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ベッドとオフィスで違う恋 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1198
ベッドとオフィスで違う恋 Powerful Boss, Prim Miss Jones 2010」
キャシー・ウィリアムズ 柿原日出子





 原題は「傲慢なボスと潔癖なミス・ジョーンズ」
 ヒロイン:エリザベス・ジョーンス/元弁護士事務所リッグズ・アンド・サンの秘書,ジェームズ・グレーストーンの実の娘/女性らしい豊かな体躯,緑色の瞳,長い髪
 ヒーロー:アンドリアス/実業家(出版社,ビジネス・ホテルチェーン,マスコミ関連会社3社,大手コンピュータ会社のオーナー,製薬会社の買収中)/父がジェームズ・グレーストーンの運転手として雇われて以来名づけ子となる/褐色の肌と黒い瞳,黒い髪
 シングルマザーの母をガンで亡くしたエリザベスは,残された母の手紙を元に,実の父親ジェームズ・グレーストーンに愛にやってきます。壮麗な屋敷に住むジェームズでしたが,最近は事業から手を引き,サマセットの屋敷で車椅子生活での隠遁生活を送っていました。自分が名告る前に,丁度ジェームズの身の回りの世話をする人を募集していたジェームズはその仕事をアンドリアスに託していたのですが,屋敷の家政婦がやってきたエリザベスを応募してきた世話係だと勘違いしてアンドリアスに取り次いだことがきっかけで,用件を話す前にジェームズから気に入られ,世話係として働くことになってしまいます。実の娘だと名告ることが病気のジェームズにショックを与えてはいけないと,事実を話さないまま屋敷で暮らすことになってしまいます。この当たりの設定は実にタイミング良く,思わず読者の微笑を誘ってしまううまいからくりです。さて,これまで愛を信じず,女性は自分の魅力に必ず従うはずだと思い込んでいるアンドリアスですが,なにかと口答えするエリザベスに興味を持ってしまうのでした。そして,これまで付き合ってきたセレブでゴージャスなモデル体形とは異なるエリザベスに何故か惹かれてしまう自分に戸惑ってしまいます。しかし強引にエリザベスに迫って,必ずイエスと言わせてみせると意気込むアンドリアス。ジェームズが昼寝をする午後は自分の秘書を務めなさいと段取りを決めてしまい,屋敷に仕事を持ち込んで矢継ぎ早の指示を繰り出すのでした。しかし,何か隠している様子を敏感に感じ取ったアンドリアスはエリザベスを信用せずにジェームズに取り入って金目当てにやってきた女性と思い込んでいます。エリザベスもまたアンドリアスを「冷淡で,人を見下し,ひどくぶしつけだけれど,それでも人を惹きつける何か」に魅了され,遂にアンドリアスの誘いに自分から乗ってしまうのでした。秘書としての仕事と夜のベッドでの甘いひととき,二つの顔をもたなければならなくなったエリザベスの八面六臂の活躍が次々と語られていきます。そして,アンドリアスが最近まで付き合っていて,飽きて捨ててしまった元恋人のアマンダ・フェローズが突然屋敷にやってきたとき,エリザベスがタンスにしまい込んでいた母の手紙を見つけてしまい,エリザベスがジェームズの娘であることが発覚してしまうのでした。
 アンドリアスの苗字が紹介されていません。ジェームズの養子になったわけではないし,父の名前も書かれていないので,推測できませんが,こんな作品も珍しいですね。さて秘密が明かされたエリザベスは,どうなるのでしょう。ジェームズはかつて愛した女性との間の子供がエリザベスであることを知って大喜びです。一方アンドリアスの方は,やはりエリザベスが金目当てでやってきたと思い込もうとして,ジェームズの財産は自分が管理しているので勝手にはさせないぞと脅し,ロンドンに帰ってしまいます。母を失った後に,父と出会うことができたエリザベスにとっては,田舎の屋敷での父との生活こそ,幸せな生活でした。しかしジェームズはエリザベスにふさわしい男性を紹介するぞと意気込んで,盛大なパーティを開くのでした。当初パーティに行くつもりのなかったアンドリアスですが,エリザベスとの充実した日々が忘れられず,屋敷にやってきます。そしてエリザベスに話しかける男たちを追い払うように存在感をむき出しにするのでした。やがて,エリザベスは地元の学校の教師トムとデートするようになるのですが,アンドリアスとどうしても比べものにならないトムとは心が浮き立つことはありませんでした。父もまたトムとの交際に賛同せず,「お前は大きな間違いをしている」という始末。しかしそんな父の言葉を自分を気遣ってくれているのだと思いエリザベスは父との関係に幸福感を感じます。「アンドリアスと正反対の人がいい。なぜなら,いつも正気でいられるから。」というのがこの時のエリザベスの気持ちでした。二人の様子を見てきて欲しいとジェームズに頼まれたアンドリアスが,二人がランチを取っているレストランに赴きます。かつて,ロンドンに一緒に行って自分の愛人になるよう命じた傲慢なアンドリアスが,不安げに話があると口ごもる様をみて,エリザベスはジェームズに何かあったのでは?と心配になります。そうではないといいつつ,アンドリアスと車に乗り込んだエリザベスにアンドリアスが告白した愛の言葉とは・・・。
 邦題がちょっと気に掛かって,いつか読んでみたいと思っていた本作ですが,とびきりの美女ではないエリザベス(リジーとかベスとかと愛称で呼ばれることはなく,エリザベスでとおしているところがちょっとかわっていますね・・・。)が欲望に振り回されずに,きちんとアンドリアスと正面切って向き合う姿がとてもりりしく,結末もドロドロにならずにとても洒落ていて素敵な作品です。重箱の隅の老人の独り言。一個所気になるところがありました。中盤第5章(KINDLE位置ナンバー1239)「鍵盤を整える調律師のように」と訳されていますが,調律するのは弦で鍵盤ではないと思うのですが・・・。原文はどうなっているのかな?


タグ:ロマンス
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シンデレラの過去 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1196
シンデレラの過去 The Secret Sinclair 2012」
キャシー・ウィリアムズ 茅野久枝





 原題は「秘密のシンクレア」
 ヒロイン:サラ・スコット/清掃員/シングル・マザー(息子:オリヴァー)/金髪で,緑色の大きな目
 ヒーロー:ラウル・シンクレア/実業家/オリヴァーの父親/つややかな金色の肌,肩まで伸びた豊かな黒い髪,引き締まった筋肉質の体
 アフリカのモザンビークでボランティアとして働くサラとラウル。二人は互いの愛を確かめ合っていたが,やがて任期が終わり,彼は連絡先も告げずに去ってしまう。故国に戻ったサラはラウルの子を身ごもっていることに気付く。しかし,連絡先も分からずサラは大学も1学期だけ通ったところで出産のために退学してしまう。やがて生まれた愛息オリヴァー。サラはオリヴァーのために清掃員の仕事をしながらなんとかロンドンでの生活を成り立たせている。ある夜,いつものように清掃作業を始めようとしたところ,まだ人の話し声がし,急いで清掃用具の陰に隠れようとしたところを秘書に見つかってしまう。そして,秘書の後ろにいた人物に気付いたとき,サラは驚愕を隠せなかった。なんとそこにはラウルが新しい会社の経営者としていたのだった。
 別れから5年が経過して,4歳の息子オリヴァーと夜間の清掃中にオリヴァーを預かってくれる親友しか知り合いのいないロンドンで暮らすサラの,懸命な生活ぶりが描かれます。そして,それを見たラウルの心ない言葉に傷つくサラでした。勇気を出してオリヴァーの存在を告げるサラですが,ラウルにオリヴァーを取られてしまうのではないかという怖れと,予定どおり自分の人生を送ることができなくなったサラとの間に,愛情は復活するのでしょうか。突然自分には息子がいると告げられたラウルの驚きと戸惑いも容易に想像がつきますが,シングルマザーとしての生活が如何に大変かということに思い至らず,初めはみじめな生活を送るサラをそのままにはしておけなくなったラウル。しかしサラのプライドを傷つけないように気遣いながらも次々にサラとオリヴァーの生活に入り込んでいくラウルの決断力と行動力に押されてしまうサラなのでした。「ラウルは傲慢で自分勝手だ。そんないやな男に惹かれていたわたしはなんて愚かだったのだろう」と考え,しかしなんとかオリヴァーのためにラウルが父親であることを告げ,オリヴァーが成長するまで,ラウルとの仮の夫婦としての生活を維持していこうと決意するサラですが,なんといっても惹かれているラウルとの生活に母親としての自分と妻としての自分に折り合いを付けることが難しくなります。一方,これまで付き合ってきた女性たちはラウルの経済力にだけ注目し,内面にまで踏み込もうとする女性はいませんでした。しかしサラは「ラウルに対して遠慮をせず,彼に媚びようともしなかった。ラウルが過去にデートをした女性は全員が彼の家を見たとたん,その贅沢な作りに卒倒しそうになった。ところが(サラは)彼の住んでいる場所のどこが嫌いかを一冊の本にまとめて彼に送ってくれそうだった」と,遠慮なくラウルの生活に反逆していくのです。これまで付き合ってきた女性との違いに気付いたとき,サラに対する愛情に芽ばえるラウル。さぁ二人はどんな折り合いを付けて親子三人の生活を作り上げていくのでしょうか。サラが勝つか,ラウルが勝つか。虚々実々の二人の関係がとても面白く読者に迫ってくる迫力の作品です。最後のサラの心の声「おとぎ話が嘘だなんて,誰が決めたの?」が決めの一言で見事です。


タグ:ロマンス
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秘書の条件 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1152
秘書の条件 Secretary on Demand
Nine to Five 18 ) 2001」
キャシー・ウィリアムズ 本城 静





 すごくハッピーな秘書ものです。疲れている人や悩んでいる人なんかはとてもいいんじゃないかなと思わせる作品です。ヒロインのシャノン・マッキーは7人兄弟で父親は亡くしたものの幸せな家族生活を送っていました。しかし,故郷のダブリンの会社でセクハラに遭い,ロンドンに出てきます。ウエートレスをしていたレストランに毎朝やってくる素敵な男性。それが出版社を経営するケイン・リンドレーでした。巻末でわかりますが,ケインがレストランに通うようになったのはシャノンに会いたいがタメでした。そしてある昼食時ダブリンで自分にセクハラをして騙したエリック・ガルウェイがケインとの商談でやってきたのです。しかもシャノンを覚えていない様子。熱いステーキをワザとひっくり返し,エリックに仕返しをします。もちろんウエートレスとしては首になるだろうと予想して・・・。でもそんなことではめげない強さを持つシャノンに,ケインが秘書にならないかと仕事の話を持ちかけます。そして秘書の条件というのは,自分の娘の面倒を見て欲しいとナニーのアルバイトも掛け持ちすることでした。シャノンとケインの8歳の娘エレノアはすぐに打ち解けます。そしてシャノンの住む治安の悪い地区のアパートの部屋をおとずれたケインは,新しい安全なフラットを見つけるまで自分の家に数ヶ月住むようにと,シャノンをむりやり連れて行くのでした。その時にはシャノンはケインの家でロンドンでの親しみの持てる家族としての気持ちを持ち始め,それはやはりケインへの愛だと気付いていくのです。やがて弱いお酒を飲んで気が大きくなりケインとベッドを共にしたシャノン。そしてそれは新しい生命への入り口でもありました。それに気付いたシャノンは慌ててダブリンに逃げ帰ってしまいます。もうこれ以上ケインに負担をかけることはできないと・・・。数日後,ケインがシャノンの実家を訪れるのですが・・・。 エピローグでの愛らしい女の子ソフィーの誕生も含めて,読者がこうなって欲しいなと思う展開が見事にストーリーに現れすっきりした読後感を得られる作品です。自分を年寄りだといいつつ包容力のあるケインと,少々短期で思ったことをズバリ口に出したり行動に移してしまう若い(25歳の)シャノンのコンピが息もぴったりと生き生きと描かれている秀作です。


タグ:イマージュ
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秘書という名の愛人 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1124
秘書という名の愛人 At Her Boss's Pleasure 2015」
キャシー・ウィリアムズ 深山 咲





今年年間300冊を超えた読了冊数がどこまで伸ばせるか,一昨日配信された1月5日刊の新刊を読み始めました。キャシー・ウィリアムズの本作はまさに秘書ボスものの王道を行く作品でした。ヒロインのケイト・ワトスンは秘書というより会計士として財務に携わっていますが,社長であるヒーロー,アレッサンドロ・プレダの実務スタッフでそのうち企業買収などの会計部分を手がける,いわゆる会計のプロ。頭が良く,スタイル抜群の彼女は,母が次々に男性に頼った生き方をしてきたのに嫌気がさし,自らはとにかく目立たないようきっちりとスーツを着込んで仕事をするようになっていました。あるきっかけでそんなスーツの下の彼女の本当の姿を想像したとき,アレッサンドロは恋に落ちたのです。しかし,自分の両親が愛に目が眩み事業そっちのけで一族の財産を使い果たして,自分が企業を立て直さざるを得なかった経験から,気軽な交際以外,愛に元ずく将来を約束するような男女関係を頑なまでに拒否していたのです。カナダへの出張にケイトを伴ったアレッサンドロは,どうにも我慢ができなくなってケイトを誘惑します。旅の恥は掛け捨てとでもいうかのようにアレッサンドロの誘いに自ら乗ってしまったケイトですが,イギリスへの帰郷後は再び何事もなかったかのように仕事に没頭するという約束をアレッサンドロに取り付ける慎重さを持っていました。勿論,アレッサンドロを愛するようになっていた自分を欺いて・・・。この二人が帰国後,どんな風に交際を再開するかが後半の読ませどころですが,週末出かけるというケイトの言葉にてっきり別の男に会いに行くと誤解してケイトを追いかけてしまったアレッサンドロ。そしてそれを嫉妬だとケイトに看破されてしまったアレッサンドロの慌てぶりには,思わずクスリと笑ってしまえる場面でした。アレッサンドロの挽回や如何に・・・。とにかくスイスイと面白く読み進められる好著です。


タグ:ロマンス
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ボスと秘書の誘惑ゲーム [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1114
ボスと秘書の誘惑ゲーム Charade of the Heart
Island Romance 1) 1992」
キャシー・ウィリアムズ 水月 遙





作者の得意なボス秘書ものですが,本作はさらに双子姉妹の入れ替わりという別の要素を取り入れて成功しています。それから,ヒロインの姓が明かされていない点も特徴の一つでしょう。ヒーローは会社経営者マーコス・エイドリノ。ベスの妹ローラがマーコスの秘書として働いて半年,社の重役デイヴィッド・ライアンとの交際の結果妊娠してしまい,社内恋愛禁止条項に触れると首になってしまう。しかもデイヴィッドが妻帯者だと分かって悲嘆に暮れてしまい,昔からおとなしいベスが派手なローラの尻ぬぐいをしてきたので,出産まで代わりを務めてもらえないかとローラに泣きつかれたベスは仕方なくこの計画に乗らざるを得なくなります。ローラの1週間の休暇のあと社に出てみると出張中のはずのマーコスが突然出勤し,ベスはまごつきます。髪型が変わったということを指摘されてぎょっとしたベスですが,切ったのだという言い訳で何とかごまかします。その他些細な変化にいろいろ気付かれはしましたが,何とか初日を乗り切ったベス。そんなベスのロンドンのアパートに突然マーコスが現れ,まごつくベス。そして計画中のプロジェクト,セントルシア島への出張に重役のジェーンとともに3人で出かけることになります。その島でマーコスは連絡員の社員ロジャー・ドルーと友達になりますが,マーコスを慕うジェーンからいろいろと冷たい言葉を浴びせられ,ますますロジャーとの距離を縮めていくことになります。それを見ているマーコスの視線にベスとの関係を持ちたがっている欲望が見え隠れし・・・。帰京後,社の創業パーティでロジャーに再会し,ベスのマーコスを見る目に愛が映っていることを指摘され,恋に落ちていることを打ち明けざるを得なくなります。敢えて誤解を招くようにベスに近づくロジャー,それをじっと見つめるマーコスの視線。そして家に帰ったところにローラの恋人デイヴィッドとマーコスが鉢合わせになり,ついにベスとローラの計画がマーコスにバレてしまうのでした。激怒するマーコス。ここからマーコスの信頼を取り戻すためにベスが取った行動とは・・・。ちょっぴりスリリングでドラマチックなこの場面が本作の山でしょう。マーコスの周囲をいろどる美女たち,特にアンジェラという金髪美人がベスの妬心をあおったり,互いに相手の気持ちを逆なでする誘惑ゲームが続いていくところも面白さに拍車をかけます。うまくできたストーリーだなぁという点で,オススメの作品に仕上がっています。


タグ:ロマンス
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秘書に哀れみのキスを [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1099
秘書に哀れみのキスを AScandalousEngagement 2000」
キャシー・ウィリアムズ 漆原 麗





 本国版のイメージと邦訳版のイメージが全く違います。ヒロインの髪の色も。これはちょっと珍しいですね。出版年の違いもあるのかもしれません。そして本国版のイメージの方がいいですね。特にヒロインが右手の人差し指をちょっと立てた姿。この図は何か有名な絵画で見たことがあるような・・・。
 さて,本作はいわゆる秘書ボスものです。しかし普通の秘書ボスものと決定的に異なるところは,秘書の面接をボスの母親がしてヒロインが採用されたという点ですね。ヒロインのテッサ(テス)・ウィルソンは,10代のころからずっと妹ルース(ルーシー)の面倒を見てきた真面目で物事をきちんと果たすタイプ。一方妹ルーシーの方は際立つ美貌を持ち,明るく活発で,男性がすぐに目をとめるタイプ。そんな妹をいつもうらやんでいるテスですが,ティーンエイジャーであるルーシーの年代にふさわしい行動をある程度認めつつも,しっかりした女性に育てようとしてきました。そして自分が生活や妹の学費のために懸命に働くことで満足してきており,ルーシーを恨んだりしたことは一瞬もありませんでした。そんなテスが就職したIT関連会社「ディアス・ヒスコック」のボス,カーティス・ディアスは経営者としては型破りな普段着的な服装で仕事をし,社員たちにも自由や発想や議論をするよう仕向けてきました。テスのように計画どおり仕事を進めようとする秘書は,この会社の社風には合わない,と一度は就職を断るのでしたが,テスの必死の頼みを聞き入れて3カ月の試用期間を設けることで手を打ったのでした。そして仕事を始めて見て,テスが有能であり,単なる表の顔の秘書ではなく,秘書以上に業務のことをよく知り,意見を持っていることに驚きを持つのでした。カーティスには亡き妻が残した一粒種アンナがいるのですが,10代の娘に対して過保護すぎるほど地味な服を着せ,自分の言うことを聞くことを当然と思っているのでした。妹を養育してきたテスならば,自分が1週間海外出張する間,アンナの面倒も見て欲しいと申し出ます。会社でテスの横でファイリングの仕事を懸命にするアンナを見て,残り一日というときに,テスは昼食を共に取ろうと外に出かけ,ふと思いついてあんなに年齢にふさわしい服を買おうと持ちかけます。長い昼休みを取って社に戻るとカーティスがすでに帰社しており,買った服を父親に見てもらおうと次々に報告するアンナに渋い顔を隠そうともしないカーティスでした。テスはそんな父親の顔のカーティスに何か一言言ってやらなければという思いを抱きます。結局その服は着られないままにクローゼットにしまい込まれることになるのですが,アンナはテスに親しみを感じているらしいのです。
 男性的魅力と仕事に対する情熱,「社員はファミリーも同然だ」という経営理論を持つカーティスに次第に惹かれ始めるテス。パーティを抜け出して帰宅しようとしたテスが道路で足首をくじいてしまったとき,カーティスは無理やりタクシーに乗せ,家まで送り届け,手当てをし,シャワーを浴びさせ,ベッドまで運んでいくというように面倒を見ていきます。そしてテスはカーティスの首に手を回して・・・。二人の深い関係はこの一夜だけでしたが,そこに妹のルーシーが帰宅してきます。玄関でカーティスとルーシーが話している声が聞こえ,「テスにはこのことを話さない方が・・・」という言葉に,テスは衝撃を受けます。やはり見栄えばかりの秘書を雇いたがるカーティスの本性は,自分よりも美貌に優れたルーシーの方に向くはず・・・。週が明けて,テスは辞表をもって社に向かいます。完全に誤解だったことが明らかになるのは数日後でした。カーティスはルーシーのデザイナーとしての才能を生かし,海外進出をしようとしている会社の新しいロゴをデザインしてみてはと持ちかけ,そのことはしっかり決まるまでテスには黙っているようにと言っただけだったのでした。しかし,誤解が解けてみてもテスは頑固に辞職を撤回しようとはしませんでした。数日休暇を取ろうと,ダブリンの小さなホテルで食事をしていたテスの前に意外な人が現れて・・・。
 ルーシー,アンナと大人になろうとしているティーンエイジャーの気持ちをしっかりと書き込んでいるこの作品はとてもすがすがしく,ヒロインだけでなく女子の気持ちの動きをその行動で描ききった成長譚でもあるようです。


タグ:ロマンス
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スペイン大富豪の嘘 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1081
スペイン大富豪の嘘 The Real Romero 2015」
キャシー・ウィリアムズ 麦田あかり





派遣の家政婦として2週間,フランスのクールシュヴェルで予約をしたラモス家一家の家事を担当するために,何とかスキーロッジにたどり着いたアメリア(ミリー)・メイフィールドは,ロッジに着く直前,派遣会社の担当者サンドラから予約がキャンセルになったことを聞かされます。もう今日は帰るすべがありません。そこで1泊だけロッジに泊まろうと思い,入ってみると,なんとそこには先客がいたではありませんか。「あなたは誰?」
婚約者に捨てられたばかりのミリーは傷心を癒やすためにロンドンを離れ,この仕事を引き受けたのですが,またまた出会ったのは,こんなにも美しくととなった顔の男性は見たことがないというほどのイケメン。でもちょっと傲慢。きっとスキーのインストラクターだろうと思い,仕事はしないでも予約された金額は払ってもらえると知り,2週間このロッジで過ごそうとします。一方インストラクターと間違えられたルーカス・ロメロは,34歳の大富豪。自分の所有するロッジであることをあえて明かさずに,インストラクターだと思われたことを否定もしませんでした。15年前,手ひどい裏切りで女性との間の愛情は存在しないものだと学んだルーカスですが,最近イゾベルという女性から追いかけ回されており,そこから逃れるためにこのロッジに数日泊まろうとやってきたのでした。これまで付き合った女性はみんなモデル体型が本物のモデル。うわべの美しさと自分の富への欲にまみれた女性ばかりですが,後腐れのない関係ばかりでした。それに対してミリーはちょっぴり太めですが女性らしい凹凸にあふれた体型でこれまでルーカスが魅力を感じてこなかった新鮮な,そしてなにか惹かれるもののある女性でした。2日間を少しずつ延長して,共通の話題であるスキーや,互いの身の上を明かし合うことになり,しかし身体の関係には至らないという珍しい付き合い方をすることになったルーカス。初めは傲慢だと思っていたルーカスに意外に優しいところがあり,しかも自分の傷心を聞いてくれる相手としてミリーはルーカスに惹かれていきます。しかし愛に基づいた付き合いはできないと初めから宣言されており,数日後には互いに別れてしまうことを分かって上で,それでもミリーはルーカスと一夜を共にするのでした。ルーカスは母親からしつこく結婚話をせかされており,二人は便宜的に恋人として数日ルーカスの母の待つスペインに飛ぶことになります。ロンドンに帰った跡に再び住まいと仕事を確保しなければならないミリーにとって,帰国後新しいフラットと仕事を提供するというルーカスの言葉にノーは言えない状況でした。それでもルーカスの母親や自分の家族を騙すことになることには引け目を感じてしまいます。ルーカスの母から大歓迎を受け,良心の呵責を覚えたミリーは帰国後,ルーカスからの連絡を受け取ろうとはしませんでした。離れてみて分かる互いの大切さ。仕事一辺倒だったルーカスは始終ミリーのことが頭から離れないのを理解できないまま悩んでいます。さてこの状況を二人はどう打開するのでしょうか。敵役の意地悪な女性は登場しませんが,ルーカスを追いかけるイサベルのせいでミリーの存在が母に知られ,便宜的な恋人となることになってしまうのですが,これって反ってキューピッド役になってしまいますから,全編を通じてすごくハッピーなストーリー展開と言っていいでしょう。とてもあったかい晩秋にふさわしい癒やしの一編です。


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満たされない大富豪 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1031
満たされない大富豪 To Sin with the Tycoon
七つの愛の罪 1Seven Sexy Sins 1 )) 2014」
キャシー・ウィリアムズ みずきみずこ





アリス・モーガン。秘書として投資会社経営者ガブリエル・カブレラのオフィスを訪れますが,9時の約束だったにもかかわらず10時半の段階でもまだ社に現れません。「ボスは勝手気ままなタイプだという。好きなときに来ては去り,思いのままに振る舞い,気まぐれで自分本位なのだ」という受付係のバービー人形のような小柄なブロンド女性。現れたガブリエルは噂どおりの傍若無人ぶりですが,女性なら誰でも寄っていってしまうようなハンサムな男ぶりの男性です。そんなガブリエルにアリスはときに,率直な物言いをします。これまで女性にこのように意見されたことのないガブリエルは地味で目立たない服装をした十人並みの器量の女性にふと興味を覚えます。「仕事は出来る」アリスを手放せなくなるガブリエル。しかし24時間体制で仕事に打ち込むよう要求されたアリスは週末はしっかり休暇を欲しいと要求してガブリエルを驚かせます。恋人か?実はアリスの母は神経的に弱いところがあり高額の医療施設に通っているためアリスは高給を必要としていたのです。コーンウォールの片田舎の母の家に週末はロンドンから通っていたのでした。いつしか週末に休みを取るアリスには恋人がいるのではと嫉妬していることにガブリエルは気付き,そんな自分に驚きます。短期間の付き合いをして次々に女性を捨ててきたり,自分に特別な感情を抱く秘書を次々にクビにしてきたガブリエルですが,アリスには不思議な魅力があり,手放せなくなっていくのでした。パリで大口の契約可能性があり,パーティに出席するためアリスを同伴します。一度なら週末に出かけてもいいという母の言葉もあり,4日間のパリでの二人の出張旅行が始まります。フランス一の高級ホテルに宿泊し,パーティに出席するために着飾ったアリスの姿を見て,ガブリエルはアリスから目が離せなくなって,ホテルに戻るやいなや深い関係になってしまいます。これまで母のためだけに生きてきたアリスもそろそろ自分のために生きてもいいのではないかと考え始めたのでした。仕事の合間にフランス文化を堪能してきた二人ですが,アリスはロンドンではボスと秘書の関係に戻ろうとします。しかしもはやガブリエルの頭の中にはアリスのことだけが大きくなっていたのでした。将来に何の約束も出来ない男性であることをよく知っているアリスはガブリエルの元を去り,母の元に帰っていくのでした。何日間もガブリエルからの連絡がないまま,ロンドンの片隅の小さな法律事務所の事務をして,ある日帰宅したアリスを待っていたのはガブリエルでした。そして思いがけない告白をし始めたのです。ともに両親との間に問題を抱えて育ったアリスとガブリエル。愛することを知らずに育った二人が本当の愛を見つけていくハッピーで爽やかな作品です。


タグ:ロマンス
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ルールを破った億万長者 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO966
ルールを破った億万長者 The Uncompromising Italian 2014」
キャシー・ウィリアムズ 東みなみ





原題は「妥協しないイタリア人」。大口の契約を目前にして会社経営者アレッシオ・バルディーニもとを訪れたウェブデザイナーのレスリー・フォックス。ITに強い彼女にアレッシオは個人的な問題解決に力を貸して欲しいと依頼されます。不審なメールが最近来るようになり,その発信元を探って欲しいというものでした。数日後彼には亡くなった前妻との間に17歳を迎えようとする娘がいることが分かります。しかしその娘が寄宿学校を逃げ出し祖母のいるイタリアに行っているということがわかります。娘レイチェルと不審メールには何か関係があるように思ったレスリーは,アレッシオの許可を得てレイチェルの部屋に手がかりになるようなものがないかと探し始めました。一緒に食事を取ったり事件について話したりしているうちに,互いの生い立ちや考え方を知るようになり,二人は自然に互いの関係を深めることになります。数日後にはレイチェルと不審メールとの決定的な関係を探り出したレスリー。そして二人はレイチェルのいるアレッシオの義母のすむイタリアに向かうのでした。レイチェルの反抗的な態度を見て,レスリーはアレッシオがレイチェルをとても心配していることをさりげなく分からせようとします。それは頼まれた仕事以上のことでしたが,アレッシオを愛し始めていたレスリーにとっては父娘が二人とも傷つかないようにするためにはやがてアレッシオの元を去る自分が憎まれてもかまわないと思ったからでした。そしてレスリーを引き留めるアレッシオを振り切るように翌日イギリスに帰るのでした。何の連絡もないまま1ヶ月が過ぎ,レスリーの体にはある変調が現れてきました。アレッシオとの関係で妊娠していることが分かったレスリーは勇気を出してアレッシオの会社を訪れるのでした。
母をはやくに亡くし,父と5人の兄に大切にされた6人兄妹の末っ子でたった一人の娘であるレスリーにとって女性らしく装ったり化粧したりということにはまるで知識がなく,どちらかというと180センチを超える身長や膨らみのないからだつきに女性としての自信を持てないでいたのですが,アレッシオによって自分の魅力を再発見しつつも,仕事を理由にアレッシオの元を去るときのレスリーの苦しみがせつせつと伝わってくる作品です。さらに母親を亡くしたティーンエイジャーの一人娘と父親という家族の中でも最も難しい関係に真っ向から取り組んだ作品でもあります。父とその恋人,そして生まれてくる自分の弟妹という存在をどんな風にレイチェルが認めていけるかという興味もあります。本作ではほとんど登場しませんがフォックス家の5人の兄たちのロマンスも是非読んでみたいものです。


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何も知らない愛人 [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO954
何も知らない愛人 The Secret Casella Baby 2013」
キャシー・ウィリアムズ 仁嶋いずる





ロンドンへ帰る途中,雪が激しくなってきて自損事故を起こしてしまったルイス・カセラを助けたのは動物保護施設を経営するホリー・ジョージでした。近くにいる医師に連絡してもこの雪では明朝になってしまうと判断したホリーはルイスに緊急治療をするために家に連れ帰ります。それから3日間ルイスはホリーの家に留まり,ロンドンに戻ってからも週末にはホリーの元にやってくるのでした。1年以上もそんな関係が続きますが,ルイス・ゴメスと名告ったルイスの正体をホリーは知らないままでした。自分のことは何でも話したのに,ルイスのことは家族のことも仕事のことも何も知らないことにふと不安を感じたホリーはルイスにそのことを尋ねます。そして名前も仕事も家族のこともルイスが嘘をついていたことを知らされるのでした。本当は世界を股にかけた事業家のルイス・カセラであること。そしてホリーとの永続的な関係をルイスは求めていないこと。互いの相性や体の関係を除けば二人の生活はかなりの距離にあることをホリーは知るのでした。やがて妊娠に気づいたホリーがルイスに知らせるべきだとロンドンの会社を訪ねていってさらにその思いを強くしました。その時ルイスは別の女相続人との婚約が噂されていたのです。その後ルイスはホリーにプロポーズしますがそんな便宜的な結婚にホリーは全く取り合いません。ニューヨークのアパートでもその後風光明媚な島に移ってもルイスの母が島を訪ねてきたときも,ホリーの本心はルイスを愛していること以外は二人の関係の修復には至りません。ルイスはどんなふうにホリーを説得するのか,そしていつ自分の本心に気づくのか,最後までこの点が本作を引っ張っていきます。とくに大きな事件が起こるわけでもなくたんたんと二人の過去と現在が静かに語られていくだけですが,じわじわとホリーがルイスの世界に足を踏み入れていき,それでも自分を失わないでルイスの愛を求め続けていく一途さに感動する作品です。


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