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コテージに咲いたばら [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1216
コテージに咲いたばら An Innocent Bride
( White Weddings 1 ) 1999」
ベティ・ニールズ 寺田ちせ




R-1565
00.03/¥672/156p

HR-189
08.08/¥600/156p


 原題は「ある純真な花嫁」
 舞台:ハンプシャー州,ロンドン
 ヒロイン:カトリーナ・ギブス(25歳)/ローズ・コテージに元私立学校長の伯母と暮らす娘/大柄で,ダークブラウンの豊かな髪,ちょっとやそっとでは忘れられないほど美しい顔立ち/12歳で両親を飛行機事故で亡くし伯母に引き取られて生活/
 ヒーロー:サイモン・グレンヴィル(38歳)/聖オールドリック病院血液学専門医/
 両親の事故死の後,伯母に引き取られて暮らしてきたカトリーナ。田舎の村で周囲の人々と共に助けあいながら生活しています。伯母の病がリンパ性白血病で長くはないと医師に告げられますが,それを知られないようにしながら自分を引き取ってもらった感謝の気持ちを込めて懸命に世話をする心優しい女性です。しかし,経済的理由で大学にも行けず,特に資格をもっているわけでもありません。こんな女性をたちまち好きになってしまうのがロンドンの医師で,ローズ・コテージの近くの村に自宅をもつサイモン・グレンヴィル教授でした。しかし初対面の時なんとなくカトリーナが自分を嫌っているのではないかと思ったサイモンは,長い期間をおいて少しずつカトリーナが自分に目を向け,愛してくれるようになるまで世話をし,守っていきたいと心に誓うのでした。彼女の美しさは,顔立ちだけでなく,その心の美しさであることを見抜いたサイモン。田舎の村で周囲の人々と温かく,しかも他人の役に立とうといつも心がけて生活しているカトリーナ。村人たちが尊敬の念をもって接しているかつての女子校校長サーザは村の重要人物でもあり,その手伝いをしながら静かに暮らすカトリーナを誰しもが好意を持っていたのです。しかし,カトリーナの懸命な気遣いにもかかわらず程なくして大好きだった庭を眺めながら伯母は静かに息を引き取ります。地元の医師や村人たちが敬意を持って伯母を送ったのにもかかわらず,やってきた親戚たちは伯母が遺産を全てカトリーナに譲ったことを知って,足早に帰ってしまうのでした。コテージはカトリーナに残されましたが,伯母の年金の蓄えは切り詰めても数ヶ月しかもたないほどの僅かなものでした。カトリーナは考えたあげく,近郊の村での農作業の日雇いの仕事をして,なんとか暮らしを立てようとします。何かと理由を付けてコテージを訪れるサイモンは,カトリーナの苦境を知り,なんとか助けようと,病院で手術後療養が必要なトレイシーという少女とその母モリーの転地療養をローズ・コテージで引き受けてくれないかと持ちかけ,国の支援だという理由を付けて多額の謝礼を受け取らせることに成功します。トレイシーとモリーはすぐに村に馴染み,トレイシーの健康はレイシーの努力もあってまたたくまに快方に向かうのでした。やがて,ロンドンに二人の住むフラットも見つかり,数ヶ月して二人はロンドンに帰ってしまいます。レイシーは新学期(9月)からの図書館での司書手伝いの仕事を見つけますが,そんな時,村にあるサイモンの病院の研修医で小柄で美人のモーリーンの伯母の家であるマナーハウスで火事さわぎがあり,庭作業をしていたレイシーが初めに煙が上がるのを見つけて駆けつけ,数人の使用人たちと家財道具や貴重な絵画を庭に運び出し,さらに家に煙に巻き込まれて倒れてしまった青年を命懸けで救うという活躍をします。それまでモーリーンが教授を狙ってなにかと口実を付けてマナーハウスまで送ってもらっていたことや,モーリーンの伯母がいずれ教授とモーリーが結婚すると村人たちの仄めかしていたことで,レイシーが落胆していたことに教授は気付いていませんでした。「僕は君に恋したんだよ。だが君はまだ僕に同じ気持ちを抱いていない」というサイモンの言葉もカトリーナには信じられません。「数日したらまた会いに来よう。僕は彼女を愛している。そして彼女も心のクデは僕を愛しているはずだ。」という思いのサイモンに対してカトリーナは「彼は本当にわたしを哀れんでいるんだわ。わたしニコをしたと言ったのも,ただわたしをを元気づけようとしただけだったのよ。」と自分に言い聞かせるのでした。さて,サイモンはこの後どうやってカトリーナ気持ちをほぐしていくのでしょうか。
 ベティ・ニールズらしい,ドクターと村の娘の物語ですが,静かに流れる村人たちの温かい気持ちや,カトリーナの美点を見抜き,サイモンとの結婚を心待ちにするサイモンの両親や兄弟,使用人たちの二人を応援する言葉がとても読者を癒やしてくれる良著です。


タグ:ロマンス
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イースターマンデー [サラ・クレイヴン]

SHALOCKMEMO1215
イースターマンデー Strange Adventure 1997」
サラ・クレイヴン 大沢 晶




K-393
16.04/¥670/174p

R-0093
81.04/¥500/174p


 原題は「異国の冒険」
 ヒロイン:レイシー・ヴァーノン(18歳)/裕福な銀行家の一人娘,ピアニスト志望/銀色に輝く長い髪/
 ヒーロー:トロイ・アンドレアキス(?歳)/実業家,ギリシア人で母はアメリカ人/
 修道院の寄宿生でピアノを専攻しているレイシー・ヴァーノンは,コンセルヴァトワールの教授からはプロにはなれないと言われてしまいます。母を亡くし,5年前に父が再婚した派手好きな継母との折り合いは最悪。しかし,父だけは自分を愛してくれていると子供ながらに感じていましたが,修道院に迎えに来た継母の言葉からとんでもない計画が進行中だということを感じ取ります。父の銀行の経営が資金難で妖しくなり,その対策のため富裕な実業家トロイ・アンドレアキスの支援が是非とも必要なこと,そしてトロイが支援をする見返りとして,レイシーが利用されようとしていることでした。自分が人身御供にされることに絶望したレイシーは,幼なじみで隣家のアラン・トレバーに頼み込み,駆け落ちをすることにします。しかし,食料を買いに行ったアランが戻ったと思ってドアを開けた,二人が隠れ家に選んだモーテルの部屋に現れたのはトロイでした。レイシーは家に連れ戻され,いよいよトロイとの結婚式を挙げることになります。この結婚式の日がイースターマンデー,つまり復活祭の翌日の月曜日で,それが邦題になっています。この日を境にレイシーの運命は大きく変わっていくという意味だろうと思います。ところが,すぐに父が発作で命を落としてしまい,イオニア海のセロス島にある別荘にトロイの親友の付添で送られてしまいます。しかも,レイシーはトロイの妹で遺産相続人のエレニというティーンエイジャーの少女の監督も任せられてしまうのでした。トロイはイギリスに残り,仕事を続けるというのです。セロス島でエレニとレイシーと使用人たちの奇妙な生活が始まります。レイシーはエレニに振り回され,エレニのアメリカ時代の知り合いだったエヴァン・ケントに追い回されますが,写真家だと称するエヴァンは仕事をする様子がありません。エレニと共に気晴らしに出かけたプライベートビーチで半裸で日光浴をしていたとき,岩陰できらりと光るものが見えましたが,だれもいませんでした。レイシーは違和感は感じましたが,それが後日大きな問題になるとは思いも寄りませんでした。やがて,嵐がやってきて,エレニが家に戻らないことに気付いたレイシーは,先日見つけた洞窟にいるのではないかと探しに行きます。その時地震が起こり,洞窟の入り口の岩が崩れ,二人は閉じ込められてしまいます。やがて空気が薄くなり二人は意識を失ってしまうのですが・・・。
 エヴァンが撮った写真は,二人の女性が砂浜で半裸で寝そべっているスキャンダラスな写真でした。それをネタにトロイから金を引き出そうとしていたのですが,その悪巧みをトロイは簡単に解決してしまいますが,それがレイシーの心を傷つけてしまったことには気付きませんでした。そしてレイシーもトロイが義母のミシェルと深い関係にあるのではないかという疑いを捨てきれなかったのです。二人のこのすれ違いはエレニ(イギリス風にはヘレン)とエヴァンが画策したことだったのですが,エレニはトロイをちょっと困らせてやろうとしたたわいもないいたずら心だったのですが,エヴァンに騙されていたことに,やっと気付いたのでした。そして反抗して洞窟に隠れた自分を救ってくれたレイシーに感謝の気持ちを抱きます。レイシーとトロイの互いの誤解はどのように解けるのでしょうか・・・。
 年の離れたカップルを描いた作品ですが,純真で世間知らずなレイシーがとても愛らしく,トロイによって心の成長を遂げていく姿がすがすがしい作品です。


タグ:ロマンス
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許せないプロポーズ [ヘレン・ビアンチン]

SHALOCKMEMO1214
許せないプロポーズ The Pregnancy Proposal
( Expecting ! 22 ) 2003」
ヘレン・ビアンチン 春野ひろこ




HQB-698
15.12/¥670/204p

R-1938
04.02/¥672/156p


 原題は「妊婦のプロポーズ」
 舞台:ブリスベーン
 ヒロイン:ターシャ・ピーターソン(27歳)/法人専門弁護士/肩に届く豊かな巻き毛,金色の斑点が浮かぶ濃い褐色の瞳/
 ヒーロー:ジャレッド・ノース(?歳)/法廷弁護士,ブリスベーンの高級住宅街にある贅沢なアパートとゴールドコーストにもアパートを所有/長身,力強い顎,広い頬骨,左右対称の鼻,黒い瞳,深みのある声/
 妊娠出産ということをテーマにした「Expecting!」シリーズの1巻です。舞台はオーストラリアでもシドニーやメルボルンという大都会ではなく,しかも内陸部の荒れ地でもない風光明媚な街ブリスベーンやゴールドコーストです。ヒーロー,ヒロインとも弁護士で経済的には裕福,しかもセレブと舞台は整っていますので何の悩みもないように思えます。しかもヒロインと義母はとっても仲良し。言ってみればちょっと贅沢な悩み。なにをそんなにクヨクヨと思い悩むのやらといった感じが,全編を覆っていますので,エピローグで愛らしい娘シボーン・マリー・ノースの誕生に言及されていなければ,面白くもなんともない作品になっていたでしょう。まあ,ブリスベーンやゴールドコーストの観光案内としては,役に立ちそうな作品ではありますが・・・。


タグ:ロマンス
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危険な億万長者 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1213
危険な億万長者 The Vasquez Mistress 2008」
サラ・モーガン 東みなみ




HQB-725
16.04/¥670/224pp

R-2405
09.07/¥690/156p


 原題は「バスケスの愛人」
 舞台:アルゼンチンの牧場エスタンシア・ラ・ルシア
 ヒロイン:フェイス(25歳)/獣医/緑の瞳/
 ヒーロー:ラウル・バスケス(30歳)/四千ヘクタールを超える面積をもつ牧場の主,ポロ選手/つややかな黒髪,男性的でたくましい筋肉,180センチを越える身長/
 第2章でいきなり10カ月後に飛ぶ展開は予想外でした。タクシーの前に飛びだして転倒したヒロインのフェイス。ちなみにサラ・モーガンの他の作品でもありますが,フェイスの姓は記されていません。病院で意識を取り戻すと夫のラウルがやってきました。フェイスはラウルの元を逃れて彷徨っているうちに事故に遭ったのでした。身元の分からないフェイスは記憶障害を装いますが,ラウルに強引に家に連れて行かれます。フェイスが結婚式後すぐにラウルの元を逃げだしたのは,流産が原因でした。もともと結婚も子供もいらないと言いきっていたラウルが突然結婚をいいだしたのはフェイスの妊娠がきっかけでした。そして,ストーリーの終盤までぎりぎりふせられていくラウルが結婚も子供も望まない理由。それが本作の一番の盛り上がりです。女性なら誰でもうっとりしてしまうアルゼンチン男性のラウル。そのラウルが一時も離したくなくなってしまった相手がフェイスでした。絶世の美女よりもその知性とラウルを夢中にさせる性的反応の良さ,そして自分に媚びようとせずユーモアを失わずに自分を主張する性格。そんな全ての点を総合して,惹かれざるを得なくなる女性がフェイスでした。しかしラウルに金目当てで結婚し,妊娠して自分を騙したのかと謂われのない冷たい言葉を投げつけられ,ラウルの元を逃げだしたのでした。「私たちは全く不釣り合いだった。わたしは現代的な思慮分別のある女。そしてラウルは無慈悲な暴君で,存在することすら知らなかった世界の住人だった。」というフェイスの思いを,あざ笑うかのようにつぎつぎと自分勝手な言動をするラウルですが,少しでも触れられると,もうラウルの言いなりになってしまうフェイス。それほどフェイスを愛しているにもかかわらず,その男性至上主義のアルゼンチン男性らしい言動にうんざりしながらも,ラウルもまたフェイスから離れずにいるのです。仕事上の関係で隣の土地をもつ夫妻を家に招いたときも,ラウルはフェイスを伴います。しかし,やってきた夫妻の妻はラウルのかつての恋人ソフィアでした。あえてかつての恋人を招待する場に自分を同伴させたと,フェイスは憤り,ラウルの冷酷さに今更ながらに牧場を去らなければと思うのでした。しかしこのままソフィアに負けるのはフェイスのプライドが許しません。フェイスは作戦を変えることにし,ラウルの気持ちにより添うようにしていくのです。それが,ラウルの気持ちを徐々に軟化させていきます。そして明かされるラウルの幼少時代の記憶と残酷な事実。このことを話したことがラウルとフェイスの関係を一気に高めるのでした。
 ヒロイン側ではなく,ヒーロー側から描かれたこの作品。ヒーローが過去を乗り越え,人間性を取り戻していくためには,フェイスの存在が必要だったのです。その過程を克明に描いた本作はサラ・モーガンの筆力の冴えを物語っている作品です。


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3月の閲覧履歴 [toppage]

3月の閲覧履歴
いよいよ春本番4月に入りました。北国仙台では「梅は咲いたが,桜はまだ・・・」という状態ですが,街ではリクルートスーツに身を固めた若者達がたくさんいるでしょう。

さて,2016年3月のブログの閲覧者数の多かったベストスリーは,

1位 彼女が大人になるまで ダイアナ・パーマー SHALOCKMEMO1199
2位 王と身代わりの花嫁 ケイト・ヒューイット SHALOCKMEMO1195
3位 孤独なバージンロード リン・グレアム SHALOCKMEMO1184

の3冊でした。ダイアナ・パーマー,リン・グレアムといったベテランどころがやはり人気があるようです。そうした意味でもケイト・ヒューイットの作品は善戦したという感じがしますね。

なお,斜麓駈の3月イチオシ作品は,読了日順に
○ 再会は甘い苦しみ マギー・コックス SHALOCKMEMO1183
○ シンデレラは似合わない シャロン・ケンドリック SHALOCKMEMO1187
○ 不思議な遺言状 エマ・ゴールドリック SHALOCKMEMO1188
○ 今だけはこのままで ルーシー・モンロー SHALOCKMEMO1190
○ 5週間の仮面夫婦 キャロル・モーティマー SHALOCKMEMO1197
○ 彼女が大人になるまで ダイアナ・パーマー SHALOCKMEMO1199
○ 砂の城のシンデレラ クリスティン・リマー SHALOCKMEMO1210
○ 夢から覚めた花嫁は・・・ キャット・キャントレル SHALOCKMEMO1211
の8冊でした。
読了冊数は惜しくも31冊目は月明けの読了となってしまいましたが,ほぼ1日1冊ペースになりました。
ハーレクイン・ロマンスの装丁が新装になりましたが,電子書籍ばかり読んでいるので,違いは実感できません。従ってアンケートには回答できないのがちょっと残念です。
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追憶のひと [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1212
追憶のひと Stranger from the Past 1991」
ペニー・ジョーダン 堀田 碧




HQB-710
16.02/¥670/192p

R-0987
93.03/¥652/156p


 原題は「過去からの異邦人」
 ヒロイン:シビラ・ガードナー(25歳)/人材派遣会社経営/ブロンドの髪,ラベンダー色あるいはグレー色の瞳,愛読書はジョーゼット・ヘイヤーの小説
 ヒーロー:ギャレス・シーモア(32歳)/会社経営/シーダーズ屋敷の跡取り/グレーの瞳
 15歳の頃に憧れた年上の幼なじみギャレス。祖父の元で育ち祖父亡き後祖父の会社も後を継ぐ形になります。シビラはギャレスの祖父トーマス・シーモナと近所だったせいもあり,ギャレスが大学や国外で事業を興したこともあり,トーマスの元にしょっちゅう訪れていました。しかし,ある日トーマスとギャレスの会話に自分が登場し,しかもギャレスは自分のことを子供だと言い切ったことでショックを受け,その心の傷を抱いたまま男性との真剣な付き合いをせずに25歳を迎えてしまいました。ギャレスが来ることが分かっていたので,トーマスの葬儀にも顔を出しませんでした。雨の降る中スーパーでの買い物を終え,駐車場までカートを押して急いでいたとき,目の前に駐車しようと車が入ってきたので慌ててカートをよけようとしたとき荷崩れを起こしてしまい,カートの中身を道路にぶちまけてしまう恥ずかしい思いをしてしまいます。その車に乗っていたのはなんとギャレスと美女でした。次に人材派遣会社の仕事の関係で自分に以前から関心を示していた妻帯者と面談がありレストランでの話し合いをしているとき,ふたたびギャレスが現れ,今度は妻帯者と不倫の関係であるかのような誤解をするのです。そして翌日の夜入浴中に玄関のベルがなり,隣人かと思ってバスタオルをまいただけの状態でドアを開けるとギャレスが入ってきたのです。そしてシビラにキスをしたのでした。二度三度と恥ずかしい場面を見られたシビラ。もう十五歳の少女ではない,あれから10年も経ってビジネスウーマンとして成功している女性なのだと自分に言い聞かせても,ギャレスヘの愛が消えていないことを否定できないシビラでした。その後,ギャレスとの出会いを極力避けようとしたシビラですが,何度かのニアミス,そしてインフルエンザのような最悪の体調,そんな弱気になりがちな自分に活を入れながらも,終末の休日に散歩の途中で自分を追いかけ回すシビラの顧客のレイ・ルイスに出会ってひどい侮辱を受けたとき,偶然通りかかったギャレスに危ういところを巣くわれたときは,もうギャレスへの愛と欲望を否定することは出来なくなっていました。もうこの街には住めない。だから一時だけギャレスを求めたい。ギャレスもまた同じ気持ちであることを告白され,シビラは自らギャレスに身を投げ出すのでした。
 ペニーの作品には,幼い頃から憧れ続けた男性にふたたび出会い,その愛を得るまでの成長譚がストーリーの中心になるものが多いのですが,これもその作品群のひとつです。シビラという名前は古代ギリシア時代の異教(キリスト教ではない)の巫女で,「終わりの日(怒りの日?=Dies Irae)」を宣託する女性です。レクイエムの歌詞にも登場するこの名前をこの作品に登場させたのはなぜだったのでしょう。


タグ:ロマンス
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