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嬉しくないプロポーズ [キム・ローレンス]

SHALOCKMEMO1191
嬉しくないプロポーズ Accidental Baby
Expecting 15 ) 1999」
キム・ローレンス 漆原 麗




HQB-720
16.03/¥670/208p

R-1582
00.05/¥672/156p


 原題は「偶然できた赤ちゃん」
 ヒロイン:ジョー・スミス(27歳)/会計士/髪は黒
 ヒーロー:リーアム・ラファティ(29歳)/報道記者/193センチ,髪は黒,肌はオリーブ色,目立つ鼻と濃い眉。
 男女の友情はあり得るのか?恋人との別れの辛さから慰めを求めて友人の男性と一夜を過ごしてしまったヒロインが,結婚を取るか,独立を取るかと究極の選択を迫られるお話しです。「イングランド東部のイースト・アングリアで生まれ育って家も近く母親同士は学校時代の友人で」父親同士も獣医と馬のブリーダーという深い関係のスミス家とラファティ家。「こんな状況でのプロポーズなんて悲惨だわ」とリーアムとの結婚を頑なに拒むジョーは,とにかく独立心とプライドの高い女性です。会計士という職業柄というだけでなく,昔から友人としてしか見ていなかったリーアムとの結婚を拒む理由は「友情で結ばれた結婚はきっとうまくいくでしょうけど,わたしは燃えるものが欲しいのよ。」というのが理由です。一方リーアムの方は,キャリアを築き上げてきたジョーのこれまでの苦労を知っているだけに,結婚・出産によってジョーの仕事への情熱が邪魔されるのではないかと,申し訳ないという気持ちの方が初めは強かったのですが,自分の両親からもジョーの父親からも非難を浴び,なんとしても法的に結婚という形を取ることが責任を取ること,そして子どもの父親として将来をすごしたいという,男性として当たり前の気持ちでいたのでした。ところがところが・・・ジョーは結局結婚を承諾するのですが,結婚式の前日にもこの結婚を投げだそうとします。リーアムはジョーを説得できるのでしょうか。そして本当の夫婦になれるのでしょうか。はたまた,ジョーとリーアムの本音は?本当に子どものための結婚というだけなのでしょうか?
 ジョー・スミスといえば普通男性の名前ですがあえてそんな名前(ジョーはジョセフィーンかなんかの略かもしれませんが古風なのでジョーを本名にしたのかも?)にした作者の意図は詳細には語られていないように思いますが,男性並みに気の強い,短気で・・・ということなのかもしれませんね。HQB版の表紙のモデルさんはジョーのなんとなく投げやり,というより気怠げな雰囲気をあらわしていて,この結婚がうんざりだという気持ちを表しているように思います。ジョーの元恋人ジャスティン,リーアムに想いを寄せるスーザンなども絡んで,とにかく二人の会話と心理描写が楽しい作品です。


タグ:ロマンス
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今だけはこのままで [ルーシー・モンロー]

SHALOCKMEMO1190
今だけはこのままで The Sky Bride
(情熱を知った日 1) 2010」
ルーシー・モンロー 澤木香奈




K-381
16.02/¥670/156p

R-2602
11.04/¥690/156p


 原題は「空の花嫁」
 舞台:シアトル
 ヒロイン:カッサンドラ(キャス)・ベイカー(29歳)/ピアニスト,作曲家/167センチの細身。
 ヒーロー:ネオ・スタモス(35歳)/不動産開発会社「スタモス&ニコス・エンタープライズ」共同経営者:親友ゼフィール・ニコスと共同経営/児童養護施設育ち,ストリートチルドレン
 35歳の誕生日に親友ゼフィール(ゼー)がネオに送ったのは,なんと1年間のピアノの個人レッスン受講権。ゼーがこの権利をなんとオークションで10万ドルで落札したのです。相手のピアニストこそヒロインのキャス・ベイカー。広場恐怖症という心理的な病気になり,世捨て人同然にピアノの個人レッスンと作曲に明け暮れる日々ですが,かつては天才少女ピアニストとして世界を股にかけて演奏活動をしていたのです。緊張した面持ちでネオを待つキャス。初対面の人には緊張してなかなか心を開くことができません。しかし,ネオには恐怖心を感じず,しかも自分の病気のことまで第1回のレッスンで明かしてしまえるほどでした。愛器ファツィオリ。もしこれがフルコンサート・ピアノのF308だとすると間口158センチ,奥行308センチ,高さ100センチ,重量580kgの4本ペダルという巨大なものになるようです。日本では福井県三方郡美浜町の御浜町小学学習センターなびあすのホールに日本唯一の同機種が設置されている模様です。それほど貴重で高価なものです(価格は・・・?)。アメリカのジュリアード音楽院でも,スタインウェイしか認めていませんでしたが,2010年からファツィオリも入れるようになったとか。スタインウェイのフルコンサートだと1台1500万円ぐらいですが同程度の値段がつくものと思われます。本作が書かれたのはちょうどこの名器がジュリアードに入り始めたところですから,ニュースか何かで見たのではないかと想像されますが,さっそく本作にこの名器を登場させたのは,さすが慧眼の至りだと思います。家庭用にはもう少し小型のセミコンサートぐらいの大きさだとしても,1千万円はくだらない値段だと思われますので,個人レッスンで初心者にそんなピアノを弾かせるとはなんということか・・・。おそらく一つの鍵盤や一つの和音を弾いただけでも心に響くいい音色に感動するのではないでしょうか。
 さて,前置きが長くなってしまいましたが,キャスがネオが来た時に玄関の鍵を閉めていなかったことに端を発して,女性の一人住まいには不用心だと警告を発します。そしてネオが毎週女性の住まいに通い始めたということがマスコミにかぎつけられ,たまたま仕事でネオがこれないときにキャスの家やベランダにまでマスコミが入り込み,キャスがネオにSOSを出すという事件が起こってしまいます。ネオはさっそく,自分の会社やペントハウスのセキュリティを担当している会社に命じて,キャスの住まいにも指紋認証付きの鍵を初め宅地全体に徹底したセキュリティを施す工事を始めたのでした。かつて父親や父親亡き後マネージャーの命に従わざるを得なかったピアニスト時代の嫌な思い出が人との接触を極力避けるようになった原因であったこともあり,きゃすはこれに抵抗しようとするのですが,ネオが自分のことを真剣に考えてくれていることが信じられるので,工事を了承するのでした。そして工事の期間中ネオのペントハウスで過ごすことになったキャス。二人の関係はネオの家政婦ドーラや親友ゼフィールの後押しもあり,急速に発展していきます。29歳にして初めて男性とのファーストキスを経験したキャスですが,ネオにすっかり夢中になってしまいます。これまで女性とは一夜限りの付き合いしかしてこなかったネオも,キャストの相性の良さ,そして尊敬できる才能にすっかり参ってしまうのでした。燃えるような恋というよりは,静かに,小さな青白い灯がともり,それが品良くしかも永遠に燃え続けるように深まっていく。そんな二人の関係が,いいようのない暖かさを感じる大人の恋を描いた珠玉の作品です。第2作ではネオの親友ゼフィールのロマンスが描かれます。


タグ:ロマンス
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シンデレラの涙 [ベティ・ニールズ]

SHALOCKMEMO1189
シンデレラの涙 An Unlikely Romance 1992」
ベティ・ニールズ 古澤 紅




HQB-716
16.03/¥670/200p

R-1023
93.08/¥640/156p


 原題は「あるありえないロマンス」
 ヒロイン:ベアトリクス(トリクシー)・ダヴトン(21歳)/看護師見習い
 ヒーロー:クレイン・ファン・デル・ブリンク・スカークスマ(38歳)/大学教授,内分泌学専門医
 年齢差の大きい夫婦のすれ違いをテーマにしたストーリーです。思いもかけずカリスマチックな教授から妻になって欲しいと言われたトリクシー。でも教授の心は自分にはなく,仕事のことばかり。でもそんな教授に自分を愛させたい。教授の妻としてふさわしい女性にならなければ・・・。健気なトリクシーの真心が隅々まで描かれた珠玉の作品です。二人の間に立ちはだかるクレインの従兄弟アンドレの横恋慕がちょっと刺激になりますが,アンドレにしてみれば何でももっているクレインが美しい妻まで得て幸せに暮らしているらしいことにちょっと焼き餅を焼いただけなのかもしれません。そして世間知らずのトリクシーなら自分のいうことを聞いてくれるかもしれないという期待もあったでしょう。そんなアンドレの誘いにNoをいうトリクシーの毅然とした態度に読者はスカッとした爽やかさを感じるはず。
 ロンドンとオランダのライデンで展開される静かながらも暖かい心の交流を描いたベティ・ニールズらしい秀作です。


タグ:ロマンス
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不思議な遺言状 [エマ・ゴールドリック]

SHALOCKMEMO1188
不思議な遺言状 And Blow Your House Down 1893」
エマ・ゴールドリック 飯田冊子




HQB-719
16.03/¥670/208p

I-1241
85.10/¥520/156p


 舞台:マサチューセッツ州サウス・ディアフィールド
ヒロイン:スーザン(セアラ)・アントニア・レベッカ・アンダーソン(23歳)/元マサチューセッツ総合病院小児科病棟夜勤看護師長,母は外科医,長兄ラルフ:州宝くじ協会会長,次兄ジム:薬品関係,三兄デイビッド:ダラス・カウボーイズの野球選手/153センチ
 ヒーロー:ジョン・フランシス・エングルウッド(歳)/マサチューセッッツ大学工学科助教授,農園主,電子工学工場共同経営者,電子工学技術者/190センチ,シワの深い顔,髪は黒,目は濃い茶色,わし鼻,眉は濃い,歯が輝くように白い。
 1923年生まれで2008年に鬼籍に入ったアメリカの作家エマ・ゴールドリックの1983年のデビュー作の訳本です。読んでみて,単なるデビュー作というだけでなく,ロマンスの全ての要素を詰め込んだ素晴らしい作品だと思いました。成長譚,復讐譚,ロマンス,そして冒険活劇。もうこれは,読まずに死ねないという感じの作品です。斜麓駆にとっては初めてのエマの作品でしたが,すでに新作が読めないということを残念に思います。本作の翻訳はエマの出版の2年後1985年にイマージュで飯田冊子さんの名訳で発表されました。エマは本名エマ・エリザベス・ジーン・サトクリフという長い名前で,プエルトリコで生まれました。1919年生まれのロバート・ゴールドリックと結婚し,エマ・ゴールドリックというペンネームで活躍したようです。赤十字の看護婦の資格を持ち,4人の子どもを育てながら,1980年ごろから作家を志し,1983年本作を上梓したようです。40作ほどの作品を残し,2008年85歳で他界しました。ベティ・ニールズが1910年生まれですから約一回りほど年下になりますが,ちょっと似た雰囲気があります。ニールズ作品がイギリスとオランダが舞台になることが多いですが,本作はアメリカ西海岸,しかも大都会ロサンゼルスやサンフランシスコではなく,小さな町が舞台になっており,そこに住むコミュニティーの人々との交流も生き生きと描かれています。
 さて,本作のヒロイン,スーザン(セアラ)・アントニア・レベッカ・アンダーソンは4人兄妹の末っ子,3人の兄がみんな190センチ以上あり,末弟デイビッドは2メートルを越す大男の野球選手,「小さなスーザン」が兄たちから可愛がられているのはたやすく想像できます。まさに「小公女」セアラという愛称どおり,愛らしい感じなのでしょう。初めはヒーローのジョンが16-17歳ぐらいの女の子と思ったのもうなずけるほど小柄です。153センチは日本女性ならそう小さいというわけでもないでしょうが,アメリカ人から見ればまさに子どもと感じられるのでしょう。近所のおばあさんセアラがシンディーおばさんと呼んでいた女性が亡くなり,セアラに遺産を残したというのです。持ち株会社の株式の15パーセント。それがセアラの運命を大きく変えます。株式の40パーセントずつをもつジョンと弟のロバート。ジョンはこの不思議な遺産受取人セアラの本名だけを頼りに,町を訪ねてきます。ちょっとアブラハム・リンカーンに似たジョンとの出会いは,ニューベッドフォードの海辺でコンタクトを捜しているセアラに声を掛けたことから始まります。やや滑稽な描写から始まるジョンとセアラの出会いから,すこしわくわく感が始まります。そして子どもだと思っていたセアラが実は娼婦ではないかとジョンが勘違いしたことから,始まり,兄の子どもを父親のいないセアラの子どもだと勘違いしたり,兄たちの仕事をギャング稼業のようにセアラがいたづらして紹介したため,ますます怪しげな女性だと思い込み,ジョンの勘違いを訂正しないまま母親を亡くした息子ジャッキーの世話をするために屋敷に連れて行ったりと,ジェットコースターのように物語が進行し,持ち株会社の工場で収益が上がらず工員たちの労働組合がストをするところに乗り込んでいったセアラが知り合いの会計士やボディガードたちと密かに行われているらしい窃盗事件を暴いていくあたりの冒険小説的なストーリーが展開していきます。一方でジョンとセアラの間に恋愛感情が芽生え,息子ジャッキーがセアラに臨時ママを依頼したりと,結構破天荒な成り行きに,読者の方もすっかり乗せられてしまい,わくわくしたまま終結にと向かうのです。その時のセアラの独白「だって問題は全部解決したのよ。ジャッキーの問題も,ロバートの問題も,ジョンの問題も。でもセアラの問題が解決していないんだわ。」という部分がさらに一波乱を予感させ・・・。
文句なし今年読んだ中でベストワンの作品です。もうこれはロマンス小説というよりエンターテインメントというべき作品でしょう。


タグ:イマージュ
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シンデレラは似合わない [シャロン・ケンドリック]

SHALOCKMEMO1187
シンデレラは似合わない Back in the Headlines
Scandal in the Spotlight 3 ) 2012」
シャロン・ケンドリック 中村美穂





 原題は「主役に戻って」
 舞台はロンドン,トーチェスター伯爵家バレオ・ホール
ヒロイン:ロクサーヌ(ロキシー)・カーマイケル/元ガールズバンド「ロリポップ」歌手,ナイトクラブ「キットカット・クラブ」歌手,清掃作業員/青い瞳,ダークブロンドの髪
 ヒーロー:タイタス・アレクサンダー(35歳)/トーチェスター公爵/高い頬骨,茶色の髪,
 今は清掃作業員をしながら場末のクラブで歌っているロキシーですが,かつてロリポップというバンドのボーカルとして世界中の注目を集めヒットチャート上位を席巻した歌手でした。一方タイタス・アレクサンダーは,1年半前に父が亡くなり,トーチェスター伯爵位を継いだばかりでノーフォーク州のバレオ・ホールというマナーハウスを管理維持することになっています。遺産の管理をしているうちに,ロンドンの会計士マーティン・マレー名義のノッティング・ヒル・ゲートの高級住宅地にある最上階のフラットにかつてのスター,ロキシーが住んでいることを突き止めます。現在の職業は場末の歌手と夜は清掃作業員,そんなロキシーが,もともと家賃の高いロンドンでこんな高級フラットに住むだけの家賃が払えるはずがなく,きっとマーティン・マレーの愛人として囲われているに違いないと,フラットの追い出し作戦を開始します。清掃作業を終えて具合が悪くなり,悪天候の中やっとの思いでフラットについたロキシーは,自分のたった一つで全ての財産が入り込んでしまうスーツケースが廊下に出され,鍵も取り替えられていることに愕然とします。意識を失ったロキシーが次に目覚めると,そこは見たこともない場所でした。気を失っているロキシーを見つけ,タイタスが運んできたのです。数日間も意識を失っていたロキシーに,ナイトクラブからの解雇通知と,数日間無断欠勤したと清掃作業員も首になったことを告げる上司。自分がフラットを追い出したばかりにこんな最悪の状況に陥ったことに責任を感じ,タイタスは,ロキシーにある提案をします。数週間後に開かれる自分の盛大な誕生パーティまでに,スタッフとしてバレオ・ホールで働かないかという提案でした。バレオ・ホールの家政婦バネッサは,ロキシーをかわいがり,従業員の住む屋敷の近くのコテージで相部屋になったエミリーがかつてのロリポップの大ファンだったこともあり,安定した暮らしを始めたのでした。そして壮大な屋敷を舞台に,タイタスとロキシーのロマンスが次第に熱を帯びていきます。もう一日たりともロキシーと離れがたくなったタイタス。屋敷のスタッフやバネッサの目を盗んで逢瀬を重ねる二人。やがてパーティ当日,何でももっているタイタスになにかプレゼントしたいと,ロキシーはエミリーやスタッフたちとある企てをします。自らの才能である歌手としての実力で「ハッピー・バースデー」と歌のプレゼントを,なんと,アメリカ大統領とも関係があったとされる,あの有名女優のスタイルで行ったのでした。数日後のマスコミでその時の写真と,あれは新しいの伯爵の愛人かという記事が載り,ロキシーは屋敷を暗闇の中で去ることにしたのでした。「わたしは歌の夢を叶えるために働く臨時雇いの清掃作業員から,雇い主である貴族の秘密の恋人になった。まるでビクトリア朝時代お身分違いの愛人のように。」この言葉が,悲しいロキシーの気持ちをはっきりと示している一文です。「まただ,彼はまたしても特権を振りかざし,僕は重要人物で,君はそうではない,と言っている。彼はそうせずにはいられないのだ,根っからそういう人なのだ。」とタイタスとの別れを決意したロキシーの悲しく寂しい心情が,ぐっとくる場面です。この場面があるからこそ,本作に階級差に阻まれる悲しい男女の関係が見事に表されているのだと思います。
 イギリスのありがちな設定ですが,栄光と挫折,恋愛と別れ,そんなギャップの大きさが深みのある作品を仕上げているイチオシの秀作です。


タグ:ロマンス
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気高き愛人 [ジャクリーン・バード]

SHALOCKMEMO1186
気高き愛人 Uantamed Italian, Blackmailed Innocent 2010」
ジャクリーン・バード 早川麻百合





 原題は「自由なイタリア人,ゆすられた純情娘」
 舞台:ロンドン
 ヒロイン:サルマキス(サリー)・パクストン(26歳)/大英博物館研究員/ブルーの瞳,清楚な顔立ち,小ぶりの鼻,ふっくらした唇,ルビーのような長い赤毛/ナイジェル・パクストンの娘
 ヒーロー:ザック・デルッカ(35歳)/実業家,「デルッカ・ホールディングス(鉱業・製造業・不動産業・オリーブオイル等国際的複合企業)」経営,「ウエストウォルド・コンポーネンツ」買収/黒い髪,黒い瞳,195センチ,ローマの養護施設出身,元格闘技選手/冷酷で尊大で血も涙もない男との噂あり/元恋人ミラノのモデル,リサ
 目的を持って父のオフィスを訪れたサリー。そこで父に母の病院に見舞いに行くよう説得するつもりでした。浮気をしたあげく母が入院していても仕事だといって見舞いにも行かない父。それでもサリーの母は父をかばうのでした。それがさらにサリーの怒りに油を注いでいたのです。今日こそは,という思いのサリーは父の元を訪れたザックは目に入っていませんでした。一方,買収した会社で横領が行われていたことを調査するため,会社の財務部長ナイジェル・パクストンを訪れたザックは,受付で自分を見もしない美女に目をとめます。普通女性は誰しも自分を振り返るものだという思いがあったザックは一度も自分を見もしない女性に出会ったのは初めてでした。そしてナイジェルのオフィスで二人は顔を合わせます。サリーの自宅はボーンマス。父はすっかりロンドンのフラットで愛人と暮らしており,サリーを懐柔するために父は元自分がいたフラットをサリーに住まわせ,自分は別のアパートに住んでいたのです。父の会社では武器の部品を作っており,そんな会社に勤め,愛人を囲い,母の病気を一顧だにしない父にサリーは軽蔑の念を抱いていたのです。サリーをナイジェルの愛人と勘違いしたザックでしたが,娘だと知ってサリーを夕食に誘います。ザックに横領のことを見抜かれてはいないかびくびくもののナイジェルは,まるで娘を差し出すかのようにザックの機嫌を取るようにとサリーに頼むのでした。サリーは忙しいと誘いを断るのですがザックは諦めません。どうせ裕福なお嬢様で我が儘な娘だろうと思い込んだザックは週末も忙しいというサリーの返事を曲解します。週末は母のいるデヴォン州の施設で母と過ごすことに決めているサリーには,ザックの誘いに乗る時間はないのでした。何度も誘いをかけるザックを,サリーは父と同じ女性蔑視の男と思い込み,二人の溝は次第に広がっていきます。しかし互いに何か惹かれるものを感じ,気持ちと言動とはますます広がっていくのでした。このすれ違いが本作の大きなプロットになって行きます。サリーは敢えて,自分が大英博物館に勤めていることを知らせません。どうせ一度食事をするだけの関係で終わるだろうと思い,わざわざ知らせる必要がないと思ったのです。さらに母が療養していることも黙っています。女性に断られたことのないザックにしてみれば,サリーが忙しいと口実にして逆に自分を誘っているのだと勘違いしてしまいます。サリーの本名はサルマキス。ザックと食事をしているとき声を掛けてきた小学校時代からの友人アルジャーノン(アル)に声を掛けられ,サリーはザックの誘惑を断るきっかけにアルを利用しようと考えます。アルも,ザックが冷酷で女性を誘惑しては捨てるというマスコミの情報を元に,これに協力するのですが・・・。ザックとの食事で,少しずつ打ち解けてきたサリーは「ザックの野性的な魅力に引き寄せられ,まるで明るい炎に吸い寄せられる蛾のように」ザックに惹かれている自分の反応に驚き,でも将来はないと,その気持ちを打ち消そうとします。ザックの誘いに積極的な姿勢と,冷たい態度と二重の反応を示すサリーにザックもこれまでの女性とは違う魅力を感じてしまうのでした。父の横領がはっきりし,それを脅しの材料として,サリーに愛人契約を申し出るザック。しかし何日か過ごすうちに,サリーが単なるゴージャスなワガママお嬢さんではなく,きちんとした学位をもつ大英博物館研究員という肩書きを持っていることや,母が入院していて週末はそこで過ごさなければならないということを少しずつ突き止め,やがてサリーに対して尊敬の念と愛を感じるようになって行くのでした。サリーもまた,冷酷だと思っていたザックが自分に対して接する態度が次第に自分のことを考えてくれていることや,男性的魅力に引き寄せられる自分の気持ちを偽ることができないと思い,ついにはザックを愛してしまったことに気付くのでした。しかし二人の間には父ナイジェル告発という問題を挟んだ愛人契約があり,それが互いの愛を告白し合う妨げになって行きます。そしてサリーの妊娠・・・。二人はこれをどう乗り越えていくのでしょうか。
 邦題の「気高き愛人」は蓋し名訳だと思います。すれ違いもの,勘違いものは,結構好きですが,ストーリーの面白さとヒーロー,ヒロインの設定にも作者の筆力が問われるジャンルだと思います。そんな意味では本作は成功例と言えるのではないでしょうか。オススメです。


タグ:ロマンス
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シークの罠 [サラ・モーガン]

SHALOCKMEMO1185
シークの罠 In the Sheikh's Marriage Bed
Surrender to the Sheikh 5 ) 2004」
サラ・モーガン 井上きこ




HQB-693
15.11/¥670/220p

I-1810
06.03/¥672/156p


 ヒロイン:エミリー・キングストン/幼児教育教師/長身
 ヒーロー:ザクール(ザック)・アル・ファリシ/カズバーンの王/長身,黒い瞳
 いつか王子様が現れて仲の良い家族を作りハッピーエンドの人生を送る,それがエミリーの夢です。兄が借金をし,返済を猶予して欲しいというお願いのため砂漠の国カズバーンの王ザクルール(ザック)のもとにやってきたエミリーですが,王はエミリーの話しを信じず,借金の形に自分との契約結婚を提案します。宮殿にはザックの兄の子どもジャマールがおり,母親ダニエーレの育児放棄により精神的に不安定な状態でした。ところが泣き叫んでいるときにエミリーが話しかけるとすっかりエミリーを頼りにし,懐いてしまったのです。また,ザックの愛馬サハラも,危うくジャマールを踏みつぶすところでしたがエミリーが優しく話しかけるとすっかりおとなしくなり,事なきを得たのでした。このエミリーの人を惹きつける不思議な力をザックは単なる演技だと思い込もうとしていたのですが,実はすでにこの時ザックはエミリーに恋し始めていたのでした。契約結婚は取り急ぎ行われ二人の初めての夜,ザックは彼女の男性経験が初めてであることに驚愕します。これほど魅力にあふれた女性が男性との関係を持ったことがないことが信じられなかったのです。エミリーもまた,傲慢で自分を信じてくれないザックに腹を立てる一方で,ザックを新から愛してしまったことに悩みます。そしていずれ別れが来ることも・・・。
 やがて宮殿を出てオアシスでハネムーンを愉しむ二人の元にエミリーの兄ピーターが訪れ,ザックからの借金を全て返したことを告げます。借金はエミリーの義姉の病気の治療に使われていたのですが,一部を投資にあてた結果それがうまくいき,返済が可能になったのでした。いよいよザックとの別れが迫っています。ザックを悩まし続けてきた義姉のジャマールの母も別の男性とフランスに出奔し,二人が偽装結婚を続けていく意味がなくなってしまいました。しかし,エミリーは残る決意をします。自分はザックを愛しており,今はザックが自分を愛していなくてもきっと自分を愛するように努力してみる覚悟を決めたのでした。そんな時,兄から電話があり,話をしているうちにジャマールが砂漠の奥の洞窟に一人で行ってしまったことに気付くエミリー。嵐が近づく中,ジャマールを連れ戻しにザックの馬サハラを駆るエミリー。この最後のスペクタクルが本作を冒険仕立ての素晴らしい作品に仕上げています。人間関係のごたごたからやっと解放されつつあるエミリーとザックが,本当の夫婦として末永く暮らせるのでしょうか。予想どおりのハッピーエンドが本作にふさわしいエンディングであり,これこそロマンス小説の王道をいく作品だと感じさせます。オススメの一作。


タグ:イマージュ
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孤独なバージンロード [リン・グレアム]

SHALOCKMEMO1184
孤独なバージンロード The Expectant Bride
Greek Tycoons 1 ) 1999」
リン・グレアム 小林町子





 原題は「身ごもった花嫁」
 ヒロイン:エリー・モーガン(21歳)/書店員と夜の清掃員のアルバイト/小柄(152センチ),金髪(プラチナ色),目は澄んだグリーン/祖母はオランダ人
 ヒーロー:ディオニシオス(ディオ)・アレクシアキス(29歳)/アレクシアキス・インターナショナル社社長/長身(193センチ),濃く長いまつげ,くっきりした眉,細い鼻,意志の強そうな顎
 ある夜,アルバイトしている会社でフロア担当を出来心で同僚と交換してしまったエリー。そこは最上階の社長のフロアでした。奥の部屋には入ってはいけないと注意されていたにもかかわらず,2つあるドアの該当する部屋に入ってしまったエリーは,社長の電話の声を聞いてしまいます。秘密の電話を聞いてしまったと難癖を告げられ,あろう事か,秘密をばらさないようにこれから3日間,自分の監視の下でギリシアに同行するようにと勝手に決めてしまった相手こそ,社長のディオでした。何かにつけて自分の思い通りにしようとするディオにエリーはことごとく反抗的な言葉を投げつけます。小柄な女性から,いや他人すべてから反抗的な言葉を言われたことのないディオにとっては,この小柄な女性はちょっと面白い存在だったのです。ギリシアでは父の葬儀が待っています。仲違いして長いことたった父の葬儀という気の重い行事に行かざるを得ないディオにとってはエリーの存在はちょっとした気晴らしのような軽い気持ちでした。ヘリと自家用機をのりついでギリシアのチンドス島に行き着いた二人ですが,そこに待ち構えていたのは彫像とも見まごうばかりの完璧な化粧を施した美女ヘレナでした。ディオの男性的な魅力に参りそうになっていたエリーにとっては,まさにヘレナはディオと好一対のベストカップルに見え,自分はとても太刀打ちできないと不安な気持ちで一杯です。ところが,葬儀の終わった夜,ディオはエリーを求めてくるのでした。心の中では自分がもてあそばれているだけだと分かっていながらも,エリーはディオに自分の初めてを捧げてしまいます。それほど切羽詰まっていた二人の感情でした。そして数週間後,エリーは妊娠したかもしれないと気付きます。ディオに体調を聞かれて,思わず病気ではないが妊娠したかもと答えてしまうエリー。さぁ,そこからが大変です。ギリシアに向かったとき幅広の帽子とサングラスをかけたエリーですが,タブロイド紙がディオとエリーの写真を載せてしまったため,清掃員の同僚たちからもひょっとしてあれはエリーではないかと疑念を抱かれてしまったのです。じつはその写真を流したのは嫉妬に狂ったヘレナの仕業だったのですが,それを主張するとディオはヘレナがそんなことをするはずがないと,エリーの話しを聞こうともしません。5歳の頃から祖父にヘレナをいつか嫁にすることになると頭の中にすり込まれて育ってきたディオにとって,3歳年上のヘレナはまさに完璧な女性で卑劣なことなどするはずがないと思い込まされていたからです。ヘレナもまたディオの前では貞淑な女性を演じていますが,エリーには皮肉や冷たい言葉を投げつけるだけの人でした。自分を信じない人とはもう一緒に暮らしていけないと,結婚式の数日後に家を飛びだしたエリー。ところが,自分の貯金で買い取ろうと思っていた書店も,店主の甥が後を継ぐからと突然言いだし,職を失うことになってしまったのです。出産,育児と職業をどう両立していったら良いか愕然とするエリーですが,なんとかなるという強い気持ちを持ち続けます。一方エリーに去られてしまったディオは,調査した結果ある新聞記者から情報の元はヘレナだということを知り,エリーの言葉を信用しなかった自分を責め続ける日々を過ごしていました。友人の医師夫妻からの助言を得て,エリーの元を訪れ,ひたすら謝るディオ。二人の関係は復活されるのでしょうか。
 60巻にも及ぶ「ギリシアの富豪」シリーズの輝かしい第1作の見事な幕開けです。


タグ:ロマンス
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再会は甘い苦しみ [マギー・コックス]

SHALOCKMEMO1183
再会は甘い苦しみ The Marriage Renewal 2003」
マギー・コックス 水間 朋





 原題は「やり直しの結婚」
 ヒロイン:タラ・シモンセン(30歳)/元バレエ教師,叔母のアンティークショップの店員/細身で金髪,エメラルド色の緑の目
 ヒーロー:マクセン(マック)・シモンセン(38歳)/広告会社経営/父はノルウェー人/金髪長身でバイキングのような体格,青い瞳
 面白くて一気読みでした。無駄なところがなく,関係を修復しようとする夫婦の葛藤を見事に描き出しています。5年前,仕事中毒の夫に嫌気がさしたタラの一言でマックは家を出て行ってしまいます。その後妊娠に気付いたタラですが,妊娠6カ月で息子を亡くしてしまいました。ガブリエルと名づけた子を。別居してからの5年間全く音沙汰のなかった夫が,駅で具合を悪くしたタラの元にやってきます。他の女性と結婚したいから離婚してくれと・・・。法律上はまだ離婚していなかったからです。アッサリ了承したタラですが,数日後,叔母の店を訪れたマックは今度は結婚生活をやり直さないかというのです。タラの流産の話を聞き,現在の恋人アメリとの結婚は自分のためにはならないとマックが考え直したからです。そして初めて1カ月の休暇を取ったのでアイルランドの会社の同僚の別荘に二人で行かないかと誘うのでした。もう一度だけ二人の関係が修復できるかやってみたくなったタラは,口を開く度にマックに拒絶の言葉を話すのですが,マックの魅力に惹かれてしまうことも否定できません。別荘での大罪は二人の関係を元以上に深めていくのでした。タラはバレエ教室の教師をやっていたことからもスタイルに恵まれ,さらに愛らしい若々しさを失っていません。一方のマックはノルウェー人の父の血もありバイキング風の風貌と体格の女性なら誰しも振り返る美貌にあふれた男性でした。端から見ればまさにベストカップルと言って良いでしょう。しかし,仕事オンリーだったマックに対する不満をぶつけるうちに,マックが前とは全く異なった思いやりの言葉や行動をするようになったことに,自分ももっとマックに言うべきことを言った方がよかったことを反省します。そんな二人のところに,またもや会社からの電話が入ります。またマックが出ていくのではないかと怯えるタラ。深夜を過ぎても帰宅しないマックにまた騙されたと思い込むタラでした。しかし,遅くなったことで心配させないように電話をしなかったマックは午前3時頃別荘に到着します。二人の間のわだかまりは頂点に達しますが,互いに率直な気持ちを言い合ったことで,逆に心のつながりは深まるのでした。そしてタラが再び妊娠します。お祝いの食事をしているところにマックの元恋人アメリがやってきて,タラに嫌みをたっぷりというのですが,逆に立ち上がってアメリをこてんぱんに打ちのめす言葉を言ってのけるのでした。そして自分たちと同じように夫の仕事のことで喧嘩をして食事の席からトイレに逃げ込んできた若い女性を諭し,二人を自分たちの食事の席に招く度量の大きさを魅せるタラ。5年間のタラの変化に気付き,目を細めるマックでした。数ヶ月後会社で会議中のマックのもとに電話が入ります。会社の受付にタラが来ているというのです。出産予定日に近いことから何かあったのではないかと心配で駆けつけるマック。さぁ結末はどうなるのでしょうか・・・。
 マギー・コックス作品を3冊続けて読んできました。本作が最も面白かったです。タラとマックの会話にもリズムがあって面白いし,タラの叔母ベスの存在も二人の応援団として,そして何より母親代わりの貴重な存在としての位置を占めています。そして二人の熱愛ぶりがさわやかで好感が持てる作品です。


タグ:ロマンス
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2月の閲覧履歴 [toppage]

3月1日,思いがけない夜半の雪で高校等の卒業式も大変だったようです。朝出勤途中で通り過ぎる高校の前では足早に校門をくぐる振り袖姿の高校生たちの姿を見ました。自分の出た高校ですが,数年前に男女共学になり女子生徒が多数いることを改めて実感できた風景でした。

さて,2016年2月のブログの閲覧者数の多かったベストスリーは,

1位 シークの隠された妻(リン・グレアム) SHALOCKMEMO1164
2位 かりそめのプリンセス(ジュールズ・ベネット) SHALOCKMEMO1157
3位 異端のギリシア大富豪(レベッカ・ウィンターズ) SHALOCKMEMO1159

という結果でした。なかでもリン・グレアム作品はぶっちぎりの1位でした。
2月は後半エマ・ダーシー作品を立て続けに読みましたが,いずれも素晴らしい作品でした。

また,2月の「イチオシ」マークは,
1 かりそめのプリンセス(ジュールズ・ベネット) SHALOCKMEMO1157
2 異端のギリシア大富豪(レベッカ・ウィンターズ) SHALOCKMEMO1159
3 ねじれた愛(アビー・グリーン) SHALOCKMEMO1167
4 伯爵との一夜の後で(ジェシカ・ギルモア) SHALOCKMEMO1170
5 心の扉(エマ・ダーシー) SHALOCKMEMO1173
6 ジャスミンの罠(エマ・ダーシー) SHALOCKMEMO1175
7 花嫁の悲しい嘘(メイシー・イエーツ) SHALOCKMEMO1180

の7本に付けさせていただきました。
閲覧者数第1位のリン・グレアム作品は「オススメ」マークでした。

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