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逃げだした愛人 [ジュリア・ジェイムズ]

SHALOCKMEMO1422
逃げだした愛人 The Greek's Million-Dollar Baby Bargain 2009」
ジュリア・ジェイムズ 茅野久枝




K-454
17.02/¥670/156p

R-2433
09.11/¥690/156p


 原題は「ギリシア富豪の百万ドルの赤ん坊取引」
 舞台:ロンドン,ギリシアのソスピリス島,パリ,ノルマンディー ヒロイン:アン・ターナー(?歳)/慈善団体職員/金色に輝く髪,長いまつげ,灰色の目,ほっそりした体の曲線,長い脚,整った上品な顔/
 ヒーロー:ニコス・セアキス(30代)/実業家/身長180センチ,黒い髪,漆黒の猛禽類のような目,鋭くとがった鼻,高くせり上がった頬骨,がっしりとした顎,ギリシアの神像のような美しい体躯/
 原題では百万ドルとなっていますが,実際にニコスがアンに差し出した小切手は百万ポンド(80万ドルほど)。ヒロインのアンは慈善団体職員とありますが,ニコスがロンドンのアンのアパートに訪ねたときは自らが慈善の対象になるような貧相なアパート暮らしをしていたようです。冒頭を読む段階ではこれにかなり違和感を感じました。その答えは14章で登場します。
 11章でアン,ニコス,アリの三人はパリの遊園地に出かけますが,これって,パリのディズニーランドでしょうか。ちなみにパリのディズニーにはどんなアトラクションがあるのか調べてみると,TDLと同じようなスペース・マウンテンやビッグサンダー・マウンテン,イッツ・ア・スモール・ワールドのようなものの他に,さすがフランスらしく,ジュール・ベルヌの海底二万哩をテーマにした船やイギリスのアーサー王を題材にしたランスロットのカルーセルというメリーゴーランドなど,ヨーロッパの有名どころを元にしたものなどが特徴となっているようです。
 孤児としていくつかの里親の元をたらい回しにされ,しかも最後の家では里親である父親から暴行を受け続けた姉カーラ。妹を守るためには14歳だったカーラにはそれしか方法がなかったのです。そんな姉妹の秘密をパリで食事をしているときに聞き知ったニコスは,アンへの思いを吐露するのでした。初めからアンを憎むことで弟を失った原因になったカーラへの憎しみをアンにぶつけてきたニコスですが,それはアンへの欲望から愛へと変わる瞬間です。自分に身を投げ出そうとしたカーラがそれを断るとたちまち弟アンドレアスへと矛先を転じた経験から,身持ちの悪い欲に取り憑かれた女性と思ってきて,それは百万ポンドを受け取ったアンも同じだと思い込んでいたニコスは,二人の生い立ちを聞いて,自分が何不自由なく暮らしてきたことへの罪悪感へと変化していきます。そして,自分の引き留めを断ってロンドンに帰ってしまったアンに怒りをぶちまけようと訪ねたロンドンのアパートで,ニコスは驚くべきアンの「仕事」を聞くのでした。
 まさに天使のようなアンの生き方です。神像のようなヒーローと天使のようなヒロイン。ニコスの母ソフィアの落ち着いてやさしい生き方や姉夫婦の子アリの無邪気な言動も心地よく,読者の笑みを誘います。まさにロマンス小説の王道を行くイチオシ作品です。


タグ:ロマンス

大富豪と孤独な子守り [リンダ・グッドナイト]

SHALOCKMEMO1421
大富豪と孤独な子守り Married in a Month 2003」
リンダ・グッドナイト 中野 恵





 原題は「ひと月間結婚して」
 ヒロイン:ケイティ・ウィンズロー(コルトの2歳下)/「ケイティ・エンジェルズ」経営/栗色の長い髪,グレーの瞳,透き通るように白い肌,ふくよかな唇,長いまつげ/
 ヒーロー:コルト・ギャレット(?歳)/「ギャレット・ランチ」牧場経営/ダークブラウンの髪,チョコレート色の瞳,広い肩幅,日に焼けた肌/
 「ボスは最高」シリーズ第2巻の「午後五時の誘惑(SHALOCKMEMO116)」を読んだのが2005年1月のこと。今からもう12年前になるんですね。それ以後めっきり名前を見ることのなかったリンダ・グッドナイトの作品がHQイマージュから邦訳されました。2013年以降年に1冊程度は訳出されており,決して忘れられた作家ではなかったのですが,斜麓駆の方が忘れてしまっていただけです。
 さて,本作ですが,突然玄関に置かれていたベビーカーと一人の赤ん坊。男所帯の牧場で,牧場主のコルト・ギャレットは途方に暮れてしまいます。急遽新聞広告にナニー急募を出したものの,果たして誰か応募するだろうかと気に病んでいたところにやって来たのは,年若く美しい女性。赤ん坊を抱いた途端,ゲップして泣き止んだのをみて,即「採用!」と叫んだコルトでした。エヴァンという仰々しい名の生後三ヶ月の男の子ですが,「ギャレット・ランチ(どうしてギャレット牧場と邦訳しなかったのでしょうか?)」の玄関前に置き去りにしたのはナトーシャ・パーカーという女性でしたが,コルトにはこの女性の名前に心当たりはありません。とにかく弁護士を通じてナターシャを探してもらうことにしましたが,見つかるまでの間,警察に届けて福祉施設送りにするには忍びなく,ナニーを雇うと同時に,牧場の料理人でクッキーという名の元軍人(けっこういいキャラクターです)の手に預けられることになったのです。応募してきたのはケイティ・ウィンズロー。「ケイティズ・エンジェルズ」という保育施設(チャイルド・ケアセンター)を設立しようとしていますが,銀行が融資してくれないため行き詰まっています。プレイボーイという評判のコルトにかつて一度憧れの気持ちを抱いたことのあるケイティとしては,コルトの助けをなんとしても借りたいという気持ちで牧場を訪ねたのでした。「ラトルスネーク(ガラガラヘビ)」という町の名前もちょっとありそうにない名前ですが,いかにも西部らしい小さな町。かつて孤児だったケイティが捨てられた赤ん坊の面倒を見ようと考えたのは,自分の生い立ちと深く関わっていたことは間違いないようです。銀行の条件は融資を受けるには,担保となるものが必要。担保は配偶者の財産も認められるというアドバイスをもらったところにコルトの募集広告が目についたのでした。ナニーを引き受けるには条件があります。「私と結婚して」と直接的にコルトにぶつけるケイティ。男所帯の自由さを愛するコルトにとって「結婚」の2文字は禁句だったのですが,エヴァンが気に入りかかっていた自分としては,たとえ便宜的結婚でも承諾するしか道はないと,しかし愛のない結婚になるが・・・という互いの条件のぶつかり合いで,取りあえず長続きするかどうか一カ月のお試し期間を設けることで,簡単な式を挙げ,ナターシャが見つかるか次のナニーが見つかるまでという限定つきの共同生活が始まるのです。初めからコルトに惹かれているケイティ,そしてケイティの素晴らしく長くすらりとした脚に魅了されてしまったコルトですが,互いに欲望を閉じ込めて,関係を持たないようにギリギリのところで1カ月を過ごすのでした。その間,銀行融資を受けてケアセンターの工事も順調に進みます。そして,ついにエヴァンの実母ナターシャの行方が分かります。思いがけない情報に遂に二人は深い関係を持つことになるのですが・・・。
 頑なにひと月という限定期間を守り離婚手続きのためにドミニカに向かうコルト。牧場を後にするために荷物をまとめているケイティ。最終章のこの場面が,本作最大のカタルシス場面です。予想できる結末ですが,それでも明るく聡明で運命に立ち向かっていくケイティのキャラクターの素晴らしさが光る作品に仕上がっています。


タグ:イマージュ

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