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水仙の家 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO921
水仙の家 Shadowed Stranger 1985」
キャロル・モーティマー 加藤しをり




K-130
13.02/¥669/156p

R-0407
85.08/¥500/156p


サンフォード村のオーチャード・ハウス(水仙の家)に見知らぬ人が住んでいる? 図書館に勤めるロビン・キャッスルは両親の経営する村の商店で弟のビリーと4人家族。特にずば抜けた美貌を持つわけでもない18歳のロビンだが,誰も住んでいないはずのオーチャード・ハウスの庭で遊んでいる弟に,ここで遊んではいけないと注意したとき,大きな音がして門の前に止めていた彼女の自転車が車に惹かれて壊れた音だと気づいた。あわてて茂みに隠れた二人だが,車から降りた男性に見つかってしまう。直ちに立ち去るように言われて腹を立てたロビンだが・・・。こうしてロビンとリックの出会いは始まった。
リックがどんなわけでハウスにいたのかは家に帰ってみて母から聞くことになります。つい最近越してきたというのです。家具を新調した様子も無く,世捨て人のように暮らすリックに母は食べるものを届けるように言いつけます。何度かハウスに食べる物を届けたロビンはあるとき,リックにキスされてしまいます。ロビンの勤める図書館にも訪ねてきたリック。次第に惹かれる気持ちと,図書館の同僚にボーイフレンドのことを聞かれて思わずリックの名前を言ってしまうロビンなど,18歳の娘らしいロビンの愛らしい反応を作者はうまくちりばめて,18歳の年の差のあるカップルが成り行きで次第に惹かれ合うようになるストーリーを展開していきます。そして雨の日にリックの車が事故を起こしそれを発見した弟が通報してリックがロンドンの病院に運ばれてしまうと,それっきり音信が途絶えてしまいます。村から,両親の元から離れることなど考えもしないロビンの初恋は終わったかに見えます。しばらくして同僚に誘われるままにダンスに出かけたロビンはハンサムな男性ブライアンと出会います。ブライアンはすぐにロビンに惹かれ,やがてロンドンの家に招待されたロビンはしぶしぶ出かけますが,そこでリックと再会するのでした。リックはブライアンの親戚で妻と称する美女とパーティに現れます。しかもリック・ハワースではなくオリバー・ペンドルトンという名前で・・・。すっかり騙されていたと考えたロビンはリックから言葉をかけられても腹を立てて言い返すばかりでした。ブライアンからは結婚しようと何度も言われたにもかかわらず,リックとの思い出を忘れられなかったロビンはその申し出を断り続けます。傷心の思いで家に帰ったロビン。そこに再びリックが現れます。
さて,リックはいったいどんなつもりで妻帯者でありながらロビンに言い寄ったのでしょうか。大人になりきれていない若いロビンと,秘密を抱えながらそんなロビンに惹かれていくリックのロマンスは悲劇に終わるのでしょうか。ストーリーテラーのキャロル・モーティマーはちょっとした視点の変化で見事にこの問題を解決してエピローグに向かうのです。このカタルシスが読者を溜まらなく爽快で暖かい気分にさせます。作者の真骨頂を見事に見せてくれる秀作。


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置き去りの天使 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO911
置き去りの天使 To Mend a Marriage 2000」
キャロル・モーティマー 橋 由美





双子の姉妹と兄弟のねじれた関係のロマンスです。ずっと面倒を見てきた双子の妹ジマイマはいつも自分の思い通り行動する我が儘者。でも明るく生き生きしているところから魅力的な女性です。それに釣られて婚約した会社経営者ニック・ドラモンドは,その後婚約を解消し姉のジェミニと結婚します。ジェミニはそのころ,ニックの弟ダニエル(ダニー)と交際していましたが,ダニーがジマイマと付き合っていることを知り,ニックとの結婚に踏み切ったのでした。しかし,ジェミニの心はダニーにあると疑いを持ち続けるニック,そして夫の心は妹のジマイマにあると思い込んでいたジェミニは夫を愛しながらも心を開けずにいます。いわゆる仮面夫婦。ところがそんなニックとジェミニの元にジマイマの娘ジェシカのナニー,ジャネイがジェシカを預けに来ます。ジマイマの指示だといって・・・。当惑するニックとジェミニですが,仕方なしにジェシカを預かることにしました。数日後すっかりジェシカに魅了されたジェミニ。ニックもまた忙しい身でありながらしっかりとジェシカの面倒を見ています。双子と兄弟のねじれた関係はこの後もずっと影響し,やがてジェシカの瞳の色がニックと同じであることを家政婦に指摘されたジェミニは,ニックの元を離れることを決意します。心はニックの元にありながらも,自分が身を引けばジマイマがニックと結婚して幸せになるだろうと考えたからでした。決意する前の晩遅くにジマイマとニックが電話で話しているのを聴いてしまったジェミニはその事で二人の関係が決定的に再燃したと思い込んで苦悩していたのでした。しかしプライドから二人の関係を問いただすことはせずに,ただ家を出るとのみ夫に告げたのでした。ダニーと妻の関係が続いていると思っているニックからはなにかにつけてダニーと自分のことが口から出てきます。そして家を出るという妻を引き留めようとはしませんでした。ついに離婚かと思われた時,ジマイマがジェミニの勤め先を訪れ,ダニーと結婚することにしたというのでした。「ジェシカの父親は誰?」「もちろんダニーよ」このやりとりがジェミニの心に今までの自分の考えは誤解であったこと,そして夫のこれまでの行動が明らかに自分の誤解であったことに気づくのでした。この後はハッピーエンドまで一気に進んでいくのですが,エピローグではさらに夫婦に訪れたハッピーなことが描かれ,読者の心を温めるのです。モーティマーらしいヒューマンな解決です。


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母の彫像 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO895
母の彫像 Love's Only Deception 1983」
キャロル・モーティマー 三木たか子





ハーレクイン・ロマンスR-0342/84.09/¥525/156p,ハーレクイン・クラシックスC-350/97.07/¥672/156p,ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊「きらめく季節に 2」PB-081/09.01/¥960/330p,そして電子版の本書と数回にわたって再版されているキャロル・モーティマーの人気の作品です。
とにかくベタベタしたところがなくすっきりした読後感を味わえる作品で,例えればレモンスカッシュのような作品です。ヒロインのキャロライン(キャリー)・デイは会社秘書を務めている22歳の小柄で美しい女性。母を病で亡くし,母の最愛の夫で義父のジェフリー(ジェフ)も事故で急死してしまいます。アパートの隣人の弁護士夫婦が生まれたばかりの息子ともども交流が深く,寂しさを紛らわすことが出来る唯一の人たちでした。そんなとき,義父の弁護士ジェームズ・シーモアから,義父の遺産が残されていることを知ったキャリー。しかし,義父の兄夫婦の元を訪ねると事業の拡張のため,その息子ドナルドとキャリーを結婚させようとしていることを偶然知ってしまいます。そんなときパーティで偶然知り合った男性ローガン・キャリントンにキャリーは一目で惹かれてしまいます。話をしてみると互いにからかいながら気を遣わないで共通の話題を話すことができる男性でした。ローガンもまたキャリーの美しさに一発で惹かれ,なんとしても自分の気持ちを受け入れて欲しいと願うようになります。しかもローガンは惹かれていることを正直に話しながらもきちんとした態度でキャリーに接してくれるのでした。やがて,結婚を意識し,クリスマスにローガンの母を紹介することになり,幸福の絶頂にあったキャリーがローガンの家に行ってみると,客として訪れたのはなんとあの意地悪な義父の兄夫婦と息子のドナルドだったではありませんか。ローガンの母は義父の妹だったのです。会社の株が遺産の中にあったこともありその経営権を巡ってローガンが自分を利用しようとしたと考えたキャリー。ローガンもまたキャリーが自分を利用しようと騙したのだと考え,すっかりけんか腰になる二人。その間で状況がつかめず混乱する人たちを尻目にキャリーはローガンの家を後にするのでした。翌日訪ねてきたローガン,さらには会社の株主総会で顔を合わせる二人,そして義父のアトリエを訪ねてきたローガン。いずれの時もキャリーの態度は頑なでしたが,ローガンに対する気持ちがますます強くなるのに悩むのでした。そしてふと,キャリーがジェフリーを「義父」と呼び,母と結婚していたことを知ったローガンは,これまでキャリーの行動を誤解していたことに気づきます。しかし,会社の株を巡る遺産の件でキャリーが頑なであることに気づいたローガンは,弁護士を通じて実は同名だったキャリーの母に遺産が譲られるべきで,その母も亡くなり遺言は無効であるということをキャリーに告げさせるのでした。
ストーリーテラーであるキャロル・モーティマーらしく,名前の誤解から次々に新しいストーリーが展開していくというテンポの速い作品で,恥じらうキャリーがとても愛らしく,またローガンの男らしさもすっきりして好感の持てる作品です。ローガンの母シシーの優しそうな人柄もとても感じが良く,良い人たちが幸せになっていく様子がロマンスの王道をいく作品であることを実感させてくれます。


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少女でもなく淑女でもなく [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO884
少女でも淑女でもなく Perfect Partner 1982」
キャロル・モーティマー 上村悦子





親友メラニー,マイケル夫妻の家でのパーティでジュリエットは辛口書評家ジェイク・マシューズに出会います。自分がキャロライン・マイルズというペンネームの作家であることはその日は黙っていました。このことが次々に二人の関係に波乱を巻き起こします。何気ないあるきっかけでヒロインに災厄が襲い,それがロマンスの始まりになるというストーリー展開の得意なキャロル・モーティマーらしく,ストーリーの楽しめる作品です。本作の特徴はそれよりも,自立心旺盛で昼は少女,夜は淑女として様々な顔を見せるジュリエットが母との確執をいかに克服し,大人の女性として成長していくかという成長譚でもあり,それにジェイクが手を貸すという展開になっている点です。本当は惹かれているのに,わざと冷たい言い方しか出来ないジュリエットの背中を押してジェイクとの関係を深めていこうとする親友メラニーのお節介な役柄も捨てがたい魅力があります。そしてジュリエットの父の死後次々に若い男性との結婚をしていく母の隠された過去も,途中でなんとなく想像はつくものの,母の人生が自分の人生とリンクし,やはり愛が幸せに生きる大きな要素になることに気づくことで人間的に成長していくというキャロルの主張には,なるほどと思わせる説得力があり,エキセントリックなジュリエットの人物造型が,本作ではこうでなければならないということが自然に見えてくるのは,やはり作者の筆力のすばらしさだと言えます。作中ジュリエットの作品三部作が,隠し味として本作の深みを増しています。1982年の作品ですが,全く古さを感じさせない絶品です。


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妻の隠された昼の顔 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO825
妻の隠された昼の顔 Lovers in the Afternoon 1985」
キャロル・モーティマー 山本みと





ちょっと変わったストーリーの作品ではあります。キャロル・モーティマーの1985年の作品ですが,古さは全く感じられません。デビュー作が1978年ですからデビューして7年目の作品となるでしょうか。なにせ多作家として知られる作者ですので,ある資料によれば,この年,本作も含めて9作もの作品を出版しているようです。ほぼ40日で1作というハイペースでの作家活動ですし,次々にわき出る構想をただひたすらタイプして,しかもそれがいずれも良作となるという信じられないような天才と言っていいのではないかと思います。それにしても今頃翻訳がでるというのも・・・。
さて,本作ですが,ヒロインはインテリアデザイナーのレオニー・グラントは上司から言われて,発注先に出かけます。このヒロイン,徹底したドジな女性で,しょっちゅうつまずいたり転んだり,エレベーターに閉じ込められたりという「事故」を繰り返す美女。しかも23歳にしてかなり年の離れた男性とすでに結婚し,ただいま別居中。そして,発注先の新社長がなんと別居中の夫であることに,発注先で気がつきます。もちろん彼女の上司がそのことを知るよしもありません。とにかく設計事務所に名指しで指名があったことで,過去のデザインが評価されたものとしか考えていませんでした。実はこれは,夫アダム・フォークナーの企てだったようです。そのことが,ストーリーの中で次第に分かってくるという筋立てがとても面白い設定だと思います。結婚したものの,まだ精神的に幼かったレオニーは夫アダムの要求に応えられず,しかも生来のドジぶりですっかり結婚生活がうまくいかず,別居申し立てをしてはや九ヶ月。夫アダムもまた,妻のそんなドジぶりを愛らしいと思いながらもそれをうまく妻に伝えられずにぎくしゃくしたところで,妻の姉と一緒にいるところを妻に見られてしまい,スワッ浮気か?という誤解を生む行動をしてしまったため別居が決定的となったのでした。しかも,これも,次第に明らかになってくること。今回,あえて,仕事を名指しで依頼したことで,妻との接点をもう一度つかみ直し,なんとか本来の結婚生活をしていきたいとアダムが考えた結果,次々と新婚生活で出来なかったことをやろうと努力していくのです。涙ぐましいこの努力が次第に実を結んでいきますが,アダムの父は,妻レオニーをよく思っていません。夫婦の関係は改善されていっても義父との関係が悪いままではやはり結婚生活はうまくいかないことが予想され,この夫婦,離婚して恋人としてもう一度付き合おうとするのでした。そんなこんなのあげくに,次第に互いの誤解が解けてきて,愛を率直に口に出来るようになるのですが・・・。最後に残った浮気の誤解。それがどんなふうに解けていくのか。そして毎週決まって金曜日の午後11時30分にレオニーのアパートにかかってくる不審電話。その解決は?後半ちょっとスリラーっぽい要素も織り交ぜて語られる,愛らしい夫婦の物語です。


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天使は愛にひざまずく [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO806
天使は愛にひざまずく A D'angelo Like No Other 2014」
キャロル・モーティマー 東 みなみ





ロンドン,パリ,ニューヨークに画廊をもつ「ディアンジェロ兄弟」のロマンスを描く三部作の最終巻で,長男ミカエルと写真家のイーヴァのロマンスです。妹レイチェルの出産した双子の甥と姪を抱えて,パリの画廊「アークエンジェル」を訪れたイーヴァ。ラファエル(レイフ)が父親である可能性がわかりますが,レイフは結婚したばかりで新婚旅行中。もし本当にレイフの子供であったにしろ,いま伝えることは,せっかく結婚して幸せの絶頂にある新婚二人にとってとても残酷だというミカエルの言葉にイーヴァもうなずくものの,子供の養育と写真家としての自分のキャリアを両立させることは難しいと切羽詰まった状況にあるイーヴァにとって,ミカエルに何とかして欲しいという気持ちで一杯です。しかもミカエルの男性としての魅力に惹かれてしまいそうになる自分にも嫌気がさしてしまいます。金欲しさにやってきた女性と思って,追い返そうとしたミカエルですが,イーヴァの魅力と自分を頼ってきた子供たちを追い出すことはできません。何日かミカエルの住まいで同居を始めたイーヴァと双子。子育ての体験などはしたことのないミカエルにとっては,戸惑いとイーヴァに惹かれる思いに悩まされていきます。しかもイーヴァが写真家E・J・フォスター本人であることに気づいたミカエルの寝室には彼女の代表的な写真が大きく飾られているではありませんか。二人の相性,そして芸術に対する想いを理解し合った二人のロマンスは急展開していきます。
僅か数週間前に結婚したばかりのレイフ夫妻と,すでに幸せの絶頂にあるガブリエル夫妻も列席してミカエルとイーヴァも教会の祭壇の前に立てるのでしょうか?キャロル・モーティマーらしいハッピーエンディングが楽しみな秀作シリーズです。


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囚われの宝石 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO785
囚われの宝石 A Prize Beond Jewels 2014」
キャロル・モーティマー 麦田あかり





ディアンジェロ兄弟シリーズの第2作です。前作「裏切り者に薔薇を」ラストでの結婚式の後,長男ミカエルと次男ラファエルはニューヨークの「アークエンジェル」で開催されるロシアの富豪パリトフ家の宝石展の準備をしていました。宝石展の陳列棚をデザインしたディミトリ・パリトフの娘ニーナを待っている次男レイフの元に野球帽をかぶった若い青年がやってきます。しかし,その若者こそ,ニーナ・パリトフ本人だったのです。野球帽を脱ぐと肩まで届く見事な美しい赤毛が流れ落ちたのです。80歳を迎えるディミトリの娘というので中年の女性をイメージしていたレイフの予想を裏切って,グリーンの瞳と細身で素晴らしいスタイルをしたニーナは,ディミトリがかなり遅く生まれた一人娘だったのです。そんなニーナにレイフはすぐに惹かれてしまいます。しかし,ニーナはレイフに対して対等な口の利き方をし,パリトフ家とアークエンジェルの間に交わされた契約を引用しながら,この展示会のセキュリティはパリトフ家にあることを指摘したのでした。自分に対してコンな口の利き方をした女性はこれまでいなかったことや,自分の魅力にまったく気づいた様子もないニーナに対してレイフはさらに惹かれていくのです。二週間にわたる準備期間中にニーナとレイフの間には強く引き合う力が生まれました。ニーナも父の強いガードから自立したいと考えており,レイフにそれを指摘されたことでさらにレイフへの思いが募るのでした。そしてレイフのアパートで一夜をともにした二人ですが,翌朝目覚めてみるとニーナはすでにいなくなっていました。プレイボーイとして有名なレイフがいつまでも自分を追いかけるはずがないと思っていたニーナは二人の関係は一夜限りのものと覚悟していたからでした。その事に腹を立てたレイフは,誘われるままにディミトリとニーナの家に乗り込みます。ディミトリは自分を恐れずに冷静な対応をしたレイフに感心していました。そして,いずれニーナが自分の元から去って行くことを覚悟したのでした。実はディミトリにはニーナに秘密にしていたことがあり,十九年前の妻の死と自分を車椅子生活に追い込んだ交通事故に関する事実を話す決意をします。それを聞いたニーナの姿が消えてしまいます。レイフとディミトリは心当たりをすべて探しますが週明けまで見つかりませんでした。月曜日レイフのオフィスにニーナが現れます。自分のデザインを「アークエンジェル」で使ってもらうというレイフからの提案に応えるためのスケッチをもってきたというのです。姿を消したことに一言も触れずに。そこに,ニーナの後を追っていたディミトリも現れ,レイフも同席する中で十九年前の真実を話します。レイフはディミトリの判断は誤っていなかったことを指摘し,ニーナもその言葉に父を責めるのではなく,父もまた長い間苦しんでいたことに気づき,親子の気持ちが再び繋がります。感動的な場面です。そしてそんな気持ちにさせてくれたレイフからの誘いに喜んで従うニーナでした。ふたりはついに愛の言葉を交わします。
次作ではきっと長男ミカエルのロマンスが語られるのでしょう。本作も前作同様とても内容の深い作品でした。


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裏切り者に薔薇を [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO775
裏切り者に薔薇を A Bargain with the Enemy 2014」
キャロル・モーティマー 小泉まや





ロンドン,パリ,ニューヨークで画廊を経営するディアンジェロ兄弟のシリーズの第1作です。天使に由来する苗字を持つディアンジェロ兄弟は長男のミカエル,次男のラファエル,そして末っ子のガブリエルと,それぞれ名前も天使に由来しています。父親がジョルジオですから,3兄弟の名前は母親がちょっとしたしゃれでつけた名前のようです。
本作は末っ子のガブリエルがヒーロー。5年前,画廊アークエンジェルは贋作事件に巻き込まれました。贋作事件の犯人はウィリアム・ハーパー。そしてその娘サブリナ・ハーパーにガブリエルは恋をしてしまいます。サブリナに最初にキスした日の翌日事件が起こり,裁判でガブリエルの証言がサブリナの父ウィリアムにとって有罪の決定的な証言となります。ウィリアムは有罪となり程なくして獄中で亡くなってしまいます。それから5年,23歳となったサブリナは,母メアリーの再婚もありブリン・ジョーンズと改名して自作の絵を画廊の新人画家作品展に出品するためにアークエンジェルにやってきて,ガブリエルに再会するのでした。事件後何度か連絡を取ってもサブリナに拒否されたガブリエルは,未だに自分は恨まれていると思っていますが,ブリンとなったサブリナがなぜ画廊に絵を持ち込んだのかを聞き出そうとします。オフィスで出会った二人は互いに5年前よりも惹かれ合っていることに気づきますがそのことを互いに知らないままでいます。因縁の二人の関係が画廊での発表に向けて出会う度に気持ちだけの高まりとともに具体の関係の深まりにならないまま,そしてガブリエルに対する気持ちを母に打ち明けられないブリンの欲求不満と相俟って,発表会当日を迎えることになります。そばにいるだけでも互いに触れあってしまいたいという気持ちの高まりと,互いに一度触れてしまったら戻れなくなることを知っている二人の行動に読者は極限までイライラさせられることになりますが,これがキャロル・モーティマーのストーリー展開のうまさによるものです。
発表会当日はブリンの作品に何人もの買い手がつき,一番人気となります。そして,衝撃の出来事が・・・。このカタルシスがたまらないですね。まさに予想どおりの展開となる二人の関係の一気の進展とハッピーエンドが,本作の魅力です。次男ラファエルと長男ミカエルのロマンスが待ち遠しくなるシリーズの開幕です。そして,"Devilish D'Angelo" つまり「悪魔のような天使」というシリーズ名のアイロニーもまた,モーティマーの悪気のないいたづらと言えるのでしょう。


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罠におちたウエイトレス [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO761
罠におちたウエイトレス Rumors on the Red Carpet 2013」
キャロル・モーティマー 槇 由子





キャロル・モーティマーの作品は昨年の6月からの1年3ヶ月ぶり。最近はヒストリカルの作品の翻訳が相次ぎ,すっかりコンテンポラリー作家だということを忘れてしまうかのような翻訳ラッシュになっていますが,どちらのジャンルもそつなく,しかも高いレベルでの作品が約束されているので安心して読めます。
原題は「レッド・カーペットの噂」
さて,本作のヒロインはシンシア・ハモンド。友人の俳優ジョナサンに誘われてニューヨークにやってきます。しかし,ジョナサンは毎晩パーティに連れだって出かけるものの,会場ではすぐにヒロインを置いてきぼりにして自分だけが楽しんでいる様子です。単なる友人だと思っているシンシア(シア)ですが,それでも慣れないニューヨークでひとりぼっちになるのは何となく寂しい思いをしています。ある会場で,息抜きにベランダに出たところで,圧倒的な魅力と存在感のある男性が会場から出てきます。それが,億万長者のルシアン・スティールでした。ちょっと言葉を交わした程度ですが,会場に戻ったところでジョナサンが急に向かってきてシアの腕をつかみシアを詰ります。それを止めたのはルシアンでした。ルシアンの姿を見て追求をやめたジョナサンでしたが,彼の様子はこれまでイギリスで会っていた頃の様子とはすっかり変わっていました。実はルシアンはジョナサンの出演している作品の出資者でもあり,これまで数ヶ月間ジョナサンの行動に警告を与えていたのでした。どうやら薬物依存になり,さらにはルシアンと噂されている既婚者女性とも個人的なつきあいがあるらしいのです。腕を激しく捕まれたのを心配したルシアンはシアの手当てをするとしてホテル最上階の自分のコンドミニアムに誘うのでした。ベランダでの出会いから,ルシアンはシンシアに,シンシアはルシアンにそれぞれ強く惹かれるものを感じていましたが,出会ったばかりで億万長者として名高いルシアンに誘われるとは思っても見なかったシンシア。しかもルシアンは自分をシアではなく,シンと特別な呼び名で呼ぶのです。きっと本気で自分を誘っているのではないと思ったシンシアは,誘いを断り自分で安ホテルに泊まろうとします。しかし,物騒なニューヨークの,しかも安宿ではシンシアがどんな危険な目に遭うかもしれないと思ったルシアンはボディーガードのデックスを付けます。翌朝になって部屋の外に一晩中デックスが見張っていたことを知ったシンシアは,感謝するとともに,見張られていたことへの反発も感じます。翌日ルシアンのオフィスにやってきたシンシア。ここでも自分のプライドを守ろうとするシンシアとシンシアの世話を焼きたくなってしまうルシアンの間に丁々発止の言葉の応酬があります。なんとかその晩の食事に誘うことに成功したルシアンは,会議中もシンシアのことばかり考えていて集中できず,途中で会議を中止してしまいます。ルシアンのコンドミニアムで食事を作りながら次第に互いのガードを下げていく二人。互いに合意の上に関係を持とうとした瞬間電話が鳴り,ジョナサンがホテルのフロアで暴れているという連絡が入ります。そして二人で階下に降りていくとジョナサンがルシアンとシンシアを罵って吐いた言葉が,二人の関係を急激に冷めさせていきます。ジョナサンを単なる友人と考えているシンシアですが,ルシアンはシンシアがジョナサンと特別な関係ではないかという疑いをもち,さらにシンシアがジョナサンを利用してわざと自分に近づいたのではないかという気持ちをもってしまうのです。
イギリスに帰ろうとするシンシアを引き留め,自分がシンシアを愛し始めていることに気づいたルシアンはついに,シンシアに自分の気持ちを告白します。さて,それに対するシンシアの答えは?
最後の締めくくりはモーティマーらしく,とてもすっきりと,思わず笑みを漏らしそうになる結末です。


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永遠のジンクス [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO701
永遠のジンクス Prince's Passion 2005」
キャロル・モーティマー 古川倫子





キャロル・モーティマーの「華麗なる兄弟たち」シリーズの第1巻。原題の「Prince」は一家の姓で「王子」の意味ではない。長男ニコラス(ニック)は映画監督,次男ザックは俳優,三男リックは脚本家,それに末妹ステイジーの4兄妹のプリンス家。本作は長男ニックとジュリエット・ニクソン(通称ジンクス)のロマンス。J・I・ワトソン作「非凡な少年(ノー・オーディナリー・ボーイ)」という小説を是非映画にしたいと考えているニックだが,作者のワトソンはいわゆる覆面作家で出版社も編集者も連絡先を知らない。用件は私書箱に郵便でしか連絡ができないし,本人とはだれもあったことがないという。果たしてその作家は誰か。というところから物語が始まる。大学講師であるジンクスは,病気を父の面倒を見ているが,精神的な病の原因は息子と妻の相次ぐ死によるものだった。あるパーティに引っ張り出されたジンクスはそこでニックと運命的な出会いをする。その後ある情報からジンクスがJ・I・ワトソンではないかと考えたニックはジンクスに積極的に働きかけるうち,次第に惹かれていく。そんな時,二人の関係がマスコミの知るところとなり,さらにジンクスが作家ではないかという情報がどこからか流れていく。映画化を強く拒否していたジンクスだが,ニックから何度も働きかけを受け,さらにニックの弟リックからの言葉で態度が軟化する。しかし,映画化の承諾は実はジンクスにはできないのだった。
シリーズの幕開けとして兄妹がいろいろなところで顔をだし,それぞれの特色が出ている作品です。開幕にふさわしいワクワク感もあるし,終末の謎が解けるところでは涙が流れます。


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