SSブログ
ジェシカ・スティール ブログトップ

雨のなかの出会い [ジェシカ・スティール]

SHALOCKMEMO1460
雨のなかの出会い His Pretend Mistress 2002」
ジェシカ・スティール 夏木さやか




R-1839
03.01/¥672/156p

K-485
17.07/¥670/156p


 原題は「彼の愛人ごっこ」
 ヒロイン:マロン・ブレイスウェイト(22歳)/「ハーコート・ハウス」管理人/金髪,濃いブルーの目,身長175センチ,豊かな胸,形のいい長い脚/
 ヒーロー:ハリス・クウィリアン(35歳)/「ウォーレン・アンド・テイバー金融会社」社長/身長190センチ位,冷たい灰色の目/
 7月にセレクトで出る予告が出ていましたので,HQロマンス版がKINDLE化されていたのに思わず手が出てしまってクリックした感じでしたが,読んで損はなかった作品でした。ジェシカ・スティールの作品はいつもちょっといぶし銀的魅力に溢れていますね。
 富豪の家「アルモラ・ロッジ」で家政婦をしていたマロンは雇い主のローランド・フィリップスから性的暴行を受けそうになり逃げだします。それを助けてくれたのはハリス・クウィリアンでした。ハリスは「ハーコート・ハウス」を買い取り改修中でしたが,仕事を失ってしまったマロンが気になり,改修が済むまでの管理人としてマロンを雇うことにします。週末ごとにハウスにやってくるハリスにやがて恋心を抱いてしまうマロン。「幸せだった子供時代を思い出さずにはいられない。惜しみなく愛情を注いでくれた両親,両親が計画していた一人娘の将来。そのすべてが9年前に跡形もなく消えてしまったのだ。」13歳の時,夕食時に知らされた父サイラス・ブレイスウェイトの突然の交通事故死。ショックから立ち直れず精神的に不安定になってしまう母イブリン。それから2年後にアンブローズ・ジェンキンズと再婚した母でしたが,義父の連れ子リーはマロンにしきりと手を出そうとし,それを母に言いだせないままなんとか義父と母の離婚を願うばかりだったのですが,義父に頼り切ってしまっている母を見捨てるわけにの行かず,マロンは高校を中退して働き始めます。マロン20歳のとき,やっと離婚が成立し,マロンと母の二人の生活が始まりますが,ホテルの受付係の仕事だけでは母娘二人の生活はなかなか楽にはなりません。そんな時家政婦募集の求人広告を見て「アルモラ・ロッジ」に仕事を得たのですが,雇い主がとんでもない男性だったとは・・・。つくづく男運のない母娘だと・・・。「ハーコート・ハウス」の修理にやってくる親方のボブ・ミラーや大工のシリル初め,愉快で仕事をきっちりやる人たちに囲まれ,マロンは幸せな毎日を送れるようになり,やっと悪夢からも解放されようとしていたのですが,次第にハリスとの間の関係が深まり,マロンはハリスを愛してしまうのでした。しかしこれまでの男運のなさ,元雇い主から受けた暴行から,男性不信の気持ちがやっと癒やされ始めたマロン。そしてハリスへの深い愛に気づいたマロンでした。そこに現れたビビアン・ホームズという30代の黒っぽい髪をした洗練された美女の存在がマロンを不安に陥れます。ハリスとビビアンの関係は?
 一方ハリスもまたマロンの見事な肢体と正直で純粋な気持ちにすっかり惹かれてしまうのですが,次第にマロンのこれまでの不幸な人生を聴くたびに,ますますマロンを守りたいと思うようになります。「君を想う気持ちに理屈なんて通用しないさ」「わかっていたのは,君と離れた瞬間にもう君の元へ戻りたいと思っていたことだけだ。四六時中」と熱い思いをマロンに告白するまでになんと時が過ぎるのでしょう。どちらも奥手で相手の気持ちをおもんぱかって自分の気持ちを正直に告白できないでいる,愛らしいカップルのロマンスでした。爽やかな読後感を得られる作品です。


タグ:ロマンス
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

愛は序曲に始まって [ジェシカ・スティール]

SHALOCKMEMO1441
愛は序曲に始まって Facade 1984」
ジェシカ・スティール 中井京子




HQB-797
17.04/¥670/200p

BR-40
91.03/¥490/186p
R-0481
81.08/¥550/155p


 原題は「ファサード(建物の正面)」
 ヒロイン:ソレル・メイトランド(25歳)/元秘書/金髪交じりの明るい茶色の髪,緑色の目/
 ヒーロー:エリス・ガルブレイス(歳)/会社役員/長身,浅黒い肌,がっしりした顎,引き締まった口,黒い目/
 ボスのエリスに首にされた後,老紳士の世話係をしていたソレルは,アルバート・オルレンショウという紳士が亡くなると遺産が残されたことを知ります。オルレンショウの娘シンシア・アーミテッジは,お金にしか目のない,自分の父親を全く世話しようとしなかったにもかかわらず,ソレルに遺産が残されたことを非難するのでした。その遺産によって上流階級の仲間入りをしたソレルは29歳の弁護士ロデリック・ドルーリィにプロポーズされますが,ロデリックの両親モイラとネヴィルはいい人なのですが,ロデリックも良い人過ぎてソレルは惹かれるものを感じませんでした。ずるずると慰められつつ付き合いを続けていましたが,両親の誕生日パーティへの出席を最後にきっぱり付き合いを辞めるつもりでした。ところがこのパーティで,かつての上司で自分をクビにして路頭に迷わせた件のエリスと再会してしまいます。ここからソレルは8年前の17歳で本気で結婚を考えた男性エリスに未だに魅力を感じ,愛していることを自らに否定しようとかなり苦しい思いをするのでした。憎みたいけれども憎めない,離れていたいけれども離れられない,そんな自己矛盾の中でろくに眠れなくなってしまうソレル。このソレルの内面の葛藤が本作の中心テーマになっていきます。エリスもまた,すっかり大人の女性に変身したソレルに再会して混乱します。ソレルと別れた後婚約したウェンダ・サイクスが金銭目当ての中身のない女性であることに気づいたエリスは,婚約を破棄した経験があり,金銭目当ての女性を毛嫌いしていることを知り,ソレルもまた,自分がオルレンショウの遺産を受けたことでエリスに蔑まれるのではないかと気に病むのでした。しかしソレルとの会話はちょっと油断するとジョークの応酬のような砕けたものになってしまい,かつての関係が再燃してしまいがちです。なんとか自分の気持ちを引き締めてエリスをここの中から追い出そうと試みるソレルですが・・・。
 「ぼくは,それほど君を傷つけたんだね」などとやさしく言われると「もう何年も前に克服したわ」と意地を張ってしまうソレルですが,反面遺産相続に関わってエリスに軽蔑されるのではという恐れも同時に感じてしまうのでした。ドルーリィ家と関係を絶てばエリスとの邂逅はなくなるだろうと,密かに引っ越しまでしようとしたソレルですが,引っ越し当日にエリスがアパートに現れ,結局引っ越し先を業者に聞き出されてしまいます。そして部屋に飾る絵を画廊に見に行ったとき,あのシンシアとばったり出会ってしまい,遺産の件をエリスにバラされてしまうのでした。さてエリスの反応は? ここから物語は急展開を迎えますが,ストーリー展開のカタルシスとソレルの心中描写の見事さ,やはり巧者ジェシカ・スティールの面目躍如たる傑作です。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

明日への扉 [ジェシカ・スティール]

SHALOCKMEMO1395
明日への扉 Devil in Disguise 1980」
ジェシカ・スティール 古城裕子





 原題は「変装した悪魔」
 ヒロイン:クレア・ハーパー(19歳)/家事手伝い/シルバーの髪/身長167センチやせ形,シルバーの髪
 ヒーロー:ラーザー・ヴァルダカス(?歳)/海運業者,ソフォロニア,アエネアスの兄/やせ形だが肩幅が広くて逞しい。真っ黒な目/
 今年最初の読了本です。舞台はギリシアの小島ニアコス島。「最近クレアはみなんの過保護なほどの心遣いが重荷になっていた。世界中で一番素晴らしい家族だと思うし,彼女にはみんなの支えが必要ではある。クレアは5年前,一時的に口がきけなくなるほどの恐ろしい目に遭っている。」ヒロインのクレアとヒーローのラーザー・ヴァルダカスの出会いを設定するために,冒頭にこんな文章が登場します。両親と二人の兄,26歳のブルース,24歳のキットまでもが誰かは必ずクレアの面倒を見ようとするのです。精神科医の叔母までがクレアの状況を心配する有様でした。純情,素直と絵に描いたような女の子のクレアですが,高校を卒業してイギリスの片田舎に住み母の手伝いをしていますが,あの悲惨な体験後は引きこもり,少しずつ回復しては北もののまだ悪夢に襲われ眠れなくなる夜も多かったのです。さて一方妹ソフォロニアが誘惑されたと立腹し復讐しようとしていたラーザーは,弟アエネアスがハーパー家の次男キットと友人だったことを利用し,キットをおびき出してアテネに幽閉します。そしてその妹クレアに自分の妹がされたと同じことをしてキットとその家族を苦しめようと計画していたのでした。兄たちが自分のためになかなか外でしたいことが出来ずにいることを申し訳なく思っていたクレアは,兄たちの電話の内容から大丈夫だからと兄たちが出かけることを勧め,一人で家にいたところでした。そこにやって来たラーザー。ラーザーは言葉巧みにキットが怪我をしたとクレアを誘い出し,ギリシアの小島ニアコス島に連れてきます。どこまで世間知らずなのか,クレアはラーザーの言葉を鵜呑みにして自家用ジェットに乗り込み,ヘリコプターに乗り継ぎ,ラーザーについてきてしまうのです。5年前の経験が全く生きていないではありませんか。そして,ヴァルダカス家の別荘で事の真相を聞かされ,愕然としてしまうのです。再び身の危険と恐怖心を感じる状況になったクレア。しかし,ラーザーは自分をとても大切に扱ってくれます。何日か一緒に過ごすうちに過去の恐怖感が消え,悪夢も見ることがなくなっていきます。ついにラーザーに惹かれ,愛していることに気付きます。ラーザーもまた妹の復讐という気持ちよりもクレアの清純さに惹かれ,さらには自分のものにしたいという気持ちが欲望というよりも守ってやりたいという気持ちになっていることに困惑するのでした。やがて期限としていた土曜日がやってきてギリシアを去るクレアですが,このまま島にいたいという気持ちの方が強くなっているのです。しかしキットが解放されたことにも大きく安堵するクレア。アテネの空港でラーザーが見送りに来てくれたのですが二人は互いの運命に逆らうことはできませんでした。帰宅したクレアは母にも事の次第を話すことが出来ずにいたのですが,やがてラーザーから電話があると,すべてを母に話さざるを得なくなるのでした。
 過去の恐怖を乗り越えるためにラーザーとの出会いが運命付けられていたかのようなストーリー展開に思わず引き込まれてしまう秀作です。それにしてもクレアの世間知らずさには,本当に19歳?いや19歳ってそんなもの?という気持ちが入り交じる成長譚です。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

結婚はビジネス? [ジェシカ・スティール]

SHALOCKMEMO1092
結婚はビジネス? The Marriage Business
Today's Woman 1) 1995」
ジェシカ・スティール 原 淳子





働く現代女性の様々を描いたシリーズの第1作でジェシカ・スティールが担当です。義兄たちが共同経営する会社の財務担当部長の仕事を任されているアヴィーナ・アラダイス(愛称アビー)は美人一家の末っ子。母や姉がお金を使うことしか頭にないのに対してアビーはお金を運用する方に興味と適性を持っています。男とお金に,そしてその両方を持つ男性には特に気をつける。それがアビーの信条だといっても過言ではないでしょう。愛のない結婚はしないということです。そんなアビーを見初めた男性が大企業のトップでハンサムな男性ナイル・ランカスターでした。ナイルはあるパーティでアビーを見たとたん惹かれ始めます。しかしアビーの会社がランカスター・グループとの契約を熱望している時,ナイルと付き合うことは自分が会社の犠牲になって愛のない関係をナイルと築くことになってしまう,その狭間と,母や姉たち,そして義兄たちはアビーがナイルに媚びて,うまくしたらナイルと付き合うことが会社にとって有利になると,懸命に立ち回るのをどうにも防げなくなってしまいます。本当はナイルに惹かれる思いを持っていても,それ以上に会社の犠牲になってしまう気持ちの方が強く感じられるのでした。ナイルとは仕事関係のパーティなどで何度か顔を合わせざるを得ません。そしてアビーの会社にちょっと顔を出したりもしてアビーを困惑させてきます。週末の金曜日になるとアビーに連絡を付けてくるようになります。その割には月曜から金曜までは難の音沙汰もありません。まさにツンデレの態度なのです。週末の過ごし方にアビーはワザと洗練されたコンサートより村の集会所で開かれる素人コンサートに誘ったり,レンストランでの食事より自宅のキッチンでの手料理など,ナイルに嫌がらせとも言うべき過ごし方に付き合わせるのですが,その度に母や姉たちから叱責を受けるのでした。唯一自分の理解者である祖母の家に泊まってナイルを遠ざけたりもしてみるのですが,その祖母の家にナイルが現れたりと,結構ナイルも一筋縄ではいきません。二人の関係が純粋に愛に基づいた関係に発展する可能性はあるのでしょうか。
「何代も続く美人の家系の産まれ」であり,「祖母に言わせるとなかでもアヴィーナいちばんきれい」だと言われているのに,アビーは「祖母の目が偏っているから」と自分を評価しています。どんな格好をしていても美しく見えるアビー。そしてアビーをめがけて男たちが寄ってくるのにそれに気付かず,見向きをしないアビーはヒロインとしては最高の存在です。「アラダイス家の美貌のおかげで自分が人を傷つける力を持っていることを警戒し」「神経過敏な反応だったかもしれない。でも自分がビジネスに利用されるの嫌だと」考えるほどの美貌を持つ22歳のアヴィーナ。まさにNiceHeroineです。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

キスの魔術 [ジェシカ・スティール]

SHALOCKMEMO960
キスの魔術 The Magic of His Kiss 1985」
ジェシカ・スティール 大沢 晶





「春色に染められて 2」に所収された作品で「謎のミセス」とのカップリング作品で,初出はHQロマンスR-421(1985.10刊)です。モデルの姉クリスティーと年下で自分と同期のマークとは互いに深く愛し合っているとロマンチックに思っているジェム・ノークス。姉のアパートにいたとき突然訪れてきたのはマークの叔父のカーン・フェリンガム。突然クリスティーンとマークを別れさせると息巻いてきて,ジェムをクリスティーンと勘違いしたあげく5000ポンドの小切手を置いて出て行ってしまったのでした。それが二人の出会いでしたが,カーンのあまりに姉を馬鹿にしたあげくお金で二人の仲を裂こうとするカーンに立腹し,衝撃を受けたジェムでした。ついにカーンがやってきたことを姉に告げられずにいるジェム。さらに二度目にアパートを訪れたカーンにキスされ,思わずそれを嫌に思わなかった自分に驚くジェム。立腹の余り小切手を粉々に引き裂いたことを姉に言えずにいるうちに,別れない二人に業を煮やしたカーンにコーウォールの人里離れた廃屋に連れて行かれ,壁のペンキ塗りから掃除まで用事を言いつけられます。雨の夜には屋根から雨漏りがあったりいろいろと事件がありますが,ついに自分がクリスティーでないことを知られてしまいます。しかし,それでも家に帰してもらえず,二人の間には不思議な気持ちの結びつきが出来ます。ジェムはいつしかカーンを深く愛してしまったことに気づくのでした。でもカーンの気持ちは?冷たく自分を突き放すカーンとの将来は考えられないと思い込むジェム。果たしてカーンの本当の気持ちは?そして信じていたクリスティーの本当の姿とは?
軽薄で外見のみの姉と実直で純真な妹,美人姉妹でありながら常に姉の陰に隠れていた妹ジェムの本当の姿が現れる醜いアヒルの子が白鳥になり本当の幸せをつかんでいく物語です。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

謎のミセス [ジェシカ・スティール]

SHALOCKMEMO958
謎のミセス Bachelor's Wife 1984」
ジェシカ・スティール 神谷あゆみ





継父の借金5000ドルを用立てるためにかりそめの結婚をしたペリー・ベサイア・グレンジャーは,5年間裁縫師として自活しながらやっと意中の人との婚約を考えるようになっていました。その間書類上の夫ナッシュ・デバルーとは全く没交渉で生きてきました。しかし法律上は既婚者であり,トレバー・コールマンと結婚するためには離婚しなければなりません。自分が既婚者であることはなかなかトレバーに言い出せないままでしたが,トレバーの母が離婚には嫌悪感をを隠そうともしないことも大きな原因でした。勇気を持ってナッシュに連絡を取ろうとしたペリーでしたが,なかなか連絡が取れず,手紙を書くことにします。さんざん文章に,迷ったあげく「親展」の手紙を書き上げ,送ることが出来ました。そんな時ナッシュがニューヨークから帰ってきたことを新聞で知りますが,インタビュー時の夫の言葉が「妻との和解を望んでいる」というショッキングなものでした。その時はまだ自分の名前が載っていなかったので,勇気をふるってナッシュの会社を訪れたペリー。受付で「ミスター・ナッシュの妻です」と名告ったときのペリーの勇気には乾杯です。ナッシュは5年経って成長したペリーを見て離婚のつもりなら結婚の時に用立てた5000ドルを返してくれれば,と無理な注文を付けるのでした。すっかり腹を立てたペリー。そしてナッシュとの関係を知られたくないためトレバーに逢うことも躊躇してしまうペリーでした。いよいよ弁護士との会談のために事務所に向かったペリーは道路を渡ろうとしたところをタクシーに轢かれてしまいます。しかもハンドバッグには結婚証明書の写しが入っていたため,怪我で運ばれた病院にはナッシュに連絡が行き・・・。改めてナッシュのことを少しずつ分かってきたペリーは自分がナッシュに惹かれていくのを止めることが出来ません。無理矢理退院しようとしたペリーはナッシュのサセックスの家に連れて行かれ養生することを止めることが出来ませんでした。数日間で体力が少し回復したペリーですが当初親切で優しかったナッシュが家に帰ってこない日が続きます。やはり自分との結婚生活を続ける気がないと思ったペリーは使用人の車でロンドンに戻りますが,そこにトレバーがやってきて既婚者であることを黙っていたことに激しく怒りペリーに暴力を振るおうとします。そこにナッシュが駆けつけあわやというところでトレバーを追い出すのでした。再びサセックスに戻ったペリー。ナッシュの本当の気持ちを理解するだけの精神的な余裕がないペリーも哀れですが,その気持ちを素直に伝えようとしないナッシュもまた愛を知らない夫だったのです。そんな二人の心の葛藤を描いた大人の短編ロマンスです。紙本ではどうしても2話収録ということになるのですが,電子版(KINDLE)は単独で出版されるので嬉しいですね。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ボス運の悪い人 [ジェシカ・スティール]

SHALOCKMEMO957
ボス運の悪い人 A Nine-to-Five Affair 1999」
ジェシカ・スティール 進藤あつ子





楽しい作品でした。ボス運が悪いだけでなく,実父に先立たれ,母の再婚で義父にもよくしてもらい,度重なる不幸にめげずにビジネスの基本を学んだまっすぐな少女エミリー・ローソンですが,母も義父も亡くなり,義父の母親のハンナ・ウィットフォードと二人暮らしながら,秘書としてやってきました。しかしその会社も倒産し,以後就職した会社では上司から性的嫌がらせを受け続け,なんども職場を変えざるを得なくなります。しかもたった一人の家族義祖母のハンナおばさんが痴呆症的症状を示すようになり,なんとか介護施設に入所したものの,ときどき行方不明になり,そのたび会社を飛びだしては祖母捜しをせざるを得なくなり・・・。そんな状況のなか,面接におもむいた会社では社長面接までたどり着き,しかも条件がよく,産休を取ろうとしている秘書代行としての仕事に就くことが出来ます。ところが今度のボス,バーデン・カニンガムは,かなりな美形の上,しょっちゅう女性から電話がかかってきます。すっかりプレイボーイだと勘違いしたエミリー。周囲の人々はエミーと呼んでくれるのに社長はエミリーとしてか呼んでくれません。ある日またまたハンナおばさんが行方不明になり,慌てて会社を飛びだしたエミーが社に戻ると,社長は過度な残業を命じた上,できあがった書類をパーティ会場の友人宅に届けるようにと厳命して自分は帰宅してしまいます。なんとか8時頃までに仕事を終え雪が降りしきる中パーティ会場に向かう途中で車が故障してしまい徒歩で家までたどり着きます。かなりなひどい状況に驚いた社長とパーティの主宰者夫人。実は何度も女性から電話があったのは夫の誕生パーティを秘密に開くために出席の連絡を社長に入れるようにお願いされていたからでした。この時社長のバーデンはエミーの仕事への徹底した使命感に感心し,同時にちょっと意地悪をしてしまったことを後悔するのでした。そして翌日エミーを家まで送っていったバーデンはハンナおばさんが病を患っていることを知り,エミーに対する好意を強く持つのでした。エミーの方は時々意地悪になるバーデンが実は優しい気持ちを示してくれることを感じ,バーデンを愛し始めていたのです。その後,互いの気持ちが近づいたり,勘違いする状況があったりして,近づいたり遠ざかったりを何度か繰り返しますが,バーデンが2週間もアメリカ出張になることに不安をもつエミー。出張の前の晩言い争いをしたエミーは,啖呵を切って会社を辞めてしまいます。そしていくつかアルバイトをしながらなんとか生活していくのですが,バーデンを想う気持ちはますます強まっていくのでした。ちょっとした痴話げんかながらもう取り戻しが出来ないと思っていた週末,突然バーデンが現れ驚くエミー。もう1週間アメリカにいるはずのバーデンが何故?
こんな風にめまぐるしく変化していく二人の関係が結構面白く,短期で潔癖ながらも周囲の人々を大切にしようとする気持ちの優しいエミーがどんどんバーデンに惹かれていく様子に暖かさを感じ,読後ほんわかした気持ちを抱かせる良作です。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

こはく色の夢 [ジェシカ・スティール]

SHALOCKMEMO843
こはく色の夢 Intimate Enemies 1983」
ジェシカ・スティール 三木たか子





クリスマス休暇で同じアルバイト職員のヘレンの家エルドリッジ・バンクというエクスムアの40キロほどのところにある小さな村のマナーハウス,ムーア・ビューに行くことになったアンバー・ニューマン。落石事故に両親とともに逢い,自分だけが生き残り,生きる希望をなくしていたものの,なんとか臨時雇いの仕事を見つけたばかりだった。そして,その館には,あの日,本当の名前も知らずにベッドで一夜を過ごしてしまった男性,ダイソン・シルバーがヘレンの腹違いの兄として,そして館の当主としていたではないか。ダイソンは完全に自分を誤解している。すぐに男性とそんな関係になる女性だと思っている。その自分を薄汚れた安っぽい女だと見下げたように見るダイソンの眼差しから,アンバーはそう思っていた。
イギリスの片田舎の館での男女4人のクリスマス休暇での生活を舞台に琥珀色の髪をもつアンバーと富豪のダイソン,アンバーの友人ヘレンとその兄サイモンのケンプシー兄妹が,思わせぶりや目線の動きで,そして偶然見かけてしまう様々な出会いを通して,微妙に誤解が膨らんでいく様子を描いています。ダイソンを愛してしまうアンバーはダイソンの誤解を解くことが出来るのでしょうか。さらにどんな事件が起こるのでしょうか,淡々と進む舞台でのようなストーリー展開に,ぐいぐい引き込まれていく作品です。古風な言い回し,上流階級的な倫理観などが言葉の端端に感じられる上品な会話文など,時代を感じさせる訳の見事さは,必見の価値ありです。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
ジェシカ・スティール ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。