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運命の回転ドア [シャーロット・ラム]

SHALOCKMEMO1290
運命の回転ドア Body and Soul 1994」
シャーロット・ラム 高田真紗子




K-406
16.06/¥670/156p

R-1291
96.12/¥640/156p


 原題は「肉体と魂」
 ヒロイン:マーティーン・アーチャー(27歳)/証券銀行社員/150センチぐらいの小柄で痩せ型,グリーンの瞳,赤褐色の髪/
 ヒーロー:ブルーノ・ファルカッチ(?歳)/銀行家/180センチくらいの長身,小麦色の肌,石に刻まれたような顔立ち,黒い髪,黒い瞳/
 複雑に入り組んだ愛憎をテーマにさせては右に出るものがいないシャーロット・ラムの作品。本作も憎んでいるように見せかけて本当は心から愛している相手との愛の物語です。そして何より驚くのが,脳腫瘍にかかった患者が生きがいをもって生きる意欲をもつことで腫瘍が小さくなり元気になっていくというストーリーです。原題の「Body and Soul」はそんな意味があるのでしょうか?
 証券銀行の経営者チャールズのもとで働き始め,元々持っていた才能を開花させて昇進を続け,みんなに頼りにされているマーティーン。しかし,チャールズは従弟のブルーノをイタリアから呼び寄せ,いずれ経営を任せるつもりだと言い出します。そのブルーノとマーティーンはある日偶然会議が行われるホテル入り口の回転ドアで一緒に挟まってしまい,互いをののしり合ったのが出会いでした。互いにその時,気持ちの中に互いを深く印象づけたのでした。会社にやって来たブルーノに表面的には慇懃に対応しているマーティーンですが,その男性的魅力に太刀打ちするためにはなんとか自分の気持ちを抑えつけなければならずに苦労しています。そして体調の悪いチャールズの代わりにブルーノが行くことになったローマの銀行家会議の最終日に遂に二人は深い関係を持ってしまうのでした。帰国を一日早めて先に帰ってきたマーティーンはその日のうちからインフルエンザで体調を崩し,出勤できなくなってしまいます。ブルーノはその話しを信じず,マーティーンが故意に自分を避けてしまったと感じているのですが,数日後マーティーンのフラットを急襲し,細々とマーティーンの世話を焼くという思いがけない行動に出るのでした。チャールズとマーティーンの関係を疑うブルーノの言葉に敢えて説明も打ち消しの言葉も話さないため,ブルーノはさらに二人の関係を疑い,長期の出張に出てしまうのでした。その間,マーティーンは自分の体調の変化がインフルエンザだけでなく,妊娠によるものだと気付きます。当初誰にも,両親にすらそのことを告げずにいたのですが,次第に服では隠せない状況になって始めて友人にそのことを打ち明けていたとき,出張から帰ってきたブルーノにその話を聞かれてしまいます。チャールズの子か,自分の子か,と聞かれたマーティーンはブルーノを避ける言葉しか話さず,ますますブルーノの疑心はつのっていくのでした。この当たりの緊張感に読者はドキドキしますし,その後,事情を知らないチャールズに子供をどう育てようとしているのか聞かれたマーティーンは,自分だけで育てると言い切るのでした。それに対してチャールズは自分と結婚すれば問題は解決するとプロポーズをしてくれますが,友人以外の感情を持っていないチャールズとの結婚はマーティーンの選択肢にはありませんでした。やがて,チャールズの病気の深刻さを知ったマーティーンは誘われるままにクリスマスをウィーンでチャールズと過ごします。しかしプロポーズを断ったマーティーンとチャールズは気まずい想いを抱いたまま帰国するのでした。ここまで頑固に二人の男性からの求愛を断り続けるヒロインの姿に拍手を送りたくなります。やがて地下鉄事故の影響で産気づいたマーティーンに,病院に駆けつけたチャールズ。そして入院を聞きつけて病院にやって来たブルーノに病院の看護師たちが病室に入れるのは一人の父親だけだといい,後からやって来たブルーノに冷たく対応する様子に思わず読者もクスリとするでしょう。愛らしい女の子が産まれ,名前をローマと名づけるマーティーン。この洒落た命名にも思わず拍手を送りたくなります。次々と溜飲を下げてくれる作者の見事な腕前に完全に参ってしまう秀作です。なお,ホテル入り口の回転ドアは日本では事故が起きてからほとんど姿を消すか,近くに普通のスライド式のドアが付けられるようになりましたが,欧米ではまだ残っているようですね。韓流ドラマでも一流ホテルでは結構見かけます。かつて「スライディング・ドア 1998」という名画があり,ヒロインのグィネス・パルトローの清純な美しさが際立っていた記憶がありますが,ちょっとそれを思い出してしまいました。今はAmazonPrimeにも入っていますから手軽に見れるようになってうれしいですね。


タグ:ロマンス
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ひと夏かぎりの情事 [マギー・コックス]

SHALOCKMEMO1289
ひと夏かぎりの情事 A Devilishly Dark Deal
( Deal with the Devil 1 ) 2012」
マギー・コックス 山本みと





 原題は「悪魔的で暗い取引」
 ヒロイン:グレイス・フォークナー(25歳)/慈善団体職員/淡い金色の髪,横顔でさえ天使のように見える,優美な細く長い腕,魅力的な笑み,ブルーの瞳,嫋やかながら砂時計を連想させる豊満な体,染み一つなくなめらかで美しい肌/
 ヒーロー:マルコ・アギラール(?歳)/実業家/緑色の目,日に焼けた肌,セクシーな濃い茶色の瞳,贅肉のない男性的な腰,イタリアルネサンス時代の彫刻家の掘ったような崇高な美しい顔立ち/
 聖女の誕生です。そしてポルトガルが舞台となるというロマンスとしては珍しい設定です。アルガルヴェというリゾート地。そこで幼少時代を過ごしたヒーローのマルコ・アギラールは親に捨てられ養護施設で育ちます。その後土地開発で巨万の富を得て富豪となったマルコに,休暇中だったヒロインのグレイスはアフリカの貧しい地域での養護施設の改築への寄付を得ようと,勇気を出して近づきます。突然の駆け寄りにマスコミのインタビューアーかと思ったマルコは始めグレイスをにらみつけますが,その清純な美しさに興味を持ち,寄付の内容についての説明を聞きたいと翌日会うことを提案します。それが二人の出会いでした。冷たい態度だけれども男性としての魅力にあふれた独身男性のマルコに,簡単に退けられてしまうと思っていたグレイスはこの展開に驚きます。自分がごく普通の冴えない女性だとしか思っていないグレイスにとっては,マルコが自分に興味を持つなどということには思いも至らなかったからです。自分の身の危険すら捨てても,人のためには尽くさないと気が済まないグレイス。そんなグレイスの行動や正直に心の内を話す性格に,これまで熾烈なビジネスの社会で生き抜いてきたマルコは,新鮮な驚きと人間としてのあるべき理想の姿を垣間見るような気がして,次第にグレイスに気を許し,そしてどうしようもなく惹かれていきます。ロマンスにありがちな敵役や意地の悪い女性も表だっては登場せず,しかも性格のねじ曲がってしまったマルコに家政婦や運転手,ボディガードといった人々が温かく見守り,グレイスとの関係が深まるのを喜ぶ姿がとても爽やかで心が温まるように感じられる,明るい癒やしの作品です。原題の「devilishly」や「dark」な感じは全くありませんので,どうしてこんなタイトルが付けられたのか不思議です。
 マーティーンというのがマルコの秘書の名前ですが,このあまり使われない名前が,同時に読書中のシャロン・サラの作品にも登場するのでちょっと面白いと思いました。


タグ:ロマンス
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疑惑のイタリア大富豪 [マヤ・ブレイク]

SHALOCKMEMO1288
疑惑のイタリア大富豪 A Marriage Fit for a Sinner
(7つの愛の罪 6) 2015」
マヤ・ブレイク 山本みと





 原題は「罪人にふさわしい結婚」
 ヒロイン:エヴァ・ペニントン(24歳)/クラブ「セイレーン」の歌手兼ウエイトレス/カラメルブロンドの髪,濃い色の眉とまつげ,モスグリーンの瞳,小柄で豊満な体つき/
 ヒーロー:ザッケオ・ジョルダーノ(32歳)/実業家,エヴァの元婚約者/
 貴族の娘ながら,母を失った後,父と姉から利用されるだけの存在になったエヴァ。その美貌から父の借金返済のために2度も婚約させられたにもかかわらず,父を信じ,それでも自立したいという気持ちからクラブ歌手として働き,ロンドンでフラット暮らしをしています。また,エヴァの父オスカー・ペニントン三世によって告発され1年半の刑務所生活を送った実業家のザッケオ・ジョルダーノは,かつてのエヴァの最初の婚約者でした。出獄後復讐のため,正義を取り戻すためペ人トン三世の罪を暴き,さらにエヴァを再び誘惑しようとします。2週間以内のエヴァとの結婚。それが最初にザッケオが計画した復讐の方法でした。さらにペニントン三世が罪を認めようとせず最後のあがきをしていると,結婚を1週間以内に短縮し・・・。父の罪を知らずに加担してしまっていたエヴァですが,ザッケオは内心ではエヴァも父の罪の加担していたと頑なに信じています。
 600人もの招待客を招いての大々的な結婚式の後,二人はブラジルの孤島でハネムーンを過ごします。ここで,エヴァは女性としての喜びを始めて体験し,ザッケオを愛するようになりました。しかし,エヴァにはザッケオに話さなければならない秘密がありました。子宮内膜症により子供が出来ない体だったのです。両親から捨てられ,特に母からは何の連絡も無くなってしまっているザッケオにとっては子供が結婚の最優先事項だということを婚前契約書に明記していたのです。この秘密を打ち明けようと何度思ったことか。ザッケオを愛し始めたエヴァにとってはこれを話せばザッケオから見捨てられるという怖れがありました。すでに数回の離婚解消を経験していたエヴァはこの秘密を話す度に婚約を解消されたという経験があり,例え正式にザッケオの妻となった今でもこの秘密を話せばきっと離婚されるだろうと思ったのでした。ハネムーン期間中何度もエヴァには話す機会がありましたが一日延ばしにしていたのでした。そして,ついにハネムーンの終わりの日,エヴァはザッケオに話すのでした。帰国は一緒ですぐに二人の家「カーサ・ド・パライソ」に到着しますが,ザッケオはすぐに出張と称して出かけてしまい,エヴァからの連絡には応答しなくなってしまいます。「セイレーン」での仕事と作曲に没頭してザッケオの不在に耐えるエヴァですが数ヶ月もなお連絡が取れないことに業を煮やし,ザッケオの会社から秘書のパソコンを通じてメールを送ります。「あなたが望むなら離婚する」と最後通牒を送るのでした。翌日セイレーンで倒れてしまったエヴァ。入院先にザッケオが現れます。さて二人の関係は修復されるのでしょうか。
 思いがけない結末をもたらす第15章とエピローグ。ストーリーテラーのマヤ・ブレイクらしい盛り上がりを見せる作品です。なお,ザッケオの風貌についてはほとんど語られていません。こんなのもマヤ・ブレイクらしいですね。


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メイドが夢見た9カ月 [スーザン・スティーヴンス]

SHALOCKMEMO1287
メイドが夢見た9カ月 Brazilian's Nine Months' Notice
( Hot Brazilian Nights 3 ) 20015」
スーザン・スティーヴンス 遠藤靖子





 原題は「ブラジル人の9カ月の予告」
 ヒロイン:エマ・フェーン(22歳?)/ホテルパーソン,客室係/長い赤毛の髪,翡翠のような緑色の瞳/
 ヒーロー:ルーカス(ルーク)・マルセロス(?歳)/ホテルチェーンのオーナー,ポロ選手/古代ローマの剣闘士のような体格と下界に舞いおりた神のような気高い顔立ち,波打つ黒髪と浅黒い肌,漆黒の眉/
 「熱いブラジル人の夜」シリーズの三作目,「苦い愛の芽ばえ(SHALOCKMEMO1080)」のヒロイン,エリザベス(リジー)の従妹エマが本作のヒロインです。リジーとは同じ一族ながら,エマは両親が犯罪者で警察に追いかけられる途中に事故で命を失うという不名誉な家族を背負っています。一方,ヒーローのルーカス(ルーク)はチコ,ティアゴと同様広大な牧場や農園をもち,世界的なポロ選手という共通点の他,ホテルチェーンのオーナーとしての仕事を抱える大富豪です。エマは大学の年次表彰式で「ホテル産業に卓越した理解力を示した」ということで特別賞を受賞し,ロンドンのホテルでの研修中,たちまち惹かれ合って一夜を共にし,身ごもります。シリーズ前作「シンデレラの婚前契約」が未読なので,ダニーとティアゴの結婚式で再会するというストーリーはなにか事情があるのか分かりませんが,従姉のリジーの親友ダニーの結婚式ということで,偶然なのかもしれません。そしてロンドンでの一夜の翌朝姿を消したエマを忘れられずにいるルークは徹底してエマを追いかけるのです。エマはルークに妊娠のことを告げなければという思いと,告げてしまえば富豪で力を持つルークに赤ん坊を取り上げられてしまうかもしれないという怖れとの間に板挟みになり,なかなか事実を告げられないまま,勤務するホテルで何かと自分に用事を言いつけるルークには徹底して客としての対応をするのでした。犯罪者であった両親に対する気後れ,大富豪であるルークとしがないホテル従業員の自分との社会的差は一目瞭然であり,ルーク自身も二人の間の永続的関係を築こうとする気持ちはさらさら無いことを明言しており,妊娠直後から深い愛を感じている我が子を奪われるかもしれない恐れから,結局エマはルークに直接告げる前に,エマの体に触れてきたルークに体の変化に気付かれてしまい,妊娠を知られてしまうのでした。そして勤務するホテルに勝手に辞職願を出されてしまい,ブラジルの彼の基幹ホテルについて行くことを承諾してしまうのでした。厳冬のスコットランドから灼熱のブラジルへ。しかし,ホテルについても適当な仕事を与えてくれないルークにエマはくってかかります。ルーク専用のエレベーターでルークの居室のあるフラットの隣の部屋を割り照られたエマはホテルのスタッフが自分をどう見ているかをすぐに悟ります。「あなたの言う短期間の愛人には絶対になりませんから。」「君はフルタイムの愛人になりたくないのか?」「私が死んでもなりたくないのはそれよ」という二人の応酬がこの時の二人の認識の違いを明らかにしています。しかしルークがエマに感じている欲望以上にエマもルークに欲望を感じているのでした。ルークの妹カリーナ(次作のヒロインになります)の誕生パーティーをそっと抜け出して海岸を散歩しているエマを追いかけたルーク。自然の中の開放感からかエマの方もルークの誘いに積極的に応えるのでした。「彼は私を愛してなんかいない。なのに私は彼を愛している。救いようもなく」と気持ちが高揚するエマ。しかし「いい?私はあなたに支配されるつもりはない」とルークを突っぱねるエマでもありました。二人の間のぎくしゃくした気持ちのすれ違いを解消しようとカリーナが兄ルークとエマのそれぞれに背中を押すアドバイスをし,互いにちょっと距離を置きながら自分の気持ちを確かめるのでした。そしてエマはルークの居場所をカリーナから聞きだし,単身飛行機と車とロバを乗り継ぎ,ルークに会いに行くのでした。二人の間の溝は埋まるのでしょうか。
 ちょっと素敵な役柄を務めるルークの妹カリーナ。高い能力を買われてホテルの重要なポジションについて働いているのですが,彼女にも苦手とする男性が現れ,エピローグが締めくくられます。


タグ:ロマンス
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メイドを拾った億万長者 [キャロル・マリネッリ]

SHALOCKMEMO1286
メイドを拾った億万長者 His Sicilian Cinderella
( Playboy's of Sicily 3 ) 2015」
キャロル・マリネッリ 漆原 麗





 原題は「彼のシチリアのシンデレラ」
 ヒロイン:ベラ・ガッティ(23歳)/ホテルのメイド,デザイナー/黒い髪に緑の瞳/
 ヒーロー:マッテオ・サンティーニ(?歳)/実業家/黒い髪,ダークグレーの瞳/
 「涙のエンゲージリング(SHALOCKMEMO1179)」「メイドが愛した億万長者(SHALOCKMEMO1204)」に続く,シリーズ最終巻。イタリアの熱い物語がはじけます。幼なじみで美貌のベラと親友のソフィー,そしてヒーローのマッテオと親友のルカ,この二組の恋人同士のロマンスを描いた秀作です。ルカの父でシチリア西部の町ボルド・デル・チェーロのボス,マルヴォリオが遂に亡くなります。それまでこの街はマルヴォリオによって支配され,ベラの両親もこのボスによって人生を支配されてきました。ボスに逆らうことはすなわち死を意味します。まさに血の誓いによって支配された金と欲と血の関係。そんな生々しい関係の中で翻弄されるベラの人生。優れたデザイン感覚を持ちながらホテルのメイドでしかいられないのは,ベラの父がマルヴォリオの右腕であり,さらに母は身を売るしか生きるすべがないという悲惨な状況にあったからでした。5年前,まだ少年少女だったベラとマッテオは恋人同士になりますが,周囲の人々から蔑まれ,母を捨てることが出来ないベラはマッテオが島から逃れてローマに行こうと誘われたにもかかわらず,マッテオについて行くことは出来ませんでした。それをマッテオは自分がベラに捨てられたと思い込んでしまいます。しかしベラを忘れることは出来ませんでした。今はまっとうな実業家として成功したマッテオに対し,ベラは相変わらずホテルのメイドに甘んじていなければならなかったのです。その母も亡くなり,やっとのことでマルヴォリオが亡くなり,その支配下から逃れることができても,町ではいつも蔑まれた生活を送らざるを得ないベラでした。しかし親友のソフィーとルカの結婚式にベラは自分の才能の限りをつくしてウェディングドレスを縫い上げます。ボスに支配されていた人々がマルヴォリオの死により解放され,ルカとソフィーの結婚式はその最初で最大のイベントとなりました。そしてそこで再燃するマッテオとベラの関係。マッテオの熱い視線,ベラもまた今の自分の状況から逃れるためにマッテオの重荷になりたくないという最後のプライドからマッテオの誘いを断っていくのですが・・・。
 自分のせいでなく,生きるためには究極の選択をせざるを得なかった二人の美しくも儚い愛の軌跡を,熱いシチリアの空気の中で歌い上げた,まるでゴッドファーザーのような作品です。でも,あそこまで凄惨ではないところがロマンス小説らしさでしょうね。


タグ:ロマンス
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灼熱の足枷 [メイシー・イエーツ]

SHALOCKMEMO1285
灼熱の足枷 To Defy a Sheikh 2014」
メイシー・イエーツ 馬場あきこ





 原題は「シークに反抗」
 ヒロイン:サマラ・アル・アゼム(21歳)/ジャハール国王女(シーカ)/小柄,黒髪,黒い瞳,小麦色の肌/
 ヒーロー:フェラン・バシャール(31歳)/カドラ王国シーク/黒い瞳,引き締まった長身/
 16年前の事件がきっかけで親を失った二人。というより親同士の不倫がきっかけでサマラは国を失い,フェランはサマラの父を手にかけて復讐を果たします。そして復讐の刃は大人になったサマラがフェランを狙って仕掛けるという段階になったのでした。これはもうシェークスピア以上の国を賭けた復讐譚になるかと思いきや,一瞬の逡巡がサマラの手からナイフを奪ったフェランの勝利となり,フェランはサマラとの結婚こそこの長い間の復讐劇の終焉をもたらすものだと考えます。そこに愛情はなくともジャハールとカドラの民衆や政権を納得させられる方法だというフェランの説得にサマラも,それ以外の解決方法はなく,自分も復讐だけが生きる方法だと思っていたところから,未来に向けて生きることが出来るのだという希望が見えてくるのでした。オアシスでの二人だけの数日間ののちに,二人は宮殿に戻り,公式の場へと向かうことにします。ところがフェランにはサマラに告げなければならない事実がありました。15歳の彼が惨劇の間,ただ隠れていただけではなく,自らサマラの父に手をかけたのでした。それが自分を殺人者だという後悔の念に彼を駆り立てていたのです。サマラを愛し始めていたフェランはサマラに許しを得られるのか,というぎりぎりのところで愛を認められずに感情を押し殺す大人に成長させてしまっていたのでした。
 そしてサマラもまた,感情を押し殺すことが唯一生き残り復讐を遂げるためには必要なことだったのです。二人の結婚には互いの許しが必要でした。それを積極的にフェランに解き始めるサマラ。こんな複雑な運命に翻弄される二人の若者の心理描写がとても見事な作品です。激しい言葉の応酬の中に真実の愛の姿を描ききったイチオシ作品です。


タグ:ロマンス
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置き去りにされた天使 [エリー・ダーキンズ]

SHALOCKMEMO1284
置き去りにされた天使 Newborn on Her Doorstep 2015」
エリー・ダーキンズ 大谷真理子





 原題は「玄関口の新生児」
 ヒロイン:リリー・ベイカー(?歳)/ウェブデザイナー/ブロンドの髪,ブルーの目/
 ヒーロー:ドミニク(ニック)・ジョンソン(29歳)/大企業重役/筋肉質の長い脚/
 異父姉が置き手紙と共に玄関に置き去りにした赤ん坊ロージー。母親ヘレンは妹リリー・ベイカーに育ててくれというメモとともにロージーを置き去りにしたのでした。ひょんなことで二人の面倒を見ることになってしまったニックは,かつて一人息子の突然死を経験し,赤ん坊に対してはちょっとトラウマがあるのですが,妹の親友リリーの様子を見るとなんとしても助けなければと思い・・・。
 親友ケイトのすすめでニックのフラットでしばらく暮らすことにしたリリーですが,突然留守にするはずのニックが帰ってきてしまいます。ここから先は終盤までリリーとニックが如何に二人の間の折り合いを付けていくかということを中心に物語が進行していきます。元妻と息子マックスを失ったことを全て自分の責任と感じているニックを,リリーは励ましながら,しかしながらその心の傷を乗り越えない限り自分とニックの関係は深まらないと考えているリリーは,二人の関係の深まりを急ぐつもりはありませんでした。どんなにニックに惹かれていても・・・。
 そしてロージーがぐずりだし熱が次第に上がろうとしていたとき,リリーは病院の前で車から降りようとするニックを押しとどめます。自分だけでロージーの面倒を見ると言われ,逆に傷つくニック。しかし,息子ばかりでなく元妻からも去られたのは自分の説明不足だったことから招いたことだと思い直してリリーを追いかけるニックですが,ドアの前でどうしてもノックすることが出来なくなります。退院後ケイトの元を訪れ二人で世話になるリリーとロージー。異父姉のヘレンが入院したためにロージーの面倒を見られなくなった事情を知ったリリーは,ニックと二人でロージーを育てるという夢を描いていたのですが,それが無理だということも感じていたのでした。さて,ニックはこのリリーの想いにどう答えていくのでしょうか。
 エピローグはごく普通の終わり方をしています。もう一波乱起きたら文句なしのイチオシになったでしょうが,もうちょっと工夫が欲しかったところです。


タグ:イマージュ
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御曹子の恋 [キム・ローレンス]

SHALOCKMEMO1283
御曹子の恋 Mistress by Mistake
( Mistress Material 3 ) 2000」
キム・ローレンス 高木晶子




HQB-744
16.07/¥670/208p

R-1658
01.03/¥672/156p


 原題は「間違いの愛人」
 ヒロイン:イブ(イビー)・ゴードン(23歳)/造園師,アカシア通り6番地の下宿経営/濃い茶色の瞳,長身,長く綺麗な脚,短い黒い髪,漆黒のまつげ/
 ヒーロー:ドリュー・カミングス(36歳)/銀行家/四角い顎,青い瞳/
 「無防備すぎる。信じがたいほど率直で痛々しいほど真っ直ぐだからこそイブは他の女性と違うんだ。だからこそ僕はイブに惹かれたんだ。」とヒーローのドリューに言わしめた親分肌で魅力的な女性イブがヒロインです。大学教授だった両親を亡くした後,18歳から自立して5歳年下の弟ニックを育ててきたイブ。弟の幼なじみで親友のダニエルの両親とは顔見知りでしたが,ダニエルの叔父ドリューとは初めて出会います。昔からダニエルはドリュー叔父さんを崇拝し,なんでもそのまねをしていました。ダニエルの両親が旅行中,ドリューがダニエルの面倒を見るために滞在しています。ところで銀行家の御曹子と紹介されるドリューがどんな仕事をしているのかはどうもはっきりしません。そもそも仕事をしているのかさえはっきりしないのです。そしてドリューが婚約者に結婚式前日に逃げられてしまいそれ以来女性を信頼していないことをダニエルから聞いていましたが,実際に会ってみると,その傲慢で何でも命令口調,しかも女性蔑視の言い方にイブはかなり腹を立てながらも,ドリューを男性として意識してしまう自分にさらに腹を立てています。両親の残してくれたヴィクトリア朝の古い家に3人の下宿人を置き,庭師として仕事をしているイブですが,経済的にはニックを育てるのにぎりぎりの生活を送らざるを得ませんでした。そのため古い配線から出火し,何もかも失ってしまいます。困ったときになぜか駆けつけるドリューに頼ってしまいそうになるイブですが,ドリューの元婚約者のシャーロット(ロッティ)が現れるに至っては,自分などどうしてもロッティに勝てないと,そしてそれを認めたくないプライドの高さからドリューを無視しようとするのですが・・・。ロッティには隠された秘密があるのでした。最後にその秘密が明かされ,イブは心から最後の1パーセントまでドリューを信頼することが出来るようになるのです。
 火災で得た怪我の治療後にイブが住んでいるエミリー叔母の家の壁をドリューがよじ登ってイブの部屋に入っていったり,ドリューの腕にすがるように一緒にやって来たロッティに掘ったばかりの芋を土のついたまま渡していじわるしたり,なにかと二人の行動は滑稽で意地の張り合いという感じがするのですが,いつの間にか惹かれつつ愛し合ってしまう二人の間に一粒種が出来るのは微笑ましく,将来を応援したくなってしまうのもイブの魅力的な性格によるものだと思います。一気読み間違いなしの秀作です。


タグ:ロマンス
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薄幸のシンデレラ [レベッカ・ウィンターズ]

SHALOCKMEMO1282
薄幸のシンデレラ A Wedding for the Greek Tycoon
(ギリシアの花嫁 2) 2015」
レベッカ・ウィンターズ 小池 桂





 原題は「ギリシア富豪のための婚礼」
 ヒロイン:ゾーイ・ザコス(24-25歳)/病気療養中の大学生/慎重170センチ弱,ブロンドの髪,グリーンの目/
 ヒーロー:ヴァッソ・ジアノポウロス(30歳)/実業家/漆黒の目/
 ニューヨーク8月9日から物語は始まります。最後は10月16日ギリシア,パクソス島ですからほぼ2カ月間の物語。ガン闘病中のギリシア系アメリカ人のゾーイは医師から退院の許可を得ますが,6カ月後の再発可能性は捨てきれません。いわば時限爆弾を抱えているようなもの。両親を火災で亡くし,ボーイフレンドも病気を知って去ってしまいました。その後2年間,闘病とカウンセリングに明け暮れてきましたが,とりあえず精神的にも身体的にも健康を取り戻し,膨大な治療費を出してくれたジアノポウロス基金に少しでもお返ししたいと,基金での仕事をしたい希望を強く持ったのでした。昔から世話になっている神父に仲立ちをとってもらい,たまたまニューヨークにやって来た基金の主ヴァッソ・ジアノポウロスに直接面接をしてもらうことになります。ヴァッソはゾーイの困難な過去のことを聞き,本人に会ってみると是非守ってあげたいという気持ちになります。それからすぐにギリシアのパクソス島の療養所でちょうどアシスタントが不足していることに気付き,パクソス島にゾーイを伴います。アテネの本社に立ち寄り,ヘリでパクソス島へ。事務長のヤニスはすっかりゾーイを気に入り,療養中の患者の生活の改善のための企画を次々に出すゾーイを重宝しています。ヴァッソはその様子を見てすっかりゾーイとの関係を接近させようとしますが,ゾーイはヴァッソを意識的に避けようとするのでした。互いに惹かれている様子は隠せないもののゾーイの行動を不審に思ったヴァッソですが,なかなか本音を話してくれません。ついに結婚を申し込むヴァッソですが,ゾーイは即刻断ります。傷ついたヴァッソは少し時間をおいたほうがいいとアテネでの仕事に集中し週末にゾーイに会おうとパクソス島へ戻りますが,なんとゾーイは火曜日には辞表を出してニューヨークに帰ってしまったというのです。9月23日ニューヨークで検査を受けたゾーイは医師から再発の怖れはなく,10年生存率は71パーセントというお墨付きをもらい,ヴァッソの申し出をもう一度考え直すのでした。
 前作「ガラスの靴のゆくえ(a href"http://romanceindanger.blog.so-net.ne.jp/2016-04-30"SHALOCKMEMO1235)」で登場するアキスとレイナ夫妻も幸せな様子を見せ,ヴァッソ,ゾーイの二人を応援します。ギリシア系の人たちの家族に対する強い思いが随所に出てくる温かく,そしてゾーイの表裏のない思いやりの深さと実行力のある行動が爽やかで,とても読後感の良いイチオシ作品です。


タグ:イマージュ
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大富豪の父親適性テスト [シャーリーン・サンズ]

SHALOCKMEMO1281
大富豪の父親適性テスト The Billionaire's Daddy Test
( Billionaires nnd Babies 61 ) 2015」
シャーリーン・サンズ 秋庭波瑠





 原題は邦題そのまま
 ヒロイン:ミア・ダンジェロ(?歳)/美容室経営/165センチ,長い脚と美しい顔立ち,緑色の瞳/
 ヒーロー:アダム・チェイス(?歳)/建築家/長身,日に焼けた脚,がっしりした背中,グレーの虹彩に鋼色の斑点が浮かんだ瞳,力強い顎/
 2010年9月以来のシャーリーン・サンズの訳本です。本シリーズに著者はいくつかの作品を上梓していますが,2016年にはもともと寡作な著者が本格的に著作を出しているようです。斜麓駈については,本作が初読了本となります。まずはタイトルに惹かれました。「Daddy Test」という表現。いかにも手慣れていない父親が我が子におそるおそる手を伸ばしている様子が見えるような感じがいいですね。
さて,本作ですが,姉の遺児ローズに父親の存在を知らせなければという思いで「ムーンライト・ビーチ」を訪れたミア・ダンジェロ。この南カリフォルニアのムーンライト・ビーチが別のシリーズにも登場し,本作に登場するゼイン・ウィリアムズ,ディラン・マッケイがヒーローとして活躍するようです。いわゆる富裕層の別荘地のコテージにヒーローのアダム・チェイスが住んでいます。偶然の出会いを装ってアダムがローズを託するのにふさわしい男性なのかを調べようとします。偶然砂浜のガラス瓶のかけらを踏んで怪我をしてしまったところをアダムが見つけたために,予定が狂って助けてもらうことになってしまったミア。外見は素晴らしいアダム。そして親切。しかもお金持ち。でもなぜかアダムは仕事以外は別荘に引きこもり社交生活を余り送っていない様子。何か秘密があるようです。ぎりぎりのところでアダムを信用するのは保留しながらも,アダムの勧めるままにローズと共にアダムの別荘に引っ越し奇妙な同居生活が始まります。二人の理髪師と共に子供専用美容室を経営するミア。日中は生後半年のローズを店に連れて行き,交替で面倒を見ています。夜はアダムの家でアダムがローズとふれあえるようにと計画していたのですが,アダムの顔を見るとローズが泣き出してしまいます。家政婦のメアリには懐くのになぜか実父のアダムにだけは背を向けてしまうローズにアダムのいら立ちはつのります。そんなところにアダムの弟のブランドンがやって来ます。ローズの目の色を見て一目でアダムの娘だと気付いたブランドン。ミアは慌てて自分はローズの叔母だと名告ります。アダムと特別な関係にあると思われてはいけないという思いからです。しかしブランドンはミアとアダムの間の特別な空気を見事に感じ取ってしまいます。アダムとブランドンは長い間仲違いをしています。かつてアダムの恋人だったジャクリーンと関係を持ってしまい,それをアダムが見てしまったことで弟に裏切られた気持ちを持ち続けていたのです。母の誕生パーティの企画のためにアダムの家を訪れたブランドンですが,それをきっかけに二人の仲直りを望む母アレナ。しかし,ローズやミアと仲良くしているブランドンを見てアダムはさらに自分のものを再び取られたような気持ちになり,ブランドンに辛く当たります。アダムがそもそも引きこもった生活をしているのには,この元恋人と弟の関係という問題の他に,もう一つ幼い妹リリーを失った責任が自分にあると自分を責め続けてきたからでした。自分の娘の母親の妹というミアの存在に,自分の妹リリーの姿が重なり,ミアを守り続けることができなくなるのではという怖れの気持ちももってしまうのでした。しかもローズからはなかなか笑顔を向けられません。このアダムの苦悩が本作の主なストーリーの一つで,作品に一本筋の通ったものを感じさせています。一方ミアの方は自分が単なるローズのベビーシッターなのか,アダムに惹かれる気持ちをどうやって抑えようかと苦労しながらも,ローズにしっかりと向き合おうとするアダムを愛さずにはいられなくなります。姪の父親としてというより男性として惹かれてしまう自分の気持ちに戸惑うミア。そして遂に二人の破局がやって来ます。勤めを終えて帰宅したミアとローズを待っていたのはアダムが依頼したベビーシッターの若い娘でした。遂に自分を遠ざけようとアダムが考えたと思い込んだミア。さらにそれに上乗せしてアダムがミアの最大の弱点である犯罪者である父のことを指摘されたことで,ついにミアはローズを連れて家を出ることにします。自分を育ててくれた祖母の元に身を寄せることにするのでした。さあ,アダムはどんな手を使って,ミアを説得しようとするのでしょうか。もはや互いの愛は紛れもない事実。あとはローズを含めた3人の関係をどんな形で作り上げていくのか。本作はそんな家族作りの過程を描いた温かい,優しい人たちだけが登場する作品です。


タグ:ディザイア
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