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ダークスーツを着た悪魔 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1447
ダークスーツを着た悪魔 Doukakis's Apprentice
( 21st Century Bosses 2 ) 2011」
サラ・モーガン 小池 桂




K-450
17.01/670¥156/p

R-2735
12.05/¥690/156p


 原題は「デュカキスの見習い」
 ヒロイン:ポリー・プリンス(24歳)/父の会社の補佐/絹糸のようなブロンドの髪,ブルーの瞳,美しい脚のライン/
 ヒーロー:デイモン・デュカキス(34歳)/複合型メディア・グループ経営者/黒い瞳,たくましい肩,褐色の肌/
 2012年に翻訳が出た「21st Century Bosses 2」シリーズの第2巻です。「21世紀のボス」というちょっと大げさな感じのするシリーズ名ですが,邦訳はメイシー・イエーツ「うたかたの蜜月」,トリッシュ・モーリ「一夜だけの婚約者」,キム・ローレンス「オフィスの恋人」と本作の4部作になっているようです。それぞれのヒーロー,ヒロインは取り立てて関係があるようではないようです。イマージュ,ロマンス両方で翻訳の出ているサラ・モーガンですが,イギリスのユーモアとロマンス度の高い作品,そしてシリーズものも多く,多作家の一人といっても良いでしょう。「三つの愛の詩」シリーズでは医師たちと三つ子の看護師という医療ものでNiceHeroineを登場させました。
 さて本作ですが,ボスものと復讐譚の両方の要素を融合させ,妹を守るために会社の乗っ取りを謀ったヒーロー,デイモンが妹の婚約者ピーター・プリンスの娘で妹の同級生ポリーを使ってピーターの行方を突き止めようとしますが,10年前妹とともに学校を退学になったポリーが当初考えていたのとは全く異なる理由で騒動を引き起こし,そしてさらにポリーに惹かれていってしまうという設定になっています。父を探し出すために自分が利用されていることを知りつつ,デイモンの男性的魅力に惹かれて行ってしまうヒロイン,ポリーもまた最後の台詞「おおせのままに。あなたがボスよ」とデイモンの愛を受け入れるまでの気持ちの変化を巧みに描いていきます。PR会社の経営不振が父ピーターの招いた無責任経営にあったこと,そして会社の業績を支えてきたのはひとえに高校卒の学歴しかないポリーとそのチームの斬新でユニークなアイデアによるものであることを知ったデイモンが,自分の経営方針であるきっちりした無駄を最大限に省いた経営方針を見直し,次第にポリーの経営方法を取り入れていくところが読んでいて思わず微笑んでしまう部分なのですが,自由な発想を得るために会社自体がおもちゃ箱をひっくり返したような破天荒な空間になっているのに対して,デイモンのオフィスは無機的な雰囲気でスタッフ用の机も出勤順に勝手に選べる,つまり何処に座っても良い方式だったのですが,ある日突然私物を持ち込んでも良いと変更されてしまうところが,作者特有のブラック・ユーモア溢れる本作の最大の魅力ある部分です。また,ポリーが着ていたピンクのストッキングを初めはデイモンがとがめるのですが,これは今PRを担当しようとしている会社の製品で,PRのコンセプトを最大に引き出すための企画方法だということを知ったデイモンが,ポリーの隠された才能と仕事に対する徹底したプロ意識を目の当たりにして,改めてポリーに惹かれていくところも,尊大なヒーローをぎゃふんと言わせるすっきり部分になっています。ひっきりなしにかかってくるクライアントからの電話に,ワイヤレスのヘッドセットで対応し,同時に従業員たちの個別の問題にも次々と対応していくポリーの働きづめの1日を目の当たりにして,自分以上に仕事に邁進するポリーへの尊敬の念と湧き上がる情熱に,ついに自分の女性観をすて,欲望に負けて行ってしまうデイモンの気持ちの変化にも注目したいところです。一気読み間違いなしの秀作です。


タグ:ロマンス
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