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小さな天使の贈り物 [マリー・フェラレーラ]

SHALOCKMEMO1161
小さな天使の贈り物 Dating for Two
( Matching Mamas 12 ) 2014」
マリー・フェラレーラ 中野 恵





 フラワーショップの経営者エリン・コリンズはお腹の子供の父親であるブレイディ・ロックウッドをやっと探し出します。出張で出かけると言い残して消息不明になってしまった恋人のブレイディを出張先に探しに行ったエリンですが,見つからずにいたところ,警察から連絡があり,それらしい人がいるかというのです。地元のレストランで働いているのでした。しかし,自分を含めて記憶を失ってしまっていたのでした。マリー・フェラレーラお得意の記憶喪失ものの2014年の新作です。ここから先は記憶を失ったブレイディとエリンとの間に,記憶喪失前の交際とは異なる新しい交際がスタートし,バージョンアップしたブレイディとエリンが出産を契機に新しい関係を築いていくという筋立てになります。象牙色の肌と夕日のような髪と草原のクローバーを思わせる瞳を持つエリンに新たに惹かれていくブレイディ。「どうして私を思い出してくれないの?」と悩みながらも記憶を取り戻すために様々な手助けをしていくエリンの姿が感動的です。記憶を失ったとは言え,物理学者であるブレイディの仕事に関する記憶はすぐに取り戻せますが,エリンとの関係はいっこうに思い出せないでいます。それでも自分たち二人の子供の存在が二人を結びつけていきます。「物事を徹底的に調べても改名しきれない未知の要素が最後まで残ることがあるでしょう。それが残っているということは,誰かを愛しているということなのよ。」というエリンの言葉には,割り切れないもの=愛という構図が見えますし,「論理的とは言えないかもしれないが,エリンと僕は結ばれるために生まれて来たような気がする。初めから心と心で結ばれていたような。」というブレイディの言葉には,エリンの言葉を本能的に感じ取るだけの認識の広さが,記憶喪失後備わったと思われ,これがいわゆる「新型で機能がアップしたブレイディ」なのだと思います。こんな素敵な表現が随所に見られるさすがベテランと思わせる好著です。


タグ:イマージュ
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1月の作品閲覧数ベストスリー [toppage]

先月,2016年1月の,閲覧数の多かった作品ベストスリーは,

1位 青い傷心(アンメイザー) SHALOCKMEMO1154
1位 未熟な花嫁(リン・グレアム) SHALOCKMEMO1145
3位 放蕩王子と修道女(メイシー・イエーツ) SHALOCKMEMO1144

という結果でした。
多くの方々の閲覧に感謝いたします。
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エーゲ海の独身貴族 [レベッカ・ウィンターズ]

SHALOCKMEMO1160
エーゲ海の独身貴族 Baby Out of the Blue
(愛の使者 1) 2013」
レベッカ・ウィンターズ 後藤美香





 ギリシア版「オズの魔法使い」。フランチェスカ・マイヤーズとケリー・ペトラリアが休暇でギリシアを旅行中,天候悪化を避けて目的地途中のホテルに立ち寄り,翌朝朝食を摂りに中庭に立ち寄ったフランチェスカ(フラン)が子猫の鳴き声かと思って見ると,なんと生後間もない赤ん坊の声だった。実は昨日の荒天で竜巻が起こり,20キロ先のリゾート地から竜巻に舞あげられて着地したデミトラ(デミ)という生後七ヶ月の女の子だった。という設定です。デミトラは,富豪一族アンゲリス家の末娘メリナとスタヴロス夫妻の長女で,二人とも昨日の竜巻の犠牲になり,デミはたった一人残されたのでした。デミはフランには良く懐き,フランがいなくなると大声で泣き,情緒不安定になってしまいます。フランも病気で子供を持つことができなくなっており,デミには深い愛情を感じてしまうのでした。妹を可愛がっていたアンゲリス家の三男で,会社のCEOを務めるニコロス(ニック)・アンゲリスにもデミはよく懐き,妹夫妻を失った悲しみよりも,これからデミをどのように育てていったら良いか悩むことになります。それよりもデミが良く懐いているフランに,女性としての魅力を感じ始めていることに困惑します。タブロイド紙ではプレイボーイとして名高いニックに,デミの養育係として利用されないようにとケリーはフランに忠告するのですが,フランもまたニックとの間に化学反応が起こってしまうことをどうしようもなくなっていくのでした。親友の忠告に従うか,自分の直感に従うか,究極的判断を迫られるフランですが,なんとしても自分を裏切った婚約者との間の関係から男性に無条件の信頼を寄せられなくなっているのをニックに見抜かれてしまいます。ギリシアの美しい自然や歴史的建築物,そして共通の趣味であるアウトドア体験をとおして,ニックに惹かれ,デミとの別れも先延ばししていくフランですが,ケリーに忠告されたことをニックに話したとたんに,ニックに背を向けられ,アメリカに帰るように言われてしまうのでした。その時,フランはニックとデミを失うことの痛みをこれ以上ないほど感じて,留まることを決意するのです。歴史で習うギリシアの神話や遺産が随所に登場し,観光案内としても面白く読める本作。心優しく,意外にもアウトドア派のフランがとても自立した女性らしいヒロインです。そして,シリーズ姉妹編はケリーがヒロインとなります。本作ではちょっとフランに意地悪な忠告してしまうケリーが,夫との離婚をどう乗り越えて行くのかも期待されます。


タグ:イマージュ
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異端のギリシア大富豪 [レベッカ・ウィンターズ]

SHALOCKMEMO1159
異端のギリシア大富豪 The Renegade Billionaire 2015」
レベッカ・ウィンターズ 堺谷ますみ





 原題からしてちょっとエキセントリックなヒーローなのかなと思っていましたが,読了してみてエキセントリックなのはヒロインの方だという感じがしました。完全なファーザーコンプレックスなヒロイン,アンドレア・リンフォード,26歳。デンヴァーで生まれ鉱山技師である父に連れられて世界中あちらこちらで成長期を過ごし,母国語である米語の他にギリシア語,イタリア語,フランス語,ヒンディ語(インド語),アフリカーンス語(低地ドイツ語),スワヒリ語(東アフリカ語),スペイン語,グアラニ語(南米先住民語)の片言などを話し,事務能力も企画力もさらには女性らしいスタイルを兼ね備えたスーパーレディです。自分の誕生と同時に母を亡くしたアンドレアは父と二人で世界のあちらこちらで生活し,これらの才能を身に付け,大学教育はアリストテレス大学で学位を納め,現在はギリシアでパンヘレニック・ツアーズという旅行会社に勤めています。率直な性格,そして鉱山などの男性主体の場所で育ったので,アウトドアでの生活や男性とも物怖じせずに話すことができるなど,いわゆる男勝りではあるものの,女性らしい優しさを兼ね備え,さらに緊急時の対処の仕方も頭で考えるよりも先に行動ができるという特質も持っています。一方ヒーローのスタヴロス・コンスタンティノスは,「コンスタンティノス・マーブル・コーポレーション」という大理石加工業の会社のCEOですが,父や一族の親戚との折り合いが悪く,いわゆる異端児とも言える性格。しかしマケドニア人らしい男性的な魅力にあふれた32歳の実直な青年です。二人の出会いはスタヴロスの会社の保有する鉱山を見学に来たアメリカ人の大学生が行方不明になり,ツアーを企画したアンドレアとCEOだったスタヴロスが二人で大学生の捜索に出るというところから始まります。実はこの時すでにスタヴロスは自分の会社を立ち上げるために父の会社のCEOを辞任する旨を会社の役員会に告げており,立場的にはCEOではなくなっているのですが,実質的なCEOの座を次に引き継いでおらず,ちょっと微妙な地位にいました。それでも,ツアーの企画が出たときに,役員会の反対を押し切って承認したという経緯もあり責任を感じたのでした。そしてこの出会いが二人を完全に結びつけるのでした。洞窟の中で二人で互いの過去を話し合い,アンドレアのこれまでの生活や,才能,そしてスタヴロスと両親の間に距離があることなどを確認し合った二人。互いに惹かれるものを感じながらも出会ったその日にそれを告白し合うこともできず,翌日フェリーの車の中に隠れていた大学生を見つけるまで二人は行動を共にしながら,磁石の両極のように惹きつけ合ってしまったのです。父の仕事の関係であと数ヶ月でブラジルに渡ることになっているアンドレアは,スタヴロスに惹かれる気持ちを抑えようとします。そしてアンドレアには最近恋人を登山事故で亡くすという経験をしており,その悲しみも癒えないうちに他の男性に惹かれてしまうことに対する罪悪感も若干ありました。そのことは次の週末スタヴロスに誘われてタソス島のヴィラで過ごすうちに正直に打ち明けたのですが,スタヴロスの方も両親が勧めるティナという女性の存在があり,そのこともアンドレアに気を遣わせることになって行くのです。そしてなにより二人で過ごせる時間は,父の仕事に都合で10日後にはブラジルに渡るという突然の予定変更で決定的になるのでした。二人でボートで島に渡りピクニックをしている最中,スタヴロスがアカエイに刺されるという事故が起こります。悪くすると命の危険や麻痺が起こるかもしれないという状況の中,アンドレアはスタヴロスをボートに引き上げ,クルーズし,同時に本土の救急病院に連絡して桟橋に救急車を手配するという早業を成し遂げ,スタヴロスの治療の段取りをあっという間にしてしまいます。この臨機応変な対応にいたく感動したスタヴロスは,アンドレアの才能に舌を巻き,ますます惹かれる思いを強くするのでした。しかし翌日退院してヴィラに戻った二人を待ち受けていたのは情報を聞きつけたティナでした。そしてティナはアンドレアを敬遠するために自分がスタヴロスの子供を妊娠していると嘘をつきます。身体接触をした覚えがないスタヴロスはこれが嘘だと見抜きますが,それをアンドレアに信じてもらえるか,そしてそんなティナの行動を双方の両親が陰で糸を引いていることをアンドレアが理解してくれるか心配するのでした。しかしアンドレアはアッサリとスタヴロスの怪我が治るまで会社に休みの連絡を付けて看病することを約束するのでした。さらにティナの父が弁護士をとおして婚約不履行でスタヴロスとアンドレアを訴えると通告してきたのです。反対尋問の資料を作るためにスタヴロスの顧問弁護士はアンドレアに二人の関係をほのめかす不快な質問をせざるをえなくなります。自分の周囲のもののせいでアンドレアを傷つけてしまったスタヴロスは申し訳なく思うのですが,アンドレアは逆にスタヴロスに心配をかけまいと淡々とこの質問に答えるのでした。しかし二人に残された時間はあと僅かです。その問題が解決しないうちは互いに決定的な関係にならないように振る舞っている二人がとても歯がゆく,不憫な,しかし尊敬できる態度だなと感心します。男性優位主義の国ギリシアでこれほど女性に対して紳士的に振る舞えるスタヴロスの愛情の深さがとても心地よい感じがします。
 ヒロイン,アンドレアもスーパーレディですが,ヒーローのスタヴロスも独立心をもち,深い愛情を大切な人に注ぐことのできるとても男らしい好人物です。これだけ対等な二人が登場するロマンスもちょっと貴重なのかもしれません。一気読み間違いなしのイチオシのドラマチック・ロマンスです。


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いばらの冠を戴く花嫁 [マヤ・ブレイク]

SHALOCKMEMO1158
いばらの冠を戴く花嫁 Married for the Prince's Convenience 2015」
マヤ・ブレイク 片山真紀





 「私は泥棒」という書き出しで始まる本書。このジャンルの作品としては異例です。まるでミステリ作品を読むような第1章ですっかり本作に惹きづられてしまいました。自分と母をすさんだ生活から救い出してくれた継父スティーヴン・ニコルズが窮地に陥り,それを救うためにある書類を盗み出そうとしているジャスミン・ニコルズがヒロインです。あまりマスコミには顔を見せないサント・シエラ王国の皇太子レイエス・ヴィンセント・ナヴァールがヒーロー。レイエスはたちまちジャスミンの魅力に嵌まり一夜を共にしますが,翌朝重要書類とともに消えてしまったジャスミンにすっかり騙されていたことに激怒し,復讐を誓い・・・となるはずのところですが,ジャスミンの事情を聞いてコロリとそれを許してしまうあたり,レイエスの人の良さとジャスミンの魅力が強調されています。あとは二人協力して書類を初め問題を次々に解決していくところは爽快で,ロマンス小説らしさでぐんぐん引っ張っていきます。「少年院上がりの脛に傷を持つ身でありながら,皇太子妃になる」ジャスミン。シンデレラストーリーの秀作です。


タグ:ロマンス
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かりそめのプリンセス [ジュールズ・ベネット]

SHALOCKMEMO1157
かりそめのプリンセス Behind Palace Doors 2013」
ジュールズ・ベネット 藤倉詩音





 作者ジュールズ・ベネットの邦訳はようやく2作目ですが,どちらもイチオシ間違いなしの傑作揃いです。前訳作「ボスと偽りの蜜月(SHALOCKMEMO1093)でも書きましたが,姉妹編の片割れでした。本作も「ハリウッド」シリーズ3部作の第3弾という大団円の作品に当たります。第1作[Caught in the Spotlight],第2作の[Whatever the Price]は未訳です。ハリウッドの大女優オリビア・デーンの3人の子どもたち,ブロンソン・デーン,アンソニー・プライス,そして本作のヒロインで末娘のビクトリア・デーンを主人公にした3部作です。もちろん第3弾ですので,エピローグでは前2作の主な登場人物が勢揃いしての戴冠式の華々しい場面で締めくくられるのですが,デーン家の家長オリビアを中心として家族が広がっていく様子がよくわかります。
 ヒーロー側のことについては,ガリーニ・アイルというエーゲ海のギリシア近郊の小国の次期国王ステファン・アレクサンダー王子がヒーローです。父王が亡くなり自分が王位を継がなければアレクサンダー家から王権が取り上げられ,ギリシア領になってしまう。それを防ぐためにはなんとしても結婚して安定した国家経営ができることを証明しなければなりません。しかし,不慮の事故で母王妃を亡くし,かつて父王が不倫し,母王妃を事故を装って殺害したのではないかという不名誉な記事がでてマスコミにたたかれ,王家の信頼をすっかり失った今,戴冠式を無事迎えるには王妃にふさわしい女性との結婚がなによりの方法なのでした。ステファンが白羽の矢を立てたのは幼いころから知っていたかつての親友ブロンソン・デーンの妹ビクトリアでした。気心の知れたビクトリアであれば,例え二人の間に愛がなくとも,この便宜的結婚をうまく乗り切ってくれるはずだと考えたステファンは正直にビクトリアにこのことを打ち明け,とりあえず半年間結婚し,戴冠式を乗り越えたらビクトリアの選択で離婚も考慮しようと持ちかけます。ファッションデザイナーとしてすでに成功し仕事に打ち込んでいたビクトリアは自分の結婚式のためのウエディングドレスの構想をいくつも持っていましたが,まさに王子様からのプロポーズという夢のような申し出と,最近恋人だと思っていた男性に裏切られたという心の傷を抱えたまま過ごすのに耐えられなくなりつつあったことから,ステファンとの結婚を了承するのでした。ステファンは婚約者の名前を伏せ,近親者ばかりの小さな結婚式を行い,披露宴でマスコミやVIPを招いての舞踏会を開いてビクトリアを紹介したのです。大女優の娘として小さい頃からマスコミの冷たい仕打ちに慣れていたビクトリアはステファンの計画が自分への気遣いであることに感謝し,その後マスコミ向けに二人の親しい様子をわざと見せたいという言葉の意味を良く理解していました。しかし,マスコミ向けの行動が次第に自分の正直な気持ちを表していることに戸惑いを感じ始めます。そして二人の寝室での相性も抜群であり,ステファンにどんどんのめり込んでしまう自分を止めることができなくなってしまうのでした。どこでもステファンに求められれば応えてしまう自分が,予想以上に深くステファンを愛してしまった気持ちを打ち明けてしまえば,きっとステファンに捨てられるかもしれないと逆に不安になってしまうのでした。一方ステファンの方も,愛が絡むと自分の計画がやっかいなことになってしまうという想いから,ビクトリアに完全に恋しているのをなんとか否定しようと躍起になっています。そして,ビクトリアにはそのうち打ち明けようと考えていた義兄たちとのドキュメンタリー映画の制作のことを,義兄からの電話で偶然知ってしまったビクトリアに,あなたも自分を利用しただけなのねと非難されたときも,反論ができないままビクトリアが去ってしまうのを止めようとはしなかったのです。くどいほど繰り返されるステファンのこの自問自答が,作者のストーリーづくりの要だと思われます。互いにすれ違う気持ちを解消し,二人が互いの気持ちを認め合うのはいつになるのでしょうか。ステファンはその機会として,自分の戴冠式を利用する計画をたてるのですが・・・。高いプライドと素晴らしい才能を持ったビクトリアがステファンにメロメロになって行くところが特に愛らしく,最期まで一気読み確実のイチオシ傑作です。


タグ:ディザイア
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