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炎とシャンパン [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1448
炎とシャンパン The Flame of Desire 1981」
キャロル・モーティマー 安倍杏子




K-458
17.03/¥670/156p

B-007
94.02/¥520/182p
R-0516
87.02/¥578/156p


 原題は「欲望の炎」
 ヒロイン:ソフィー・ベドフォード(19歳)/良家の娘/長いブロンド,すみれ色の瞳/
 ヒーロー:ルーク・ヴィットリオ(38歳)/肖像画家/褐色の瞳,黒い長髪,180センチ以上の長身/
 シモン・ベドフォードの一人娘で継母ローズマリーはかなりの美貌をもち若さの点で継娘に対抗心をもつ30代後半の女性。そしてその一人娘ソフィーはまだ19歳。いわゆる何も仕事のない家事手伝いという立場です。事の発端は,ルークと知り合いであったローズマリーが夫シモンの誕生祝いに愛娘ソフィーの肖像画を依頼したことでした。今時肖像画?と思ってしまいますが,それだけ経済的に余裕のある家柄だと言うことでしょう。「無理だわパパ。絶対に私なんか描かないわ。彼が描くのは美しい女性だけなの。とても気難しくて,相当な有名人でも断られたくらいなのよ」と,言葉に出すソフィーですが,そんなソフィーの美しさを見抜いたのはルークでした。ローズマリーも継娘の美しさを知っているからこそ対抗心を燃やしているのでしょう。パパッ子のソフィーは無理に自分の考えを押しつけたりせずいつも愛情を注いでくれるシモンが大好き。謂わばファザコンなのかもしれません。そんな仲良し親娘の間になかなか割っては入れない継母ローズマリーは時々ロンドンに出かけていって昔の友達などと過ごしています。そんな友人関係の中にルークも入っていました。父がローズマリーを愛していることは十分に知っていますし,そんな父をないがしろにしてロンドンに遊びに行っている継母にソフィーはいつも不満を抱えていました。そんな時,ソフィーの親友ヘレンの家から自転車で帰宅途中,ルーク・ヴィットリオの車と接触してしまいます。幸いすりむき程度の怪我で家まで送るというルークの申し出を断り,すぐに分かるからと正体を明かしませんでした。初めからルークに良い印象を持っていなかったソフィーですが,ルークとちょっと触れあっただけで不思議な気持ちになっていきます。19歳の初心な小娘ソフィーは母親がルークと浮気をしているのではと考え,父親を守るためにも母親とルークを監視しなければという思いから肖像画を描かれることを承諾するのですが・・・。
 アトリエという密室空間で繰り広げられるルークの巧みな誘い。初心で男性とつきあったことのないソフィーにとってはとても太刀打ちできない存在なのですが,ルークの方も初めて会ったときから感じていたソフィーの髪と瞳の美しさから逃れられなくなり,なんと結婚を申し出るのでした。近所の農場の息子ニコラスに男性の気持ちを確かめようとしてみますが,やはりルークに対して自分の中に現れる情熱はニコラスには湧いてきません。二人の結婚は初めは順調でした。何度も自分を求めてくるルークにソフィーはすっかりメロメロになっていきますが,背後に継母の姿を何度か感じてしまいます。自分を独占したがるルークは他の男性との動向も会話すらも禁じるのですが,さらには父親にも嫉妬しているのでした。そのため互いの本音を隠し,些細な食い違いから二人の気持ちはすれ違っていくのです。実家に帰ったソフィーは,継母ローズマリーが父親との間に愛の結晶を得,母娘二人の仲はあっという間に改善してしまいます。ルークへの気持ちを継母に打ち明けるソフィー。ローズマリーはどんなアドバイスをするのでしょうか。
 相変わらずジェットコースターのように次々と物語が進行していき,ヒーローとヒロイン,そして周囲の人々のちょっとした仕草や言葉が登場人物の気持ちを明確に表出していく作者独特の作風が遺憾なく発揮された作品です。ちょっと時代を感じる面もありますが,イギリスならばあり得るかな?ということで許せてしまうところも多いソフィーの成長譚です。


タグ:ロマンス
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黒猫 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1328
黒猫 Satan's Master 1981」
キャロル・モーティマー 加藤しをり




PB-176
16.08/¥700/156p

R-0287
83.12/¥500/156p


 原題は「サタンの主人」
 ヒロイン:サビーナ・スミス(19歳)/新聞社の共同経営者の娘/長い金髪,グリーンの瞳,すらりとした脚線美/
 ヒーロー:ジョエル・ブレント(34歳)/歌手/180センチを越える身長,真っ黒な髪,灰色の瞳,たくましい筋肉と引き締まったウエスト/
 タイトルだけを見るとちょっとおどろおどろしい感じのホラーないしはロマサスかと思ってしまいますが,純粋なロマンスものです。新聞社の共同経営者の娘サビーナは26歳年上の父の会社の共同経営者と婚約中ですが,相手は3度目の結婚,そしてサビーナ自身は勿論初婚。これまで父の言うとおりに唯々諾々と過ごしてきたサビーナですが,愛のない結婚にどうしても踏み切れないで,婚約自体をちょっと考えてくると,一人スコットランド,ネス湖周辺に出かけていきます。自転車で観光地巡りをするつもりで天候の変化を甘く見て出かけていくと,突然霧が濃くなり道も見えなくなってしまいます。おまけに自転車のタイヤもパンクしてしまい,しかたなく自転車をひきながら歩いて行くと,一軒の家を発見しドアをノックするのですが・・・。返事がなく窓から中をのぞいてみるとそこに光る緑色の二つの目が。黒猫?ちょっとこの当たりまでの雰囲気が幻想的でどきっとさせられる場面。そして後ろから低い声で「なにをしている」と声を掛けられ,さらにびっくり。こんなふうに始まる物語ですが,これが世捨て人のように暮らすジョエルとサビーナの出会いでした。ジョエルは1年前に妻を自動車事故で亡くしましたが,その責任マスコミにたたかれ,世間から身を隠していたのでした。そしてその中傷記事を書いたのが父の新聞社であることを知ります。名前を聞いても自分が誰かは知られないだろうとサビーナは思いますが,相手があのジョエル・ブレントだと気付くまでに時間がかかりました。そして事の真偽を明かしてくれないジョエル。しかもジョエルは自分をさらに中傷するために探し訪れた新聞記者だと思い込んでいます。自分の父が新聞社主だと正体を知ればさらに自分を誤解するだろうと,敢えてそのことは黙ったままにせざるを得ませんでした。それから奇妙なジョエルとサビーナと黒猫サタンの共同生活が始まります。そして一週間ほどの生活の後,次第にジョエルに惹かれ,ジョエルもまた自分を欲しいと言ってくれるようになりますが,自分は婚約中の身。もう婚約者ニコラス・フリードとの結婚はしたくないとはっきり分かったサビーナですが,家に帰してくれない,そして愛しているの一言も言ってくれないジョエルとそのまま生活するわけにはいかなくなります。きっと亡くなった奥さんを忘れられないんだわと思いつつも,ジョエルへの想いも断ち切れないサビーナは,自らの愛をジョエルに告白するのですが。ジョエルの仕事の完成祝いと村のパブで食事をしていると二人の男性が自分たちの方を見ています。そして翌日,ジョエルが村の郵便局に出かけている間にこの二人の男性に拉致されてしまうのでした。その二人は父の姪を受けて,サビーナを連れ戻しに来たのでした。サビーナの父チャールズ・スミスは共同経営者の会社のお金を使い込んでしまい,なんとしても娘を共同経営者に嫁がせなければならない事情があったのです。それで時間稼ぎをしてその間に使い込んでいた金を元に戻そうとしていたのでした。もしこのことがニコラスに知られてしまえば自分は破滅だと嘆く父を見捨てられずに,サビーナはニコラスとの結婚を予定通り勧めざるを得ません。そんな時,サビーナはジョエルのコンサートがロンドンで開かれることを知ります。そしてニコラスは婚約者へのびっくりプレゼントとしてこのコンサートのチケットとその後のパーティへの参加を計画していたのでした。事情を知らずにコンサートに来たサビーナは,ジョエルの目の前の席でその歌声にうっとりと聞き入ってしまいます。そして休憩時間に呼び出されて楽屋へ行ったサビーナ。肝心なことは言えずにスコットランドのコテージから盗まれたジョエルのものを返して欲しいと要求されます。これを口実にまたジョエルと会えるかもしれないと密かに期待するサビーナ。コンサートでジョエルが歌う歌が,亡妻ニコールを思う歌だと思い,サビーナは寂しい思いをしますが,黒猫サタンが元気がないと知らされ,週明けに再び会う約束をしてしまいます。その後サタンにふさわしい一軒家を捜すという名目でジョエルに会い続けるサビーナ。ところがコンサートの後のパーティで出会ったニコラスの2番目の妻(最初の妻はすでに亡くなっている)ナンシーとはすっかり腹を割った話ができるようになってしまいます。そしてジョエルとサビーナが車を返しにニコラスのフラットにいってみるとそこにはナンシーがいたのでした。そこから話しは急展開します。
 結末はなんと言っても傑作です。サビーナとジョエルの寝室のベッドの下に隠れていたサタンがなんと・・・。原題の意味もここではっきりします。とてもほっこりした結末に,まさにロマンス作品の王道を行くストーリーテラー,モーティマーの面目躍如とした1981年(邦訳は1983年)の傑作。楽しめます。


タグ:ロマンス
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ペントハウスの無垢な愛人 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1294
ペントハウスの無垢な愛人 Cherish Tomorrow 1985」
キャロル・モーティマー 柿原日出子





 原題は「明日を育てる」
 ヒロイン:チェルシー・スティーヴンズ(19歳)/デザイナー/170センチ近い身長,銀色の髪漆黒のまつげ,生意気そうな小さな鼻,ふっくらした唇,妖精を思わせる細い顎/
 ヒーロー:ルーカス・マカダムズ(34歳)/弁護士/暗褐色の髪と濃い茶色の瞳,高い鼻/
 モーティマーの約30年ほど前1985年の作品ですが,26歳のモーティマーの作品とは思えぬほど完成度の高い作品だと思います。もっとも19歳でデビュー作を出している作者ですし,この年1985年には10作もの作品を上梓しているようですので,本当に日々指から作品がこぼれる前に書き留めようとでもしているかのような多作ぶりで,その才能の豊かさが想像されます。近年はヒストリカルにも健筆を振るい始めていますので,一体どこまでこの勢いが続くのでしょうか。まだ50代ですから,あと20年ぐらいは新作が出るのではないでしょうか。
 15歳の年齢差のカップルのロマンスです。12歳のころに出会い,憧れを抱いてずっとルーカスを追いかけてきたチェルシー。そして両親の離婚に伴い,母親と生活をしていたチェルシーですが母の突然の死に自分が家を空けていたという事実に責任があるという想いを抱き,来る恣意を思いをしているときに,親友カミラの兄ルーカスを再度訪問し,マスコミからの取材を逃れるためにイギリスに渡ることになります。父親にとってもいつもチェルシーは小さなプリンセスといわれていました。以前とは違い弁護士として常に生真面目な姿を崩さなくなったルーカスに,チェルシーはイギリスのこのペントハウスにいる間に絶対に笑わせてみせると決意するのでした。ルーカスの元にやって来たのは小柄で美貌にあふれた弁護士仲間のジェニファー・サットン。なにかとチェルシーがルーカスと同居し始めたことに牽制する発言をします。ミセス・マカダムズの席を狙っているようだと家政婦のミセス・ハーヴィーも思っているようです。チェルシーはかつてずっと追いかけてきても自分を女性としては見てくれないルーカスとの将来は考えてもいませんでしたが,このジェニファーの出現でにわかにルーカスに猛攻撃をかけなければと思うようになるのでした。そしてある夜,ルーカスの妹カミラが突然ペントハウスにやって来ます。アメリカの父の元を何故離れたのか・・・。そして父のジェイス・スティーヴンズも追いかけるようにやって来たのです。この二人の訪問が母の死の原因となる予想外の展開を見せるのです。なかなか一筋縄ではいかないストーリーテラーの作者のまさに真骨頂となる意外な事実。それはネタバレになるのでここには書けませんが,作者が用意したこの意外性こそ,本作をまさに本作たらしめる大胆なプロットなのです。さてルーカスとチェルシーの関係は深まりをみせるのでしょうか。ミステリーやサスペンスとはひと味も二味も異なるロマンスの醍醐味を存分に味わえる作品です。


タグ:ロマンス
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伯爵の悪戯なラプソティ [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1244
伯爵の悪戯なラプソディ The Lady Confesses
(3姉妹シリーズ 3) 2011」
キャロル・モーティマー 古沢絵里





 原題は「淑女の告白」
 ヒロイン:エリザベス・コープランド(ベッツィ・トンプソン)(19歳)/伯爵家令嬢,貴婦人のコンパニオン/濃い青の瞳,黒檀の色の巻き毛,身長150センチあまり,形の良い黒い眉,小さな鼻,弓形を描く唇/
 ヒーロー:ナサニエル・ソーン(28歳)/オズボーン伯爵,エリザベスの雇い主の甥/流行の形に整えられた小麦色の髪と美しい茶色の瞳,顔立ちはどこまでも男らしく,高い頬骨と貴族的な鼻,くっきりと形の良い唇の下に意志の強そうな四角い顎/ケントとサフォークにに広大な領地を所有しロンドンにも美しい邸宅をもつ/
 いよいよ最終巻です。二人の姉が金髪なのに対して末娘のエリザベスはブルネットです。その他の特徴でも母に一番似ていると言われているのでした。さて,第1巻からしばしば登場していたのですが,偶然にも正体に気付かれずにきたエリザベス。実はミセス・ガートルード・ウィルソンにコンパニオンとして雇われていて,カロラインもロンドンでそれらしき人影をみていたのですが,遠距離であったことと,妹がロンドンにいるわけがないという思い込みで,二人は出会うことなく通り過ぎてしまっていたのでした。この当たりはもう,テレビドラマのようで目に見えるような場面ですね。カロラインが出奔してから数日後にエリザベスも家を出たのですが,偶然広場で道路に飛びだしたミセス・ガートルードの犬を助けたことから,コンパニオンとして雇われたのでした。その時,すぐに出自が知られないようにコープランドとは名告らずに,ショアレイ・パークの執事トンプソンの姓を借りていたのです。そして雇い主がコンパニオンにエリザベスは少し立派すぎる名前だということでベッツィと呼ばれるようになったのでした。そこにナサニエルがやって来ます。ナサニエルはミセス・ガートルードの甥。ブラックストーン伯爵ドミニク・ヴォーン,ガブリエル・フォークナー伯爵とは戦地で苦楽を共にした中で,第1巻で登場したようにドミニクの所有する賭博クラブ「ニック」での乱闘で,ドミニクに間違えられてぼこぼこにされ,その後治療に専念していたのでした。もちろんカロラインとはこの時点で出会っているのですが,なにせブロンドとブルネットの違いがあり,エリザベスとカロラインが姉妹であることは想像もしていませんでした。しかもそれが3姉妹で長女ダイアナとガブリエルが結婚することになることとは思いも寄らなかったからです。ミセス・ガートルードに押し切られて領地のマナーハウスで療養することになったナサニエルは,屋敷に見かけたことのない美女エリザベスがいることに驚きます。あくまでも叔母と飼い犬の世話係として雇われたこの娘が,伯爵である自分に対してもずけずけとものを言い,自分の出自について語りたがらないということにいささか腹を立て通しの生活が始まります。エリザベスが似ている,姉妹の母であるハリエット・コープランドは,10年前,エリザベスが幼い頃夫と三人の娘を捨ててショアレイ・パークを飛びだし,ロンドンの若い愛人の腕の中に飛び込みます。そして僅か数ヶ月後に駆け落ち相手に射殺され,相手の男も自殺してしまうというスキャンダルの持ち主でした。数ヶ月前に父を亡くしてガブリエルが新伯爵になって自分たちの後見人になって姉妹の誰でもいいから結婚する意向だということを知り,次姉に続いて家出したのですが,コープランドを名告れば,あのスキャンダルを思い出されてしまうということで貴族の館では本名を名告りたくなかったのでした。
 ナサニエルはなんとかしてエリザベスの本性を引き出そうとしますが,口が堅く,頭も切れるエリザベスのシッポをなかなか捕まえることが出来ません。しかも母の使用人に邪な気持ちをもつことにも世間からなんと言われるか分からないので遠慮もありましたが,しかしその話し方や身分が上の自分に対しても堂々と意見を述べることなどから,きっとどこかの没落貴族の娘だったのではないかと想像してみるのでした。未亡人で叔母のミセス・ガートルード・ウィルソンはまだ40代前半で自己主張が強く,伯爵の甥に対しても多大な影響力をもっていました。「息子を正しい道に導くべき母親がいない以上,本人にその気があろうとなかろうと甥が伯爵の妻としても伯爵家の子供たちの母としてもふさわしい女性を選ぶよう気を配るのが叔母である自分の務めだ」と公言してはばからないミセス・ガートでした。ところで,ソーンの館デヴォンシャーのヘプワース・マナーの隣人にルーファス・テナントという陰気な紳士が住んでいます。犬の散歩中に道端で出会い,エリザベスの美しさに惹かれたルーファスは頻りに館を訪ね,エリザベスを誘おうとします。実はこのルーファスは表面的な紳士らしさとは裏腹に,動物を嫌い,一人薔薇の新種づくりに熱中するいわゆるオタクでした。しかもなんとなくエリザベスに対して良からぬ思いをもっているようなのです。男性的なナサニエルとは違い,このねちねちして自分を追い回すルーファスに嫌悪感を覚えるエリザベスでしたが,雇い主の甥であるナサニエルと不適切な関係をもてば,解雇されてしまう危険性を避けるためにも,ルーファスの誘いに乗らざるを得ないという二重の苦しみを味わうことになってしまいます。そして,ルーファスの弟,ジャイルズが自分の母ハリエットと駆け落ちした相手であったことを噂で聞き及び,なんとしても事の真相を知りたいという欲求に勝てずにルーファスの誘いに乗って隣家の温室を訪ねるのでした。エリザベスの行方を聞いたナサニエルは,その実を心配し,ルーファス邸を訪れ,危ういところでエリザベスを救い出します。しかし,自分が使用人であるエリザベスとの間に不適切な関係を持てないという状態とどうしてもエリザベスに惹かれてします自分の気持ちとの間の葛藤に苦しむのでした。なんどかしつこくエリザベスを誘いに来るルーファスは,自分の育てた新種の白いバラをエリザベスに送りつけたり,散歩をしないかと誘いに来たりするのですが,なんとかナサニエルはその企てを阻止し,ルーファスとの間に緊張が高まります。そして母とルーファスの弟との真実を究明したいエリザベスはなんとかルーファスにそのことを聞き出そうとするのですが,するりと話しをすり替えられてしまいます。そして,ナサニエルが留守をしている時,ついにルーファスの魔の手がエリザベスに伸びてくるでした。母と似ているエリザベスをルーファスはハリエットと呼び,すっかり正気を失ってしまっていたのでした。そして,10年前に出奔した母ハリエットの亡くなった8年前の事件の真相が明らかになります。
 ミセス・ガートルードにはひた隠しにしてきたエリザベスへの思いは,敏感で何事も見逃さない叔母の関知するところとなりました。しかもエリザベスが出自に関して何か隠していることにも気付いているようです。ルーファスの事件の後,ナサニエルはかつて会ったことのあるハリエット・コープランドとエリザベスの共通点に思い至り,伯爵令嬢であることに気づくのでした。さて,エリザベスをどうやって説得しよう・・・。もしエリザベスが,エリザベス・コープランドならば,その後見人である親友ガブリエルの許可を得なければならず,最後の手段はガブリエルとの決闘となるかもしれない。
 19章からいよいよシリーズの大団円となります。3姉妹と3親友のそれぞれがくっついてしまうという都合のいいなりゆきに,いささか食傷する向きもあるかもしれませんが,私はこのシンプルでわかりやすいストーリー展開こそがキャロル・モーティマーの魅力であると思います。そして一度もロンドンの社交界に登場したことのない美人3姉妹がそれぞれ愛する人と出会い幸せな生活を送っていくだろうというハッピーエンディングに,うまい隠し味だなと作者に拍手を送りたくなってしまいます。
邦訳版のそれぞれのモデルが,ちょっと年代的に合わないようにも思えますが,なんとかそれぞれ愛らしいモデルさんを使っているのに比して,MB版の本作のモデルは,末娘と言うより長女といったほうがいいような,よくヒストリカルには登場するモデルさんですが,作品を無視した人選にはちょっと腹が立ちます。単にブルネットだからという理由しか思いつきません。いつもすばらしい表紙をつくっているMBにしては,なんともお粗末です。


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後見人に愛のソネットを [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1243
後見人に愛のソネットを The Lady Forfeits
(3姉妹シリーズ 2) 2011」
キャロル・モーティマー 古沢絵里





 原題は「剥奪された淑女」
 ヒロイン:ダイアナ・コープランド(21歳)/伯爵家令嬢/金と赤の中間の髪の色,燃えるように赤い頬,傲慢なほどきっぱりともたげられた顎,挑むようなきらめきを宿した青空を思わせる瞳の色と金色の眉/
 ヒーロー:ガブリエル・フォークナー(28歳)/新ウェストボーン伯爵,3姉妹の後見人/力強い角張った顎,形の良い唇,高い頬骨と長く細い鼻梁,黒に近い青の瞳/
 シリーズ2作目です。8年前の1件。これがキーワードになります。さて,ヒロイン,ダイアナは自分が長女であり,11歳で母を失った後は自分が妹たちの母代わり,そしてショアレイ・パークの女主人として,とにかく父と妹たちを助け,自分のことは常に後回しにして生きてきました。後見人のガブリエルから結婚の話を聞き,結局は自分がその相手にならざるを得ないのだろうと覚悟していたようです。それにしても妹たちの相次ぐ出奔に,行き先はロンドンだろうと当たりを付けて家を出てきたダイアナ。大胆なことにロンドンのウェストボーン・ハウスに出向き,ガブリエルが帰郷する前に館の修繕をしていたのです。そして,ガブリエルとの出会い。想像していたのとは全く異なるガブリエルの風貌に,ダイアナは惹かれてしまうのです。ガブリエルは金と赤の中間の髪の色の気位の高そうな美女が3姉妹の誰であるかも分からないまま,一目で惹かれてしまいます。まさに運命的出会いでした。最も,始めに3姉妹の誰に出会ったにしろ,ガブリエルは惹かれていたでしょうが・・・。それほど,父の言いつけによってロンドンの社交界に一歩も足を踏み入れていない3姉妹の美貌の噂は,ロンドンでは知られていなかったのです。分別のあるしっかり者の長女としての十年間は,常に自分のことを後回しにして軽率で衝動的な行動を取ったり,父親や妹たちよりも自分のしたいようすることなど十の昔に忘れてしまったダイアナですが,ガブリエルに出会った瞬間,この人こそと思えるようになって行きます。かつて隣家の御曹司マルコム・カッスルとの付き合いがあったダイアナでしたが,父親が亡くなってその財産が手に入らないことが分かって心変わりし,金持ちの商人の娘ヴェラ・ダグラスと婚約してしまった苦い経験から,いずれにせよ後見人のガブリエルが自分を好きになるはずがないという気持ちが先立ち,それならいっそ自分がガブリエルとの結婚に踏み切ろうとしていたダイアナにとって,ガブリエルの気持ちに寄り添い,自分を好きになってくれるだろうかという不安の方が勝っていたことも事実です。ガブリエルは比類ない美貌の持ち主であるだけでなく,聡明で有能なようすのうかがえるダイアナとの結婚こそ,宿命だと思えるのですが,8年前のスキャンダルが邪魔をしています。当時自分の言い分を誰も聞こうともせず,スキャンダルだと決めつけた周囲の人とは異なり,ダイアナは正面切って8年前のことの真相を聞き出そうと質問をぶつけてくるのです。この明かな公平性にもガブリエルは感心します。そしてガブリエルの言葉を「その言葉を信じてはいけませんか?」と切り返してくるダイアナの誠実さにも・・・。「この娘がすでにそこまで深く僕という人間を理解しているとは」と,ガブリエルは驚きを隠せませんでした。
 そして二人の結婚公示が新聞にも出されます。これを妹たちは見るだろうか,そんな期待も含めて,結婚という未知の領域に踏み込むダイアナに不安は隠しきれませんが,「実際的で有能な一面の下に,情熱的で誠意あふれる若い女性を見出した」ガブリエルは結婚への期待が高まっていくのでした。反面8年前の裏切りにより愛を信じられないガブリエルとマルコムに裏切られて結婚に懐疑的になっているダイアナですが,ダイアナの気持ちは,しかしながらガブリエルを愛してしまっていることをうすうすは感じ始めているのでした。そして,やって来たガブリエルの叔母と話している内にダイアナたち姉妹の母と親友だったことが分かり,安堵します。いよいよガブリエルの母との出会い。二人のいわば便宜的な結婚が次第に本物の愛による結婚に向かって走り出します。互いに裏切られた経験を互いに支え合うことで乗り越え,二人がふたたび愛を取り戻すことが出来るでしょうか。
 ストーリーは妹捜しの方にも向かいます。そんな時次女カロラインとガブリエルの親友ドミニク・ヴォーンが訪ねてきたのでした。二人の愛にあふれた姿にダイアナもカロラインの行動を許すことにします。同時に自分とガブリエルの冷めた関係と比べてうらやましくも思うのでした。そして8年前のスキャンダルの真相,そして愛アナの元婚約者マルコムの訪問と立て続けにストーリーが進行していき,二人の気持ちはこれらの事件をとおして確実に深まっていくのでした。あとは末娘エリザベスの行方だけが残っていますが,読者にはすでにその行方は匂わされているのです。この当たりが作者の憎いばかりの仕掛けですね。


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伯爵に捧げるセレナーデ [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1242
伯爵に捧げるセレナーデ The Lady Gambles
(3姉妹シリーズ 1) 2011」
キャロル・モーティマー 古沢絵里





 原題は「ギャンブル淑女」
 ヒロイン:カロライン・コープランド(カロ・モートン)(20歳)/伯爵令嬢/仮面の歌姫/
 ヒーロー:ドミニク・ヴォーン(28歳)/ブラックストーン伯爵,賭博クラブ「ニックス」経営者/
 PHS(ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル)を更新していて見つけたシリーズです。かつてはほとんどヒストリカルばかり読んでいた時期がありましたが,ハーレクイン・ヒストリカルからヒストリカル・スペシャルに変わって,ちょっとヒストリカルの分量の重さに食傷していた時期があり,新刊購入を控えていた時期が長く続きました。最近KINDLEでの読書がほとんどになり,分量が感じられなくなったこともあり,またそれへの興味も増してきました。なにより,本国版の表紙の美しさはヒストリカルならではのものがありそれに惹かれているのも否定できません。また,MIRA文庫でのヒストリカルの出版数もちょっとずつ増えているように思います。このシリーズはキャロル・モーティマー作品ということもあり,あまり好きではないリージェンシーではあるものの,ダウンロードしてみたわけです。(ちなみに好きなジャンルはなんといっても中世,もしくはバイキングものですが・・・。)
 さて,このシリーズ,「3姉妹シリーズ」は,伯爵家の3人の美人姉妹がヒロインです。それぞれ単独で次女のカロライン(20歳),長女のダイアナ(21歳),そして末娘のエリザベス(19歳)のコープランド家のロマンスを描いていますが,かなり関連性が深く,3作品で1作のロマンスの各章を為しているともいって良いほどです。そんなわけで,3作読了後にSHALOCKMEMOをアップすることにしました。時は1817年,舞台はイギリスですが,物語はロンドンで始まり,その後ヒーローを務める3人の伯爵の領地に場所を移します。姉妹の住まいであったウェストボーン領地,ショアレイ・パークの4伯爵領が舞台となります。前ウェストボーン伯爵が亡くなり,3人の姉妹の後見人になったのは新ウェストボーン伯爵,前ウェストボーン伯爵の遠縁ガブリエル・フォークナーでした。ガブリエルとその親友のブラックストーン伯爵ドミニク・ヴォーン,オズボーン伯爵ナサニエル・ソーンの3人はナポレオン戦争でともに戦い,兄弟以上に強い絆で結ばれた軍隊仲間。そしてガブリエルの10年前のスキャンダルの真相を知る数少ない友人でもありました。ガブリエルが被後見人である姉妹の内の一人と結婚するという話しを誰もまともではないと考え,それでも本人がそうするなら仕方がないと考えています。その経緯がプロローグで語られます。まず,本作のヒーローはブラックストーン伯ドミニクですが,目の下から頬にかけての傷跡が戦争の傷跡を物語る顔でありながら,その傷さえなければ堂々とした風貌に恵まれた美貌の男性です。ギャンブルに才能を発揮し,ロンドンの賭博クラブ「ニック」の経営者ニコラス・ブラウンとの賭に勝ち,「ニック」を手に入れます。ニコラス・ブラウンは複数の賭博クラブを経営し,ロンドンの裏事情に詳しい,いわゆる犯罪者の親玉のような男です。「ニック」の経営状態は良く,支配人のアンドルー・バトラー(ドルー)やボディガードでドアマンのベン・ジャクソンといった「ニック」をこれまで実質的に運営してきた使用人のおかげで客入りが良いのですが,ドミニクが店に行ってみるとドアマンのベンが持ち場についていません。さらに客の目が全てステージに向けられているではありませんか。そしてステージに登場したのは美しい歌姫。この歌姫こそヒロイン,カロラインの仮の姿。つまり結婚を無理強いされることを避けるためにショアレイ・パークを家出してきたカロライン改めカロ・モートンだったのです。ドミニクはこれに腹を立てます。ギャンブルを愉しむために集まった客たちに,違う期待を抱かせる店に成り下がってしまうと考えたのでした。すぐにもこの歌姫をクビにしようとステージが終わったところで控え室に行きますが。これが二人の運命の出会いとなったのでした。治安の良くない住まいに住んでいることを突き止め,自分の屋敷に連れてきたドミニクですが,カロの魅力にすっかり惹かれてしまいます。カロもまた外見とは違って公正で男らしく優しさも兼ね備えているドミニクの本性を一目で見抜き,その誘惑にすっかり心を惹かれていくのでした。しかし表面的にはカロは歌姫に身をやつしていますが本来は伯爵令嬢。傲慢に自分に命令しようとするドミニクの言葉を逆手にとっては言うことを聞きません。これまで出会った女性たちは皆自分に言い寄るか怖がるかのどちらかでしたが,カロのように正面切ってものをいう女性は初めてでした。二人の舌戦がとても見事に描かれており,これは3姉妹に共通した特質でもあるようです。美貌だけでなく,頭の回転が速く,しかも他人や動物に対する深い愛情をもっていることが次第にドミニクにも分かってきます。しかし,何か秘密を抱えているカロに対して愛情を抱いてもそれは欲望に過ぎないと言い訳し続けるドミニク。二人の気持ちのすれ違いが本作の最大の魅力といっても良いでしょう。そしていつ二人が互いの愛情を素直に出し合えるようになるのか,カロの正体がいつどんな場面で分かってしまうのか,読者を最後まで引っ張ります。そして事件が起きます。ドミニクが賭に勝った相手ニコラス・ブラウンの悪行により窮地に陥るカロ。そして彼女を助けるために白馬の騎士となるドミニク。事件の解決が二人の急接近に最大の出来事になるのです。
 本作の結末は自然に次作の幕開けにもなります。単独作品としてみればかなり唐突に終わる感じですが,もう次作が始まっているようです。そして次作のヒロインは長女ダイアナです。


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白いページ [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1236
白いページ Forgotten Lover 1982」
キャロル・モーティマー みずきみずこ




K-399
16.05/¥670/156p

R-0326
84.06/¥500/156p


 原題は「忘れられた恋人」
 ヒロイン:ベルベット・デイル(22歳)/トップモデル/ストロベリー・ブロンドの髪,すらりとした長身/結婚前後の11カ月間の記憶を喪失している/1歳半の息子トニーの母/
 ヒーロー:ジェラード・ダニエルズ(39歳)/スタイル服飾社オーナー/180センチ以上,黒に近い髪の色,深いブルーの瞳,真っ直ぐに通った鼻筋,引き締まった顎,力強い広い肩,細いウエストと腰/8歳の娘ビッキの父/
 これも,記憶喪失ものでした。トップモデルのベルベットは撮影のためマイアミにやってきていました。撮影が始まるそうそう,写真を依頼した会社のオーナーとの食事会があるというのでホテルに戻ると,「ベルベット」と声を掛けられます。そして全く覚えのないハンサムな男性,ジェラードが自分とかつて恋人同士だったというのです。そして自分を置き去りにしてさっさと他の男性と結婚してしまい,一人息子までいることを知っているのでした。しかしジェラードとの関係は勿論その存在すら記憶にはないのです。自分を非難するジェラードに無頼バシーだとは思いながらも,結局は記憶がないことを話すのですが,ジェラードは信じてくれません。翌日ジェラードの娘ビッキとベルベットは水族館で偶然出逢います。そしてビッキはすぐにベルベットに懐いてしまうのでした。自分に対する冷たい態度とは全く正反対に娘には笑顔を向けるジェラード。しかし撮影が終わればもう二度と会うことはないだろうと,数日間は我慢することにしたベルベットですが・・・。
 そこからはストーリーテラー,キャロル・モーティマーの独壇場です。つぎつぎにジェラードとの関係がビッキを挟んで深まっていく様子が描かれていきます。そして撮影終了後イギリスに帰国したベルベットが家に戻ってみるとなんとジェラードがそこにいるではありませんか。そして息子のトニーに会ってみたいというのです。トニーもまた,ジェラードにすぐに懐いてしまいます。子供たちのためにという便宜的な理由でプロポーズするジェラード。彼を愛してしまったベルベットはその言葉に反発しますが,離れて暮らすことに比べればそのうち彼も自分を愛してくれるかもしれないと結婚を承諾するのですが・・・。ジェラードの母からも気に入られ,またベルベットの兄夫婦もジェラードを気に入り,ととんとん拍子に話が進んでいくのですが,結婚式当日までジェラードの本当の気持ちに気付かないまま二人は夫婦になります。しかしその晩二人は口論になってしまうのでした。互いの家族を巻き込んでのこのロマンスは,一体どこに行き着くのか?そんな興味も最後の最後まで作者の思惑にすっかり乗せられてしまう,相変わらず筋達者なモーティマー作品です。ベルベットの記憶は戻るのか?・・・。
 [Forgotten Lover]を「白いページ」と記憶喪失を匂わす邦題にしたことに拍手です。


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十九歳の純潔 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1219
十九歳の純潔 Brand of Possession 1980」
キャロル・モーティマー 松尾当子





 原題は「所有の種類」
 ヒロイン:ステイシー・アダムズ(19歳)/女優/ロングの赤毛,小ぶりで上向きの鼻,口角の上がった大きめの唇,痩せた体/孤児院出身(16歳まで)
 ヒーロー:ジェイク・ウエストン(38歳)/作家/漆黒の髪,群青色の鋭い瞳,高い鼻,180センチ以上,広く力強い肩,引き締まった腰,筋肉質な腿,浅黒い肌,白い歯/父はアメリカ軍人,母はイギリス人
 年齢が倍も離れている男女のロマンスを描いた作品です。10歳程度は多いこのジャンルですが,倍はなかなかないですね。ステイシー・アダムズは新進女優。しかし身持ちが堅く,演技以外で男性との関係を持とうとは思っていません。自分を捧げるのは結婚初夜のみと決意しています。出演する作品の脚本を書いたジェイク・ウエストンはてっきり,中年の脂ぎった小柄な男と思っていたので,写真の公開されていないジェイク本人を,てっきりジェイクのスタッフだと思い込んでしまいます。そしてそんなジェイクに惹かれる想いを抱いてしまったことも,恋愛経験のなさ故でした。ジェイクは出会ったときから「君が欲しい」とストレートにぶつけてきます。「愛している」ではなく「欲しい」という言葉に,長い関係を持ちたがらない男性だと考えたのです。ジェイクの側にも直近の苦い体験から,「愛」を言葉にしにくい状況がありました。しかし,主演女優のテストイメージを見たときからジェイクはステイシーにすっかり惹かれていたのです。ステイシーにはマシューという男友達があり,その存在もジェイクに非難されてしまいます。さらに映画の相手役で女性に敬意を払わない性癖をもつポールの誘いを断ったことで,すっかりポールに付け狙われることになってしまいます。ちょっとした状況の変化であやうくポールに乱暴されそうになった時,ジェイクに危ういところを救われることになりますが,それでもジェイクの本心をつかめないステイシー。やがて撮影が終わり,国に帰ったステイシーですが,その後ジェイクからは何の音沙汰もなく,逆に寂しい思いをするステイシーなのでした。「ジェイクの妻になりたい。それは何より強い願いだ。毎朝目が覚めたときに隣にジェイクがいるという日々がずっと続いたら,愛する男性の妻になれたら,どんなに幸せだろう。」さて,ステイシーの願いは果たして叶うのでしょうか・・・。
19歳というステイシーの年齢が本当の愛を得られるほど成熟した年齢ではないと思いますが,それでも真剣に願えば夢は叶えられるのだというシンデレラストーリーです。


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5週間の仮面夫婦 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1197
5週間の仮面夫婦 Hard to Get 1984」
キャロル・モーティマー 相原ひろみ





 原題は「得がたい」
ヒロイン:ララ・ショフィールド(21歳)/富豪の令嬢/つややかな黒髪,長いまつげ,明るいグレーの瞳,少し低めの鼻,170センチの身長/5年前に継母(マリオン・ソーンダース)を亡くし父との二人暮らし
 ヒーロー:ジョーダン・シンクレア(30歳)/実業家/ブロンドともシルバーともつかない微妙な色合いの髪,ブロンズ色の肌,深い青(藍色)の瞳,高くとおった鼻筋,引き締まった口元,意志の強そうな顎,180センチを超える長身
 事業を営む父の一人娘として何不自由なく暮らしているまもなく21歳のララは,あるパーティでジョーダンと出会います。いつも男性からちやほやされてきたララを相手にもしないジョーダンをなんとか振り向かせようと,ゴルフクラブで出会ったという父について行きジョーダンに注目してもらおうとしますが,なぜか自分に対する態度は冷たいのでした。その後,ララが行く劇場やパーティの至る所にジョーダンの姿がありますが,傍らにはいつも別の女性たちが侍っているのです。ジョーダンは14歳の時シンクレア家の養子となりそれ以前の幼少時代については謎に包まれていました。父の経営するショフィールド・ホテルの21パーセントの株式は21歳の成人と共にララに渡る財産となる予定です。勿論大株主としてホテルの経営にかかわることも可能ですが,父はララに幸せな結婚をして欲しいと願うばかりで,ララも経営にかかわるつもりはありませんでした。なんとか一夜だけジョーダンの気を惹き,深い関係になることに成功し,その後,ジョーダンからプロポーズも受けるのですが・・・。
 ジョーダンには秘密がありました。実はララの継母だったマリオンはジョーダンの実母だったのです。自分と父親を捨てた母,その片棒を担いだララの父に復讐するため,ジョーダンはララを復讐の駒として利用しようとしたのでした。ララはジョーダンの誕生日プレゼントにとホテルの株式を全部ジョーダン名義にしてしまいます。一度は辞退したジョーダンでしたが,これがララの父に復讐するための格好の道具になると考え,受け取ったのでした。二人の結婚生活は,悲惨でした。結婚式当日も含め,ハネムーン中もララに触れようともしないジョーダン。ジョーダンを恋い焦がれるララにとっては地獄の責め苦でした。しかもロンドンに戻ってからは出張と称して帰宅しない日もあり,帰宅してもさっさと書斎に入り,言葉を交わそうともしないのです。しかしそのことを自分の幸せを願っている父には話せませんでした。そして,もうこれ以上続けていけないと思った夜,ララはジョーダンの書斎に乗り込み,そこでジョーダンの秘密を明かされるのでした。しかもその時すでにホテルの株式をもっていたジョーダンはララの父の経営に強硬に反対する姿勢を明確にしていたのです。
 離婚を決意したララは,父親にジョーダンの秘密を打ち明けざるを得なくなります。そして,継母の取った行動が理由のあるものだということを父から聞くのですが,それをジョーダンが信じるだろうか,とララは悩むのでした。さて,二人の関係はどうなるのでしょうか・・・。
 お金持ちの一人娘として愛情を込めて育てられたララが,ジョーダンとの交際で真の愛を知り,その愛でジョーダンの復讐の気持ちを癒やしていけるのか,これが本作のテーマです。二人の間のなかなか激しい応酬が,とても興味深く,深い愛とは何かを読者に示してくれる傑作です。そしてゴージャスなララが成長していく姿もさわやかです。さすがキャロル・モーティマーと呻らせる作品。イチオシです。


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赤い髪の秘密 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1142
赤い髪の秘密 Fated Attraction
( Quinlan 1 ) 1991」
キャロル・モーティマー 中原もえ





 富豪の令嬢リア=ジェーンは,21歳の誕生日までにきちんとした仕事に就いていれば父の遺産を受けることができることになっており,ロンドンのあちこちの企業に面接を申し込みますが,どの企業も名前を聞くと「どうして就職?」と首をかしげられ,丁寧に断られるだけでした。大きな荷物を抱え,家を飛びだしてホテル住まいをしているリア=ジェーンがロンドンの裏通りを歩いているときに危うく車に轢かれそうになり,水しぶきでバランスを崩し,踝を捻って溝に倒れ込んでしまった彼女を,ドライバーの男性が病院に無理やり運んでいきます。この男性こそ,運命の相手ラファティ(ラーフ)・クィンランでした。病院に着く前に失神してしまったリアの身元引受人になったラーフは,すっかり信じはしなかったものの,ジェーン・スミスとなのったリアを自宅に連れて行き,家政婦のミセス・ハワードとともに面倒を見ることになります。何かにつけて秘密めいたリアを初めて見た瞬間ミセス・ハワードは驚きの声を上げます。かつてクィンラン家でラーフの乳母をしていた女性にリアがそっくりだったからです。トランクに入っていた高級なドレス類を見たラーフはリアが金持ちの男性を食い物にするその道の女性だと勘違いし,蔑むような目でリアを見るのでした。そして秘書として雇おうと言うのでした。その時すでにラーフはリアに対してなにか運命的な出会いを予感していたのです。リアもまた何かにつけて自分を見下そうとするラーフに腹を立てながらも,真面目に仕事をしている姿や両親を亡くして立派に領地を守ろうとする姿に惹かれていくのでした。
あるとき,突然ラーフの叔母夫婦が屋敷を訪ねてきます。叔母のアニタ・バーンズはやはりリアを見て,誰かに似ていると不思議に思います。そしてリアの驚愕の時が訪れます。アニタの最愛の息子が,リアの知り合いのロバート・バーンスタブルだったからです。一目でリアの正体を見破ったロバートですが,自分のことをラーフに知らせないで欲しいという必死のリアの頼みで,その場は何とかしのいだのですが。ロンドンに戻ったロバートはついにリアの兄ジョーダンに問い詰められて,リアの居場所を話してしまったのです。家にかかってきた電話でリアはそのことを知り,翌日説明のためにロンドンに向かわざるを得ませんでした。そしてラーフが計画している領地のリゾート化計画を成功させるためにジョーダンにプランを話して事業に興味を持たせることになってしまいます。さっそくジョーダンがラーフに連絡し,リアがサマヴィル=スマイズ家の娘であることを明かされてしまいます。ラーフを騙していたこととリアを信用して事業計画を打ち明けたのにジョーダンにそれを話してしまったことでラーフは怒り心頭,さっそくリアに出ていくように告げるのでした。そしてジョーダンの支援を断る連絡を入れてきたのです。何とか説得しようと領地を訪れたリアとジョーダン。ラーフは数日しか離れていないのにリアのことばかり頭に浮かび,ついにリアに結婚を申し込みます。リアもまた同じ気持ちであったことを告白し,承諾の返事をするのでした。この話を聞きつけたロバートは叔母アニタのところにリアを伴ってパーティに参加することになっていましたが,このパーティにラーフとジョーダンも参加することになり,そこでアニタから衝撃の過去を知らされることになります。逆にラーフとジョーダンは親密さを増し領地のリゾート化計画に協力して当たることになります。
いつもながらのモーティマーのストーリーテリングのうまさが光り,1991年刊という時代の古さを感じさせないモダンな作品です。姉妹編の「偽りの訪問者」はジョーダンがヒーローとなりますが電子書籍化されていないようなので,いずれ読んでみたいと思います。


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