会社の中での自分の実力が認められ人生の目標リストの中の最上位,「昇進」が果たされると考えたからです。次々と新しいアイディアを出し斬新なホテルの設計を成し遂げていくエレノア。女性としての美貌とその実力に惹かれていくルーカス。そして男性的魅力にあふれたルーカスにさしものエレノアも人生の目標リストの第5位だった「結婚・恋愛」に次第に傾いていく自分を止めることが難しくなっていくのでした。そしてホテルの完成パーティのあとに,二人は遂に結ばれます。これまでどの男性とも関係を深めたことのかなったエレノアはルーカスを愛してしまったことを悩むのでした。そして長女のイザベルから極東地域の重要な地位を与えられたにもかかわらず,それを断り,建築家として自立する道を選んでいくのです。
 これは愛の物語であると同時に自立への道を模索するエレノアの成長譚でもあります。そして職業的自立と愛が相反することでなく,互いに補強し合うものだというメッセージも込められていると思います。


タグ:ロマンス
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妖精の涙のわけ [ミシェル・コンダー]

SHALOCKMEMO859
妖精の涙のわけ Socialite's Gamble
(ホテル・チャッツフィールド 3) 2014」
ミシェル・コンダー 山科みずき





 ホテル・チャッツフィールド・シリーズの第3弾です。チャッツフィールド家の末娘カーラ・チャッツフィールドがヒロイン。モデル志望で家一番の跳ねっ返り娘カーラは,いつも間の悪いことでマスコミにも悪評を流して,家に迷惑を掛けているいわゆる問題児ですが,根は素直で感性豊か,そしてなにより兄弟姉妹たちの助けを得て両親にかまわれない寂しさを感じている妖精のような娘(こ)です。ヒーローは,ヴェガスのホテル・チャッツフィールドのカジノで全財産を賭けて勝負をするエイダン・ケリー。親の代からの宿敵マーティン・エラリーにもう少しで勝とうとしていたとき,エラリーは知り合いのカーラを賭けると言い出します。空港からホテルに向かうときのトラブルでカーラに出逢ったエイダンは,そんなエラリーの賭けに乗らざるを得ないほど,カーラが気になっていました。カジノの従業員だと思っていたエイダンは,エラリーのような年寄りにカーラを取られてしまうことを気の毒に思ったのでした。そして,それまでの賭け,エラリーの全財産と会社を賭けた戦いに勝つものの,エイダンはカーラだけを手に入れてあとはエラリーに返してしまうのでした。ちょっとかっこいい幕引きではありますが,これが物語の最終場面で大きな問題としてエイダンを襲ってくるとはその時は思いもよりませんでした。自分が賭けられたと知ったカーラは,それでもエイダンからキスされて,エイダンに惹かれてしまいます。そして,そのことがパパラッチの知るところとなり,翌日のスクープやネットで大きな扱いにされてしまい,二人はフィジーに逃れていきます。1週間後に迫ったカーラのモデルとしての重要なオーディションまでの1週間をフィジーで過ごす二人。やがて,カーラの内面を知ったエイダンは,仕事の最中でもカーラのことが頭から離れません。カーラもまたエイダンから求められることを,それよりもエイダンを求める気持ちが強いことに気づき,自分がまた問題を抱えてしまったことを後悔する気持ちもありました。そして,フィジーでの楽しい生活が終わりかけたとき,エラリーがエイダンに仕掛けてきた大きなトラブル。エイダンは仕事にかかり切りになってしまい,カーラは傷心のうちにロンドンに旅立ちます。自分のモデルとしての成功は父親に認めてもらおうとするカーラの強い気持ちからでしたが,エイダンとフィジーで過ごすうち,カーラは自分がモデルとして成功するよりも,女性たちを美しくするコーディネート役の方が自分に向いていると思うようになり,エージェントの誘いに断りを告げようとしたとき,そこに現れたのは・・・。終盤のドラマチックな物語の展開に思わず二人を応援したくなる爽やかな物語です。作者のミシェル・コンダーはチャッツフィールド・シリーズを何作も書いているようで,今後の翻訳が期待されます。


タグ:ロマンス
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