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孤独な瞳の目撃者 上下 [ノーラ・ロバーツ]

SHALOCKMEMO714
「孤独な瞳の目撃者   The Witness 2012」
ノーラ・ロバーツ 越本和花





2000年6月,16歳のエリザベス・フィッチは,殺人事件を目撃し,FBIの証人保護プログラムで保護されていたが,殺人犯ロシアン・マフィアに買収された別の捜査官によって襲われ,17歳の誕生日当日,さらに孤独なまま逃亡生活を送ることになる。12年後,アビゲイル・ロウリーと名前を代え,アメリカ南部のオザーク高原の町の郊外で,人との接触を極限まで制限して身をひそめるように暮らしていた。身近には常に犬のバートを従えて。ブルックス・グリーソンは,教師の父,画家の母,二人の姉のもとで成長し,最近,町の警察署長として人々に尊敬をもたれ,すっかり町に溶け込んだ存在になっていた。ブルックスは,秘密の多い生活をするアビゲイルに警察署長として興味を抱き,なんとか接触を試みようとするが,誰にも心を開かないアビゲイルによって拒否される。しかし生来の世話好きで自分の思い通りに人を巻き込んでしまう母のサンシャイン・オハラ(サニー)は,アビゲイルのもとを訪れ,瞬く間に友達同様の存在になってしまう。少しずつ心を開きかけるアビゲイルのもとにブルックスは何度も訪れ,いつしか信頼を得るようになる。やがて,逃亡生活に至る理由を明らかにするアビゲイルをブルックは愛してしまう。アビゲイルもまた,信頼というこれまで得られなかった感情をブルックスに抱き,いつしかそれが愛情であることに気づく。16歳の時,さらには17歳の誕生日当日の殺人事件の証人として,悪行を尽くすロシアン・マフィアのヴォルコフ一家を裁判で有罪にするために,ブルックスとアビゲイルは買収の疑いのない信頼できるFBI捜査官に接触しようとするのだが。優秀なコンピュータ・プログラマーとなったエリザベス(アビゲイル)は,その才能を生かし,FBIのセキュリティをも突破するプログラムを開発,駆使して,悪に立ち向かうという新しい形の物語をノーラはこれでもかというほど見せてくれる。そして相変わらず家族という問題をストーリーの背景にしっかりと据えながら,ヒロイン,エリザベスの心の成長を優しい視点で描きながら驚愕の終結へと一気になだれ込むジェットコースター・ストーリーを展開する傑作に仕上げている。エピローグを読み終わったとき,読者に流れる涙は,温かくゆったりとほおを伝わる涙になるはず。


夢描く青いキャンバス [ノーラ・ロバーツ]

SHALOCKMEMO681
夢描く青いキャンバス Born in Shame 1996」
ノーラ・ロバーツ 清水はるか





 コンカノン姉妹に異母姉妹がいた。前作ですでに触れられているように,姉妹の父トム・コンカノンは,アメリカからやってきた女性に愛を感じ,女性の方もトムのやさしさに深い思いを抱いていたことが,屋根裏部屋からブリアンナが見つけた手紙によってわかっていた。ローガンがアメリカの探偵社に依頼してその女性を探し続けたものの,次々と転居した彼女の足取りがなかなかつかめず,やっとたどり着いたときには彼女はすでにこの世を去っていた。本作はその娘シャノンが母から本当の父親の名前と居所を聞いたところからスタートする。死の床にあったシャノンの母親アマンダは,シャノンに出生の秘密を告げる。自分の父親はすでに亡くなり,わずかの間に母親も死の床についた。そのまま秘密をあの世に持って行ってほしかったものの,知ってしまったことから逃れることはできない。しかもシャノンは商業デザイナーとして多忙を極めている会社での昇進がかかっている大事な時期。会ったこともない異国の姉妹のことを考える余裕などはなかった。訪ねてきた探偵社の男は,正に母の葬儀の翌日にやってくるという間の悪さ。ソウしているうちに,アイルランドの姉でアルブリアンナから心のこもった手紙が届き,自分の出生と自分の人生に整理をつけるためブリアンナのコテージを訪ねる。そこで出会うのは,運命の人,マーフィー。
 第1作,第2作でコンカノン姉妹の隣人としてしょっちゅう顔を出すマーフィーが,シリーズ最終話の本作ではヒーローとして活躍します。農夫でありながら多くの蔵書を持ち,詩人さながらに言葉を紡ぎ出し,様々な楽器の演奏もできるという多彩な才能を持つマーフィーの家や家族たち,そして性格が本作の大きな柱になっています。また,シャノンは商業デザイナーとしても才能を発揮していましたが,自身が趣味で描いている絵にも,プロ並みの才能をもっており,それを見抜いたローガンが,自身のマネージメントを受けて個展を開くようシャノンを説得にかかります。前2作で登場したマギー夫妻とブリアンナ夫妻の子供たちもにぎやかに顔を出し,コンカノン・ファミリーが次第に大きな家族を形成していく様子が全編を通じて表れています。が,なんといってもマーフィーとシャノンの激しくも深い愛の物語が中心の秀作です。


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心やすらぐ緑の宿 [ノーラ・ロバーツ]

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心やすらぐ緑の宿(海辺の街トリロジー 2) Born in Ice 1995」
ノーラ・ロバーツ 清水はるか





 三部作の第二部にあたります。前作でも登場したマギーの妹ブリアンナは,BアンドB「ブラックソーン・コテージ」を独りで切り盛りしています。姉マギーがガラス芸術家としての才能を持っているのに対して,ブリアンナ(ブリー)は料理人としての才能,そして人の世話をする才能に恵まれ,コツコツとお金を貯めながらコテージを改修し,次第に居心地のいい領域を広げています。そんな,ブリアンナの元を訪れた長期宿泊者は,アメリカのミステリ作家グレイソン・セイン( Grayson Thane )です。
 両親の愛情を受けず路上生活を送った経験を持つグレイソン(グレイ)の定住先を持たない生活スタイルと,母親からの愛を受けずに育ったにもかかわらず,宿泊客に対して常に居心地の良さを心がけるブリアンナ(ブリー)の生活スタイルのちがいが,惹かれ合いながらも二人の心がなかなか一緒になりにくいことを冒頭で掲げ,紆余曲折を経てグレイが自らの生活スタイルを愛のために変えるのかという興味が,読者を700ページの大作の最後まで牽いていきます。
 前作で謎とされた父親が購入した株券の裏話が意外なところと関連して出てきたり,マギーとローガンの赤ん坊を周囲の人々みんながかわいがったり,屋根裏部屋から見つかった亡き父の恋人アマンダの行方など,サイドストーリーを織り交ぜながら,ブリーが交通事故に出来事を挿話としながら,前作にも登場した周辺の人々が随所に顔を出し,ブリーとブリーの視点から見たストーリーが描かれます。
 ところで,このBアンドBの描写には,おそらくノーラ自身が関わっている「 Inn Boons Boro 」が活かされているのではないでしょうか。


情熱の赤いガラス [ノーラ・ロバーツ]

SHALOCKMEMO679
情熱の赤いガラス Born in Fire 1994」
ノーラ・ロバーツ 清水はるか





 ガラス工芸芸術家のマーガレット・メアリ・コンカノン(通称マギー)と国際的画廊の支配人ローガン・スウィーニー。職人気質のマギーと経営者気質のローガンという対局の二人のロマンス。マギーと妹のブリアンナも全く性格の違う二人,そして常に周囲の人々に笑いと話題を振りまくコンカノン家の亡きトーマスの存在と姉妹の母メイヴとの確執,さらにローガンと幼なじみの未亡人パトリシアの存在など,多くの人間関係が織りなす長編傑作シリーズ。アイルランドの片田舎を主な舞台としながらも,田舎と大都会ダブリンの人間関係の違いも織り交ぜるなど多くの対局を配置し,それぞれが密接に結びつきながらストーリーが展開していくノーラらしい満足のいく作品です。
 アイルランド人の頑固さ,女性が赤毛で気性が激しいことで知られていますが,マギーとブリアンナの姉妹の激しさは対照的です。マギーの激しさとブリアンナの芯の強さ,外面的には全く対照的なのに,両者に共通する強さは,ノーラが描きたかったアイルランド人の特徴なのでしょう。祖先をアイルランドに持つノーラもやはり,芯の強さと気性の激しさが根底にひそんでいるのかもしれません。そして,父親っ子であり,母親に憎まれているマギーと,そんな母親であるにもかかわらずこき使われながらも見捨てることができずに,なんでも言うことを聞いてしまうブリアンナ,その頑固さにも,二人の対照が見て取れます。両親の不幸な結婚を見て育ったマギーが,ローガンからプロポーズされても結婚だけは断り続けるところに,親子関係の複雑さ,そして断り切れなくするためにローガン流の方法で次々とマギーにアタックしていく小気味よさも本書の魅力の一つでしょう。
 原題の「Born in Fire」は直訳すると「火の中で生まれて」とでもなるのでしょうか。”Fire”はマギーの火のでるような激しい性格とマギーの職業であるガラス工芸の作業場の火の両方を指していると思われますが,邦題の「情熱の」でその激しさを表しているように思います。


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花の島の想い [ノーラ・ロバーツ]

SHALOCKMEMO613
花の島の想い Island of Flowers 1982」
ノーラ・ロバーツ 城 和子





大御所ノーラ・ロバーツの初期の作品の文庫化。すでに3回版を変えて出されている。
「花の島」はハワイのカウアイ島。母とパリで暮らしていたレイーヌは母の死後,母の借金を清算して父のいるハワイにやってくる。母は,娘のレイーヌのことよりも自分のことを優先する超がつくジコチュー女性。レイーヌの面倒は一切見ず,寄宿学校に預けたままだった。その後レイーヌは母校の教師として自立していたが,父からレイーヌに送られていた養育費や誕生日ごとのプレゼントはすべて母が着服し,そのことをレイーヌは全く知らなかった。そのため,母の死後,遺品として残されていたものをすべて売却したが,そのほとんどは,母が残したものというよりも父がレイーヌに贈ったものだったことがわかってしまう。
そんな母の仕打ちを全く知らない,父と一緒に働く青年実業家ディロン・オブライエンは,レイーヌを迎えにマウイ島へやってきて,カウアイ島に向かう自家用機の中でレイーヌを世間知らずのお嬢さんで,自分の父に全く手紙も出さない冷たい女と詰る。初めはディロンに反発を覚えるレイーヌだったが,ハワイの素晴らしい自然と,父の家の家政婦ミミの暖かさに次第に心を開いていく。やがてディロンの思いやりの深さに気付いていくのだが,初めに互いの気持ちに生じたねじれはなかなか解消しないまま・・・。後年のノーラのどの作品にも通じる家族愛を,ハワイを舞台に美しく描いた傑作。小品ながら人物造型とストーリーテリングのすばらしさは十分に出ている作品。


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旅の約束 [ノーラ・ロバーツ]

SHALOCKMEMO414
旅の約束 The Welcoming 1989」
ノーラ・ロバーツ Nora Roberts 坂井恒子



[bk1][7&Y][Amazon]





ある日車がパンクしたところをローマンという見知らぬ男性に助けてもらったチャリティ。仕事を探しているという彼に、ホテルを手伝ってくれるなら一室を貸すと申し出る。
チャリティが経営しているホテルで,偽札が使われていることを捜査しにきたローマンは,くるくると働き回るチャリティに惹かれてしまう。チャリティも大工仕事だけでなく何でもこなしてしまうローマンに惹かれていく。
二人の気持ちが高まったとき,チャリティが交通事故で怪我をしてしまう。このあと謎が一気に高まり,チャリティが人質に。
事件の解決に後に,チャリティとローマンの気持ちのすれ違いを,ローマンはどう解決していくのか。
ホテルの従業員たちもチャリティーとローマンの後押しをするところが,読後感をさわやかにしている。


愛と哀しみの城 [ノーラ・ロバーツ]

SHALOCKMEMO408
愛と哀しみの城 First Impressions 1984」
ノーラ・ロバーツ Nora Roberts 大野香織



[bk1][7&Y][Amazon]





祖母の死後、相続した家を改装しアンティークショップと博物館を開こうと計画していたシェーンは,家の改装を隣家に越してきたバンスに依頼することにするが,バンスは有名企業の経営者であり,ちょっとした休暇を過ごすつもりで転居してきただけだった。
独立心が強く,ものごとを常に前向きにとらえ,どんな境遇に陥っても明るく生きていこうとするシェーンは,ノーラ・ロバーツのヒロインの一つのパターンを表している。
南部魂いっぱいのアメリカ娘と,一度は愛を失った男が心からの愛と幸福を見出すロマンス。
お金で愛は買えないが,お金はあれば愛を深められるというアイロニーも漂わせる佳作。


銀河のおりる草原 [ノーラ・ロバーツ]

SHALOCKMEMO368
銀河のおりる草原 Song of the West 1982」
ノーラ・ロバーツ Nora Roberts 佐野 晶



銀河のおりる草原
HQB84/07.06/
\630/196p



ノーラ・ロバーツ初期の作品で絶版になっていたのがHQ文庫で再刊されたもの。ワイオミングの自然が満喫できる中編。ダブルT牧場のジェイク・タナーという後にノーラの作品にたくさん出てくる舞台設定。
双子のサマンサとサブリナ。妹のサブリナはダブルT牧場の隣,レイジーL牧場のダン・ロマックスと結婚し,出産の準備をしている。姉のサマンサはオリンピックの体操競技で金メダルを取った後,フィラデルフィアで体育教師をしているが,妹の出産の手伝いをするためにレイジーL牧場にやってくる。
ダブルT牧場のジェイク・タナーは大金持ちでハンサムな独身男性であり,牧場経営もうまくいっているがなかなか結婚を考えるような女性とは出会っていない。サマンサとジェイクは互いに一目惚れではあるが,サマンサはなかなか自分の気持ちに正直になれず,ジェイクの誘いにも簡単にのろうとしない。敵役に登場するのはレスリー・マーシャルというわがまま一杯のダブルT牧場の隣家の牧場の娘。結局はサマンサとジェイクを結びつけることになるのはレスリーの一言であることから,憎めない存在。

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