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シンデレラを探して [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1119
シンデレラを探して The Right Kind of Girl
ベティ・ニールズ選集 6) 1995」
ベティ・ニールズ 上木治子





どの作品もイチオシのベティ・ニールズ選集の第6弾です。珍しく舞台はイギリスのエクセターのみ。オランダ風味がない舞台設定ですが,ヒーローが医師であることは同じです。外科の顧問医師で教授のポール・ワイアット,サーの称号をもっています。たまたま手術をした年配婦人の娘がエマ・トレント。父を亡くし,病気の母との二人暮らし。家計の足しにとスミス・ダーシー未亡人の付添兼秘書,つまり何でも屋として働いています。なにかにつけて自分の要求ばかりを押しつけ,暇なしに文句を言う夫人に不満を持ちながらも,僅かながらの給金がないと生活が成り立たなくなるので我慢しながらも生活しています。旅行中に夫人が病になり緊急で往診に駆けつけたポール・ワイアットは一目でエマが法外な要求にもしっかりした対応をしていることを見抜きます。そして母の手術後にも病院に送り迎えをしてくれたりとなにかと顔を合わせる機会を増やしていきます。「中背で薄茶色の髪をお下げに編み,人目を惹くような顔立ちではないもののすっきりした均整の取れた体型と美しい脚」をもつ25歳のエマ。母の入院中の時間を有効に使おうと富豪の夫人の子守兼家政婦として一人3役の役割を果たして3週間。3百ポンドの蓄えを作って母が退院してきたものの,数日後に母は急に倒れてしまいます。静脈瘤の破裂が原因でした。葬式にもポールはやってきませんでした。当時アメリカに出張中だったのです。葬儀の翌日やっと現れたポールの顔を見たとたんエマは泣き出してしまいます。そっとエマを慰めたポールは,「結婚しよう」と一言告げ,エマに荷物をまとめさせると自分の家に連れて行くのでした。家政婦のミセス・パーフィットにも気に入られ,村の人たちからもポールの妻として大切にされるようになるエマ。そしてポールの両親の家でも暖かく迎えられます。多忙でなかなか顔を合わせることもできないポールに,週に何日か乳児院での子供の世話をしてみないかと言われ,喜んで出かけたエマですが,そこの事務長ダイアナとは全く気が合いませんでした。毎日出勤しているメイジーとはすぐに友達になれたのですが,ポールとは昔からの知り合いで今でも付き合っていることを匂わすダイアナ。やがて近くのジプシーのキャンプで何人もの子どもたちが百日咳の症状を示しているところに一人でやられるエマ。救急車を呼んで欲しいというエマの言葉にダイアナは逆に急ぐ必要はないと連絡をとるのでした。疲労の極限でやっと務めを果たし終えたエマが家に帰りポールが帰ってきてみると,逆に何故無理をしたのだと問いただされる始末。ダイアナがワザとエマが勝手に暴走したのだとポールに嘘をついたのでした。「どうしてダイアナの言葉を信じて私の言うことを聞こうともしてくれないのだろうか」と疑心を持ったエマ。それから二人の関係はぎくしゃくし始めます。ロンドンでの出張のあと家に立ち寄ったあととんぼ返りで病院に戻っていくポールの姿に,きっとダイアナに会いに行くのだろうと邪推するエマ。実は多重交通事故で緊急手術が立て続けに起こっていたのでした。そんな二人のすきま風をうまく利用して,ダイアナはポールの留守中エマの元を訪れ,愛のない結婚はいずれ破綻すると面と向かってエマに出ていくように言うのでした。緊急の用事という伝言を聞いて乳児院に立ち寄ったポールの帰り際,メイジーがエマがキャンプの時にダイアナから意地悪をされたことを明かします。妻とダイアナとどちらが本当のことを言っているのかやっと理解したポールはどんな行動を取るのでしょうか・・・。ポールはワザと家政婦を出かけさせ,自分も二・三日留守をすると言い置いて出かけていきます。エマは遂に家を出る決意をして荷物をまとめ,指輪と手紙を書斎において出かけようとするのですが・・・。
夫であるポールをすっかり愛してしまったエマが,愛する人の力になりたい,もしダイアナとポールが愛し合っているのなら自分が身を引くしかない,と決意するのはそれだけ愛が強いからでしょう。そんな純なエマの気持ちがとても胸に迫ってくる作品です。


タグ:イマージュ
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消えた記憶と愛の絆 [ロビン・グレイディ]

SHALOCKMEMO1118
消えた記憶と愛の絆 Amnesiac Ex, Unforgettable Vows 2011」
ロビン・グレイディ 大谷真理子





 原題は「記憶喪失の妻と忘れられない誓い」。庭園の橋から高さ2メートルほどを落下して怪我はほとんどなかったものの記憶喪失になってしまった先妻ローラ。義姉から連絡をもらって病院に駆けつけたサミュエル・コール・ビショップは,自分たちが離婚したこと,妻の流産の記憶が失われ,先妻がまだ自分たちが新婚だと思い続けていることを医師から聞かされます。初めは何という災難に見舞われたのかと思っていたビショップですが,「もう一度やり直すチャンスかもしれない」と義姉に言われ,少し考え方を変えたほうがいいのかもしれないと心の底で思い始めるのでした。その後自然回復のために安静にすることや記憶が戻ったときのためにずっと付き添っている必要があると医師に言われたビショップは,自分の会社を売却しようとしている大切な時期であることも放っておき,ローラのもとで過ごすことにします。隣近所や友達からの話で自分の記憶喪失を知ることになるとショックが大きいだろうと思い,できるだけ外部との接触をしないように心がけたり,少しでも記憶が蘇るように過去のことを話してみたりという努力を続けていき,数日後には少しずつフラッシュバックが起こり始めます。外出もビショップがつききりでいれば大丈夫だろうと,観劇に出かけたりしますが,部分的な記憶の蘇りに違和感は抱いたものの,二人が離婚していることや赤ん坊の喪失などの記憶はいっこうに蘇りません。そうこうしているうちに,ビショップもローラに誘われて再び夫婦としての生活をしてもいいのではと思い始めました。そして,遂に記憶が戻ります。それはローラが妊娠したかもしれないと検査薬を試し,失敗したことが分かったときでした。ローラの心がこのことによる衝撃から自分を守るために記憶を封じ込めていたことの証拠でした。心臓に病を抱え出産後にも自分の子供への遺伝を心配することを二人はかなり時間をかけて話し合ったのですがリスクを承知でのローラの決意をビショップも認めることがやっとできたのです。そして,クリスマスを終え,新年のカウントダウンの時を迎えます。ビショップはこの時のためにある決意をしていたのです・・・。
 記憶喪失もの,夫婦ものですが,かなり静かに物語が進行し,ヒーロー,ヒロインそれぞれの心の旅路を描いたインナースペース的描写の多い作品です。しかし最後のハッピーエンドが愛の強さを描く秀作です。


タグ:ディザイア
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駆け引きは億万長者と [ジェニファー・ルイス]

SHALOCKMEMO1117
駆け引きは億万長者と A High Stakes Seduction 2014」
ジェニファー・ルイス 秋庭葉瑠





 3カ月ぶりのジェニファー・ルイスです。今回はネイティブ・アメリカン(すっかりこの言葉も日本で定着してきたように思いますが・・・)のカジノに税務調査員として派遣された会計士コンスタンス・アレンがヒロインです。あまり馴染みのないマサチューセッツ州の居留地でホテルやカジノを経営するジョン・フェアウェザーがヒーローとなります。「ネイティブ・アメリカン管理局(BIA)」というのがあるんですね。おもに西部や西海岸にしか居留地がないと思いこんでいましたが,このマサチューセッツに住むニセコット族のネイティブ・アメリカンたちは,かつて最大だった土地が少しずつ政府に奪い去られた歴史に対して,カジノの経営で利益を上げ,その土地を少しずつ買い戻しているのでした。そして他の人々も受け入れ居留地としての人口を取り戻そうとしているのです。その中心にいるのがジョン・フェアウェザーでした。wikiをちょっと調べてみたら,「BIA本部ビル占拠抗議」というコラムがありました。1972年の11月初旬に権利団体「アメリカインディアン運動」が部族の生存権と条約遵守を訴えてワシントンDCの内務省BIA( Bureau of Indian Affairs )本部ビルを占拠した事件ということです。そこには,「1950年代初頭から、アメリカ合衆国政府はインディアン諸部族の解消方針を強め、約10年間で100を超えるインディアン部族が連邦認定を取り消され、「絶滅」したことにされていた。合衆国が1956年に施行した「インディアン移住法」は、保留地から都市部へインディアンを放逐させるものであり、この法によって多くのインディアン部族はその共同体を破壊された。限界集落化されたインディアン部族に対し、合衆国は連邦条約で保証した権利一切を剥奪して、領土である保留地の保留を解消し、これを没収した。1960年代には、多くのインディアンたちが都市部のスラムに追いやられ、路頭に迷っていた。」という記述もありました。初めは居留地においやり,後にここから追い出すことで部族としてのまとまりそのものをなくそうと画策したことがわかります。この歴史に対抗するためにジョンたちは部族としての歴史をまとめ,土地の回復に努めてきたのでした。そこにコンスタンスを派遣したBIAの意図は,なんらかの不正を見つけ,この居留地からニセコット族を追い出そうとする動きであることは間違いありません。
 そんな民族問題を背景にした本作ですが,ロマンス部分は,会ったその瞬間からジョンに惹かれていくコンスタンスの,仕事上の立場と愛に葛藤する姿と,これまで目立たずに静かに過ごしてきた自分の中に,奔放な女性的部分が隠されていることをジョンに見抜かれ,次第にその魅力に逆らえなくなっていく,素直でしかも仕事とプライベートはきっちり分けようとする潔さが描かれています。まさにNice_Heiroineです。そしてジョンの近親者の瑕疵を見つけたときに迷いながらも,それをきちんとBIAに報告するという仕事を成し遂げます。それはジョンとの別れを意味する行動でした。眼鏡をかけ,数字に没頭する冴えない女性という姿で現れるコンスタンスですが,ジョンは彼女の高潔で隠された情熱を持つ女性であることを見抜き,すっかり彼女の虜になります。邦訳版の表紙のモデルさんはちょっと雰囲気には合わないですね。本国Desire版のモデルさんはまさにBestImageです。そして我が娘を心配するコンスタンスの両親がジョンとの関係を非難しながらも実際にジョンに出会って,「娘に敬意と良識を持って結婚してくれること」を認めていく展開も爽やかで,つい頬が緩んでしまいそうになる好著です。


タグ:ディザイア
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パリで見つけた恋 [レベッカ・ウィンターズ]

SHALOCKMEMO1116
パリで見つけた恋 The Frenchman's Bride
High Society Brides 6 ) 2003」
レベッカ・ウィンターズ 片山真紀





飛行機事故で家族全員を失い,自らも奇跡的に生き残った元客室乗務員のハリィ・リン。生死の境を彷徨うハリィを励まし声を掛け続けた修道女のシスター・カルロッタの生き方に憧れ,修道女になろうと決意するのですが,院長からまだ心の準備ができていないと国際奉仕プログラムへの参加を勧められます。助修道女としてパリにやってきたハリィは,修行の傍ら自分の生活費をデパートの店員としてまかなっていますが,その時であった双子の片割れ,モニークと意気投合します。モニークの悩み相談に乗っているうちに双子のもう一方ポールも交えて3人の交流が始まるのでした。そして約1年。寄宿学校の卒業を明日に控え双子たちはある企画をします。ハリィに憧れ交際を強く希望しているポールのためにモニークはハリィの誕生日を祝うという名目でパリのフラットにハリィを連れて行き,ポールがハリィに告白する時間を与えるのでした。そしてその現場に双子の父親ヴァンサン・ローランが現れ,二人に怒りをぶつけます。ポールはそのままフラットを飛びだしてしまい,交通事故に遭うのでした。その前にハリィは自分を強く非難するヴァンサンに自分たちの状況をしっかりと説明し,ポールと仲直りするよう強く言い返します。自分より若い女性にこんなに強く言い返された経験のないヴァンサンは呆然とするのですが,そこにポールの事故の知らせが入るのでした。そしてポールの怪我は大したことはなくとも心の傷が強く残ったのです。娘のモニークすら父親よりもハリィの弁護をし,ポールの思いをぶつけてくるのでした。双子と父親の関係を修復するという理由でヴァンサンの経営するワイナリーを訪れることにしたハリィは,次第にヴァンサンに惹かれていく自分に戸惑います。そして二人で一緒にいるところをポールに見られてしまい,急遽パリに戻るのでした。南米での助修道女への手続きを進めるハリィの元に双子からの手紙が届きます。ヴァンサンから手紙が来なかったことに失望するハリィですが,迎えに来てくれたヴァンサンに寄り添いたい気持ちが強まっていることに戸惑います。しかし,その時すでにローラン家ではヴァンサンとハリィの関係を認めようとする双子たちの成長がはっきりしていたのでした。ヴァンサンの祖父モーリスやローラン家の使用人たちも温かい人柄ですっかりハリィに親しみを感じている様子や,温かい人たちと子供を思うヴァンサンの優しさ,そして揺れ動くハリィの心の旅路が克明に語られる感動の作品です。


タグ:イマージュ
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キスのレッスン [ペニー・ジョーダン]

SHALOCKMEMO1115
キスのレッスン An Expert Teacher 1987」
ペニー・ジョーダン 大沢 晶





裕福な家庭の子女と貧しい境遇からたたき上げて成功した富豪とのラブロマンスです。ジェマ・パリッシュは14歳のころ近くの小川のほとりでルーク・オウロークに出会います。二人の間には次第に友情が芽生えていきますが,兄の友人のトムに出会ったことからルークにキスの仕方を教えてくれととんでもないお願いをするのでした。当時ルークは20歳。それから10年後,公立総合中等学校で教職に就いているジェマは両親の俗物的見方にうんざりしています。家に来客があると聞き,その中にルークという名前を聞いてまさか・・・という気持ちでした。10年前にキスのレッスンをお願いした翌日からルークは姿を消してしまいます。その後ジェマは何人かとデートをしたものの決定的な体験をしないまま24歳になっていたからです。あの時のルークとは別人であることを願いつつ,来客の中にあの,ルークがいたことで動揺するジェマ。しかもルークはジェマに初めて会ったかのように接するのです。そのことにルークは未だに自分に腹を立てているのだと思い込むジェマでした。ジェマの勤める公立中学校に人減らしの嵐が吹き荒れ,働かなくても食べていける裕福な実家を持つジェマが,校長から呼ばれて自主退職を暗に仄めかされるのです。その後の生活の様子をルークと話し合ったジェマはこのこともルークに話さざるを得なくなりました。そしてルークは新しいプロジェクトにジェマの力を是非借りたいと自分のアシスタントになるように説得を始めたのです。そしてカリブ海の島に向かったジェマとルーク。島の空港にはルークを慕うサマンサという娘や,ジェマの存在を歓迎しないことをからさまに示す地元の社員たちがいるのでした。イギリスに帰りたいと思うジェマにルークは契約書の内容を思い出させ,現地に留めようとするのでした。ルークが少しずつ明かしていくジェマへの気持ち。そしてジェマの方もルークを愛し始めていること,いや10年前からルークを愛していたことに気付き,深夜ルークの部屋に忍んで自分を投げ出すのでした。
ペニー・ジョーダン作品ということで期待して読み始めましたが,あまり捻った部分もなく,予想どおりの展開が続きちょっと拍子抜けした感じの正統派ロマンスです。


タグ:ロマンス
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ボスと秘書の誘惑ゲーム [キャシー・ウィリアムズ]

SHALOCKMEMO1114
ボスと秘書の誘惑ゲーム Charade of the Heart
Island Romance 1) 1992」
キャシー・ウィリアムズ 水月 遙





作者の得意なボス秘書ものですが,本作はさらに双子姉妹の入れ替わりという別の要素を取り入れて成功しています。それから,ヒロインの姓が明かされていない点も特徴の一つでしょう。ヒーローは会社経営者マーコス・エイドリノ。ベスの妹ローラがマーコスの秘書として働いて半年,社の重役デイヴィッド・ライアンとの交際の結果妊娠してしまい,社内恋愛禁止条項に触れると首になってしまう。しかもデイヴィッドが妻帯者だと分かって悲嘆に暮れてしまい,昔からおとなしいベスが派手なローラの尻ぬぐいをしてきたので,出産まで代わりを務めてもらえないかとローラに泣きつかれたベスは仕方なくこの計画に乗らざるを得なくなります。ローラの1週間の休暇のあと社に出てみると出張中のはずのマーコスが突然出勤し,ベスはまごつきます。髪型が変わったということを指摘されてぎょっとしたベスですが,切ったのだという言い訳で何とかごまかします。その他些細な変化にいろいろ気付かれはしましたが,何とか初日を乗り切ったベス。そんなベスのロンドンのアパートに突然マーコスが現れ,まごつくベス。そして計画中のプロジェクト,セントルシア島への出張に重役のジェーンとともに3人で出かけることになります。その島でマーコスは連絡員の社員ロジャー・ドルーと友達になりますが,マーコスを慕うジェーンからいろいろと冷たい言葉を浴びせられ,ますますロジャーとの距離を縮めていくことになります。それを見ているマーコスの視線にベスとの関係を持ちたがっている欲望が見え隠れし・・・。帰京後,社の創業パーティでロジャーに再会し,ベスのマーコスを見る目に愛が映っていることを指摘され,恋に落ちていることを打ち明けざるを得なくなります。敢えて誤解を招くようにベスに近づくロジャー,それをじっと見つめるマーコスの視線。そして家に帰ったところにローラの恋人デイヴィッドとマーコスが鉢合わせになり,ついにベスとローラの計画がマーコスにバレてしまうのでした。激怒するマーコス。ここからマーコスの信頼を取り戻すためにベスが取った行動とは・・・。ちょっぴりスリリングでドラマチックなこの場面が本作の山でしょう。マーコスの周囲をいろどる美女たち,特にアンジェラという金髪美人がベスの妬心をあおったり,互いに相手の気持ちを逆なでする誘惑ゲームが続いていくところも面白さに拍車をかけます。うまくできたストーリーだなぁという点で,オススメの作品に仕上がっています。


タグ:ロマンス
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大富豪と愛を語る花 [レベッカ・ウィンターズ]

SHALOCKMEMO1113
大富豪と愛を語る花 Taming the French Tycoon 2015」
レベッカ・ウィンターズ 小長光弘美





ハーレクイン・イマージュ2400号の記念号。著者レベッカ・ウィンターズの献辞がついています。翻訳版表紙もちょっと豪華な感じです。本国版はハーレクイン版もミルズ&ブーン版もヒロインの美しさを十分伝えきれないモデルを使っているように思います。絶世の美女というのではなく,もう少し若い感じで目のくりっとしたお茶目な感じ,少女と大人の中間のような表情をした美女がふさわしいのではないかと思います。時に夢を持ちつつもしっかりしたところを持つ頭脳のきらめきが感じられる表情,時に美しさを愛で,花の香りの微妙な違いに気付いて心が満たされているような表情,そんなさまざまな表情を持ち,しかも愛らしさが感じられる女性,それが本作のヒロイン,ジャスミンではないかと想像しています。原題は「フランスの富豪を利用して」となりますが,ジャスミンが祖父から受け継いだ「フェリエ社」の発展のために,大手銀行の頭取リュックを利用し,与えられた使命を果たしていくという荒筋です。でも,ジャスミンはリュックになにもかも隠さずにストレートにぶつけていくところが小気味よく,それがジャスミンの魅力でもあります。ヒーロー,リュックも最後の決断をするところは何とも素敵ですが,初めの出会いがひどかったにもかかわらず,互いを意識せざるを得なくなる,いわゆる電流が走った瞬間でもありました。その理由もその都度説明調ではありますが互いの口から語られ,目的遂行に向かって次々に計画が成果を上げていくところが,読者に爽やかな感動を呼び起こしていく傑作でもあります。ウィンターズ作品はまだ4冊目に過ぎませんが,駄作がなく,しかも世界各地を舞台に,その土地その土地の詳細にわたった記述が読んでいて知的好奇心を刺激してくれる作品が多いという印象を持っています。本作では香水づくりの難しさ,南フランスの香水産地グラースの様子が克明に描かれ,タイトルは忘れましたが,昔見た映画を思い出しました。


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仮面舞踏会の夜の愛して [ルーシー・ゴードン]

SHALOCKMEMO1112
仮面舞踏会の夜に愛して Not Just a Convenient Marriage 2014」
ルーシー・ゴードン 秋庭葉瑠





 作者ルーシー・ゴードンについての巻末の解説に「ヴェネツィアでの休暇中街で出会った地元の男性と結婚。会って2日で婚約し,結婚して30年以上になる。」とあります。本作がまさにその状況とそっくりな作品です。ヴェネツィアの魅力が満載で,特に名高いカーニバルやサン・マルコ祭などのイベントが効果的に作品に取り入れられています。仮面が持つ不思議な魅力やカーニバルの由緒などが簡潔に語られ,現地に住んだ経験がないものにはなかなか文章にできないような記述も多く,しかもそれが単なる観光案内ではなく,ストーリー上必要な部分だというところが素晴らしいと思います。
 さて,会計士で数字に強く驚異的な暗算能力の持ち主,サリー・フランクリンは弟のチャーリーと共に休暇でホテル・ビリオーニに滞在しています。二人の両親は数年前に亡くなり,以来サリーは弟と二人っきりの生活。しかもチャーリーは姉の犠牲の下でもなかなか大人にならずにカジノに出入りしたりして借金をどんどん作ってしまう生活を繰り返しています。サリーはそのつど弟の尻ぬぐいばかりしていますので,なかなか男性との出会いを愉しんだりする余裕はありませんでした。今回も借金に追われた弟とイギリスを脱出してきたという方が当たっているかもしれません。恋人のフランクとは,深い関係になることをサリーが望まなかったため,フランクはさっさと別の女性の元に走ったのです。そんなサリーがホテルの窓際から見たのは「背が高くて髪が黒く,30代半ばと思われるハンサムな顔立ちだが,厳しく,妥協を許さない表情」をした男性でした。それが,ホテルオーナーであり,イタリア各地に地所と複数のホテルを所有する実業家のダミアーノ・フェローネでした。四旬節から復活祭に向かう季節のヴェネツィアは雨が多くヴェネツィアの魅力を十分伝える季節ではないものの,カーニバルが開かれる季節。その不思議な魅力に満ちた地で二人の男女の結びつきはダミアーノの息子のピエートロと子犬との出会いで始まります。そしてピエートロの母でダミアーノの初めの妻ジーナや2番目の妻イメルダの存在を裏に表に感じさせながら物語は進行していきます。すっかりピエートロと子犬に好かれたサリー。初めは同情からスタートしたサリーはダミアーノと便宜的な結婚という点で了解し合い,結婚することにするのです。寝室を別にすればピエートロに気付かれてしまうということから一つのベッドの両端に休むことにする二人ですが,互いを意識しあっていることはわかりきっていました。そして2番目の妻イメルダからの数回にわたる嫌がらせに業を煮やしたサリーは,ついに亡きジーナの命日にある決断をするのです。サン・マルコ祭のパーティに,あえて身分を隠し,仮面をかぶり,遅れて参加したサリーは,ダミアーノを誘惑するのです。ジーナの死に罪悪感を抱いていたダミアーノはサリーを愛していながらも,愛に触れることをひたすら隠し続けてきました。それを理解したサリーが仮面をかぶることでダミアーノの本音を引き出そうとしたのです。この場面が本作のクライマックスです。もし違う相手を選んでしまったら・・・という可能性もあるこの計画が読者のハラハラドキドキも引き出します。実に見事なストーリーテリングで描かれた一気読み間違いなしのイチオシ作品です。


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忘れられた花嫁 [ミシェル・リード]

SHALOCKMEMO1111
忘れられた花嫁 Marchese's Forgotten Bride 2009」
ミシェル・リード すなみ翔





半年ぶりのミシェル・リード作品です。一夜を共にしたために男女の双子を出産したカッサンドラ(キャシー)・ジャニスがヒロインです。双子も5歳になり,やっとのことで生活も安定してきてシングルマザーとしても落ち着いてきたころ,キャシーの務める会社,バーテック社の経営者が新しくなり,今夜はその披露パーティの席上。新しいオーナーこそ双子の父親でかつての恋人だったアレッサンドロ・マルケーゼでした。当時はサンドロ・ロッシと名乗り,結婚を約束した中だったのですが,イタリアに一時帰国したきりキャシーは捨てられたのでした。何度か電話してやっと通じたとき,「きみのことなど知らない。知りたくもない。この番号には二度と電話をかけないでくれ」と冷たい言葉を受けてしまいます。すっかりサンドロへの連絡を絶って5年。なんとこんなとこで再会するとは・・・。
 再会した二人ですが,サンドロの名前が変わっており,さらにかつて冷たくされたのにもかかわらず愛想良く話しかけてくるアレッサンドロ。ひょっとして私を覚えていないの?それとも何あの冗談?実はアレッサンドロは帰国後婚約者と共に交通事故に遭いキャシーについての記憶を全て失っていたのでした。いわゆる記憶喪失ものと再会ものを会わせたような本作です。さて,再会し,キャシーはアレッサンドロの誘惑に抗しきれずにいる自分を見出します。そして双子と出会ったアレッサンドロは自分がお前たちのパパだよとバラしてしまうのでした。あんなに冷たくされたこと,さらに自分の承諾を得ないうちにどんどんと物事を進めようとするアレッサンドロに,幾ばくかのプライドを守ろうと言葉だけの反抗をするキャシー。このあたりの駆け引きは楽しめるところです。結局二人は簡単な式を挙げて結婚するのですが,記憶が少し戻るとアレッサンドロは失神したり倒れたりしてしまうのでした。演技ではなく本当に気を失うところを見てキャシーは次第にアレッサンドロの心の闇を想像して,彼への愛を確信していくのでした。アレッサンドロの記憶が完全に戻り,心の闇が消える時が来るのでしょうか。作者は素敵な結末を用意しています。爽やかな読後感を得られるオススメ作品です。


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伯爵の愛人契約 [ケイトリン・クルーズ]

SHALOCKMEMO1110
伯爵の愛人契約 At the Count's Bidding 2015」
ケイトリン・クルーズ 松尾当子





「罪色のウエディングドレス(SHALOCKMEMO988)」と同じく男女のちょっと異常な愛憎劇が展開される作品です。ヒロイン側にややM傾向が垣間見えるだけでなくヒーローは敢然にSですね。斜麓駆にはどうも苦手な傾向の作品です。ケイトリン・クルーズはイチオシのストーリー展開があったり,本作のような作品もあり極端な作風なので当たり外れの振幅が大きく,どうにも理解しがたい作家です。心理戦が好きな方にはたまらなくいい作品とも言えるかもしれませんが,一般的なロマンス小説ファンにはやや重い作品です。このぐらいにしておきましょう。


タグ:ロマンス
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