黄金の眠る谷で [MIRA文庫]
SHALOCKMEMO404
「黄金の眠る谷で Granite Man 1991」
エリザベス・ローウェル Elizabeth Lowell 伊藤久美子
ロッキングM牧場シリーズ。
ルークの妹マリア。長い脚にエレガントな胸,チョコレート色の髪に大きな金色の眼。173センチ,57キロの均整の取れた体型。15年間も行方不明だったマリアがロッキングM牧場を訪れるところから始まる。しかし,応対に出たのはカーラの兄キャッシュ。
哀しい生い立ちで義父や母から愛情を受けられなかったマリアは,少しでも家族の愛を得よう,いや,捧げようとする姿勢が読者の胸を熱くさせる。
マリアとキャッシュのロマンス。
入院先で読了。
荒野の風に吹かれて [MIRA文庫]
SHALOCKMEMO403
「荒野の風に吹かれて Outlaw 1991」
エリザベス・ローウェル Elizabeth Lowell 岡本けい
アナサジ族の廃墟を研究するためにコロラド州メサ地区へやってきたダイアナ・サクストンは,近くのロッキングM牧場に宿泊することになります。ダイアナの友人カーラが牧場主のルーク・マッケンジーと結婚し,住んでいたからでした。ダイアナがそこで出会ったのは,牧場の牧童頭テネシー・ブラックソーン(通称テン)。
テンはダイアナの遺跡発掘の手伝いをすることになりますが,民族の血を引くものとして,いろいろと複雑な思いと,発掘に対する一家言を持っていてダイアナの発掘に気づかれないところで影響を与えます。はじめは歓迎されていないと感じていたダイアナも,テンの優しさと歴史への熱い気持ちを知り,テンに惹かれていきます。スピリット・ライトに照らされたコロラドのグランド・キャニオンの美しい風景のもとで繰り広げられる,二人のロマンスと歴史ロマンスが結びついた傑作。
冷たい雨のあとに [MIRA文庫]
SHALOCKMEMO402>
「冷たい雨のあとに Fire and Rain 1990」
エリザベス・ローウェル Elizabeth Lowell 小林みどり
ロッキング・M牧場シリーズ(the Rocking M Ranch)。
ルーク・マッケンジー(Luke MacKenzie)は牧場の経営者。3年前に親友キャッシュの妹カーラ(Carla McQueen)から愛を告白されたが,当時18歳のカーラの告白を冷たくあしらった。特に,ロッキー山脈からの冬の厳しい気候に,女性は耐えられないということからだった。そのカーラが21歳になり,再び牧場にやってくる。夏休みの期間,牧場の家事を手伝うという名目で。しかし,14歳の頃からルークに憧れ続け,愛を告白したものの,ルークへの愛はますます強まるばかり。21歳の大人の女として,自分の気持ちにけじめをつけようと牧場にやってきたものの,ルークにはまるっきり子ども扱いされてしまい,返って気持ちを傷つけられる事になってしまう。
それにしても,気持ちを思い切るためにその人に元に行くということ自体,ちょっと常識をはずれているんでは? あるいは設定に無理があるんでは? 結局の所休日に出かけた懐かしい遺跡で二人の気持ちは燃え上がり,と,お定まりのコースになっていく。
「ルークは何年もお前に夢中だったが,なにせお前は若すぎた。彼は牧場が女性をダメにすると思い込んで・・・」というかつての西部の男らしい生き方とやさしさを表す,キャッシュがカーラに語る言葉に,作者の思いが込められているように思う。
夢をかなえて [MIRA文庫]
SHALOCKMEMO398
「夢をかなえて Dark Fire 1988」
エリザベス・ローウェル Elizabeth Lowell 山本亜里紗
「アメジストの瞳」の続編。ライの姉シンディ(Cynthia)のロマンス。
シンディもライと同じように,父親が超金持ちであること,若い頃一瞬にして恋に落ち結婚した相手から,手ひどく裏切られ,いわゆる男性不信,恋愛臆病になっていることなど,”プリンセス”つまり育ちのよい「お嬢様」と馬鹿にされても負けないガッツを身に付け,しかも自分に自信が持てないという恋愛ハンディを持っていた。
そんな折り,親友スーザンがエクアドルに布の買い付けに行ったまま音信不通になり,単身エクアドルに捜索に向かう。そこで,ガイドとして紹介されたのがトレース(Trace)。友人の捜索にtrace=探索君とは,安易な名前を付けたものだ。
ともあれ,エクアドルの”Andean Cloud Forest”を抜けて,シンディがスーザンを無事発見したとき,同時に親友ばかりではなくトレースという恋人まで発見することになる。
冒険ということではリンダ・ハワードを彷彿とさせるシチュエーションを創りながらも,中編だけに十分な書き込みとヒロインの葛藤に深みがなく,惜しい感じがする。やはり,この手の冒険譚は少なくとも400頁以上はないと,十分満足のいく中身はむずかしいのではないだろうか。
アメジストの瞳 [MIRA文庫]
SHALOCKMEMO396
「アメジストの瞳 Fever 1988」
エリザベス・ローウェル Elizabeth Lowell 上村 楓
アメジスト,紫水晶,石言葉は高貴・誠実。
良心を考古学者に持つ20歳の娘リサ・ヨハンセンは,人類学教授トムソン教授の薦めで,ロッキングM牧場の丘の上にある草原の一区画で新種の植物の観察をすることとなった。
両親と共に世界中の遺跡を旅して回っていたリサは,文明の利器をほとんど使わず,ほぼ自然にあるものだけで自分の生活を営むことが出来る変わった才能の持ち主。
一方,ロッキングM牧場の経営者であるエドワード・ライアン・マコール3世(ライ)は,女性たちが,結局は自分の財産目当てに近寄ってくることに嫌気が差し,女性を信用することが出来ない。しかし,アメジストの瞳と見事なブロンドの長い髪を持つリサを見たときから,そしてリサが全く物欲とは関係のない生活を送っていることに気づいたとき,自分の正体を隠し,ただのカウボーイの男としてリサのもとを訪ねることにした。
「彼女の名は,女。時のない場所に住んでいる」この意味深なフレーズがリサのすべてをあらわしている。そして,ライの主催するパーティーでリサが見,聞いたものは,ライの父親の言葉「あそこにいるのがワシの長男で,ワシに孫をさずけてくれた娘さんには,両手じゃ持ちきれんほどのダイヤをやろう」という言葉だった。女性を物欲と産児マシーンとしてしかみないこの言葉にはさすがに誰でも鼻白んでしまうところだが,ましてやリサの受けたショックは・・・。
ただの男としてのライと愛を確かめた翌朝,リサは夜が明ける前にバッグ一つを持って旅立とうとする。ポプラのような明るい生き方を,そう思ってきたリサが最後に見出したものは・・・。
楽園の闇に抱かれて [MIRA文庫]
SHALOCKMEMO367
「楽園の闇に抱かれて Love Play 1999」
マロリー・ラッシュ Mallory Rush 岡 聖子
ヒロインの職業が図書館司書ということで興味をもって読み始めたが,どっこい,上司のミスター・アンドリューズばかりがなぜか情けない。
甘い一週間 [MIRA文庫]
SHALOCKMEMO344
「甘い一週間 Thursday's Child 1985」
サンドラ・ブラウン Sandra Brown 小林町子
ヒロインはアリソンだが,双子の姉アニーと数日間入れ替わって,というより振りをして,とんでもない事態になっていくというのが第1部。その後,正体を自分でばらしてしまってから後の愛欲の一週間が第2部という具合に場面が大きく変わり,舞台を見ているかのような構成,そして双子が入れ替わるというトリックを使ってのドタバタ劇と,マザーグースを使っている点など,作者の力の入った中編。
蒼い薔薇 [MIRA文庫]
SHALOCKMEMO330
「蒼い薔薇 Blithe Images 1982」
ノーラ・ロバーツ Nora Roberts 飛田野 裕子
MIRA-NR01-31/06.09/\720/251p
大都会ニューヨーク。ヒラリーは生まれ持った美貌と才能を武器に、モデルとして活躍していた。そんな彼女に大きな仕事が舞い込んでくる。有名雑誌の特集で、さまざまな女性像を演じ分けるというものだ。だが最大のチャンスを前にしながら、ヒラリーの心は重かった。雑誌のオーナー、ブレットのせいだ。彼にあざけるような瞳で見つめられると、注意深く隠した思いを見透かされている気がする。そろそろ素顔の自分に戻りたいという切実な願いを…。
ノーラ・ロバーツのカメラマンものは,最近では,「ファインダー越しの瞳」や「胸騒ぎのスクープ」で既読だが,撮られる側のモデルの心情についても,十分読み応えのある文章を示してくれた。
ヒーロー側のブレットの重厚感が,モデルものにありがちなチャラチャラ感をおさえたスピード感を出していると言える。
一七七三年の聖夜 [MIRA文庫]
SHALOCKMEMO328
「白い雪の誓い」所収 1773年の聖夜 In from the Gold 1990
ノーラ・ロバーツ Nora Roberts 矢吹 由梨子
「マクレガー家」のシリーズ番外編。
18世紀のマクレガー家の祖先がスコットランドでイギリスで戦ってやぶれ,新天地を求めてアメリカに移った頃。
セリーナの甥イアン・マクレガーは,ボストン・ティー・パーティ事件の首謀者の一人として負傷し,未亡人アランナに助けられる。
150ページの中編なので,いつものノーラの充実した筆が十分には味わえないが,シリーズものの一つとしてはそれなりに楽しめる。
同窓生 [MIRA文庫]
SHALOCKMEMO298
「同窓生 A Class by Itself 1984」
サンドラ・ブラウン Sandra Brown sandrabrown.net 霜月 桂
今月を締めくくったのは,サンドラ・ブラウンのMIRA文庫。文庫帯によると,「日本未発表の初期作品を初邦訳」とある。
“あなたの知らない10年が,私を大人にした。変わらない愛をくれるより,今の私を愛してほしい”というサンドラらしいメッセージが本書の魅力。
ダニー(ダニエル・エリザベス・クイン)は10年ぶりに故郷に帰り,高校のクラス会に出席する。高校卒業後10年ぶりということは28歳。大人の分別をわきまえた一人前のキャリア・ウーマン。しかも,福祉団体の委員として,別の目的も持っていた。障害のある子供のための合宿施設をふるさとに確保するために,その土地の所有者であるローガン・ウェブスターと交渉するという目的だった。しかもローガンはかつてダニーが結婚式当日に逃げ出した当の相手だった。
アメリカの高校では,高校の卒業パーティの席上,その年のキングとクイーンを選出するというおきまりの儀式がある。あまりにできすぎた設定ではあるが,ヒロインの姓はクイン。ダニーとローガンは誰しも認めるキングとクイーンであり,しかも二人の目の中には互いの姿しか入っていなかった,いわゆる誰しもが認める仲。
そんな恵まれた二人がなぜ結婚に至らなかったのか。それには,いわゆるお嬢様とたたき上げのナイスガイという二人の関係,ヒロインの育ちの良さや俗物な親の考え方があった。
二人の関係は10年ぶりに修復されるのか。最後にはテキサス州知事と夫人まで巻き込むドタバタにまで発展するが,さすが筆力のサンドラ。それも単なるエピソードにすぎないように淡々とストーリーが語られていく。
熱い夏にふさわしい,さわやかな読後感の一作。