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シンデレラを探して [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1119
シンデレラを探して The Right Kind of Girl
ベティ・ニールズ選集 6) 1995」
ベティ・ニールズ 上木治子





どの作品もイチオシのベティ・ニールズ選集の第6弾です。珍しく舞台はイギリスのエクセターのみ。オランダ風味がない舞台設定ですが,ヒーローが医師であることは同じです。外科の顧問医師で教授のポール・ワイアット,サーの称号をもっています。たまたま手術をした年配婦人の娘がエマ・トレント。父を亡くし,病気の母との二人暮らし。家計の足しにとスミス・ダーシー未亡人の付添兼秘書,つまり何でも屋として働いています。なにかにつけて自分の要求ばかりを押しつけ,暇なしに文句を言う夫人に不満を持ちながらも,僅かながらの給金がないと生活が成り立たなくなるので我慢しながらも生活しています。旅行中に夫人が病になり緊急で往診に駆けつけたポール・ワイアットは一目でエマが法外な要求にもしっかりした対応をしていることを見抜きます。そして母の手術後にも病院に送り迎えをしてくれたりとなにかと顔を合わせる機会を増やしていきます。「中背で薄茶色の髪をお下げに編み,人目を惹くような顔立ちではないもののすっきりした均整の取れた体型と美しい脚」をもつ25歳のエマ。母の入院中の時間を有効に使おうと富豪の夫人の子守兼家政婦として一人3役の役割を果たして3週間。3百ポンドの蓄えを作って母が退院してきたものの,数日後に母は急に倒れてしまいます。静脈瘤の破裂が原因でした。葬式にもポールはやってきませんでした。当時アメリカに出張中だったのです。葬儀の翌日やっと現れたポールの顔を見たとたんエマは泣き出してしまいます。そっとエマを慰めたポールは,「結婚しよう」と一言告げ,エマに荷物をまとめさせると自分の家に連れて行くのでした。家政婦のミセス・パーフィットにも気に入られ,村の人たちからもポールの妻として大切にされるようになるエマ。そしてポールの両親の家でも暖かく迎えられます。多忙でなかなか顔を合わせることもできないポールに,週に何日か乳児院での子供の世話をしてみないかと言われ,喜んで出かけたエマですが,そこの事務長ダイアナとは全く気が合いませんでした。毎日出勤しているメイジーとはすぐに友達になれたのですが,ポールとは昔からの知り合いで今でも付き合っていることを匂わすダイアナ。やがて近くのジプシーのキャンプで何人もの子どもたちが百日咳の症状を示しているところに一人でやられるエマ。救急車を呼んで欲しいというエマの言葉にダイアナは逆に急ぐ必要はないと連絡をとるのでした。疲労の極限でやっと務めを果たし終えたエマが家に帰りポールが帰ってきてみると,逆に何故無理をしたのだと問いただされる始末。ダイアナがワザとエマが勝手に暴走したのだとポールに嘘をついたのでした。「どうしてダイアナの言葉を信じて私の言うことを聞こうともしてくれないのだろうか」と疑心を持ったエマ。それから二人の関係はぎくしゃくし始めます。ロンドンでの出張のあと家に立ち寄ったあととんぼ返りで病院に戻っていくポールの姿に,きっとダイアナに会いに行くのだろうと邪推するエマ。実は多重交通事故で緊急手術が立て続けに起こっていたのでした。そんな二人のすきま風をうまく利用して,ダイアナはポールの留守中エマの元を訪れ,愛のない結婚はいずれ破綻すると面と向かってエマに出ていくように言うのでした。緊急の用事という伝言を聞いて乳児院に立ち寄ったポールの帰り際,メイジーがエマがキャンプの時にダイアナから意地悪をされたことを明かします。妻とダイアナとどちらが本当のことを言っているのかやっと理解したポールはどんな行動を取るのでしょうか・・・。ポールはワザと家政婦を出かけさせ,自分も二・三日留守をすると言い置いて出かけていきます。エマは遂に家を出る決意をして荷物をまとめ,指輪と手紙を書斎において出かけようとするのですが・・・。
夫であるポールをすっかり愛してしまったエマが,愛する人の力になりたい,もしダイアナとポールが愛し合っているのなら自分が身を引くしかない,と決意するのはそれだけ愛が強いからでしょう。そんな純なエマの気持ちがとても胸に迫ってくる作品です。


タグ:イマージュ
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消えた記憶と愛の絆 [ロビン・グレイディ]

SHALOCKMEMO1118
消えた記憶と愛の絆 Amnesiac Ex, Unforgettable Vows 2011」
ロビン・グレイディ 大谷真理子





 原題は「記憶喪失の妻と忘れられない誓い」。庭園の橋から高さ2メートルほどを落下して怪我はほとんどなかったものの記憶喪失になってしまった先妻ローラ。義姉から連絡をもらって病院に駆けつけたサミュエル・コール・ビショップは,自分たちが離婚したこと,妻の流産の記憶が失われ,先妻がまだ自分たちが新婚だと思い続けていることを医師から聞かされます。初めは何という災難に見舞われたのかと思っていたビショップですが,「もう一度やり直すチャンスかもしれない」と義姉に言われ,少し考え方を変えたほうがいいのかもしれないと心の底で思い始めるのでした。その後自然回復のために安静にすることや記憶が戻ったときのためにずっと付き添っている必要があると医師に言われたビショップは,自分の会社を売却しようとしている大切な時期であることも放っておき,ローラのもとで過ごすことにします。隣近所や友達からの話で自分の記憶喪失を知ることになるとショックが大きいだろうと思い,できるだけ外部との接触をしないように心がけたり,少しでも記憶が蘇るように過去のことを話してみたりという努力を続けていき,数日後には少しずつフラッシュバックが起こり始めます。外出もビショップがつききりでいれば大丈夫だろうと,観劇に出かけたりしますが,部分的な記憶の蘇りに違和感は抱いたものの,二人が離婚していることや赤ん坊の喪失などの記憶はいっこうに蘇りません。そうこうしているうちに,ビショップもローラに誘われて再び夫婦としての生活をしてもいいのではと思い始めました。そして,遂に記憶が戻ります。それはローラが妊娠したかもしれないと検査薬を試し,失敗したことが分かったときでした。ローラの心がこのことによる衝撃から自分を守るために記憶を封じ込めていたことの証拠でした。心臓に病を抱え出産後にも自分の子供への遺伝を心配することを二人はかなり時間をかけて話し合ったのですがリスクを承知でのローラの決意をビショップも認めることがやっとできたのです。そして,クリスマスを終え,新年のカウントダウンの時を迎えます。ビショップはこの時のためにある決意をしていたのです・・・。
 記憶喪失もの,夫婦ものですが,かなり静かに物語が進行し,ヒーロー,ヒロインそれぞれの心の旅路を描いたインナースペース的描写の多い作品です。しかし最後のハッピーエンドが愛の強さを描く秀作です。


タグ:ディザイア
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駆け引きは億万長者と [ジェニファー・ルイス]

SHALOCKMEMO1117
駆け引きは億万長者と A High Stakes Seduction 2014」
ジェニファー・ルイス 秋庭葉瑠





 3カ月ぶりのジェニファー・ルイスです。今回はネイティブ・アメリカン(すっかりこの言葉も日本で定着してきたように思いますが・・・)のカジノに税務調査員として派遣された会計士コンスタンス・アレンがヒロインです。あまり馴染みのないマサチューセッツ州の居留地でホテルやカジノを経営するジョン・フェアウェザーがヒーローとなります。「ネイティブ・アメリカン管理局(BIA)」というのがあるんですね。おもに西部や西海岸にしか居留地がないと思いこんでいましたが,このマサチューセッツに住むニセコット族のネイティブ・アメリカンたちは,かつて最大だった土地が少しずつ政府に奪い去られた歴史に対して,カジノの経営で利益を上げ,その土地を少しずつ買い戻しているのでした。そして他の人々も受け入れ居留地としての人口を取り戻そうとしているのです。その中心にいるのがジョン・フェアウェザーでした。wikiをちょっと調べてみたら,「BIA本部ビル占拠抗議」というコラムがありました。1972年の11月初旬に権利団体「アメリカインディアン運動」が部族の生存権と条約遵守を訴えてワシントンDCの内務省BIA( Bureau of Indian Affairs )本部ビルを占拠した事件ということです。そこには,「1950年代初頭から、アメリカ合衆国政府はインディアン諸部族の解消方針を強め、約10年間で100を超えるインディアン部族が連邦認定を取り消され、「絶滅」したことにされていた。合衆国が1956年に施行した「インディアン移住法」は、保留地から都市部へインディアンを放逐させるものであり、この法によって多くのインディアン部族はその共同体を破壊された。限界集落化されたインディアン部族に対し、合衆国は連邦条約で保証した権利一切を剥奪して、領土である保留地の保留を解消し、これを没収した。1960年代には、多くのインディアンたちが都市部のスラムに追いやられ、路頭に迷っていた。」という記述もありました。初めは居留地においやり,後にここから追い出すことで部族としてのまとまりそのものをなくそうと画策したことがわかります。この歴史に対抗するためにジョンたちは部族としての歴史をまとめ,土地の回復に努めてきたのでした。そこにコンスタンスを派遣したBIAの意図は,なんらかの不正を見つけ,この居留地からニセコット族を追い出そうとする動きであることは間違いありません。
 そんな民族問題を背景にした本作ですが,ロマンス部分は,会ったその瞬間からジョンに惹かれていくコンスタンスの,仕事上の立場と愛に葛藤する姿と,これまで目立たずに静かに過ごしてきた自分の中に,奔放な女性的部分が隠されていることをジョンに見抜かれ,次第にその魅力に逆らえなくなっていく,素直でしかも仕事とプライベートはきっちり分けようとする潔さが描かれています。まさにNice_Heiroineです。そしてジョンの近親者の瑕疵を見つけたときに迷いながらも,それをきちんとBIAに報告するという仕事を成し遂げます。それはジョンとの別れを意味する行動でした。眼鏡をかけ,数字に没頭する冴えない女性という姿で現れるコンスタンスですが,ジョンは彼女の高潔で隠された情熱を持つ女性であることを見抜き,すっかり彼女の虜になります。邦訳版の表紙のモデルさんはちょっと雰囲気には合わないですね。本国Desire版のモデルさんはまさにBestImageです。そして我が娘を心配するコンスタンスの両親がジョンとの関係を非難しながらも実際にジョンに出会って,「娘に敬意と良識を持って結婚してくれること」を認めていく展開も爽やかで,つい頬が緩んでしまいそうになる好著です。


タグ:ディザイア
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