SSブログ

砂漠に咲いた薔薇 [メレディス・ウェバー]

SHALOCKMEMO1146
砂漠に咲いた薔薇 The Sheikh Doctor's Bride 2015」
メレディス・ウェバー 八坂よしみ





 ハーレクイン版とミルズ&ブーン版の表紙イメージを比較してみましたが,圧倒的に上のハーレクイン版の方がいいですね。邦訳版の方はなんだかアラビア風ならなんでもいいという感じの表紙ですから,個性に欠けます。
さて本作はシークものと医療ものを融合した作品です。アンベラク国という砂漠と美しい海岸線の国の皇太子,例によって長い名前ですが,ファリード・イブン・ヤディム・イブン・ムスタファ・ファルークは,両親の不和から叔父である現国王に育てられたも同然。そろそろ結婚適齢期?39歳ですから,立派な大人ですが,結婚にはどうも足が向かないでいるようです。それは両親の不和により,母親から捨てられ,父親の最期を間近で見てしまったためでした。叔父はファリードを連れて馬の買い付けでオーストラリアのケイトの母の経営する牧場にやってきます。ケイトの母のサリー・アンドルーズは馬のブリーダーとして牧場を経営していますが,経営はあまり順調とは言えませんでした。もしこの王族の依頼を受けることができたならかなり名前も売れて経営も順調になるかもしれません。ケイトは救急救命医としてアメリカで働いていましたが,父親が亡くなったため帰国しており,母の手伝いをしながら障害を持つ弟の世話もしていました。そこに不機嫌な様子のファリードがやってきたのです。そして国王がケイトにとんでもない提案をします。ファリードと1年間便宜的な結婚をしてくれれば,牧場で育てられている馬を買い上げ,運営のための牧童も雇ってあげようというものでした。何より,女性の医師が不足している国情の改善にも役立つというのです。
 昔の砂漠の国のように金で買われた花嫁という設定に驚きと恐ろしさを感じたケイトですが,国王の切なる願いと牧場の経営に役立つという思いに駆られて承諾するのでした。そして更に条件として結婚式が済むまでファリードには花嫁が誰かは知らせないというのです。ファリードは自分の母が赤毛のヨーロッパ人で金と引き替えに父と結婚したことを何よりいやがっていたのですが,それは誰にも話していませんでした。目眩く美しい砂漠の国アンベラクで,ケイトは飛行機の上空からの眺めの段階からこの国に惹かれていきます。しかしファリードの想いを推し量ることができず,不安を抱いたままでした。なにかと自分の言葉に異議を唱えることもあるケイトにファリードは冷たい態度を取るのですが,実は互いにオーストラリアで初めて会ったときから惹かれるものを感じていたのでした。あとは様々な出来事をとおして二人の気持ちは次第に近づいて行くのですが・・・。しかし母の牧場で大切にしていた馬が心ない人によって流れ弾に当たって死んでしまったことを知らされ,馬が唯一の友達であった弟を心配して帰国することにしたケイト。結婚もこのまま解消かという思いを抱えたまま帰国したケイトの元に,ファリードがやってきて,母馬の出産を手伝うのでした。
 過去の経験に囚われて愛を信じられなくなった皇太子が便宜的な妻の愛情によって心を開き幸せを手にしていくという物語です。ヒロインが32歳というのもかなり年齢が高く,大人のロマンスという雰囲気が全編に漂います。


タグ:イマージュ
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

未熟な花嫁 [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1145
未熟な花嫁 The Billionaire's Bridal Bargain 2015」
リン・グレアム 茅野久枝





 ポッと出の田舎娘が億万長者に金銭的援助付の契約結婚を申し込まれ,父や妹の窮状から止むに止まれず承諾したものの,結局は相手を愛してしまうと言うお話しです。お金のためではないと言いつつ,やはりお金の誘惑には負けてしまうという側面もあるのですが,磨けば光る要素をたくさん持っていた女性が,上流階級で本来の美しさを発揮し,それを鼻にかけないで満たされることを知る女性に成長することで,愛が長続きするということも物語っています。
 母の遺言でエーゲ海のリオノス島の所有者でありながら貧しい生活を強いられていたエリザベッタ・ホイッティカー,通称リジーは,かつて島の本来の所有者であったサバティーノ家の当主で製薬会社を経営するチェーザレ(イタリア語の苦手なリジーはシーザーと読んで笑われるのですが・・・)に,取り引き結婚を申し込まれます。つまりチェーザレが本来の島の所有権を得るためにはリジーか妹のクリシーと結婚するしか方法がないからでした。リジーは次々に男性と浮き名を流し落ち着いて家にいたことのない母を疎ましく思っていましたが,まさかその母の遺産が自分たちの経済的窮状を救ってくれるとは思いませんでした。経営破綻に貧している農場の牧草地にヘリコプターで降り立ったチェーザレは,長身でハンサム,イタリア人紳士らしい男らしさにあふれた男性で,これまでにリジーが会ったことのないタイプでした。しかし羊の放牧地にヘリで降り立つという非常識な行動のおかげで羊たちが逃げ惑い,それをまとめようとした牧羊犬のアーチーが羊の群れに押しつぶされ脚を骨折するという不運に見舞われるや,リジーはチェーザレに腹を立て真っ向から怒りをぶつけたのでした。女性からこんなに激しく非難を受けたことのないチェーザレは驚くとともに,相手の生き生きした瞳やふとしたときに魅せる隠された美しさに惹かれてしまうのでした。その後,契約結婚の申し出をして返事をもらうことにするのですが,リジーの父は投げやりな言葉を返すばかり,そして大学から帰省した妹クリシーは大学をやめて働くと言い出すなど,リジーがこの話に乗らざるを得ない状況が立て続けに起こります。そしてチェーザレに承諾の返事をしたその日のうちにヘリコプターで家を離れ,あれよあれよと言うままにチェーザレが全ての段取りを付けて二人の婚約が発表されてしまいます。リジーにはかつて幼なじみで隣人のアンドリューと婚約した経緯がありました。しかしアンドリューは婚約中に別の女性を妊娠させてしまい,破談になってしまいます。またチェーザレは初恋の相手セラフィナが自分を捨てて50歳も年の離れた富豪男性と結婚してしまったという経験を持っていました。互いに相手の過去の相手のことを聞かれると機嫌が悪くなってしまうのですが,本物の結婚らしく家族に魅せるためには過去のことも打ち明け合う必要があり,喧嘩しながらも少しずつ相手のことを知ろうとします。そして将来の子孫を残すためには・・・。リジーにとってはそのことが一番苦手なことでした。経験のない彼女はパーティで酔った勢いでチェーザレに身を任せます。そして彼女の初めてを知ったチェーザレはリジーが自分にとって欠かせない存在であることに気づいていくのでした。その後,チェーザレのかつての恋人セラフィナの意地悪などがありますが,リオノス島の屋敷の改修も終わり,祖母をつれて島に渡った三人にはさらに家族が増えていくのでした。ハッピーエンドに終わる物語で特に大きな盛り上がりもない,リジーとチェーザレの成長譚という次第です。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

放蕩王子と修道女 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1144
放蕩王子と修道女 Pretender to the Throne
(ロイヤル・アフェア 3) 2014」
メイシー・イエーツ 東 みなみ





 シリーズ最終巻です。第1巻のヒロイン,プリンセス・エヴァも,第2巻のヒロイン,ジェシカも素晴らしかったのですが,本作のヒロイン,レイナ・ゼナコスこそ,ヒロインという名にふさわしい勇気と不屈の精神を併せ持ったすばらしいヒロインでした。15年前に婚約者であったザンダーが出奔してしまい,その後,政治的理由による騒動で薬品によるひどい火傷を負って顔の半分に傷跡が残ってしまったレイナ。21回にわたる皮膚移植手術をうけたもののかつての美貌を取り戻すことはできませんでした。そんなレイナが心の居場所に選んだのは修道院でした。見習い修道女として10年間を過ごしましたが,院長からは,まだ心に迷いがあり修道女になることはできないといわれていたのです。そんな修道院にザンダーがレイナを迎えに来ます。出奔後プレイボーイとして様々なスキャンダルの中心になっていたザンダーですが弟から父危篤の知らせを受けて,キョーノスに帰ってきたのです。そして王位継承者として国の統治にかかわることにしたのでした。これまで妻を失ったあとの父王がすっかり手を抜いてしまい,荒れ果ててしまった国土を弟スタヴロスがたゆまぬ努力で国民の王室への信頼を取り戻しつつ国の立て直しを図ってきました。政治からも国からもすっかり遠ざかり,王家の長男としての義務と責任から逃げてばかりいたザンダーもついに父王の様態の悪化とジェシカとスタヴロスが王位継承権を断ったことにより,国に戻らざるを得なくなったのです。そして子孫を残すためには,再度レイナとの結婚を完成させなくてはならないと考えたザンダーでした。しかし,初めは気づかなかったほどレイナの顔は変わってしまっていました。しかし,ザンダーはその傷跡の残る顔に不快感は抱きませんでした。それより輝く瞳やなめらかな蜂蜜色の髪の方が,そして内面から出てくるであろう大人としてのレイナの魅力に気付いたのでした。レイナもまたザンダーから王宮に一緒に来て欲しいという頼みを断れませんでした。心の奥に深い闇を抱えているザンダーに気付いたからでした。ザンダーは母の死を自分の責任と感じ,さらにその理由が自分は王の実の息子でないことを母から聞いたためだということを打ち明けられます。その秘密を父に明かすというザンダーの言葉に,レイナは再びザンダーが気付くのを恐れ止めようとするのですが・・・。そして父王の下にザンダーが向かったとき,レイナの元にマスコミの記者から心ない言葉を投げかけられ,再び自分がいてはザンダーが国を去ってしまうのではという想いから修道院に逃げ帰ってしまうのでした。
 結局二人は互いの愛に気付いて互いに支え合うことにするのですが,エピローグはなんと15年後のキョーノスが描かれ,大団円を迎えます。


タグ:ロマンス
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

天使を夢見るウエイトレス [キャシー・ディノスキー]

SHALOCKMEMO1143
天使を夢見るウエイトレス Baby at His Convenience 2004」
キャシ・ディノスキー 大谷真理子





 身長180センチで標準体重より20キロオーバー。しかも年齢34歳と,ロマンスのヒロインとしてはあまり例をみない女性の登場です。ヒーローは膝の故障のため海兵隊を除隊したばかりの厳つい男性。これはちょっと大人のロマンスといってもいいでしょう。でも,ヒロインもヒーローも根はとても愛らしい性格で,小さな町特有の老人たちがすべての秘密をたちまちのうちに街中に広めてしまう状況で,マスコミと言うよりはミニコミが幅をきかせている舞台設定。こんな中で出産期限の体内時計が秒読みを始めているヒロインのケイティー・アンドルーズは町にやってきたばかりのジェレマイア・ガンに自分の子供の父親になってくれないかと持ちかけるのです。精子バンクはいかにも味気ないので出産後に子供の成長にも立ち会ってもらいたいという気持ちからこんなとんでもない申し出をするのですが,結婚は条件には入っていないというから,申し出を受けたジェレマイアもまた目を白黒させます。それならばと出した条件が・・・。結局子作りのためにベッドを共にするということに同意したケイティーですが,二人の相性はバッチリ。たちまち二人とも恋に落ちてしまいます。ある意味,笑える状況ですが,二人とも真剣に悩みます。この状況をおもしろがっているのはあまりニュースのない町の人たち。その町の人たちが実に温かく二人を見守ったり背中を押したりしながら二人の愛を育んでいく様子がホンワカした雰囲気を醸し出していく癒やしのロマンスです。


タグ:ディザイア
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

赤い髪の秘密 [キャロル・モーティマー]

SHALOCKMEMO1142
赤い髪の秘密 Fated Attraction
( Quinlan 1 ) 1991」
キャロル・モーティマー 中原もえ





 富豪の令嬢リア=ジェーンは,21歳の誕生日までにきちんとした仕事に就いていれば父の遺産を受けることができることになっており,ロンドンのあちこちの企業に面接を申し込みますが,どの企業も名前を聞くと「どうして就職?」と首をかしげられ,丁寧に断られるだけでした。大きな荷物を抱え,家を飛びだしてホテル住まいをしているリア=ジェーンがロンドンの裏通りを歩いているときに危うく車に轢かれそうになり,水しぶきでバランスを崩し,踝を捻って溝に倒れ込んでしまった彼女を,ドライバーの男性が病院に無理やり運んでいきます。この男性こそ,運命の相手ラファティ(ラーフ)・クィンランでした。病院に着く前に失神してしまったリアの身元引受人になったラーフは,すっかり信じはしなかったものの,ジェーン・スミスとなのったリアを自宅に連れて行き,家政婦のミセス・ハワードとともに面倒を見ることになります。何かにつけて秘密めいたリアを初めて見た瞬間ミセス・ハワードは驚きの声を上げます。かつてクィンラン家でラーフの乳母をしていた女性にリアがそっくりだったからです。トランクに入っていた高級なドレス類を見たラーフはリアが金持ちの男性を食い物にするその道の女性だと勘違いし,蔑むような目でリアを見るのでした。そして秘書として雇おうと言うのでした。その時すでにラーフはリアに対してなにか運命的な出会いを予感していたのです。リアもまた何かにつけて自分を見下そうとするラーフに腹を立てながらも,真面目に仕事をしている姿や両親を亡くして立派に領地を守ろうとする姿に惹かれていくのでした。
あるとき,突然ラーフの叔母夫婦が屋敷を訪ねてきます。叔母のアニタ・バーンズはやはりリアを見て,誰かに似ていると不思議に思います。そしてリアの驚愕の時が訪れます。アニタの最愛の息子が,リアの知り合いのロバート・バーンスタブルだったからです。一目でリアの正体を見破ったロバートですが,自分のことをラーフに知らせないで欲しいという必死のリアの頼みで,その場は何とかしのいだのですが。ロンドンに戻ったロバートはついにリアの兄ジョーダンに問い詰められて,リアの居場所を話してしまったのです。家にかかってきた電話でリアはそのことを知り,翌日説明のためにロンドンに向かわざるを得ませんでした。そしてラーフが計画している領地のリゾート化計画を成功させるためにジョーダンにプランを話して事業に興味を持たせることになってしまいます。さっそくジョーダンがラーフに連絡し,リアがサマヴィル=スマイズ家の娘であることを明かされてしまいます。ラーフを騙していたこととリアを信用して事業計画を打ち明けたのにジョーダンにそれを話してしまったことでラーフは怒り心頭,さっそくリアに出ていくように告げるのでした。そしてジョーダンの支援を断る連絡を入れてきたのです。何とか説得しようと領地を訪れたリアとジョーダン。ラーフは数日しか離れていないのにリアのことばかり頭に浮かび,ついにリアに結婚を申し込みます。リアもまた同じ気持ちであったことを告白し,承諾の返事をするのでした。この話を聞きつけたロバートは叔母アニタのところにリアを伴ってパーティに参加することになっていましたが,このパーティにラーフとジョーダンも参加することになり,そこでアニタから衝撃の過去を知らされることになります。逆にラーフとジョーダンは親密さを増し領地のリゾート化計画に協力して当たることになります。
いつもながらのモーティマーのストーリーテリングのうまさが光り,1991年刊という時代の古さを感じさせないモダンな作品です。姉妹編の「偽りの訪問者」はジョーダンがヒーローとなりますが電子書籍化されていないようなので,いずれ読んでみたいと思います。


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

天使がくれた恋 [マーガレット・ウェイ]

SHALOCKMEMO1141
天使がくれた恋 Gaburiel's Mission
Guardian Angels 2) 1998」
マーガレット・ウェイ 高田真紗子





 守護天使が守ってくれるというお話しの第2弾。原題は「天使のお仕事」とでも訳せば面白いのかもしれません。ありきたりですが・・・。前作では天使がヒロインという面白い展開でしたが,本作は原則?に戻って守護天使が人間のヒロインを守るという設定になっています。
 テレビ局の美人レポーター,クローイ・キャヴァノー(24歳)は父と弟を事故で失い,そのショックから立ち直れずすっかり病気になってしまった母を高級療養所で預かってもらいながら仕事を続けています。療養所の支払いで精一杯でまもなく気に入っている家屋敷も売らなければならないかもしれない苦しい状態でした。天国から見つめる大天使ガブリエルは,そんなクローイを気の毒に思い,若い守護天使タイタスを使わすことにします。もしうまくいけば天使の羽を伸ばしてやろうと考えてのことでした。このあたりの天使の昇進制度などもちょっと人間界的で面白いですね。天使の年齢?不思議な気がします。さて,クローイの所属するテレビ局BTQ8では,最近,支局長が更迭され,温厚なコナーからバリバリの厳しい支局長ガブリエル・マグワイアが就任します。クローイは初めは敬遠しているのですが,次第にガブリエルの男性的な魅力に惹かれ始めます。ガブリエルも口では厳しいことを言いながら何かとクローイを気遣っている様子が見え隠れするようになってきました。互いに惹かれあっていることに気づいていても上司と部下の一線を超えないように二人とも互いの気持ちにブレーキをかけています。クローイはワザと若いスタッフの誘いに乗ったり,プレイボーイとして名高い老練な実業家などの誘いにいい返事をしたりしてガブリエルをやきもきさせます。またガブリエルの周囲には女性の眼差しが絶えないのですが,特に自分がガブリエルの恋人と公言しているテレビ局のオーナーの娘タラや先輩レポーター,ジェニファなどがクローイとガブリエルとの距離の近さを嫉妬されて不快な思いをします。しかし守護天使の導きで次々に特ダネや有名人とのインタビューに成功し,周囲からの人気がうなぎ登りに高まっていくのでした。そんな中,ガブリエルにアメリカのメジャーなマスコミ・オーナーから引き抜きの話しが来ます。少し回復傾向にあり,家に引き取ったばかりの母をおいてアメリカに行くわけにはいかないと,クローイはガブリエルとの別れを決意するのですが・・・。
原語綴りでは[Chloe]をクローイと表記しているのは発音に忠実にと言うことなのでしょうか。通常はクロエと表記するのが普通なのですが・・・。あるいはオーストラリア英語なのか?


タグ:ロマンス
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

赤毛のアデレイド [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1140
赤毛のアデレイド Sister Peters in Amsterdam 1969」
ベティ・ニールズ 小林節子





 ベティ・ニールズのデビュー作です。原題の「Sister」は女性看護師の意味。交換看護師としてオランダにやってきたアデレイド・ピーターズ看護師は,オランダ語を学びながら小児科看護師としてファン・エッセン教授やベイクマン医師などと1年間勤務することになります。イギリスの病院で教授はアデレイドの勤務ぶりを看護師長から聞き,文句なく推薦できると太鼓判を押されます。実際オランでの病院での勤務でもいくつかのやっかいな患者や泣き叫ぶ子供患者たちをあっという間になだめたり,外来に訪れる患者の様子を見て医師がすぐに治療できるように用具の準備を前もってしたり,休憩が欲しいとき医師たちにコーヒーはいかがですかと声を掛けたりと,まるで魔法使いのような働きぶりです。冬のクリスマスや新年の過ごし方のイギリスとオランダの違い,スケート遊びに興じるオランダ人たちの様子,イギリスの実家に夏の休暇で教授と一緒にドライブしたときの途中の景観などの楽しいエピソードや,交通事故の時救急車が来るまで閉じ込められた女の子を励まし続けたりする看護師としての仕事の上での活躍など盛りだくさんなエピソードを巧みに織り交ぜて教授を次第に愛するようになるアデレイドの心の変化を詳細に描いた傑作です。恋敵の令嬢マルフリートの俗物さもアデレードの純真さを浮き立たせるための見事な描き方をされています。デビュー作としてかなり時間をかけて練り上げられた作品なのだろうと思います。最後のどんでん返しが読者にヤッターと叫ばせるドラマチックな終結です。イチオシの作品。


タグ:イマージュ
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

愛を拒む大富豪 [マヤ・バンクス]

SHALOCKMEMO1139
愛を拒む大富豪 Undone by Her Tender Touch
誘惑された花嫁 4) 2012」
マヤ・バンクス 八坂よしみ





 シリーズ最終巻です。前作「愛を知らない花婿(SHALOCKMEMO1138)」のヒロイン,アシュリーの親友ピッパは,アシュリーの夫となったデヴォンの親友キャメロン(キャム)・ホリングワースと視線を絡み合わせパーティから抜け出します。そして一夜を共にするのですが・・・。翌日キャムから連絡があり,避妊具に欠陥があったことを知らされます。ひょっとしての可能性はすぐにはでませんが,かつて妻とひとり息子を事故で亡くした経験のあるキャムはピッパに過保護なほど様々な援助を申し出てきます。実はキャムは過去の経験から立ち直ることができずにおり,ピッパとの関係も一夜のことと割り切って欲しいと事前に言っていたので,ピッパとしてもキャムのこの反応は意外に感じていました。それからは二人の間の心のすれ違いが物語の中心になります。キャムとしてみれば「愛したりしなければ君の身に何かあっても傷つかないですむ。君を愛さなければどんなものにも影響を受けずにすむ。目の前で妻と子をなくしたときの気持ちを二度と味わいたくないんだ。」という気持ちで,その言葉を面と言われることで,ピッパの心は傷つきます。そして,アシュリーを含めたピッパの親友たち,さらにはデヴォンにも総スカンを食ってしまうキャム。キャムに開いてもらった念願のカフェが大成功を収め,疲れ果ててアパートに帰り着いたピッパはソファで寝入ってしまいますが,夜中に焦げ付く臭いを感じて目を覚ますと火事の炎が迫ってきていたのでした。気丈に姿勢を低くして煙を吸い込まないようにして脱出できたピッパはキャムがパニックに陥りながら自分を追いかけてきたことを知らないでいました。病室で母子ともに無事でホッとしたピッパは,キャムの入室を断ります。修復不可能に思えた二人の関係は,どうなるのでしょうか。退院後住居を失い,アシュリーの実家に引き取られたピッパのもとを連日キャムが訪れてくるのですが,キャムの本音は・・・。
 エピローグでは,おおらかで常に前向きで明るいピッパの性格をはっきり示すエピソードで幕を閉じます。読後感の素晴らしいシリーズです。


タグ:ディザイア
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

愛を知らない花婿 [マヤ・バンクス]

SHALOCKMEMO1138
愛を知らない花婿 Tempted by Her Innocent Kiss
誘惑された花嫁 3) 2012」
マヤ・バンクス 深山ちひろ





 シリーズ第3弾。デヴォン・カーターはコープランド家の一人娘アシュリーと,企業合併を条件にアシュリーの父ウィリアム・コープランドの提案により,アシュリーを誘惑して結婚にこぎ着けることにします。数回のデートと優しい言葉でアシュリーはすっかりデヴォンの虜になり,結婚を承諾するのでした。慌ただしく行われた結婚式。コープランド家の親戚一同とデヴォンの友人たち,そしてアシュリーの親友たちの見守る中二人は幸せの絶頂の中で結婚式を挙げます。アシュリーに真実を告げた方がよいのではというデヴォンの言葉をアシュリーの父はずっと隠しておくようにとデヴォンに約束させていたのでした。知らなかったのはアシュリーとその親友たちだけ。デヴォンは友人たちには勿論事情を打ち明け,そして,それでいいのかと疑いの目を向けられていたのですが・・・。やがて新婚旅行に出かけた二人ですが,喜び勇んだアシュリーは偶然デヴォンのパソコンをひっくり返してしまい,壊れていないか調べているうちに父と夫が交わした裏取引を知ることになります。天然なほど純真で喜びにあふれ,なんでも思ったことを口に出してしまうお嬢様育ちのアシュリーに,デヴォンはこれからは妻としての慎みを身に付けて欲しいと,アシュリーの欠点をそれとなく仄めかします。二人は婚約がきまってからすでにデヴォンのフラットで同棲していました。そのころはデヴォンが自分を愛していることを信じて疑わなかったアシュリーですが,裏取引と自分の欠点を取り上げるデヴォンとの結婚がうわべだけのものになるではないかという怖れを抱きます。このまま一生耐えていけるだろうか・・・。それがストレスとなり,頭痛が続いたため,新婚旅行は二日で切り上げてデヴォンのフラットに戻ったのでした。デヴォンが仕事で出かけたために,涙ながらに実家に顔を出したアシュリーは母に悩みを打ち明けざるを得ませんでした。そして母と父が一時別居していた時のことを尋ね,夫婦の有りように難しさを再認識するのでした。親友ピッパの元を訪れ,さらに悩みを見抜かれたアシュリー。体調が優れない理由を指摘され,翌日親友に付き添われて婦人科の医師の診察を受け,妊娠が判明します。アシュリーは思い切ってデヴォンの会社を訪れ,デヴォンにこのことを告げるのですが・・・。
 本来のシュリーの美点を自分の好みに変えていこうとしたデヴォンと,純粋に自分を愛してくれる男性との結婚を夢見たアシュリーのすれ違いから,二人がどんなきっかけで,そしてどんな方法でデヴォンがアシュリーの信頼を取り戻していくか。その思いがけない方法がシリーズの中心となるテーマですが,本作でもそれを裏切らない巧みな方法が示されていきます。そしてなにより天真爛漫で愛にあふれたアシュリーの魅力が満載のオススメの作品です。


タグ:ディザイア
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

憎いのに恋しくて [マヤ・バンクス]

SHALOCKMEMO1137
憎いのに恋しくて Wanted by Her Lost Love
誘惑された花嫁 2) 2011」
マヤ・バンクス 藤峰みちか





 シリーズ第2作です。前作「忘却のかなたの楽園(SHALOCKMEMO1028)」を読んでから大分経つので(マヤ・バンクス作品をこれ以降読んでいませんでしたね),シリーズ一気読みはできなくなりましたが,邦訳も毎月というわけではないので,これも仕方ないことかもしれません。さて,四人の富豪たちのロマンスの第2弾はライアン・ビアズリーがヒーローです。全編読んで,ライアンのなんとも間抜けな恋愛観に唖然としますが,人の気持ちにこれほど気付かない人が会社経営で成功するはずがないのですが,それでも,あの母親の元で育ったとすればなるほどとうなずける性格です。一方そんなライアンに夢中になってしまったヒロインのケリーは,まだ若い,大学生。ライアンやその家族たちの本性に気付かないままライアンに夢中になってしまったことも仕方ないことかもしれません。それにしてもライアンの母親の俗物ぶりと弟ジャロッドの何とも我が儘な性格は,父親を早くなくして一家を支えていかなければならなかったライアンにとっては,自分がそんな家族の面倒を見なければという責任感から来ていたことは想像に難くありません。そして,最後には愛が勝つのですね。ラストの何とも小気味よい終わり方が素敵な作品です。


タグ:ディザイア
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。