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氷雨降るハーグ [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO989
氷雨降るハーグ Never While the Grass Grows 1978」
(ベティ・ニールズ選集 1)
ベティ・ニールズ 小林節子





初訳は1983年12月にハーレクイン・ロマンスR-288として出ています。今回イマージュで再版されたものですが,これからもベティ・ニールズ選集は再版され続けていくのだろうと思います。ロンドンのミッション系の病院の主任看護師オクタヴィアは病気になった同僚の看護師が乗るはずだった豪華客船の看護師の仕事を替わって欲しいと指名され,給料をもらいながら地中海クルーズが出来るかもしれないとワクワクし,この幸運に感謝しています。かなりの豪華客船らしく乗船してみると2人の医師と自分を含めて3人の看護師が乗っていました。2週間のクルーズの間にあちこちで上陸して楽しめるかもしれません。歴史学者である父からは見るべき地点のリストを乗船前にもらっています。そして主任医師として乗り込んできたのは,オランダ人医師ファン・デル・ヴィーネンでした。彼の名前がルーカスであることを知ったのは,一度上陸したときです。ルーカスは何度かこの仕事をしているらしく,どの寄港地でも見所を知っており,オクタヴィアを親切に案内してくれます。やさしいルーカスに心惹かれるものがありますが,先輩看護師が勤務シフトを勝手に自分の都合のいいように変え,どうやらヴィーネン医師に気があるらしいのでした。そこで,自分の想いは表に出さないように注意を払い仕事に専念しようとするオクタヴィアでした。クルーズが終わり実家に帰ろうとしたオクタヴィアをルーカスは自分の車(ロールス・ロイス)で送ろうと言い出します。家に着いたオクタヴィアを待っていたのは父親の突然の死でした。呆然として,ちょうど居合わせたルーカスの言いなりに葬儀を始め,すべての雑事を任せたオクタヴィア。そんなオクタヴィアは自分と一緒にオランダに行って暮らさないかと申し出ます。妻を亡くし,娘一人の養育に苦心しているので,母となる人が必要なのだというのです。突然のプロポーズに驚いたものの,父を失って一人っきりになるよりも新しく家族が出来たらその悲しみも忘れられるのでは,と承諾したオクタヴィア。ハーグに着いてみるとかつてロンドンの病院で身寄りをなくしていた二人の患者もハーグの家で働いているではありませんか。一人娘も自分にすっかり懐き,どうやら前妻との間の関係は余りよくなかったような雰囲気です。ルーカスの実家にいって親族に会ったときも,誰しもがオクタヴィアを美しいと言い,歓迎してくれます。ルーカスの父も実の父と思って欲しいと優しい言葉をかけてくれるのです。豪華な屋敷や高級な車など,どうもルーカスはかなりの資産家であるようですが,仕事を優先し,帰宅も遅く,帰宅後も仕事をすることが多いのですが,オクタヴィアが必要とするときは必ず現れ,助けてくれます。最も助かったのは娘の同級生の誕生会に連れて行って帰宅が遅れたとき,かなり激しい濃霧で全く見通しがきかなくなり,路肩に止めた車に他の車が追突したとき,ルーカスが奇跡的に現れ二人を救出してくれたときでした。便宜的に結婚し,家族にはなったものの夫婦としての愛情はないと思っていたオクタヴィアですが,ルーカスを心から愛していることを言い出すきっかけはなかなかやってきませんでした。そしてルーカスの従兄弟のマーカスがなにかと自分にちょっかいをかけてくるのですが,オクタヴィアはルーカスを優先しきっぱりと誘いを断ることも多くなってきます。そしてある夜ルーカスの上着から2枚の未使用のコンサートのチケットが出てきます。今夜は遅くなるという話からマーカスからの誘いを受けようと思っていたオクタヴィアはルーカスが自分と出かけようとしていたのではないかと気づきます。自分に対する気持ちを確かめなければ・・・。
1978年の作品で上流階級に突然入り込んでしまったオクタヴィアのシンデレラ・ストーリーですが,静かに思いやりをもって美しい妻を見守っていくルーカスや周囲の人たちの優しさにあふれたハートフル・ストーリーです。


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悲しみからの旅立ち [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO708
悲しみからの旅立ち The Vicar's Daughter 1996」
ベティ・ニールズ 広木夏子





原題は直訳すると「牧師の娘」というシンプルなもの。ベティ・ニールズの作品には珍しく,ヒロインは牧師の娘。ヒーローは世界的に有名な小児外科医ガイス・ファン・ケッセル。オランダ人という設定はいつもどおり。ヒロインのマーゴ・ピアソンは,十人並みの器量で特に何か資格があるわけでもない牧師館の娘だが,二人は救急患者の世話という点で2度あった。マーゴには近くに村人たちに,いずれは二人は結婚するだろうと思われていた青年がいたが,互いに約束していたわけでもなく,両親はマーゴに愛にあふれた結婚をしてほしいと考えていた。ガイスとの出会いは,マーゴにもしかしてという期待を抱かせる。しかし,それを直接ガイスに確かめるような性格ではなかった。ロンドンに来ないかという誘いを受け,叔母の元で1週間の滞在の間,ガイスとの交際が始まる。しかしガイスの口から愛の言葉は聞かれなかった。マーゴの両親が交通事故でいっきに亡くなった時も,ガイスから愛の言葉はなかったが,結婚してくれないかという言葉を聞いたときも,マーゴの心に愛は溢れていたものの,それを直接ガイスに伝えることはできなかった。

十人並みの器量と特に目立った特技のないマーゴは,世界的に有名な医師で年上のガイスが自分を愛してくれているとは考えもしなかった。村での結婚式のあと,オランダの家についたマーゴは唖然とする。ケッセル家は大富豪だったのだ。

ガイスの妹のコリーネに頼まれた浮気相手との別れ話の場をガイスに見られていたとは知りもしないマーゴ。突然冷たくなったガイスの態度に不信は抱いたものの,やはり自分はガイスにとって都合のいい友人程度の存在なのだと,離婚か,婚姻解消かという瀬戸際,コリーネから真実を聞いたガイスは・・・。器量や特技,条件という点を除いてマーゴの生き生きとした機転の利く正確に愛を感じていたガイス。身分違いの相手と思い込んでいたマーゴ。二人のつつましくも相手を尊重し,大切にしようとする愛の姿に,すがすがしい読後感を感じる1作。


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