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六月の贈り物 [エリザベス・バーンズ]

SHALOCKMEMO1339
六月の贈り物 Now and Forever 1989」
エリザベス・バーンズ 藤波耕代




K-403
16.06/¥670/155p

I-0632
91.03/¥590/155p


 原題は「現在・永遠」
 ヒロイン:マリゴールド(マリ)・スコット(30歳)/手芸ショップ経営/薄茶色の髪,はしばみ色の瞳,細い顔と鼻,大きな口/
 ヒーロー:アンガス・オニール(38歳?)/建築家,実業家/長身,痩身,とがった顎,高い鼻,黒髪,青い瞳/
 両親のもとに5人兄姉妹の末っ子に生まれたマリ。ヴァイオレット,ローズ,リリー,と花の名前を付けられた4姉妹に息子のジョン・ジュニアはジャックと呼ばれ,これも植物の名前を略したものです。かつてニューヨークで働いていたマリですが,医師からある宣告をされ,それからの5年間を故郷のヴァーモント州ウォーターフィールドという片田舎でひっそりと引きこもり一人きりの生活をしてきました。手芸を得意とした彼女は自分のデザインした商品を制作し,次第に何人かのお針子をも雇うほどの有限会社を経営するまでになっています。6月のある日庭に熱気球が着陸して彼女を驚かせます。乗っていたのは最近隣の地所を購入して,時折ヘリコプターでやってくる富豪のアンガス・オニールでした。てっきり大金持ちのお年寄りだと思っていたのに,なんともハンサムでマリはすぐに引きつけられます。しかししがない田舎娘の自分に目をとめるはずなどないと思っていたマリですが,すぐに夕食に招かれます。丁重に断り,逆に簡単な朝食をごちそうするのでした。その後こちらに来たときは必ず家を訪ねてくるようになったアンガス。マリは彼を名前ではなく苗字のオニールの方で呼ぶことにします。アンガスはアンガス種の牛を思い出させるからと言う理由です。しかしマリは身体に時限爆弾を抱えています。医師に宣告された命の期限30歳まであと少し。二人に将来などあるはずはありません。いつの間にかアンガスを愛してしまったマリですが,他の人からアンガスもまた妻を亡くしていたことを聞き,彼にも苦しみの時があったことを知ります。1年間植物状態になった末に妻を亡くした後はアンガスもまた放心状態がしばらく続いた経験を持っています。自分と愛し合ってしまえば再び愛する人を失う悲しみを味わうことになってしまう,愛する人にそんな想いをさせるわけにはいかないとマリは気丈にオニールのプロポーズを断るのでした。ところが,この5年間の医学の進歩によりマリに再度の生きるチャンスがあるかもしれないと説得され,再びニューヨークに戻ったマリとアンガス。5年前にマリを診察した専門医は,マリの症例が希有な物であり,最近新しい手術法を開発した医師がいることを知らされ,早速二人で医師の元を訪れます。手術をすれば完全に治りそうだと言われ,有頂天になると同時に,もし失敗すればという心配の間で揺れ動くマリですがアンガスの励ましで精密検査をすることになります。ところが喜びもつかの間,その検査で手術部位のさらに奥にもう一個所病気が見つかり,手術成功の確率が下がってしまったことを知ります。下手をすると一生植物状態になる危険性もあると・・・。落胆したマリはオニールの制止を振り切ってヴァーモントに帰ってしまいます。家族には一切病気のことを知らせていなかったマリはオニールと別れたとしか伝えませんでした。
 邦題の「六月の贈り物」は,あの気球が庭に着陸した日にマリがオニールに出会い,さらのファウンディングという犬が迷い込んできた日に二つの贈りものがあったということから来ています。運命の出会いを果たした二人が病という出来事を乗り越えて愛を獲得するまでを描いた感動の作品です。


タグ:イマージュ
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嫉妬 [シャーロット・ラム]

SHALOCKMEMO1338
嫉妬 Disturbing Stranger 1978」
シャーロット・ラム 林 真澄




HQSP-121
16.08/¥540/224p

R-0107
81.06/¥525/173p


 原題は「平穏をかき乱す未経験者」
 ヒロイン:ローラ・ホーラム(20歳)/家事手伝い/山猫のような目と虎のような気性,緑の目,プラチナブロンドの髪/
 ヒーロー:ランドール・メルシエール(36歳)/メルシエール社社長/灰色の目,力強い顎の線,黒い髪,角張った顔/
 愛に不器用なヒーロー,ヒロインの互いの愛に気付くまでを描いた秀作です。ゆがんだ関係や深い,本当の愛の心理描写を描くのに優れた作者らしい作品。40年近く前の作品ですが,イギリス上流階級なら今でもありそうな描写で時を感じさせない静けさと激しさを併せ持つ作品です。
 病気がちな母の面倒を見ながら暮らしているローラは父の会社の新社長ランドールが,恋人のトムの仕事に関連した貧困地区で出会った年かさの男性であることを後に知ります。そして父が会社のお金を使い込みそれが会計検査でバレてしまったことで,社長のランドールとの間で盟約がかわされたことを聞かされたのでした。つまりローラとランドールが結婚すればこの件は見逃すということに・・・。トムへのローラの気持ちを知っている母親はランドールの申し出を受けてしまったローラを心配しますが,本当のことを母に知られてはならないという父の言葉を重く受け止め,平気を装って心配しないよう言うのでした。母親の様子を見に毎日家に寄るトムは,優しく親切でローラを大切にしてくれてはいますが,つっけんどんな態度を時々取るランドールとは違い,兄であり,友でもある存在です。ランドールとの間にあるのは,火花を散らすような激しい感情でした。そしてランドールに触れられたりするとうっとりしてしまう自分にローラは戸惑います。口では「大嫌い」という言葉を大声で直接ランドールに向けるくせに,かまわれないと寂しくなり,体を求められると自分からすがりついてしまう矛盾した自分の感情に余計腹を立ててしまうローラの行動に,思わず読者の笑いを誘います。ついにランドールとの結婚が決まり,ローラは式の準備に翻弄されます。二人にどんな将来と生活が待ち構えているのか。トムへの思慕の念を抱きつつも,ランドールはローラの心からトムを追い出そうと躍起になるのです。そして二人の間には便宜的で身体の関係のみの結婚という言葉が飛び交います。気持ちは別物,という合意でした。ベニスへの新婚旅行で二人の間に激しくも優しい時間が過ぎていきます。美貌のアメリカ人未亡人とランドールの間に過去に関係があったのではないかと嫉妬を覚えるローラ。そしてロンドンに戻り,メルシエール家での生活が始まります。母の様態を気にして実家に行ったローラはトムに出会いますが,別れ際ローラを迎えに来たランドールとトムの間に火花が散ります。そしてやがてランドールは家でもローラを無視するようになってしまいます。もう自分は飽きられてしまったと思い込んだローラ。ランドールは自分に気持ちを向けず,相変わらずローラがトムへの思慕を持ち続けていると勘違いしていたのでした。そしてローラは自分の妊娠に気付き,トムに診察をして欲しいと願い出るのですが,トムはインドへの医療奉仕に出かけることをローラに告げます。悪阻とトムの話に気を失ってしまったローラを屋敷のベッドにトムが連れて行ったところに間が悪くランドールが現れ,トムとランドールは殴り合いになってしまうのでした。離婚したいのかと問うランドールにローラは事情を話し,ランドールへの愛を告白するのでした。
 16歳の年齢差をどうやって乗り越えて行くか。自分の気持ちに気付くまでの紆余曲折も巧みに織り交ぜながら,ローラの精神的成長が描かれた秀作です。それにしても顔を見ただけでローラの気持ちがすっかり読み取れてしまうランドールが自分への愛を強くもっていることに気付かない若さがなんとも言えず歯がゆい感じで,面白く,一気読みできる作品です。HQSP版の表紙がローラの美しさ,若々しい純真さ,緑色に光る目,ふっくらした頬,透き通る肌がしっかり表されたモデルさんが,読者を引きつける抜群のイメージです。


タグ:ロマンス
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眠れぬシンデレラ [ジェシカ・ギルモア]

SHALOCKMEMO1337
眠れぬシンデレラ His Reluctant Cinderella 2014」
ジェシカ・ギルモア 中野 恵





 原題は「気が進まないシンデレラ」
 ヒロイン:クララ・カースルトン(29歳)/家事代行サービス会社「カースルトン・コンシェルジュ」経営,シングルマザー/グリーンの瞳/
 ヒーロー:カスター・ラファティ(ラフ)(31歳?)/国際的強力医師団プロジェクト・マネージャー,百貨店副社長/双子兄妹の兄,身長188センチ,ブルーの瞳,ダークブロンドの髪,通った鼻筋/
 ベビーシッターから庭師,犬の散歩代行業者,最高級の料理やバスルームの清掃手配まで何でもこなす家事代行業社で町にとってなくてはならない存在になっているクララはシングルマザー。10歳の娘サマーには何の興味も示さなかったバイロンとその家族たちを見返すために,クララは仕事にも育児にも懸命に取り組んできました。そんなクララの元を訪れたのはラフことカスター・ラファティでした。ラフは双子の妹ポリーの連絡先をクララに教えて欲しいと,なぜならポリーが留守の間の家の管理をクララの会社が引き受けており,連絡先をクララに指定していたからでした。ポリーは大手百貨店「ラファティズ」の経営をしたいと昔から望んでいましたが,女性だという理由でそれは認められず,ラフが副社長,そして後継者として指名されていたのでした。しかし,かつて医学を志していたラフは,経営学を専攻してMBAも取得し,6年間ラファティズで働いたのち,「国際協力医師団」のプロジェクト・マネージャーとして世界各地の貧困や紛争地域に出かける生活をしていたのでした。いよいよラファティズの実質経営者の祖父が病気になり,しかも代理を務めていたポリーが出奔し・・・,と状況が激変したため,イギリスに帰国してきたのでした。ポリーとクララは親友であり,ラファティズの経営をしたいと考えているポリーの気持ちをよく知っています。ラフが戻ってきたことでポリーの要求が通らなくなる可能性もまだあるのです。ポリーの気持ちをラフもよく知っていました。そしてラファティズを継ぎたくないという自分の気持ちも。クララはポリーの家にラフを案内し,翌日にはもういなくなるだろうと思っていましたが,出会ったときからラフを男性として意識してしまう自分にも気付いていました。娘のサマーは父の家で預かってもらっています。父はデリカテッセンの高級料理を作っており,クララの仕事とも深いつながりがありました。シングルマザーの娘を思い両親は男性との付き合いを奨励しているのですが仕事にかまけて,その意向を断ることの方が多かったのです。友人のスタイリストのマディは,ネットで男性と知り合えば良いなどといいますが,以前サマーの父親バイロンにひどい目に遭った経験から,男性との付き合いには慎重になっているクララ。もし今度付き合うとしたら「完璧な男性でなければ」という思いが強くあったのです。「思慮深くて,勤勉な人」つまりつまらない人,というのがクララの考えでしたが,あくまで娘優先の考えから少しも逸脱できないでいるのです。マディとクララが一杯引っ掛けているパブに,ラフが入ってきます。そして真っ直ぐクララの元にやって来たではありませんか。そしてラフはクララの暮らすフラットまで送り届けたのでした。翌日からラフからの連絡はないかと始終気にすることになってしまったクララ。三日後にオフィスにラフがやって来ます。そして仕事の依頼をします。臨時のガールフレンドになってくれないかと。「ココハエスコート・サービス」は引き受けていないというクララの返事にラフは事情を話し始めます。祖父に付き合っている女性がいると知らせなければ無理やり女性を紹介されてしまう状況になっていたからでした。ラフの祖母も母も夫たちの前から姿を消して自分たち兄妹をほったらかしにしたという幼少時代を過ごしたラフは,結婚,家庭,愛情を知らずに過ごしたのでした。一方クララの元にサマーの父親のバイロンから連絡が入ります。臨時ガールフレンドを引き受ける代わりに,ある人と会うときに一緒に行って欲しいと条件をつけるクララ。一人ではバイロンとの対決に冷静に話ができないかもしれないと恐れたからでした。練習と称してデートに出かけ,レストランやサバイバルゲームに連れ出すラフにクララはサラに惹かれていきます。そしてサマーをも遊園地に連れて行き,親子のように過ごす一日。ところがその遊園地のジェットコースター事故が起こり,サマーとラフは地上10メートルの高さで宙づりにされてしまいます。パニックになるクララ。救出まで1時間以上がかかりましたが,無事に二人は地上に戻ることができたのでした。怪我をしてはいけないと行動にさまざまな制限をしてきたクララの子育てでしたが,父親がいればサマーも安心して過ごすことができるかもしれない。でもラフは世界各地を飛び回る生活。一年のうち数ヶ月しかいない父親は必要ないと,ついにクララはラフとの別れを決意します。ラフもまたクララにふさわしいには自分ではなく,もっとクララとサマーを優先してくれる完璧な男性だと自分を納得させ,ヨルダンに行ってしまうのでした。愛されることを知らずに育ったラフはどうやって家庭を築いたら良いのかわからずにいたのです。
 ポリーが産まれたオーストラリア,シドニー。そこでバイロンと会う約束になっていました。そこになんとラフが現れます。そしてバイロンとの会合に付き合ってくれたのでした。「私はあなたが欲しい。あなたを心から愛しているのよ」とついにクララはラフに告白します。二人の接点はどうなるのでしょうか・・・。
 美しいクララがラフによって安心を得られるのでしょうか。いたずらっ子のようなラフの魅力もあり,二人の相性の良さが読者を幸せな気持ちにさせてくれるオススメの好著です。


タグ:イマージュ
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スペイン大富豪の結婚劇 [レイチェル・トーマス]

SHALOCKMEMO1336
スペイン大富豪の結婚劇 A Deal Before the Altar 2014」
レイチェル・トーマス みずきみずこ





 原題は「祭壇の前に賭けを」
 ヒロイン:ジョージナ(ジョージー)・ヘンショー(?歳)/未亡人/女性らしい体型,ダークブラウンの髪,ふっくらした唇,高く上げられた眉,茶色ときに金色の瞳/
 ヒーロー:サントス・ロペス・ラミレス(?歳)/実業家/長身,黒い瞳/
 今月はAmazonの書籍版のイメージが示されておらず,KINDLE版のイメージしかありません。斜麓駈のwebページのイメージ更新もbk1から7netと転々としてきてやっとAmazonに落ち着いたところだったのですが,今後もこれが続くとなるとまた考え直さなければならないかもしれません。オッと,今確認したら,本作の書籍版のイメージがでていました。なんらかの事情で更新作業が遅れているだけのようですね。それにしても本作の翻訳版のヒロインのモデルさんは全然良くないですね。骨張った体型,黒髪などなど,作中のヒロインとは違うイメージです。MB版のモデルさんもちょっと花が大きすぎて,清純なイメージというより,ヒロインの妹エマならこんな感じかなと思わせるイメージです。
 さて,結婚はパワーゲームの賭けのようなもの,というテーマの本作。始めにヒロイン側から仕掛けた賭けですが,出会った瞬間に二人の間に電流が流れてしまうというロマンス作品のストーリーになり,便宜的結婚という言い訳を互いに繰り返しながら最後は互いに愛を告白し合い,めでたしめでたしで終わるという王道を行く作品です。「私は人を愛してはいけないのに。よりによってサントス・ラミレスを愛してはならないのに。父に捨てられた日から,母が自滅の道をたどるのを見てきた。両親の行動を見れば,愛が人を消耗させ,傷つけ,孤独に陥らせ,人生のすべての喜びを奪ってしまうことが分かる。これは絶対にしてはならない賭けだったのに,なぜこうなったの?どうしてサントスに恋してしまったの?」という中盤の一文がすべてを物語っています。
 レイチェル・トーマス作品は2作目の翻訳ですが,前作「シンデレラへの鍵(SHALOCKMEMO1256)」にしろ,本作にしろ,ある一定の水準にあるものの,オススメやイチオシにはなかなか到達できていないように思います。なお,本作は作者のデビュー作のようですから,まあ,もう少し長い目で見ていきましょう。


タグ:ロマンス
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ダーク・モザイク [アン・メイジャー]

SHALOCKMEMO1335
ダーク・モザイク Dark Mosaic 1989」
アン・メイザー 古澤 紅




K-422
16.09/¥670/155p

R-0775
90.09/¥570/155p


 原題は「ダーク・モザイク」そのまま
 ヒロイン:セシリー(セシー)・チェインバーズ(ジェシカ・デヴリン)(歳)/テキスタイル・デザイナーの卵/美大卒,鼻筋が通り,すみれ色の目,ライトブラウンの髪/
 ヒーロー:ジェイムズ・ベントレー(歳)/実業家/灰色の瞳/
 就職面接のためにリーズの「リプリー・テキスタイル・カンパニー」に向かう列車で同室にいたのは自分とそっくりな女性でした。そして相手がトイレに行っている間に列車事故が起こり,セシーは気を失います。気付いたときは病院のベッドの上で,しかも自分が誰なのかも含めて自身についての記憶をすっかり失っていたのでした。アン・メイザーの既往喪失ものです。1989年の作ですので,27年前の作品ですが,古さはちっとも感じません。もっとも,テキスタイルという言葉には少々古めかしさを感じますが・・・。イギリスらしい伝統に沿った生活様式や,未だに地方都市にありがちな大邸宅と牧場の屋敷で繰り広げられる記憶の旅。そしてロマンスです。セレクトでの再刊ですが,初訳は1990年9月のHQロマンスです。
 ヒーローのジェイムズ・ベントレーは実業家のようですが,仕事の内容はあまりはっきりとは描かれていません。ジェイムズの娘レオニーが馬に関する仕事をしたいと言っていることと,馬房や馬がいることでそう思えるだけです。あるいは,別の仕事を持っているのかもしれません。アスペンという地名がなにか意味があるのかもしれませんが,よくはわかりません。さて,列車でセシーの同室にいたジェシカは自分が婚外子で母が臨終に際して自分の父親のことを始めて教えてくれたこと,そしてその父アダム・ベントリーが遺産としてビッカースリーという地所のすべてを残してくれたこと,さらにウェイクフィールドとブラッドフォードに二つの工場があること,父にはローラという年若い妻がいること,そのローラは今いる屋敷に住み続けたがっていることなどを話してくれたのです。ジェシカは工場や屋敷を売り払ってしまう考えでいることなどを洗いざらい話すのですが,セシーは自分の就職のことに頭をいっぱいにしており,ジェシカがセーブルのコートやバッグをセシーに預けてトイレに行ってしまったのを少々迷惑に感じながらももうすぐリーズに着きそうなので二度と会うこともないだろうと思っていたのでした。そこで起こった列車事故。病院で目覚めたセシーは自分が誰かを思い出せないだけではなく,自分がジェシカと呼ばれ,その従兄弟である男性が自分を迎えに来たことを知るのでした。何日間か検査を受けながら入院していましたが,そこにローラが現れます。「わたしはあなたのお父様の妻だったの」「あなたは私生児なのよ。あなたには,アダム・ベントリーの財産をもらう権利なんか無いの」とセシーを責めるのでした。退院に際して,ジェイムズはセシー(ジェシカ)を自分の住まいのアスペンで預かり,体力の回復を待つことにするのです。ジェイムズと娘レオニーの間の緊張感を感じ取ったセシーですが,ジェイムズの留守の間,二人でショッピングに出かけて,二人はすっかり意気投合してしまいます。かつてローラをアダム・ベントリーに紹介したのはジェイムズでした。そして打算的なローラはアダムの心を射止め結婚したのです。ところがアダムが亡くなり遺産がジェシカにわたると知ると今度はジェイムズを狙ってくるではありませんか。娘のレオニーはローラを嫌いジェイムズにも八つ当たりするのですが,母を産まれてすぐに亡くしたレオニーにとって,ローラはまさに鼻持ちならない父を狙う女性だったのです。セシーはなかなか記憶を取り戻しませんが,それでも自分の荷物だといわれたバッグの中の衣類や化粧品にはなんとなく違和感を感じています。そしてリーズの警察署からジェイムズに連絡があり,列車に乗っていてトイレで焼死体になっていたセシリー・チェインバーズという女性がいたことを知ります。その名前に一瞬だけ聞き覚えがあるような気がしますが,セシーは記憶を取り戻しはしませんでした。遂にすべてを思い出すのは,ジェイムズに連れられていったリーズの警察署で自分を待っていた,かつて自分が付き合っていた相手,そして自分の作品を盗用し勝手に使っていたラリーを見た瞬間でした。ショックのあまり気を失ったセシー。
 この後一気に大団円に向かうのですが,それほど絶世美女でもないヒロインに会った瞬間に惹かれてしまったヒーローと,一緒に暮らしているうちにヒーローとその娘に家族として愛情を感じてしまうヒロインの純愛が爽やかに繰り広げられる秀作です。


タグ:ロマンス
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