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星屑のシンデレラ [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO1450
星屑のシンデレラ Trapped By Vialli's Vows
( Wedlocked 63 ) 2016」
シャンテル・ショー 茅野久枝





 原題は「ヴィアッリの誓いの罠」
 ヒロイン:マーニー・アリス・クラーク(24歳)/カクテルバーのウエイトレス,ロンドン大学学生/長い金髪,ブルーの瞳/
 ヒーロー:レアンドロ・ヴィアッリ(34歳)/「ヴィアッリ・エンターテインメント」経営者/彫りの深い顔,灰色の目,日焼けした金色の肌,赤褐色の髪/
 シンデレラ・ストーリーとしては何かちょっと悲哀に満ちた作品です。作者お得意の「愛人もの」ですが,唯々諾々とレアンドロの言うとおりに生活していたマーニーが,妊娠。さて愛人から昇格するのかというところで,事故により記憶喪失に。自分が言いすぎたと反省したヒーロー,レアンドロは,これ幸いと,二人の結婚を事実上のものにしようと画策するのですが・・・。マーニーの記憶がいつ戻るのか,これは「記憶喪失もの」で最も重要な要素ですが,作者は結婚式当日まで引っ張ります。そして何かとタイミングが悪くて疑われてきたマーニーに次々とそのもつれた糸を解くように証人が現れ,そしてマーニーの記憶が完全に戻ったとき,マーニーはレアンドロに怒りをぶつけて式場を去ってしまうのでした。ストーリー展開としてはちょっと都合が良すぎる感じがあり,作品としての捻りが今一つですが,まぁそんなに突飛な感じでもないのでありがち,ぐらいにしか思えません。
 複雑な家庭環境の元で育ったマーニーとレアンドロ。二人にはそんな共通点があるのですが,互いにプライドが邪魔してそれを秘密にしています。そのことが二人の誤解の元になるのですが,その誤解が解けたとき,二人の愛は完成するのです。生まれた女の子。名前をイタリア風にステラ(星)としたところが,マーニーが宇宙物理学で学年最優秀をとった経緯とかぶり,これも納得の部分です。


タグ:ロマンス
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百八十夜の愛人契約 [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO1334
百八十夜の愛人契約 Mistress of His Revenge
( Bought by the Brazilian 1 ) 2015」
シャンテル・ショー 中村美穂





 原題は「彼の復讐の愛人」
 ヒロイン:サブリナ・バンクロフト(28歳)/大学アンティーク家具講師,修復家,バンクロフト伯爵令嬢/目の覚めるような美女,抜群のスタイル,身長160センチ台,淡いブロンドの髪,灰色の目/
 ヒーロー:クルス・デルガド(34歳)/ブラジルのダイヤモンド鉱山所有者,「デルガド・ダイヤモンド」経営者/180センチを越える身長,オリーブグリーンの目,黒髪/
 ブラジルのベロオリゾンテ貧民街で少年時代を過ごしたクルス・デルガドと500年以上の歴史を持つイギリスのエバースレイ館を所有する伯爵令嬢サブリナ・バンクロフト,一般的には身分違いの二人はブラジルで互いを強く求め合う生活を送ります。10年前のことでした。しかし,サブリナは妊娠4ヶ月半で流産し,同時期にクルスの父親が鉱山事故で大怪我を負い,その怪我が元で亡くなるという出来事のせいで,二人は別れてしまいます。クルスが欲しかったのは私ではなく子供だけ。子供を失ったのに嘆き悲しむことがないサブリナは自分を愛してはいない。それにサブリナの父が自分の父を無理やり鉱山に向かわせて結果命を失うことになった。そんな気持ちのすれ違いと互いによく話し合うことをしなかったため,勘違いをしたまま互いを責める気持ちをもちつづけて別れてしまったのでした。この時の互いの気持ちのすれ違いが10年後の再会をぎくしゃくした状態でスタートさせることになります。サブリナたちバンクロフト伯爵家の住居エバースレイ館は,伯爵の借金と維持費の急激な増加のため,今や売却せざるを得ない状況までになっていました。なんとかして維持していこうと努力するサブリナは,富裕層に部屋を貸して料理を提供するホテル業的な企画をして少しでも借金を返そうとしていましたが,父とは連絡が取れず,さらに弟が高額の学費の必要な航空学校への進学を決めていたからです。母を亡くし,留守がちな父をもち,弟にとってサブリナは姉であり,母親代わり,父親代わりでもありました。サブリナにとっても弟は唯一の家族だったのです。そして500年の歴史を誇る伯爵家を継ぐのは弟であり,その歴史と伝統こそ家具修復家であり歴史学者でもあるサブリナの生きがいでもあったのです。こんなサブリナの経済的苦境にクルスは冷酷なくさびを打ち込んできます。6カ月間180日間自分の愛人を務める代わりに経済的援助をしようと・・・。何日間かの抵抗を示しては見たものの,エバースレイ館でぼや騒ぎがあり,その修理費にさらに負担が増えることになってしまい,結局はその提案を飲まざるを得なくなります。10年前恋人同士だった二人の間に抜群の相性が戻ってきます。しかし互いの心が触れあうことはなかなかに難しいことでした。サブリナが自分の思っていた女性ではないのではないかと考え始めたクルスは,たまたまパーティで老齢の婦人から指摘されたのをきっかけにポルトガルの別荘にいくことをサブリナに告げます。今回も一言の相談もなく行動を決められてしまったサブリナは一言皮肉を言いますが,自分は金で買われた愛人だと言うことに思い至り口をつぐんでしまいます。そして海岸に面した素晴らしい宮殿のような別荘で二人は数日間,ほとんど二人っきりで過ごし,少しずつ10年前の互いの勘違いを修正していくのでした。まもなく一週間が過ぎようとしたとき,サブリナの弟から父親がエバースレイに戻ってきたと連絡が入ります。いそぎイギリスに戻るサブリナ。もう,クルスはサブリナへの愛人契約から解放すると言い,サブリナは一人イギリスに戻るのでした。一方クルスは母親から父親の死の真相は,サブリナの父により無理やり坑道に押し込まれたのではなく,父親の方が伯爵の制止を振り切って欲尽くで坑道に向かったのだと知らされます。父親を偶像視していたクルスを落胆させたくなくてついた嘘だったというのです。これでサブリナが10年前から自分を愛してたことという言葉が本当だったことが分かるのでした。もう一つの気がかり,流産したときなぜ嘆き悲しむことがなかったのかという疑問は解けませんでした。クルスは,再度エバースレイに向かうことになります。
 オリンピックの影響からかブラジルが関係した作品の翻訳が少し目立っているような気がしますが,本作はなんといってもヒーロー,ヒロインの心の動きが丁寧に描かれ,感情移入しやすい作品だと言うことだと思います。生まれ育ちの良さや経済的豊かさよりも愛にあふれた関係の方がずっと豊かで幸福になれるというメッセージが込められた作品でもあります。


タグ:ロマンス
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百万ポンドの偽の花嫁 [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO1238
百万ポンドの偽の花嫁 A Bride Worth Millions
( Howard Sister 2 ) 2015」
シャンテル・ショー 柴田礼子





 原題は「百万の価値の花嫁」
 ヒロイン:アテナ・ハワード(25歳)/元保育士助手/サファイアブルーの瞳,卵形の顔,頑固な性格を物語るしっかりした顎/
 ヒーロー:ルカ・デ・ロッシ(35歳)/「デ・ロッシ・エンタープライズ」経営者,ファッションデザイナー/琥珀色の虹彩に金色の斑点が散る珍しい瞳/
 「国王の許されぬ愛人(SHALOCKMEMO1155)」で見事な活躍を見せたレクシー・ハワードの妹(養父母の実子)アテナのロマンスです。ヒーローのルカ・デ・ロッシは「デ・ロッシ・エンタープライズ」の経営者で,ファッションデザイナー。婚外子として父親から捨てられ,母親を亡くし,祖父母もいやいや引き取りはしたものの,直系の孫ということで会社の経営を引き継いでいますが,祖母の遺言で,35歳までに結婚しなければデ・ロッシ家の全ての財産を従兄弟に譲らなければならないことになっています。フランス人モデルと契約的結婚をしようとしていましたが,結婚式場から逃げだしたアテナとの行動が大々的に報道されてしまったために契約結婚を諦めざるを得なくなり,仕方なく選んだ選択はアテナとの結婚でした。姉レクシーとは違って小柄で豊満な体型をしたアテナ。MB版の表紙モデルはいささか美しすぎて,アテナの感じはでていませんが,それでもアテナが両親から常に姉レクシーと比べられ自分に自信がないことによる思い過ごしだとすると,ルカが魅力を感じるほどの美しさを秘めた女性なのかもしれません。ギリシア神話のアフロディーテのようだと形容されるととたんに恐怖に囚われてしまうのは,かつて家庭教師から受けた性的暴行を思い出すからです。ルカのような美しい男性が自分を好きになるはずがない,しかも,契約結婚で初めから愛を期待しないようにと念押しされていた二人の関係ですが,傲慢ながらも時に優しさが垣間見えるルカの行動に次第に惹かれてしまうアテナでした。契約結婚ではあるものの一族,特に大叔父には本物の結婚のようにみせなければならないため,パパラッチにわざと二人の甘い関係のように見せようと始終触れあっている間に,男性恐怖症も次第に薄まっていくのですが,いざ寝室に入ってみると恐怖心が戻ってきてしまうアテネに,ルカは自分をじらすためのわざとらしい行動と取り,アテナを非難するのですが,モデル体形ではないアテナに強烈な魅力を感じ,しかも普段女性に話したことのないことまで話してしまう自分に驚いてもいるのでした。ルカにはロザリーという娘がいました。結婚はしなかったものの,かつて愛した女性との間の娘で,退行性の遺伝的病気でベッドを離れるときは車椅子が必要だったのですが,ロザリーもまた病気が表れると母親に捨てられてしまい,ヴィラ・デ・ロッシというコモ湖畔の屋敷での生活が,ロザリーの病気療養にとっては,最も必要な条件なのでした。アテナもまた,インドのジャイプールにある「ハッピースマイル」という施設で捨てられたこどもたちの養育に支援していたのですが,そのためにルカに提示された100万ポンドのお金があれば,施設の改修と維持費としてはまさにうってつけの条件だったのです。100万ポンドを自分の贅沢のために要求されたと思っていたルカは,アテナがちっとも宝石や服を買おうとせず,着飾ることをしないのを不思議に思いますが,何のためにお金が必要なのかを聞くところまではしませんでした。ラスヴェガスでの簡単な式で正式に夫婦になったアテナとルカ。次第にルカはアテナの女性としての魅力に惹かれ,そしてアテナもルカとの関係が深まって本物の結婚にしたいと思うほどルカを愛してしまいます。そこに,姉が嫁いだゼンフルから知らせが届きます。姉の生んだ子どもの心臓に欠陥があることが分かったのです。急ぎ砂漠の国に向かうルカとアテナ。幸いファイサルと名づけられた息子の病は軽いもので大事はなかったのですが,アテナを愛し始めたルカには,娘ロザリーに遺伝した病気の遺伝子があり,アテナが望む自分の子供たちを与えられないことが分かっていました。いずれアテナの希望に添う健康的な男性と再婚することを願って,自分の事業を整理して遺産を断り,契約を打ち切ることを決意したルカ。傷心の内にアテナはその夜の内にルカの元を去ってしまうのでした。そしてインドの「ハッピースマイル」に直行したアテナの元を,数日後にルカが訪れます。さぁ,二人の関係は復活するのでしょうか。今度はルカはどんな提案をアテナにするのでしょうか。
 前作のヒロインで姉レクシーとは正反対の要望と性格を持つアテナもまた魅力的なヒロインです。どちらも両親や祖父母から認められなかった過去を持つ二人が運命的な出会いをして愛を手に入れるまでのロマンスらしいストーリー展開で,一気読み間違いなしの秀作です。


タグ:ロマンス
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国王の許されぬ愛人 [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO1155
国王の許されぬ愛人 Sheikh's Forbidden Conquest
( Howard Sister 1 ) 2015」
シャンテル・ショー 麦田あかり





 ヒロインがヘリコプターのパイロットということでどんな女性か愉しみに読み始めました。4歳で母親に捨てられ二度目に引き取ってもらった養父母に大切にされたのですが,養父母は実の子供が出来てしまうとその子を溺愛し,ヒロインは寄宿学校に追いやられてしまいます。誰にも愛されない自分。そんな想いを抱きながら成長してきたレクシー・ハワード(28歳)でした。長じて王立空軍のパイロットになり,アフガン戦争でも活躍して勲章をもらい,1年間の契約で沿岸警備隊で働いているのでした。そんな彼女が嵐の中で転覆したヨットから救出したのは地中海沿岸の砂漠の国ゼンハブの国王カディル・アル・スレイマルでした。父王から王位を譲り受け32歳の若さながら人々の尊敬を集める立派な君主で,しかもハンサム。さらには母方から受け継いだモンゴメリー伯爵という爵位も持っています。そんなカディルに向かって,「嵐を予想してヨットを待避させる行動を取らなかったリーダー」と真っ向から非難したのがレクシーでした。国王に向かってこんな怒りをぶつけてくる女性を始めてみたカディルですがなぜかレクシーの言葉に反論できず,しかもそんな彼女に魅力を感じたのでした。しかし,カディルは現王権を確保するために国内の反体制派の叔父との約束,つまり北部地区のシークの妹との結婚が決まっていました。カディルは沿岸警備隊との契約が切れるレクシーを王室専用のヘリコプターパイロットとして雇うことを計画します。次第に惹かれ合うカディルとレクシーですが,このカディルの婚約が大きな障害となります。そして婚約者に会うためにレクシーの操縦するヘリで北部地区に向かおうとしたとき,ヘリはカディルの叔父の計略で乗っ取られ,カディルの所有する無人島に二人は取り残されてしまいます。島に二人きりになったその夜,二人の愛は爆発的に燃え上がります。そして救出された二人ですが,カディルは王権をかけて婚約の解消を北部地区のシークに申し出るのでした。政略結婚を誤ったことと理解して婚約解消に応じたシークと婚約者に感謝して王宮に戻ったカディルは反逆の罪で叔父を逮捕し,二人の間の障害はなくなったように見えますが・・・。
 島での情熱的な夜の愛の結晶の可能性を理由にカディルはレクシーをゼンハブに留めますが,レクシーは自分の実母の過去や実父が誰かを知らないことを理由に,カディルのプロポーズを断るのでした。そして数週間が過ぎ,レクシーが妊娠していないことがはっきりするのでした。自分の母が自分を捨ててイギリスに帰ってしまったことで,父には愛されたもののカディルもまた母の愛情を信じられずに育ったのでした。そのため自分の子供には思い切り愛情を注ぎたいと考えていたのですが,それよりもレクシーと離れては自分が生きていけないことにやっと気付くのでした。
 美しく,しかも自分ひとりの力で優秀なヘリのパイロットとしてのキャリアを作り上げてきたレクシーの魅力が十分に伝わってくる[Nice Heroin]な作品です。


タグ:ロマンス
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無垢な公爵夫人 [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO1079
無垢な公爵夫人 The Spanish Duke's Virgin Bride
Innocent Mistress, Virgin Bride 5) 2007」
シャンテル・ショー 森島小百合





父の勤務先での使い込みの罪を軽減してもらおうと本社のCEO,ハビエル・エレーラを訪ねたグレース。邸宅を売ることで得た200万ポンドを全額つぎ込んでも,さらに100万ポンドの借財が残ります。そしてそれは,母の治療費のために使い込みをせざるを得なかったという理由を理解してもらい,少しでも返済の猶予を得ようと考えたからです。衰弱している父にこのまま借金を背負わせてしまえば,心労のあまり父も失ってしまいそうでグレースは必死でした。これまで両親に愛され,大邸宅で何不自由なく暮らしてきたグレース。初心な心で男性に気を許し,それが既婚者であり裏切られた気持ちを強く感じたグレースは,父の援助でアンティークショップの店を開き,少し経営が好転してきたところですが,そんなグレースにハビエルは,ある提案をします。借金の肩代わりをする代わりに,君は何を差し出すのか?もし,一年間自分の妻でいてくれたら条件を呑もうと。再び男性に騙されようとしているという不安の一方で,この条件を呑むしか父を救う手立てはなく,不承不承承知しながらも,グレースはハビエルに引かれる気持ちも抱くのでした。この気持ちは単なる欲望に過ぎないと自分を欺きつつも,なんとかハビエルとの身体の接触を避けようと苦しむグレースでした。やがて多くの招待客を招いての結婚披露パーティの席に,ハビエルが婚約を迫られていた若く美しい富豪の娘ルシータが現れ,1年後に二人が離婚するまで待っていると告げられます。弁護士と自分たち二人しか知らないと思っていた秘密をルシータが知っていることで,再び男性から裏切られたと早とちりしたグレースは家を飛びだし,車で事故を起こし,せっかく宿っていたハビエルとの愛の結晶を失ってしまうのでした。自分を省みなかった両親に捨てられ,愛を信じられずにいたハビエル。母親を病で失いながらも愛にあふれた結婚を夢見ていたグレース。グレースの影響でハビエルの心に次第に愛が芽ばえ,大きくなっていたことをグレースは気付かなかったのです。残った4カ月の結婚生活はどうなるのでしょうか・・・。
純真というか,無垢というか,グレースのまっすぐな感情表現と性格は読者に心地よい感動をもたらします。究極のツンデレ・イケメン,ハビエルも憎めない性格です。オススメの1作。


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偽りの復縁 [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO1073
偽りの復縁 To Wear His Ring Again 2015」
シャンテル・ショー 柿原日出子





原題は「彼の指輪を再び嵌めるとき」。宝石や高級品を扱う「デ・セヴェリーノ・エクセレンザ」のCEOコンスタンティン・デ・セヴェリーノは,父を17歳で失い,叔父が会長を引き継いだが,現在35歳になり,会長職兼CEOになることが目標でした。仕事一筋のコンスタンティンが自分を理解してくれないと離婚を申し出たイザベル・セヴェリーノ。自立するために故郷の友人たちとバンド「ストーン・レディーズ」を結成し,歌手として活躍し始めます。次第に有名になり世界的なアーティストとなったイザベル(イジー)ですが,すでに別居してから2年が立っています。コンスタンティンの会社に離婚届を正式なものに使用と訪れますが,家を離れたのは君の方だと言われると,家を出た理由を自分だけのせいにされていることに腹が立ち,その原因を作ったのは夫の方だと認めさせたいと主張したい気持ちの方が先に立ちます。家を出た決定的な理由は二人の子供を流産して悲しみに暮れているイザベルをコンスタンティンは慰めることもなく冷たい態度を取っていたからでした。コンスタンティンの実家のあるイタリアに埋葬したイザベルは,お墓参りにいきたいと告げ,その後離婚届にサインしようと提案します。コンスタンティンとイザベルの間にはまだ夫婦生活的には引き合う関係が続いていました。2年ぶりに会ってもその関係が壊れていないものの,気持ちがすっかり切れてしまっているイザベル。そんなとき,コンスタンティンの会長職への就任に横やりが入ります。現会長の叔父が,コンスタンティンとイザベルの関係が復活しない限り会長職は自分の息子に継がせるというのです。経営者としては凡庸な能力しかない甥が会長職に就いたら会社の経営はすぐにも傾いてしまう。そんな思いで,コンスタンティンはなんとかイザベルの気持ちを自分に引き戻さなければならないことになってしまいます。ここからコンスタンティンのイザベルの気持ちにアプローチする活動が始まります。自分の自立を妨げ,自分の能力を認めてくれないコンスタンティンに,自分の父親と同じ圧力を感じていたイザベルは,夫婦としての相性には問題ないものの,結婚生活を続けたいという気持ちは起きませんでした。熱くなったり冷たくなったりする夫の行動に翻弄されるイザベルですが,読者から見ると若く我が儘な男性の気持ちの動きを読み取れない少女のようなイザベルの心理状況に,やきもきさせられたり,逆に自立を阻み対等な人間として妻を扱わないコンスタンティンの傲慢さに腹が立ったりと,登場人物に引き込まれていく自分に気付いたりするのです。こんな風に読者を引き込んでいく作者の手腕に,脱帽です。
やがて,同居していたときには知らなかったコンスタンティンの心の傷を知ったイザベル。そしてイザベルを大切に思う気持ちを素直に表現し始めたコンスタンティン。二人の関係が復活するかと思われたとき,叔父に復縁が会長職への条件であることを知ったイザベルは,すっかりコンスタンティンに騙されていたと思うのでした。そのときにはすでにコンスタンティンは会長職への就任よりイザベルを大切にしたいという思いを強くしていたのですが・・・。さて,二人の復縁や如何に。イザベルが心を込めて謳う歌の歌詞が,読者の心を打ちます。オススメの一作。


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ジュリエットの純愛 [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO951
ジュリエットの純愛 A Night in the Prince's Bed 2014」
シャンテル・ショー 佐倉小春





シェイクスピア劇場の舞台女優ミナ・ハート。美しさと純粋さと優しさにあふれた完璧な女優ですが大きな秘密を抱えています。幼少の頃の病気の後遺症で難聴で補聴器を使っていたのです。女優という仕事と聴覚障害者というハンディキャップを両立させるには並大抵の努力ではできないことですが,舞台監督兼俳優の父ジョシュア・ハートの期待に応えられるようにと度量を重ねてきた結果,「ロミオとジュリエット」の主役ジュリエット役を勝ち取っていたのでした。エリザベス朝のシェイクスピア劇場を復活させた劇場の立見席でミナを見つめ続けていたのは北欧のストーヴァル大公国の君主アクセル・トールセンでした。ヴァイキングの子孫らしい素晴らしい体躯とオールバックにしたブロンドの髪を持つ大公は会議でロンドンを訪れていたのですが気晴らしに入った劇場でミナを見てから,3日間も続けて立ち見席で2時間半の公演を見続けていたのでした。この劇場はあの「恋するシェイクスピア」で登場する劇場に似たものでしょう。大公の視線にミナも気づき,時折台詞のタイミングを失ってしまうことすらあるほど動揺させられていたのでした。なんとか公演も無事終了し打ち上げで訪れたバーでミナは再び大公の出会います。しかし彼が何者であるかは全く分かりませんでした。バーにやってきた,かつてスキャンダルをでっち上げられた新聞記者から逃れるためにバーを出た彼女は路地でマリファナを吸っている6人の青年に行く手を遮られ恐怖を覚えます。その時救いの手をさしのべてくれたのはまたしても大公でした。そして誘われるままにミナと大公は一夜を共にします。しかし翌日の朝刊にホテルに入っていく大公とミナの写真が掲載され,マスコミがホテルを取り巻く始末になっていました。その時初めてミナはアクセルが大公であることを知るのでした。その後互いが互いの素性や立場を利用したのではないかと誤解したまま別れてしまったことに気づき,ミナは大公を追ってストーヴァルを訪れます。二人の関係は紆余曲折の中で次第に深まりつつも,父親に避けられていると想い続けていたミナ,かつて小さい息子の命をなくしたのは自分のせいだと思っていたアクセルが心を傷を抱えたまま愛を素直に口に出来ないまま関係が深まっていきます。女優としての成功よりもドラマセラピストとしての仕事を望んでいるミナ。愛は国を治めていくための障害になるという教育を受けてきたためにミナとの関係に心からの愛を挟みたくないと思い込んでいるアクセル。このすれ違いの結果,ミナはジュリエット役のニューヨーク公演を理由にストーヴァルを離れます。しかし父との和解,アクセルが息子フィンの存在を国民に明らかにしたことなどの互いの努力の結果,ミナもアクセルに例え愛されなくても彼を支えていきたいと勇気を出させることになるのです。オーロラを始め厳しいながら美しい北欧の風景と,ロンドン,北欧,アメリカと世界を舞台にしたスケールの大きな「ロミオとジュリエット」劇さながらの壮大な物語です。


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炎の一夜が授けた命 [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO881
炎の一夜が授けた命 Billionaire's Secret
(ホテル・チャッツフィールド 4) 2014」
シャンテル・ショー 山本翔子





シリーズ「ホテル・チャッツフィールド」の第4弾です。少年の頃の火災の影響で,半身に大火傷を負いバッキンガムシャーのチャッツフィールド邸で引きこもるように生活しているニコロ・チャッツフィールド32歳。ニコロにホテルの株主総会に参加してもらおうと邸に送り込まれたのは,社のCEOクリストス・ヤトラコスの秘書のソフィー・アッシュダウンでした。大火傷で心に傷を負ったままのニコロに対して,ソフィーは16歳で骨肉腫に犯されていることがわかり,2年間に及ぶ苦しい治療の末,病を克服したという経験を持つ26歳の美しい女性です。治療中にすっかり失ってしまった髪も今はすっかり金髪の美しい髪になり,豊かな胸とすばらしいプロポーションを持ち,秘書としてもクリストスから絶大な信頼を受けています。それは,一度失いかけた命を病を克服することで再び取り戻したことに感謝しながら生きるという,前向きな気持ちと生き方から産まれてきたものでした。ニコロもまた心の傷を取り戻すために火災で治療中に知り合ったマイケル・モリスが亡くなった後,その妹のベスを見つけ出し,火災被害者支援財団の理事長に据え,財団の運営資金をファッジマネーで獲得するという仕事をしていたのです。しかしながら,半身に負った火傷後は今もニコロに引きこもりがちな生活を強い,火傷のきっかけになった父の不倫現場を目撃したことを隠しながら生きているのでした。今ホテルの株主総会への参加を拒み続けているのは,この父への不信と,姉瑠シーラではなく外部のクリスタコスをCEOに据えた父への反感からでした。やんちゃで愛くるしかった13歳のニコロが忌まわしい記憶と体に負った傷のせいですっかり別人のようになってしまったことを,かつての使用人たちは嘆き,チャッツフィールド邸も荒れるに任せられた状態になっていたのです。ソフィーはそんなニコロの心の傷を少しずつ探りあて,ニコロの父の書類の整理とともにニコロと生活を共にすることでなんとか株主総会への出席を承諾させようとするのですが・・・
奇妙な同居生活で初めは反発し合う二人ですが,なにやかにやという出来事が起こり,二人がそれぞれ抱えてきた過去の出来事を明かし合うことで惹かれ合い,ついに関係を持つまでに至るのですが,互いに愛し合う二人に別れが訪れ,ロンドンに戻ったソフィーを今度は体調の悪さと吐き気が襲います。癌治療の結果妊娠出来ないと思っていたソフィーがなんと奇跡的に妊娠し,それから二人の関係は微妙に変化していくのですが・・・。再び邸に戻り,生活し始め,ニコロのプロポーズをソフィーは受け入れるのでしょうか。ニコロの留守中になんと雷が館に落ち,燃えさかる二階の部屋からニコロがソフィーと愛犬を救い出すというクライマックスまで二人の心の旅路が語られていきます。二重三重に積み重ねられた秘密の出来事が読者の元に明らかになり,エピローグに至るストーリー展開は見事です。現代版「美女と野獣」です。


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サルヴァトーレの孤独 [シャンテル・ショー]

SHALOCKMEMO770
サルヴァトーレの孤独 Secrets of a Powerful Man 2013」
シャンテル・ショー 山科みずき





「Salvatore Castallano」このシチリアのワイナリーの経営者で大富豪のサルヴァトーレには,幼く,しかも聴覚障害の娘がいた。「シチリア大富豪の忘れ形見」のスピンオフの本作では,セルジオの兄のサルヴァトーレがヒーローです。娘の聴覚障害の治療のため,サルヴァトーレはロンドンで最高の聴覚治療士のダーシー・リヴァースを説得し,シチリア島に帰郷します。ダーシーは夫に裏切られ,離婚の傷が癒えないまま,休暇を取ってフランスへ旅行しようとしているところでした。9月までの期間限定で同行することを説得されたダーシー。9月にはダーシーの父の脚本による演劇で主演を務めることを約束させられていたからです。実はダーシーの一家はハート一家として一族が皆俳優/女優として世界的に有名な一族ですが,ダーシーだけが別な職業に就いていたのです。リーヴァースという姓からして,サヴヴァトーレがこのことに気づくことはこの時点では想定していませんでした。これが後々二人の関係に影響を及ぼします。
シチリア島で,娘のロージーの治療が始まりますが,その間もサルヴァトーレとダーシーが共に惹かれ合っていくのは防ぐことができませんでした。しかし,サルヴァトーレもまた妻を死に至らしめた交通事故に自分が責任を負っていて,しかもその時の記憶がすっかり抜け落ちているという心の病を抱えていました。脚の怪我も十分には回復していません。しかしその傷を差し引いても,サルヴァトーレの魅力は全く落ちておらず,ダーシーは期間限定であることや夫に裏切られたことを苦に病み,その魅力を認めないようにしようと苦労するのでした。二人の心の傷は次第に歩み寄ることで溶けていき,やがてサルヴァトーレもダーシーへの深い愛に気づいていくのです。それが決定的になったのは嵐により停電になった時でした。二人は互いの傷すらも魅力に思えるほど深く愛し合っていくのです。そして同時にサルヴァトーレの記憶も回復し・・・。しかし,自分を陥れた義母と証言者により真実を知った時のサルヴァトーレの怒りに,それほど妻を愛していたのかと勘違いしたダーシーはシチリアを後にし,ロンドンに帰っていくのでした。父の脚本による劇の初日が終わり,劇場にサルヴァトーレが訪れなかったと思って一人泣いているダーシーに声を掛けたのは・・・。
地中海の豊かな自然と二人の激情が交錯するロマンス度の高い良作です。


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