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身代わりの侯爵夫人 [アン・ヘリス]

SHALOCKMEMO695
身代わりの侯爵夫人 Bartered Bride 2011」
アン・ヘリス 長田乃莉子





性格の正反対の双子の姉妹,シャーロット(ロティ)とクラリス。父親の賭けの負債の代わりに差し出されたのは初めは妹のクラリスの方だった。ところが,クラリスは紳士のポケットから貴金属を失敬して出奔してしまう。瓜二つの姉のシャーロットは,身代わりにロスセー侯爵ニコラスの許にクラリスと偽って向かうことにする。約束を果たさなければ,父親も妹も監獄に行く羽目になってしまうからだった。という出だしで始まる本作ですが,外見が全く同じで性格が正反対の双子という設定が,本作の中心となるプロットです。
「愛なんてものは作り話だ」。かつて女性に裏切られた経験から,愛を信じられないニコラスと,便宜的な妻になり切りたいと思いつつもニコラスに次第に惹かれていくロティ。素直に自分の気持ちを互いに伝えきれない二人の関係が続きますが,結婚後も身の回りで様々な不審な事件が起こります。そして,ロティや伯母のベス・ホスキンスに密かに金品をたかりに来るクラリス,ニコラスのかつての恋人レディ・エリザベスの登場など,二人の関係をこじらせる要素がふんだんに提供されますが,それらの事件を通して,さらに二人は互いに離れがたい気持ちを抱きつつも素直にそれを口にすることができずにいます。読者をイライラ,はらはらさせながらも,二人が互いの愛に早く気付いていってほしいという思いを徐々につくりあげている,作者らしい好著です。


聖夜に愛して [アン・ヘリス]

SHALOCKMEMO453
聖夜に愛して Married by Christmas 2007」
アン・ヘリス Anne Herries lindasole.co.uk 高田ゆう





ここ何冊か,リージェンシー時代の階級差を乗り越えて貴族階級のヒーローと紳士階級,特に牧師の娘のヒストリカルロマンスを続けて読みました。子孫を残し,財産を維持しようとする財産目当ての愛のない結婚と,上品さは薄く,財産にも乏しいものの,たくましく生きる生き生きした紳士階級の令嬢との愛にあふれた結婚との間で悩み,苦しむ男女の姿は,時代の特徴でもあり,結婚という形式と,世間からは非難される愛人という存在との狭間で,揺れる二人の思いがストーリーを進行させる原動力となっています。
また,本編ではナポレオン戦争でヨーロッパを転戦し,特にスペインでの戦いののち,英国本国に戻ってきた貴族階級と,帰国後も戦争の荒れた人間性を残したまま悪に走ることになってしまう敵役の存在が,戦争というものの本質を見事にとらえた作品になっています。
表紙の瞳をきらめかせて幸福感に浸る乙女の姿は,貴族階級の令嬢とは異なり,いかにも生き生きと愛のある結婚をした乙女の姿を見事にとらえています。本編のヒロインであるジョセフィン(ジョー)もきっとこのような生き生きとした笑顔の荷がう乙女だったのでしょう。白い歯を見せて笑うというのは貴族の令嬢はあまり見せない姿なのではないかと思われます。とびきりの美女というわけではない,しかし,生き生きと愛らしく,生活をエンジョイしようとした知的で才能にあふれた紳士階級の娘の典型を示しているようの思います。
また,ヒーローのハルは,戦争中の兄の死によって,病気がちな父を気遣い,駆け落ちした義姉の行方を捜し,結婚によって家を守らなければならにという義務感と責任感を持ち,財産のない紳士階級の娘であるヒロインを娶ることになかなか踏み切れないでいます。当時の貴族階級では愛情による結婚よりも義務感での結婚が多く,愛人を持つことも社会的には認知されていたということですが,義務による結婚よりも愛による結婚を選択しようとする人々が次第に増えてきたということも,社会的な変化としてリージェンシー時代の大きな変化だったのかもしれません。
本編はそのような,社会的な変化をしっかりととらえたアン・ヘリスらしい佳作に仕上がっています。


謎めいた伯爵 [アン・ヘリス]

SHALOCKMEMO411
謎めいた伯爵 Rosalyn and the Scoundrel 2001」
アン・ヘリス Anne Herries 木内重子



[bk1][7&Y][Amazon]





ハーレクイン・ヒストリカル300号の記念刊。アン・ヘリスの読者の皆様へのコメント付き。
ロザリンは父の遺した比較的大きな屋敷で,田舎暮らしを楽しんでいた。27歳となり,結婚願望がないわけではないけれど,当時としては適齢期はすっかり過ぎ,男性に頼るだけの生活に甘んじることは考えられない。ある朝,散歩の途中見知らぬ男性に声をかけられ,ひと夏のあいだ隣の館を借りることになった隣人ダミアン。その日の夕食に招待され,つい誘いを受けたもののなぜか不安をぬぐい去れなかった。ハンサムで身なりも立派だけれど,とても危険な香りがするダミアン。(だいたい,名前も少々疑わしい。)
不吉な予感は的中した。翌日,叔母から数年前に起きた殺人事件に,ダミアンが関与していたことを知らされる。しかし,直感に従い,ダミアンは信用できる男性であると見抜いたロザリン。
インドの王族の少年ジャレド。いとこの少女サラ・ジェーン,愛犬シーバとの楽しい日々に割って入ったのが,ロザリンの弟フレディーと愛らしい婚約者のベアトリス,そしてベアトリスの伯母で意地悪なお目付役(本作では完全な敵役)ミセス・ジェンキンズ。しかも,ミセス・ジェンキンズの実の弟を殺したのがダミアンだということが分かり,謎が深まるものの,ロザリンはひたすらダミアンを信じ,愛を深めていく。
当時の良家の人々の押さえたつきあい方や会話を十分踏まえながらも,決闘や財産をかけた賭け事など信じられない無謀な生き方が良く現れた好著。


聖なる騎士 [アン・ヘリス]

SHALOCKMEMO358
聖なる騎士 Her Knight Protector 2005」 
アン・ヘリス Anne Herries 杉浦よしこ



聖なる騎士
HS-281/07.03
/\910/284p



アン・ヘリスの中世騎士物語三部作の最終巻。
キリストの聖杯を巡る攻防という大きなテーマを描く傑作。あとがきにあるように「それから先の話はまた別の機会に」語られるかもしれないと期待させるなど,大団円としてまとまりのある1作に仕上がっている。
後半でヒロイン=カトリーヌが敵役レイヴンズハースト男爵と戦おうとしたヒーロー=アランに争わないように言う場面では,この矛盾にアランはどう対処するのか,このあたりが中世物語の真骨頂。
聖なる騎士というタイトルにふさわしい解決策が示される。
さらに,「悪い人もいれば,悪と戦う人もいる。そしてときには正義のために血が流れなくてはならないときもある」という277頁の一言に,アッコンの虐殺から精神的に開放されるアランの心の変化が読み取れるなど,深いテーマを見事に描き,ロマンス小説を超え,再読に耐えるアン・ヘリス三部作の最終巻。今月の超おすすめ。

高潔なる騎士 [アン・ヘリス]

SHALOCKMEMO354 「高潔なる騎士 A Knight of Honour 2005」
アン・ヘリス Anne Herries 吉田和代





高潔なる騎士
HS-278/07.02/\910/284p

SHALOCKMEMO341 「完璧なる騎士」 に続くアン・ヘリスのヒストリカル・ロマンス「騎士物語3部作」第2弾。
ジョン・ド・バール卿の女相続人エローナ(Lady Elona de Barre)は,デーンウォルド男爵から結婚を求められているが,男爵のよこしまな人柄を嫌っている。そんなとき親戚の伯母の息子との結婚話が持ち上がる。父の健康を気遣って結婚したくなかったエローナだがイングランドまでの旅のために迎えに来たステファンとは初めから衝突してしまうものの,なぜか気にかかるところもあった。
聖地から戻り,自分の領地に戻る前に弟の婚約候補者であるエローナを迎えに行かされたステファン・ド・ベインウールフ(Sir Stefan de Banewulf)は,父から疎まれたと思い込んでいたため,聖地に行っていたが温かい家庭で静かに暮らしたいと思うようになりイングランドに戻ってきたのだ。フランスからイングランドへの旅の途中,ステファンとエローナは互いに魅力的に思い始めるが,高潔な騎士であるステファンはエローナへの想いを自ら封印しようとする。<つづく>

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完全なる騎士 [アン・ヘリス]

SHALOCKMEMO341
完全なる騎士 A Perfect Knight 2005」
アン・ヘリス Anne Herries 鈴木たえ子



完全なる騎士
HS-275/07.01/
\910/284p
キーワードは
「完全無欠の騎士」と
「欠点だらけの騎士」
 12世紀,フランスのエレオノール女王の宮廷。女王はイングランド王ヘンリー2世と結婚しているが不仲になり,別居している。
夫に死に別れ,父から不本意な縁談を持ちかけられているアレインは,「愛の宮廷」と呼ばれるエレオノール女王の宮廷に滞在していた。
そこへ,イングランド王の使いとしてやってきたのが裕福なイングランドの騎士ラルフ・ド・ベインウールフ。初めは怒っているように見えるラルフだが,次第に騎士としての誇りの高さや公正さ,本当の優しさがアレインには見えるようになってくる。
時にはなぜこんなに回りくどいのかと思わせるぐらい,騎士道とは何か,男らしさとは何か,淑女(レディ)とは何かということを繰り返し語ってくれる物語。
読後,ハッピーエンドでよかったとホッと思わせるラストのサスペンスも捨てがたい。

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