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哀愁のプロヴァンス [アン・メイザー]

SHALOCKMEMO1227
哀愁のプロヴァンス The Night of the Bulls 1972」
アン・メイザー 相磯佳正




PB-166
16.04/¥700/176p

R-0001
79.09/¥450/173p


 原題は「雄牛たちの夜」
 ヒロイン:ダイアン/教師,シングルマザー/愛らしい目,セクシーな唇/
 ヒーロー:マノエル・サン=サルヴァドール/農園経営者/黒い眉,灰色の瞳,高い頬骨,厚い唇,引き締まった顎,濃いもみあげ/
 初訳はハーレクイン・ロマンスの第1番の復刻です。HQの古典的名作を復刻する「ロマンス・タイムマシン」のシリーズの1作で2001年にCPで再版されています。初訳は1979年。40年前の出版(原作は1972年)ですから,さぞや古めかしい作風かと思いきや,文学作品を読むような格調高い調子ではあるものの,描かれている登場人物たちの気持ちの動きは現代とあまり変わらず,ヒーローのマノエルが少し寡黙で男らしさがにじみ出る性格,そしてヒロインがちょっと浮気っぽい感じであることや,敵役のイヴンヌとマノエルの母の性格の悪さが目立つことなどは,ストーリー展開に明確さをもたらし,筋立てはさすがアン・メイザーと思わせる作品だと思います。時代的なものを感じさせるのは,ヒロインが公衆電話を使うところとか,ロマ(本作ではジプシーと表記されていますが)の風習が描かれているところなどはあるものの,それが返って魅力になっています。舞台がフランス南部,ミストラルやアルルといったフランス独特の風物,都市が舞台となっているため,エキゾチックな感じがなかなかイイですし,フランスでも闘牛が行われていることなどが分かって,楽しめます。いわゆるシークレット・ベビーものですが,子供の存在を隠すことなく,その子の病を治すためにヒロインが強い気持ちでヒーローの元を訪れるところから物語の幕が上がるところも,若干ミステリーの倒叙もののような感覚になれるところも面白さの理由だと思われます。今後もこのシリーズ出版が続いていくとすれば,ハーレクインの古典を読む絶好の機会になりそうです。


タグ:ロマンス
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侯爵に言えない秘密 [アンナ・クリアリー]

SHALOCKMEMO1226
侯爵に言えない秘密 At the Boss's Beck and Call
( Undressed by the Boss 7 ) 2009」
アンナ・クリアリー すなみ 翔





 原題は「上司に呼び出され支配されて」
 舞台:シドニー
 ヒロイン:ラーラ・メドーズ(27歳)/出版社の編集者/ブロンドの髪,きりっとした顎,すらりとした脚/
 ヒーロー:アレッサンドロ(サンドロ)・ヴィンチェンティ(35歳)/出版社の新社長,ヴェネツィアの侯爵/190センチ,黒く濃いまつげ,高い頬骨,くっきりした顎,漆黒の目/
 アンナ・クリアリー5年ぶりの新訳です。もともと年1冊ぐらいしか出していない作家ですが,まだ最新作が未訳で,もう少し訳本が出てもよい作家だと思います。これを機会に全作の訳本出版が望まれます。本作はいわゆるシークレット・ベビーものです。スティレット出版社に勤務する編集者ラーラは一児の母,いわゆるシングルマザーですが,前社長ビル・カーマイケルに認められ編集者として子供を育てながら働いてきました。ところが,社がヨーロッパの大企業スカラ・エンタープライズに身売りすることになり,会社から派遣されてきたのがかつてのラーラの恋人で子供の父親でもあるアレッサンドロでした。ヴェネツィアの侯爵で凄腕の実業家でもあるアレッサンドロは中世には復讐に命を賭けたと噂される,かの有名な?ヴィンチェンティ家の末裔で,6年前にラーラと激しい恋に落ち,ラーラにはヴィヴィアン(ヴィヴィ)という愛らしい一粒種の娘が産まれたのでした。6年前にシドニーで開催された国際出版会議で出会った二人は「ザ・シーズンズホテル」のスイートルームで激しく恋に落ち会議の期間中共に過ごしたのですが,イタリアに一緒に来てくれないかというアレッサンドロの誘いをラーラはきっぱり断り,映画「めぐり逢い」のシーンをまねて日時指定でシドニーのセンターポイント・タワーで会う約束を取り交わすのでした。ところがその後大規模な山火事が起こり,ラーラは大怪我を負い,家も父親も失ってしまいます。母親と命からがら逃れて,小さな家で暮らしてきたのでした。当然約束の日時にいくことなど出来なかったのです。さらに,偶然みた雑誌でアレッサンドロがイタリア名家の美女と結婚した記事を目にしたラーラは当然アレッサンドロも約束を果たせなかったはずだと,思い込んでしまい,ヴィヴィアンの存在を告げることを諦めたのでした。ふたたびラーラの元に現れたアレッサンドロに「ヴィヴィの存在を知られるわけにはいかない。」とラーラは考えます。なぜなら,「イタリア人は家族が崩壊することを極度に怖がっていて,経済的にどれほど苦しくてもあらゆることを犠牲にして子供に立派な教育を受けさせようとする。ヴィヴィはまだ幼く,生まれ育った国から乱暴に引き抜いてヴェネツィアであれロンドンであれ,見知らぬ国に植え直すことなど出来はしない。」と考えたからです。アレッサンドロはヴィヴィの存在を知ればきっと自分の国に連れ去ってしまう,そしてそれだけの財力と権力も持っていることは明らかだったからです。
 実はアレッサンドロはあの約束の日にシドニーに来ていたのでした。前後3日間滞在し,ラーラに連絡を取ろうとしたのですが,ラーラは姿を見せず,電話も繋がらないままでした。きっと自分との関係は嫌になったのだと思ったアレッサンドロは,山火事やラーラの怪我のことまで想像することも出来ず失意のうちにイタリアに帰ったのでした。しかし,偶然再会した今,アレッサンドロはラーラにまだ惹かれていることを認めないわけにはいきませんでした。惹かれる気持ちと裏切られた気持ち。愛と怒り。その狭間で苦しむアレッサンドロ。ラーラもまた,アレッサンドロがイタリアに妻がいると思い込んでおり,ヴィヴィの存在を知られたくないという気持ちが強く自分のこととを詳しく語るわけにはいきません。会社の新社長が決まれば,アレッサンドロはまた帰国するはずで,それまでなんとか持ちこたえられればという気持ちと,アレッサンドロを思うと未だに自分の欲望に火がついてしまう反応にも戸惑うのでした。アレッサンドロの結婚相手ジュリア・モレロは,雑誌の写真によると裕福な家の出で絶世の美女。でもアレッサンドロの左手には結婚指輪が嵌められていないことに気付いたラーラ。それを二人でいるときに聞いてみると,「僕に妻はいないよ」という答えが返ってきます。実はジュリアとアレッサンドロは家同士が知り合いの幼なじみ。かつてジュリアは間違った相手と結婚し,その男性に離婚後もしつこく言い寄られ,さらに暴力まで振るわれて困っていたのでした。それを解決するためにアレッサンドロと偽装結婚をし,問題解決した後に関係を持たないまま離婚したのでした。相手の男性に信用させるため大々的な結婚式を挙げたところをマスコミが取り上げ,それが記事になったのでした。ラーラに捨てられたと思っていたアレッサンドロにとっては,それをラーラに告げる気持ちもその手段もなかったのでした。そしてアレッサンドロに誘われるままにラーラはふたたび関係を持ちます。そして突然家を訪ねてきたアレッサンドロにヴィヴィの存在を知られてしまうのでした。互いの事情が分かり,しかも二人の間の子供の存在が,二人の関係の複雑さをさらに深めていきます。シドニーとヴェネツィア,この距離を乗り越えて二人は結びつきを深められるのでしょうか。ヴィヴィはアレッサンドロの存在を好意的に受け止め,もはや父であることの名乗りを上げようとするアレッサンドロを止めることは出来なくなってしまいます。この葛藤を解決するためにアレッサンドロは思い切った手段をとるために一度イタリアに帰っていきます。二人の関係を心配するラーラの母。さて,その解決策とは・・・。ヴィヴィの本名を聞いたときのアレッサンドロのしたり顔が思い浮かび,読者の心を癒やしてくれます。
 互いの心が通い合ったときの軽口の言い合いや,ラーラの明るくたくましく生きる姿がとてもすがすがしく,読後感の素晴らしい作品です。


タグ:ディザイア
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大富豪の忘れえぬ妻 [イヴォンヌ・リンゼイ]

SHALOCKMEMO1225
大富豪の忘れえぬ妻 The Wife He Couldn't Forget 2015」
イヴォンヌ・リンゼイ 佐藤奈緒子





 原題は「彼が忘れられなかった妻」
 舞台:ニュージーランドのオークランド
 ヒロイン:オリヴィア・ジャクソン/元高校の美術教師,画家/女性らしいカーブを描く目,まっすぐな鼻,ふくよかな唇,赤い髪,なめらかな肌,大きく青い瞳
 ヒーロー:ザンダー・ジャクソン/投資銀行の共同経営者,オリヴィアの夫/
 夫が事故で記憶喪失になり,離婚寸前の妻との新婚時代以来の2年間の記憶を失ってしまったことを利用して,愛を取り戻そうとする妻と夫の記憶回復までを描いたロマンスです。「外傷後健忘症」は重度の脳損傷を受けた患者が回復の過程で患う症状。思考の混乱,記憶の不保持,短期記憶障害が生じる,という医師の診断を聞いたオリヴィアに,別居していたザンダーは,愛があった頃の態度でオリヴィアに接するのでした。二人の間の子供パーカーを失い,その事故の原因を巡って夫婦間の間に気持ちのすれ違いが生じ,そのままザンダーは家を出てしまいます。ザンダーの会社の秘書がザンダーに想いを寄せ,オリヴィアとの間に確執があることもザンダーは知りません。「この耐えがたい孤独な二年の間,オリヴィアは無理にでも自分に言い聞かせてきた。努力さえすれば,恋に落ちるのと同じくらい簡単に恋を忘れられるのだと。でも愛はそんなに単純ではない。」と感じてきたオリヴィアはこの機会を利用して,今も惹かれるザンダーと新たな関係を築けたらと考え,無理にザンダーの記憶を回復させることをせずにかつて二人が共に暮らしてきた家でザンダーの面倒を見ることで愛を復活させようと決意したのでした。息子パーカーの存在もその死も隠したままで・・・。そして別棟のアトリエの隣室をザンダーの書斎に改装し,一日中一緒に過ごせるようにして愛を深め合うのでしたが,オリヴィアの作品が完成し,画廊に絵を搬入している間に,屋根裏部屋に隠していたパーカーの思い出の品をザンダーが見つけてしまい,一気にザンダーの記憶が戻ります。そしてザンダーはふたたび家を出てしまうのでした。追いかけてザンダーのフラットで話し合っているところに折悪しくザンダーの秘書レイチェルがフラットの鍵を開けて入ってきてしまい,ザンダーと秘書の関係が続いていたことを知ったオリヴィアは,一時は離婚手続きを再開しようと,届けにサインをして弁護士に連絡してしまうのでした。もう,このままでは悲恋で終わってしまうのかと思わせて,最後の大逆転を狙う作者です。
 互いに愛し合いながらも互いの行動の裏にある気持ちを確かめずにすれ違ってしまう二人の葛藤と心の動き,そして困難を乗り越えることに寄る心の成長を描きながら,愛を復活を成し遂げるまでを描いた秀作です。


タグ:ディザイア
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