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王子様に恋したナニー [ジュールズ・ベネット]

SHALOCKMEMO1207
王子様に恋したナニー What the Prince Wants
( Billionaires and Babies 58 ) 2015」
ジュールズ・ベネット 堺谷ますみ





 原題は「王子様が望んだこと」
 ヒロイン:ダーシー・クーパー(30歳)/ナニー派遣会社「ラビングハンズ・チャイルドケア」経営/女性らしい曲線を描く身体,表情豊かなグリーンの瞳,深みのある琥珀色の髪
 ヒーロー:ミコス・コリン・アレクサンダー/ガリーニ・アイル国王子/妻カリナが1年前に急死,ロッククライミングの事故で障害を持つ/ブルーの瞳
 「ダーシーは21歳の時,重い子宮内膜症で子供を産めない身体だと診断された。」というヒロイン,ダーシー・クーパーはカリフォルニア州内から出たことのない普通の女性。最近亡くなった祖母の経営していた会社を引き継ごうとしていました。恋人に1セントも残さないで全て財産をだまし取られ,さらにその借金を埋めるために会社の経営が危なくなっています。そのため,長年勤めてきた社員を全員解雇せざるを得ない状況に追い込まれ,今回,半年間ナニーを務めれば得られる法外な報酬でなんとか会社を軌道に乗せられるという瀬戸際の状況でした。初めに面接に赴いたとき,すぐに担当の子供の世話を実践させられるという日でしたが,幸いなことに該当の女の子イリスはすぐにダーシーに懐き,滑り出しは好調かと思われましたが,なぜか雇い主のミスター・アレクサンダーは「君を雇えない」というのです。なんとか今日1日でも試用期間として過ごさせてくれないかと頼むと,渋渋ながら承諾を得ることが出来ました。実はこの時,コリンことミコス・アレクサンダーは,年配のいかにもナニーらしい女性が派遣されてくるものだと思い込んでいて,ダーシーが若く,女性らしい曲線を描く身体をしていることに戸惑い,使用人に対して不適切な行動を取ってしまうのではないかと恐れて,断るつもりになったのでした。2年前,妻との関係が悪化し,さらにその妻を交通事故で亡くして,自らもロッククライミング中に落石に当たって大怪我をし,やっとの思いでリハビリにこぎ着けたばかりでした。辛い妻の死と自分の怪我を悔いて,祖国,ガリーニ・アイルを離れ,義姉の祖国であるアメリカでしばらく生活しようと思っていたところだったのです。そんなコリンにとっては,マスコミの執拗な追求から逃れ,愛娘と共にこれからの生活についてじっくり考えたいと思ってきたところだったので,使用人に恋愛感情などを抱いてはいけないと思ったところだったのです。なだめすかしてもなかなか泣き止まなかったイリスが,ダーシーが来てから数分ですっかりおとなしくなり,機嫌良く昼寝についたことに驚き,コリンは1カ月の試用期間を設けるという条件で,ダーシーの滞在を許可するのでした。ダーシーもまた,自分がもう子供を持てないという状況と,イリスに対してすぐに深い愛情を感じ,さらには,女性なら誰しも振り向くようなハンサムなコリンに強く惹かれながらも,今は会社を建て直すためになんとしてもこの仕事をやり遂げて報酬を得たいと強く考えていたことで,コリンに対する思いを表に出さないようにしようと決意するのでした。それからは,イリスを間に挟んで,近づきすぎないように気をつけながらの微妙な二人の生活が始まります。そして1カ月を迎えようとしたとき,ついにダーシーはコリンとの接触を自ら決意せざるを得ないほど惹かれていく自分をもてあましていました。そして一夜を共にした二人が楽な服装でイリスに食事をさせていたところに,コリンの兄が突然やってきます。ガリーニ・アイルの王位継承者であるコリンの兄は,コリンをミコスと呼び,二人の関係を見抜き,コリンが王子であることをバラしてしまうのでした。
 もうここにはいられない,と荷物をまとめようと部屋に戻ったダーシーをコリンが追いかけてきて,真実を告げるつもりだったことを信じてくれと頼み込みます。そして,いったん国に帰らなければならないが,イリスを安心して預けられるのは君しかいないので,一緒に来て欲しいと説得にかかるのでした。ふたたび男性に騙されたという後悔の念と,このまま二人と別れてしまうにはあまりに深く関わってしまったという気持ちの狭間で揺れるダーシー。しかし,たくましくも,会社再建という目的のためにはここで逃げだすわけにはいかないと,ガリーニ・アイル行きを承諾するのです。宮殿について,自分とコリン(ミコス)とはやはり生活基盤が違うという実感を得たダーシーですが,コリンの義姉ビクトリアが自分のためにパーティ用のドレスを作ってくれたり,何くれとアレクサンダー家の男どもは・・・と打ち明け話をしてくれたりして慰めてくれ,なんとかパーティーにでて,コリンの気持ちを自分に向けようと前向きに考えられるようになります。
 モデル体形でもなく,恋人にも美しいと言われたこともなかったダーシーに,君は美しいと言ってくれ,3人で幸せな家庭を築きたいという気持ちを明らかにしてくれたコリン。そんなコリンを愛する気持ちを抱かずにはいられないダーシーの,懐の広く,愛情深い性格がとても爽やかで,読後感の素晴らしい作品です。関連作でコリンの兄ステファンとビクトリアのロマンスを描いた「かりそめのプリンセス(SHALOCKMEMO1157)」は,ビクトリア側から描いた作品でしたが,本作はステファンとコリンの兄弟を中心に描いていますので,別シリーズになっています。


タグ:ディザイア
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かりそめのプリンセス [ジュールズ・ベネット]

SHALOCKMEMO1157
かりそめのプリンセス Behind Palace Doors 2013」
ジュールズ・ベネット 藤倉詩音





 作者ジュールズ・ベネットの邦訳はようやく2作目ですが,どちらもイチオシ間違いなしの傑作揃いです。前訳作「ボスと偽りの蜜月(SHALOCKMEMO1093)でも書きましたが,姉妹編の片割れでした。本作も「ハリウッド」シリーズ3部作の第3弾という大団円の作品に当たります。第1作[Caught in the Spotlight],第2作の[Whatever the Price]は未訳です。ハリウッドの大女優オリビア・デーンの3人の子どもたち,ブロンソン・デーン,アンソニー・プライス,そして本作のヒロインで末娘のビクトリア・デーンを主人公にした3部作です。もちろん第3弾ですので,エピローグでは前2作の主な登場人物が勢揃いしての戴冠式の華々しい場面で締めくくられるのですが,デーン家の家長オリビアを中心として家族が広がっていく様子がよくわかります。
 ヒーロー側のことについては,ガリーニ・アイルというエーゲ海のギリシア近郊の小国の次期国王ステファン・アレクサンダー王子がヒーローです。父王が亡くなり自分が王位を継がなければアレクサンダー家から王権が取り上げられ,ギリシア領になってしまう。それを防ぐためにはなんとしても結婚して安定した国家経営ができることを証明しなければなりません。しかし,不慮の事故で母王妃を亡くし,かつて父王が不倫し,母王妃を事故を装って殺害したのではないかという不名誉な記事がでてマスコミにたたかれ,王家の信頼をすっかり失った今,戴冠式を無事迎えるには王妃にふさわしい女性との結婚がなによりの方法なのでした。ステファンが白羽の矢を立てたのは幼いころから知っていたかつての親友ブロンソン・デーンの妹ビクトリアでした。気心の知れたビクトリアであれば,例え二人の間に愛がなくとも,この便宜的結婚をうまく乗り切ってくれるはずだと考えたステファンは正直にビクトリアにこのことを打ち明け,とりあえず半年間結婚し,戴冠式を乗り越えたらビクトリアの選択で離婚も考慮しようと持ちかけます。ファッションデザイナーとしてすでに成功し仕事に打ち込んでいたビクトリアは自分の結婚式のためのウエディングドレスの構想をいくつも持っていましたが,まさに王子様からのプロポーズという夢のような申し出と,最近恋人だと思っていた男性に裏切られたという心の傷を抱えたまま過ごすのに耐えられなくなりつつあったことから,ステファンとの結婚を了承するのでした。ステファンは婚約者の名前を伏せ,近親者ばかりの小さな結婚式を行い,披露宴でマスコミやVIPを招いての舞踏会を開いてビクトリアを紹介したのです。大女優の娘として小さい頃からマスコミの冷たい仕打ちに慣れていたビクトリアはステファンの計画が自分への気遣いであることに感謝し,その後マスコミ向けに二人の親しい様子をわざと見せたいという言葉の意味を良く理解していました。しかし,マスコミ向けの行動が次第に自分の正直な気持ちを表していることに戸惑いを感じ始めます。そして二人の寝室での相性も抜群であり,ステファンにどんどんのめり込んでしまう自分を止めることができなくなってしまうのでした。どこでもステファンに求められれば応えてしまう自分が,予想以上に深くステファンを愛してしまった気持ちを打ち明けてしまえば,きっとステファンに捨てられるかもしれないと逆に不安になってしまうのでした。一方ステファンの方も,愛が絡むと自分の計画がやっかいなことになってしまうという想いから,ビクトリアに完全に恋しているのをなんとか否定しようと躍起になっています。そして,ビクトリアにはそのうち打ち明けようと考えていた義兄たちとのドキュメンタリー映画の制作のことを,義兄からの電話で偶然知ってしまったビクトリアに,あなたも自分を利用しただけなのねと非難されたときも,反論ができないままビクトリアが去ってしまうのを止めようとはしなかったのです。くどいほど繰り返されるステファンのこの自問自答が,作者のストーリーづくりの要だと思われます。互いにすれ違う気持ちを解消し,二人が互いの気持ちを認め合うのはいつになるのでしょうか。ステファンはその機会として,自分の戴冠式を利用する計画をたてるのですが・・・。高いプライドと素晴らしい才能を持ったビクトリアがステファンにメロメロになって行くところが特に愛らしく,最期まで一気読み確実のイチオシ傑作です。


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ボスとの偽りの蜜月 [ジュールズ・ベネット]

SHALOCKMEMO1093
ボスとの偽りの蜜月 For Business... or Marriage? 2010」
ジュールズ・ベネット 泉 智子





 オハイオ州に住む作家ジュールズ・ベネットの初邦訳作品です。2007年の[Home Again],2008年の[Love in Bloom]と年1作を出した後に2010年以降爆発的に作品を出しているディザイア作家のようです。その他スペシャル・エディション(N-)で「ストーナーロックのセントジョン」3部作や最近作の[Mafia Moguls]シリーズなど2010年以降,矢継ぎ早に作品をものして人気作家の仲間入りしているようで,本作を読み終えたばかりでもその質の高さと,明確な主張が気に入りました。本作には姉妹編[Seducing the Enemy's Daughter]があり,邦訳が待たれます。ディザイア本国版の表紙イメージは,姉妹編と共に「Best Image」です。
 さて,本作はいわゆるボス秘書ものですが,ヒロイン側から積極的攻めの姿勢でボスの心を射止めていくというストーリー展開なのが特徴です。元ウエディングコーディネーターのアビー・モリソンは先代社長に雇われて「ストーン・エンタープライズ」の社長アシスタントとして働いて1年になります。勤務する少し前に最愛の母を癌で亡くしたばかりでしたが,勤務してすぐに今度は社長も亡くなってしまい,その後は後継者であるケイド・ストーン,ブレイディ・ストーンの兄弟共同経営者の元で仕事を続けているのでした。母の闘病期間中,治療費と入院費が嵩み,借財がまだ残っています。そんな時,ケイドから元ウエディングコーディネーターだった経験を生かして,自分と婚約者モナ・トレメインの結婚式のプランを立てて欲しいという依頼があります。通常の給与とは別に高額のボーナスを払うからという条件でした。この金額があれば借金を払い終わって,さらに今よりも高級なフラットに移れるだけの金額だし,元々好きな仕事だということで引き受ける気になったアビーですが,同時に密かに憧れの気持ちを抱き続けてきたケイドの結婚,しかもすこぶる付きの美人である上に父親の企業の副社長として仕事もばりばりな女性モナ・トレメインとの便宜的結婚ということで心を痛めてもいたのでした。しかも,結婚する当人であるケイドもモナも,計画はすべてアビーに任せるというのです。自分でなくても少なくともケイドには愛する人と結婚をして欲しいと,アビーは一計を案じます。ハネムーン地の選定とそこでのスペシャルを選定するために仕事がらみの旅行をケイドに認めさせました。これまで目立たずひたすら仕事一筋でこちらの言いつけにはいつも素直に従う優秀な秘書的存在だったアビーが,急にこんな計画をたて,自分がそれに乗っかってしまっていることに違和感を覚えたケイドですが,ちょっと前にアビーがロデオマシンにまたがってセクシーな動きを見せていたところを偶然見つけ,それが頭から離れなかったので,プライベートのアビーを知りたいという興味が沸いてきたからでした。それから二人は自家用ジェットでカリブ海の島々をいくつか巡り,売りに出されたリゾートの実態調査を兼ね,ハネムーン地を巡ることになります。
 行く先々でアビーの生き生きとした姿や何事にも率直で飾らない性格,そして身を粉にして働く姿,さらに数カ国語,それもジャマイカの原語まで操る有能さに舌を巻き,なによりこれまで感じたことのなかったアビーの美しさに気付き始めたケイドは,もうアビーの魅力から離れることができなくなってしまいます。なんとか愛のある結婚を,愛することを知って欲しいというアビーの願いは,いつしかモナではなく自分がその相手にふさわしいと考えるようになっていきます。二人が決定的な関係になる前に,企業合併と便宜的結婚を分けて考えられないだろうかとケイドはモナに連絡を取ろうとしますが,連絡が取れないうちに現地視察が終わってしまいます。そして視察の報告を兼ねてケイドと兄夫婦のもとを訪れたアビーは,ケイドの兄ブレイディと妻サムの姿をみて真実うらやましさを感じます。ところがケイドとブレイディが話している事務室を訪れようとしたとき,中から聞こえてきたのはモナからウエディングドレスが会社に送られてきたという会話でした。「モナとの結婚」を断ったのではないと知ったアビーは,二人の元に駆け込み,即刻辞職しますという言葉とともに,国に帰ってしまうのでした。
 ケイドとアビーの関係の深まりと心の動きを慎重に積み重ねてきて,ここで一気に意表を突く作者の手法は見事です。さらに二人の仲直りをあのロデオマシンの場面を使って大団円にもっていくなどなど,手の込んだストーリー展開は,思わず読者をニヤリとさせていく小気味よさを感じさせる,イチオシ作品です。


タグ:ディザイア
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