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琥珀の寵姫 [トリッシュ・モーリ]

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琥珀の寵姫 Captive of Kadar
砂漠の国で恋に落ちて 3) 2015」
トリッシュ・モーリ 柿原日出子





 原題は「カダールの籠の鳥」。正確にはこの「砂漠の国で恋に落ちて」のシリーズではないかもしれませんが,FFの方でシリーズ名を謳っていますし,作家本人のウェブ(http://www.trishmorey.com/)でもシリーズに入れているので,このシリーズに分類してみました。舞台はトルコで「砂漠の国」とは言いがたいのと,ヒーローがシークではないことなどから邦訳ではシリーズの中に入れていないのかもしれません。しかし,ヒーローのカダールはじめ大学同期の4人のヒーローたちの関連作なのでシリーズの中に入れていい根拠はあると思います。ただ,著作年が前2作は2012年で,本作と第4作2015年と間が3年離れているので,それもちょっとシリーズに入れていない理由なのかもしれません。第1作,第2作は未読なので,さっそく購入してみます。
 さて,本作のヒロインはアンバー・ジョーンズというオーストラリア人。祖母の母,つまり4代前の同名のアンバーの日記を母方の実家のイギリスの家の屋根裏部屋で見つけ,同時に貴重で豪華な宝石のついたブレスレットを発見したことからアンバーはこの曾祖母の存在を知ります。恋人の裏切られ,失意の中で休暇の旅行に行こうとしたとき,彼女はこのことを思い出し,旅行先をトルコに変更しました。舞台がイスタンブールとトルコ国内であることもかなりエキゾチックな雰囲気ですが,ヒーローと共にあちらこちら観光旅行に行ってその描写も豊富であることから,あまり馴染みのない舞台でのロマンスとなっていてそれも本作の大きな魅力だと思います。そして市場で老人から古いコインを売りつけられようとしていたとき,巡回中の警官から職務質問を受けてしまいます。国内の遺跡や遺品などの物品を売り買いしたり,国外に持ち出そうとすると大きな罪に問われるということを知らずに,アンバーは言葉も分からないまま老人が差し出したコインを手にしてしまったからです。その苦境を救ってくれたのがヒーローのカダールでした。警察署で事情聴取されるときも現地の言葉と英語の通訳をしてくれ,国外に出るまでは自分が責任を持つからと言って事なきを得たのです。しかし,カダールが自分を泥棒だと思っていることは彼の口からはっきり言われてしまいます。旅行で来るからにはガイドブックなどでトルコのことを調べてくるはずで,物品の取り引きや持ち出しが重い罪になることは分かっているはずだというのがその理由でした。しかし,失恋の痛手と急に目的地を変えたためアンバーは言葉も含め,あまりトルコのことを調べておらず,曾祖母の日記とブレスレットのことばかり考えて訪問を決めたのでした。アンバーはカダールには日記のことは話したのですが,ブレスレットのことを話すと本当に泥棒だと思われてしまうと思い,そこまでは話すことができませんでした。実はカダールはこの事件の発端になった市場での事件を目にする前にアンバーに気付き,その美しさにかなり惹かれ始めていたのです。そして2日後にイスタンブールを去るまで,アンバーが自分の保護下で一緒に行動できることに強く欲望を抱いたのでした。そしてカダールの誘惑が始まります。アンバーもまたこの正体不明の,しかもかなりハンサムな男性を意識し,旅先だけでの付き合いと割り切ってその誘いに乗ることにするのです。二人の相性は抜群でした。そしてカダールの背中を覆う大きな火傷の跡の理由を聞いても,そのことに躊躇することはありませんでした。カダールにしてみれば,これまで関係を持ってきた女性たちが自分のこの火傷跡を見ぬ振りをするばかりでその理由を尋ねようとしなかったのとは異なり,この真っ直ぐに疑問を口にするアンバーにますます惹かれていきます。幼いころ育った村は花火の密造で生活を成り立たせており,その貯蔵庫の爆発事故でカダールは家族全員を失い,助けようと火の中に飛び込んで大火傷を負ったのでした。その後,メフメットという恩人の元で育ち,現在の地位を確保したのですが,そこには,大学時代の友人たち,ゾルタン,バヒール,ラシッドとの交流も大きな要素となっていたようです。そしてアンバーの予定していた国内ツァーが業者の倒産で中止となった時,カダールはアンバーを連れて国内あちらこちらを観光して回ることになります。昼間は観光地で,そして夜はベッドで,ずっと二人での行動が続きます。ブルグクへ,そして岩の中に作られた昔の離宮「月の館」へ。その中でついにアンバーは曾祖母のブレスレットと対になるトルコに残されたブレスレットを発見し,曾祖母の日記を証明するのでした。いよいよ別れの時,カダールはアンバーとの別れを認めたくなくてアンバーが荷物をまとめている寝室のドアを開いたとき,アンバーは手にしていた物を後ろに隠したのが見えます。ついにアンバーがトルコに持ち込んだ曾祖母の形見のブレスレットをカダールに見つけられてしまいます。やはり君は泥棒だったのかと,アンバーの弁明を聞こうとせずに決めつけるカダール。二人の別れは出会う前よりかなり辛いものになってしまいました。
邦訳版の表紙のアンバーのイメージモデルは大胆に背中を見せるドレスを着,こはく色の髪を背中に垂らしています。Best_Imageではありますが,文章で描かれているアンバーの率直さ,純真さは表現し切れていないような気がしています。また,登場人物の紹介ではアンバーは小学校教師となっていますが,文章中ではメルボルン郊外の「学校」とだけ記されていて,しかも別なページでは「身体や発達に障害を持つ子どもたちのための特別な学校」とありますので,「特別支援学校」の小学部というのが正確なところでしょう。


タグ:ロマンス
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その日まで愛を知らずに [トリッシュ・モーリ]

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その日まで愛を知らずに Tycoon's Temptation
ホテル・チャッツフィールド 5) 2014」
トリッシュ・モーリ 中村美穂





チャッツフィールド・シリーズの第5弾です。今回はトリッシュ・モーリの作品。ワイナリーを経営するホリーは祖父とともになんとか事業を軌道に乗せては来たものの,大規模に事業を展開するよりも地元の人たちが喜んで自分の作ったワインをお祝い事などで使って欲しいという職人気質から抜け出せず,やや経営が危なくなってきていたのでした。そこに出資を申し出てきたのがチャッツフィールドのCEO,クリストフ・ヤトラコスでした。祖父のアンガスは大喜びで,しかもチャッツフィールドからの申し出であることに意味があると言います。そして,ワイナリーに派遣されてきたのはフランコでした。大財閥の一族でしかも自分のワイナリーを買収しに来たプレイボーイだと思ったホリーは,初めはフランコに反発して,例え経営的に困ってもチャッツフィールドにだけは売りたくないと宣言します。しかし,なんとしてもこの買収を成功させないと一族からの支援を得られなくなるフランコは,自分もワイナリーを経営し,しかも農作業もできると,ホリーの作業の手伝いを申し出ます。お坊ちゃんの世迷い言と高をくくって作業を許可したホリーですが,フランコが正確にしかも速く作業を進める様子を見て,ちょっと見直します。そして圧倒的な男性としての魅力を振りまくフランコが,不幸な少年時代を過ごし,苦労してきたことを知り,少しずつ彼に引かれていく自分を抑えきれなくなってしまうのでした。フランコもまた,生意気なホリーが農作業用の目立たない服装をしていても女性的な魅力にあふれた面を持っていることに気づき,初めの意図を忘れてもホリーと結ばれたいと考えるようになります。そんなとき,ワイナリーの経営者に与えられるオーストラリアの年間賞の候補者にホリーが入賞します。そして授賞式で優勝者が発表されるというとき,フランコがホリーを連れて行くことになるのでした。そして,二人は結ばれ,強い絆を得ます。チャッツフィールドにワイナリーの製品を出荷することを了承することにしたホリーに,フランコが実は意図的にホリーを口説いていてことを知り,裏切られたホリーは・・・。
反発し合っていた二人が次第に惹かれ合い,そして困難を乗り越えて愛を育んでいくストーリーがとても爽やかで深い印象をもたらす秀作です。


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伝説の国のプリンセス [トリッシュ・モーリ]

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伝説の国のプリンセス Forced Wife, Royal Love-Child 2009」
トリッシュ・モーリ 加藤由紀





トリッシュ・モーリの「あの夜に戻れたら」の姉妹編。女性ヘリコプター・パイロット,シエナ・ウェインライトは,パリで国際的投資家レイフ(ラファエル)・ロンバルディとめくるめく一夜を過ごす。しかしレイフは実は地中海の島国モンテベラッテ国の庶子の王位継承者だった。実子の二人が投獄され,モンテベラッテの王位を継ぐことになる。突然去ってしまうレイフ。しかし,その時,すでにシエナはレイフの子供を身ごもっていたのだった。王位を継いだレイフは王国の継承に関わる法律に従うため,名家の女子を妻としてめとらなければならない。その候補者母娘を島に運んできたのは,シエナだった。シエナをヘリポートで見かけたレイフは,すぐさまシエナを王宮に留める。レイフに妊娠を伝えなければと考えるシエナ。王妃候補者への嫉妬を抱えながらも冷静に対処しようとするシエナ。レイフは二重の悦びを感じるものの,「愛している」の一言を言えない生い立ちの秘密を抱えていた。実はシエナもレイフも父親から捨てられたという過去を背負い,二人とも母親をすでに亡くしていた。レイフは「人を愛してはいけない」という母の言葉から逃れることが出来ない。シエナは,すでにレイフを愛し始めている。二人はこの壁を乗り越えて結ばれるのだろうか。
女性のヘリコプター・パイロットという職業ながら,シエナは美貌,健康,賢明さを備えた女性。しかもレイフを愛している。そんなシエナにレイフは「立ち去れ」と言わざるを得ない。このカタルシスを解消するために,伝説の「野獣の山」を利用している筆者の構想のすばらしさが光る作品。


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あの夜に戻れたら [トリッシュ・モーリ]

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あの夜に戻れたら The Ruthless Greek's Virgin Princess 2009」
トリッシュ・モーリ 加藤由紀



The Ruthless Greek's Virgin Princess 2009"/ WIDTH="100" HEIGHT="144">
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トリッシュ・モーリのハーレクイン・ロマンス。2010年10月の刊行です。「伝説の国のプリンセス」の関連作で,未読ですが,本書のヒーローの友人でヒロインの兄ラファエル・ロンバルディとシエナのロマンスのようです。本書ではすでに二人は結婚し,シエナのお腹の中には双子がその存在を主張しています。
さて,ヒーローのヤニス・マーキデスは一度傾きかけたマーキデス家を再興するために仕事フリークとなり,金融アドバイザーとして成功し,大金持ちとなっていますが,これには13年前のある出来事が関係しているのでした。婚約者のエレーナとの結婚を目前に泥酔して眠っているとき,ある女性がヤニスのベッドに侵入し自分の身を捧げようとしたのです。途中で目覚めたヤニスは忍んできた女性を部屋から追い出したのですが,女性が部屋をあわてて出ていく様子を他の人に見られ,エレーナとの婚約は破談になってしまいます。海運業を営むヤニスの父はより大きな資金を獲得するために富豪のエレーナの父との契約にこぎつけるため,息子の結婚を強引に進めようとしていたのでした。いわばこの婚約は政略的なものでした。しかし,うわさが広まったため破談になり,ヤニスの父の事業は失敗してしまい,失意の末ヤニスの父は亡くなってしまいます。ヤニスの部屋に忍んできた女性こそ,本書のヒロイン,マリエッタ・ロンバルディでした。ヤニスに惹かれていたマリエッタはヤニスとエレーナの婚約を知らず,16歳でヤニスの心をとらえるために自分を捧げようと部屋に忍んだのでした。そして,13年後・・・。ヤニスの兄の結婚式に再会したヤニスとマリエッタは,その後互いに決まった相手もなく,気まずい思いでいます。しかし互いに惹かれあう気持ちは13年の時を経ても変わっていませんでした。そして結婚式の直後,ロンバルディ家に脅迫状が寄せられます。宝石デザイナーとして自立しようとしていたマリエッタはハワイに自分の作品の直営店を開店しようとしていましたが,脅迫状にはマリエッタも指名されており,兄のラファエルは友人のヤニスにマリエッタを守るように依頼してしまいます。ヤニスも一緒にハワイに渡りマリエッタの店の開店準備に片時も離れずマリエッタを守ろうとするのですが,一度手厳しく拒絶されたマリエッタはヤニスの行動にいちいち反抗するのでした。開店準備がなかなかうまくいかなくなってとき,マリエッタがふと漏らした言葉に,ヤニスは自分に手助けできることを発見し,ついに開店パーティが開催されるのです。
13年前にヤニスがマリエッタを部屋から追い出した理由が徐々に明らかにされるというサスペンス色もにじませ,二人のロマンスが次第に高まっていく快作です。


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